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七将編(剛腕将軍グラドン)
第57話 剛腕に挑む勇者
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祭壇の間は、もはやかつての荘厳さを保っていなかった。
崩れた柱が無残に転がり、血で描かれた魔法陣はひび割れた床に途切れ途切れのまま残っている。
その中央で、二つの影が対峙していた。
――ドオォォォォンッ!
耳をつんざく轟音と共に、岩盤が爆ぜた。
剛腕将軍グラドンが両腕を振り回し、左右の壁を次々と打ち砕いていく。
石壁が崩れ、粉塵が滝のように舞い上がり、床に巨大な亀裂が走った。
「うおおおおおおおッッ!」
咆哮は獣じみており、反響が洞窟全体を震わせる。
狂気と力に任せたその破壊の波は、もはや地震と変わらなかった。
悠は、その前で片手をポケットに突っ込んだまま、ひょい、と体を傾けてかわした。
振り下ろされた巨腕が地面を抉るたび、砕けた岩が飛び散るが、悠は軽やかな足運びでそれを踏まない。まるで、そこに見えない細い道があるかのように。
「……ほんと、暴れるしか能がない筋肉バカは面倒だな」
呟きはぼそりと小さく、砂煙にかき消えそうなほどだった。
しかし次の瞬間、悠の拳がひらりと上がり、正面から迫った岩の塊を軽く弾く。
それだけで拳大の岩は砕け、砂となって崩れ落ちた。
――ガァァンッ!
次いでグラドンが大斧を両手で振り下ろす。
刃と拳がぶつかり合い、衝撃が空気を爆ぜさせた。
鈍い音ではなく、爆音だった。耳を塞ぎたくなるほどの、まるで雷鳴のような響き。
その爆風が床を吹き抜け、崩れかけた柱を押し倒す。
「はぁ……修理する職人の苦労を考えたことねぇんだろうな」
悠はわずかに目を細め、拳に滲む熱を軽く払うように振った。
グラドンはそれを見て、さらに目を剥いた。
「小癪な勇者めええええッッ!」
再び、斧を振るい、巨腕を振り回す。
その動きは暴風を巻き起こし、周囲の瓦礫や石片を巻き上げては飛ばしていく。
悠は時にかわし、時に拳で弾き、時に軽い蹴りで軌道を逸らす。
その度に、祭壇の間の空気が裂け、壁が削れ、砂煙が渦を巻いた。
轟音は地下だけに留まらなかった。
鉱山都市の地上、まだ夜明け前の薄暗い空の下。
街の石畳がわずかに震え、窓辺のランプが細かく揺れる。
「な、なんだ!? 地震か!?」
「いや……あの方向は……坑道だ!」
広場に集まった市民たちは怯え、顔を見合わせた。
中には手を取り合い、泣き出す者もいる。
夜勤の兵士が慌てて領主邸に駆け込み、報告の声を上げた。
領主は重い外套を羽織り、広場に出ると民衆を見回した。
その顔は厳しくも、どこかで安堵を含んでいる。
「落ち着け! 勇者殿が、あの坑道の奥で戦っておられる!
我らが恐れるべきは、この街に及ぶ混乱ではなく……
勇者殿の戦いを邪魔しないことだ!」
民衆のざわめきが少しだけ静まった。
そして誰かがぽつりと呟く。
「勇者様……」
その言葉が伝染するように広場に広がり、老いも若きも、両手を合わせて祈り始めた。
「どうか……ご無事で」
「勇者様……どうかこの街をお守りください……!」
灯りが揺れるたび、祈りを捧げる人々の影が地面に長く伸びた。
一方その頃、祭壇の間。
悠は避けながらも、微かに肩を竦めていた。
「……あー、また勝手に盛り上がってんだろうな、地上の連中」
視線はグラドンに向けたまま。
口調は眠そうだが、反応は寸分の狂いもない。
再び斧が振り下ろされる。
悠は前へ一歩踏み出し、拳を突き上げた。
――ゴォンッ!
拳と斧が正面からぶつかり合う。
激しい衝撃波が走り、粉塵が竜巻のように吹き荒れた。
足元の岩盤が波打つように揺れ、天井からまた砂がぱらぱらと降り注ぐ。
悠は小さく舌打ちした。
「……ほんと、うるせぇ。掃除の手間が増えるだけだってのに」
グラドンは荒い息を吐きながら、その巨腕をよりいっそう膨張させていった。
血管が浮き上がり、赤黒い光が脈打つように走る。
肌がひび割れ、そこから迸る魔力が周囲の石を焦がしていく。
「まだまだだァァァァァッッ!!」
獣の咆哮に似た声が響き渡ると同時に、グラドンの全身がさらに巨大化した。
筋肉が盛り上がり、骨の軋む音が地鳴りのように響く。
「ほらな、筋肉バカの典型だよ。
でかけりゃいいってもんじゃねぇんだよなぁ……」
悠は気怠そうに首を傾げながらも、拳を軽く握り直した。
その動きは静かだが、わずかな空気の揺れを伴い、砂煙が押し退けられる。
地上の広場では、再び足元が震えた。
祈っていた人々が顔を上げ、不安げに空を見上げる。
広場中央の火柱が揺れ、焚き火の火の粉が宙を舞う。
領主は唇を固く結び、胸の奥でそっと呟いた。
(勇者殿……どうか、この街と人々をお守りください)
崩れた柱が無残に転がり、血で描かれた魔法陣はひび割れた床に途切れ途切れのまま残っている。
その中央で、二つの影が対峙していた。
――ドオォォォォンッ!
耳をつんざく轟音と共に、岩盤が爆ぜた。
剛腕将軍グラドンが両腕を振り回し、左右の壁を次々と打ち砕いていく。
石壁が崩れ、粉塵が滝のように舞い上がり、床に巨大な亀裂が走った。
「うおおおおおおおッッ!」
咆哮は獣じみており、反響が洞窟全体を震わせる。
狂気と力に任せたその破壊の波は、もはや地震と変わらなかった。
悠は、その前で片手をポケットに突っ込んだまま、ひょい、と体を傾けてかわした。
振り下ろされた巨腕が地面を抉るたび、砕けた岩が飛び散るが、悠は軽やかな足運びでそれを踏まない。まるで、そこに見えない細い道があるかのように。
「……ほんと、暴れるしか能がない筋肉バカは面倒だな」
呟きはぼそりと小さく、砂煙にかき消えそうなほどだった。
しかし次の瞬間、悠の拳がひらりと上がり、正面から迫った岩の塊を軽く弾く。
それだけで拳大の岩は砕け、砂となって崩れ落ちた。
――ガァァンッ!
次いでグラドンが大斧を両手で振り下ろす。
刃と拳がぶつかり合い、衝撃が空気を爆ぜさせた。
鈍い音ではなく、爆音だった。耳を塞ぎたくなるほどの、まるで雷鳴のような響き。
その爆風が床を吹き抜け、崩れかけた柱を押し倒す。
「はぁ……修理する職人の苦労を考えたことねぇんだろうな」
悠はわずかに目を細め、拳に滲む熱を軽く払うように振った。
グラドンはそれを見て、さらに目を剥いた。
「小癪な勇者めええええッッ!」
再び、斧を振るい、巨腕を振り回す。
その動きは暴風を巻き起こし、周囲の瓦礫や石片を巻き上げては飛ばしていく。
悠は時にかわし、時に拳で弾き、時に軽い蹴りで軌道を逸らす。
その度に、祭壇の間の空気が裂け、壁が削れ、砂煙が渦を巻いた。
轟音は地下だけに留まらなかった。
鉱山都市の地上、まだ夜明け前の薄暗い空の下。
街の石畳がわずかに震え、窓辺のランプが細かく揺れる。
「な、なんだ!? 地震か!?」
「いや……あの方向は……坑道だ!」
広場に集まった市民たちは怯え、顔を見合わせた。
中には手を取り合い、泣き出す者もいる。
夜勤の兵士が慌てて領主邸に駆け込み、報告の声を上げた。
領主は重い外套を羽織り、広場に出ると民衆を見回した。
その顔は厳しくも、どこかで安堵を含んでいる。
「落ち着け! 勇者殿が、あの坑道の奥で戦っておられる!
我らが恐れるべきは、この街に及ぶ混乱ではなく……
勇者殿の戦いを邪魔しないことだ!」
民衆のざわめきが少しだけ静まった。
そして誰かがぽつりと呟く。
「勇者様……」
その言葉が伝染するように広場に広がり、老いも若きも、両手を合わせて祈り始めた。
「どうか……ご無事で」
「勇者様……どうかこの街をお守りください……!」
灯りが揺れるたび、祈りを捧げる人々の影が地面に長く伸びた。
一方その頃、祭壇の間。
悠は避けながらも、微かに肩を竦めていた。
「……あー、また勝手に盛り上がってんだろうな、地上の連中」
視線はグラドンに向けたまま。
口調は眠そうだが、反応は寸分の狂いもない。
再び斧が振り下ろされる。
悠は前へ一歩踏み出し、拳を突き上げた。
――ゴォンッ!
拳と斧が正面からぶつかり合う。
激しい衝撃波が走り、粉塵が竜巻のように吹き荒れた。
足元の岩盤が波打つように揺れ、天井からまた砂がぱらぱらと降り注ぐ。
悠は小さく舌打ちした。
「……ほんと、うるせぇ。掃除の手間が増えるだけだってのに」
グラドンは荒い息を吐きながら、その巨腕をよりいっそう膨張させていった。
血管が浮き上がり、赤黒い光が脈打つように走る。
肌がひび割れ、そこから迸る魔力が周囲の石を焦がしていく。
「まだまだだァァァァァッッ!!」
獣の咆哮に似た声が響き渡ると同時に、グラドンの全身がさらに巨大化した。
筋肉が盛り上がり、骨の軋む音が地鳴りのように響く。
「ほらな、筋肉バカの典型だよ。
でかけりゃいいってもんじゃねぇんだよなぁ……」
悠は気怠そうに首を傾げながらも、拳を軽く握り直した。
その動きは静かだが、わずかな空気の揺れを伴い、砂煙が押し退けられる。
地上の広場では、再び足元が震えた。
祈っていた人々が顔を上げ、不安げに空を見上げる。
広場中央の火柱が揺れ、焚き火の火の粉が宙を舞う。
領主は唇を固く結び、胸の奥でそっと呟いた。
(勇者殿……どうか、この街と人々をお守りください)
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