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七将編(氷獄の魔女セレナ)
第16話 北の守護騎士に挑む勇者
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高台を離れ、三人は氷の城へと続く街道を進んでいた。
道はもはや“道”と呼べるものではない。石畳は完全に氷に覆われ、足を踏み出すたびに乾いた音を立てる。
空気が、重い。
昨夜の雪原よりも、さらに冷たい。
冷気が肌に触れるというより、骨の内側から締め付けてくるようだった。
「……正規ルート、ってやつか」
悠が小さく呟く。
「はい」
リオネルが前方を警戒しながら答える。
「この街道は、城へ至る唯一の道です。裏道や抜け道は……おそらくありません」
「つまり、ここを通らなきゃ話にならねぇ」
「そういうことです」
エルザは無言で二人の後ろを歩いていた。
氷の城が近づくにつれ、胸の奥がざわつく。
恐怖と、不安と、それでも前へ進まなければならないという覚悟。
やがて――
街道の先に、それは現れた。
巨大な氷の門。
両脇には氷像のような彫刻が並び、門そのものが城の一部であるかのように威圧感を放っている。
そして、その門の前に――
一人の騎士が立っていた。
動かない。
風に外套が揺れても、微動だにしない。
まるで、最初からそこに存在していた“景色”の一部のようだった。
「……いるな」
悠が呟く。
「ええ。間違いなく……」
リオネルの声がわずかに低くなる。
「守り手です」
三人が一定の距離まで近づいた、その時だった。
——ギィ……。
氷が軋むような音とともに、騎士が一歩、前へ出た。
それだけで、街道全体の温度がさらに下がる。
氷の鎧を纏ったその姿は、もはや人間というより“氷で作られた存在”に近かった。
兜の奥から、低く冷たい声が響く。
「……ここより先は、氷獄の魔女セレナの領域」
騎士はゆっくりと剣を抜いた。
大剣だった。刃も柄も、すべてが氷のように蒼く輝いている。
「資格なき者が踏み込むことは許されぬ」
「資格、ねぇ……」
悠は思わずため息をついた。
「そういうのが一番面倒なんだよな」
軽口のように言いながら、剣に手をかける。
騎士はその様子を見て、わずかに首を傾げた。
「名を名乗れ」
「悠だ。勇者って呼ばれてるらしい」
「……ならば、我は北の守護騎士。氷獄の門を預かる者」
声には感情がない。
だが、その奥には確固たる意志があった。
「この城は、選ばれし者のみが至る聖域」
「悪いが、観光に来たわけじゃねぇ」
悠は一歩前に出る。
エルザが反射的に声を上げかけるが、悠は手で制した。
「ここは俺の役目だ」
リオネルが小さく頷く。
「勇者様、相手は人型ですが……魔力反応は非常に高い。お気をつけください」
守護騎士は剣を構え、地面を踏み鳴らした。
——バキィン。
その瞬間、街道一帯の氷が一斉に反応する。
氷がせり上がり、地面が凍結し直される感覚が足元から伝わってきた。
「試す」
守護騎士が告げる。
「貴様が、ここを越えるに値するかどうかを」
「試験かよ……」
悠は肩を回した。
「なら、合格点出してやるしかねぇな」
次の瞬間、守護騎士が踏み込んだ。
——重い。
その一撃は、これまで戦ってきたどの敵よりも“重かった”。
氷の大剣が振り下ろされ、悠は剣で受け止める。
「ぐっ……!」
衝撃が腕に走り、凍傷の残る左腕が悲鳴を上げる。
悠は後退した。
一歩、二歩。
氷の上を滑りながら、体勢を立て直す。
「勇者様……!」
エルザが息を呑む。
「問題ねぇ……!」
悠は歯を食いしばり、剣を構え直した。
守護騎士は追撃してこない。
ただ、じっと悠を見据えている。
「力はある」
「そりゃどうも」
「だが、それだけでは足りぬ」
次の一撃は、横薙ぎだった。
悠は身を屈めて避けるが、氷の刃が空気を裂き、冷気が肌を切り裂く。
「……ちっ!」
悠は反撃に出る。
剣を振り抜き、守護騎士の鎧へ斬撃を叩き込む。
——ガキィン!
火花ではなく、氷片が飛び散った。
だが、致命傷には至らない。
「硬ぇな……!」
「覚悟を示せ」
守護騎士の声は変わらない。
「この地に踏み込む覚悟を」
「覚悟なら……!」
悠は一度、大きく息を吸った。
「とうに決めてる!」
踏み込み、再び剣を振るう。
守護騎士も応じる。
剣と剣がぶつかり合い、氷の街道に激しい音が響き渡る。
エルザは祈るように拳を握り、
リオネルは一瞬たりとも目を逸らさなかった。
二人の剣戟は、力と力のぶつかり合いではない。
意志と意志の衝突だった。
やがて、守護騎士が大剣を高く掲げる。
「ならば示せ」
「……?」
「貴様が、“勇者”である証を」
氷の剣が、青白く強く輝き始めた。
次の一撃は、これまでとは次元が違う。
悠はそれを直感で理解する。
「……上等だ」
悠は剣を構え、真正面から受けて立つ。
氷の城を背に、
勇者と守護騎士の戦いは――
いよいよ、本気の領域へと踏み込んでいった。
道はもはや“道”と呼べるものではない。石畳は完全に氷に覆われ、足を踏み出すたびに乾いた音を立てる。
空気が、重い。
昨夜の雪原よりも、さらに冷たい。
冷気が肌に触れるというより、骨の内側から締め付けてくるようだった。
「……正規ルート、ってやつか」
悠が小さく呟く。
「はい」
リオネルが前方を警戒しながら答える。
「この街道は、城へ至る唯一の道です。裏道や抜け道は……おそらくありません」
「つまり、ここを通らなきゃ話にならねぇ」
「そういうことです」
エルザは無言で二人の後ろを歩いていた。
氷の城が近づくにつれ、胸の奥がざわつく。
恐怖と、不安と、それでも前へ進まなければならないという覚悟。
やがて――
街道の先に、それは現れた。
巨大な氷の門。
両脇には氷像のような彫刻が並び、門そのものが城の一部であるかのように威圧感を放っている。
そして、その門の前に――
一人の騎士が立っていた。
動かない。
風に外套が揺れても、微動だにしない。
まるで、最初からそこに存在していた“景色”の一部のようだった。
「……いるな」
悠が呟く。
「ええ。間違いなく……」
リオネルの声がわずかに低くなる。
「守り手です」
三人が一定の距離まで近づいた、その時だった。
——ギィ……。
氷が軋むような音とともに、騎士が一歩、前へ出た。
それだけで、街道全体の温度がさらに下がる。
氷の鎧を纏ったその姿は、もはや人間というより“氷で作られた存在”に近かった。
兜の奥から、低く冷たい声が響く。
「……ここより先は、氷獄の魔女セレナの領域」
騎士はゆっくりと剣を抜いた。
大剣だった。刃も柄も、すべてが氷のように蒼く輝いている。
「資格なき者が踏み込むことは許されぬ」
「資格、ねぇ……」
悠は思わずため息をついた。
「そういうのが一番面倒なんだよな」
軽口のように言いながら、剣に手をかける。
騎士はその様子を見て、わずかに首を傾げた。
「名を名乗れ」
「悠だ。勇者って呼ばれてるらしい」
「……ならば、我は北の守護騎士。氷獄の門を預かる者」
声には感情がない。
だが、その奥には確固たる意志があった。
「この城は、選ばれし者のみが至る聖域」
「悪いが、観光に来たわけじゃねぇ」
悠は一歩前に出る。
エルザが反射的に声を上げかけるが、悠は手で制した。
「ここは俺の役目だ」
リオネルが小さく頷く。
「勇者様、相手は人型ですが……魔力反応は非常に高い。お気をつけください」
守護騎士は剣を構え、地面を踏み鳴らした。
——バキィン。
その瞬間、街道一帯の氷が一斉に反応する。
氷がせり上がり、地面が凍結し直される感覚が足元から伝わってきた。
「試す」
守護騎士が告げる。
「貴様が、ここを越えるに値するかどうかを」
「試験かよ……」
悠は肩を回した。
「なら、合格点出してやるしかねぇな」
次の瞬間、守護騎士が踏み込んだ。
——重い。
その一撃は、これまで戦ってきたどの敵よりも“重かった”。
氷の大剣が振り下ろされ、悠は剣で受け止める。
「ぐっ……!」
衝撃が腕に走り、凍傷の残る左腕が悲鳴を上げる。
悠は後退した。
一歩、二歩。
氷の上を滑りながら、体勢を立て直す。
「勇者様……!」
エルザが息を呑む。
「問題ねぇ……!」
悠は歯を食いしばり、剣を構え直した。
守護騎士は追撃してこない。
ただ、じっと悠を見据えている。
「力はある」
「そりゃどうも」
「だが、それだけでは足りぬ」
次の一撃は、横薙ぎだった。
悠は身を屈めて避けるが、氷の刃が空気を裂き、冷気が肌を切り裂く。
「……ちっ!」
悠は反撃に出る。
剣を振り抜き、守護騎士の鎧へ斬撃を叩き込む。
——ガキィン!
火花ではなく、氷片が飛び散った。
だが、致命傷には至らない。
「硬ぇな……!」
「覚悟を示せ」
守護騎士の声は変わらない。
「この地に踏み込む覚悟を」
「覚悟なら……!」
悠は一度、大きく息を吸った。
「とうに決めてる!」
踏み込み、再び剣を振るう。
守護騎士も応じる。
剣と剣がぶつかり合い、氷の街道に激しい音が響き渡る。
エルザは祈るように拳を握り、
リオネルは一瞬たりとも目を逸らさなかった。
二人の剣戟は、力と力のぶつかり合いではない。
意志と意志の衝突だった。
やがて、守護騎士が大剣を高く掲げる。
「ならば示せ」
「……?」
「貴様が、“勇者”である証を」
氷の剣が、青白く強く輝き始めた。
次の一撃は、これまでとは次元が違う。
悠はそれを直感で理解する。
「……上等だ」
悠は剣を構え、真正面から受けて立つ。
氷の城を背に、
勇者と守護騎士の戦いは――
いよいよ、本気の領域へと踏み込んでいった。
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