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第33章 帰路と新たな同行者、そして影
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朝、出立の時間がやってきた。
俺とレンは荷物をまとめ、宿屋の一階に降りると、いつものように女将が笑顔で迎えてくれた。
「本当に世話になりました。おかげで快適に過ごせました。」
「いいえ、こちらこそ。またいつでも来ておくれな。」
レンも深々と頭を下げる。
その仕草に女将は目を細めて、名残惜しそうに手を振ってくれた。
宿を後にし、城門近くの広場で辺境伯一行と合流する。
朝日が石畳を照らし、騎士たちの鎧がきらりと光った。
「二郎、来てくれたな。準備はいいか?」
「俺は暫く、閣下の命で、公都に滞在する事に
なった。クレア様の事頼むぞ」
「ああ、任せろ。」
ボルドーと言葉を交わしたそのとき――
視界の端に、見慣れぬ一団が映った。
「……ん? あれは……?」
鎧に特徴的な紋章を刻んだ近衛騎士団の姿。
そして、その中心に見覚えのある少女――公王の娘、リリエルがいた。
「……なぜここに?」
俺がボルドーに尋ねると、彼もわずかに眉を寄せ、リリエルに視線を向ける。
リリエルはスカートを摘まみ、軽く会釈して口を開いた。
「おはようございます、二郎さん。……私も、あなた達と一緒に辺境伯領へ向かいます。」
「は……? どういうことだ?」
近くにいた近衛騎士が一歩前に出て、低い声で告げる。
「公王陛下よりの勅命により、我々近衛騎士団および王女リリエル様は、辺境伯領へ向かいます。
先日現れた“ユニーク級”――変異型オルトロスが出現した理由を調査するためです。」
「……ユニーク級の調査……?」
「はい。陛下は、あの異様な個体がどこから現れたのか、非常に懸念されておられます。」
公王直々の命令――勅命だと聞き、クレアも頷いた。
「……事情は分かりました。二郎さんもよろしいですね?」
「ああ、もちろん構わない。」
こうして、俺たちは近衛騎士団と王女を加えた大所帯で、再び辺境伯領へ向かうこととなった。
◇
馬車の中。
レン、クレア、リリエルの三人は、道中にもかかわらず楽しそうな笑い声を響かせている。
「わぁ、やっぱり公都っていろんなものがあってすごかったよね!」
「そうね、レンちゃん。あの市場のパン屋さん、忘れられないわ。」
「私、次はあのお菓子をもっと食べたいなぁ!」
窓から差し込む風が彼女たちの髪を揺らす。
その光景を、俺は隣を走る騎士団の列からちらりと眺めた。
しばらくして、クレアが何かを思い出したように手を叩く。
「そういえば、あのトランプ、またやりたいな。」
「えっ、何それ?」とリリエルが首をかしげる。
レンが嬉しそうに答えた。
「二郎おにーちゃんが見せてくれた遊びだよ! カードを使って遊ぶの!」
「まあ、そんなのがあるのね……! わたしもやってみたい!」
その期待に満ちた瞳を見て、俺は苦笑しながら荷袋からカードを取り出した。
「……ほらよ。気をつけて遊べよ。」
「わぁ、ありがとう!」
「じゃあ、私が配るね!」
「ねぇねぇ、このジョーカーって何? あっ、取られた~!」
馬車の中から、楽しげな声と笑い声が絶え間なく響く。
道中の緊張を和らげるようなその音に、俺も思わず口元が緩んだ。
◇
しかし、そんな和やかな時間は長く続かなかった。
馬車の進む街道の先――
木々の陰から、奇妙な服装をした集団が現れた。
肩には奇怪な模様のマント、腰には粗末な剣や棍棒。
だが、その目は鋭く光り、こちらを獲物を見るように値踏みしている。
「……あれは……盗賊か?」
前を走る騎士が低く唸り、すぐに剣に手をかけた。
辺境伯の馬車を守るため、隊列がわずかに広がる。
俺も思わずリボルバーを構える
(……来やがったな……)
レンとクレアとリリエルの笑い声がぴたりと止む。
馬車の窓から彼女たちが不安そうに外を見つめる。
「……レン、クレア、リリエル、下がってろ。」
俺は静かにそう言い、前を睨みつけた。
街道を塞ぐように広がる盗賊たちの影が、じわじわとこちらへ近づいてくる。
俺とレンは荷物をまとめ、宿屋の一階に降りると、いつものように女将が笑顔で迎えてくれた。
「本当に世話になりました。おかげで快適に過ごせました。」
「いいえ、こちらこそ。またいつでも来ておくれな。」
レンも深々と頭を下げる。
その仕草に女将は目を細めて、名残惜しそうに手を振ってくれた。
宿を後にし、城門近くの広場で辺境伯一行と合流する。
朝日が石畳を照らし、騎士たちの鎧がきらりと光った。
「二郎、来てくれたな。準備はいいか?」
「俺は暫く、閣下の命で、公都に滞在する事に
なった。クレア様の事頼むぞ」
「ああ、任せろ。」
ボルドーと言葉を交わしたそのとき――
視界の端に、見慣れぬ一団が映った。
「……ん? あれは……?」
鎧に特徴的な紋章を刻んだ近衛騎士団の姿。
そして、その中心に見覚えのある少女――公王の娘、リリエルがいた。
「……なぜここに?」
俺がボルドーに尋ねると、彼もわずかに眉を寄せ、リリエルに視線を向ける。
リリエルはスカートを摘まみ、軽く会釈して口を開いた。
「おはようございます、二郎さん。……私も、あなた達と一緒に辺境伯領へ向かいます。」
「は……? どういうことだ?」
近くにいた近衛騎士が一歩前に出て、低い声で告げる。
「公王陛下よりの勅命により、我々近衛騎士団および王女リリエル様は、辺境伯領へ向かいます。
先日現れた“ユニーク級”――変異型オルトロスが出現した理由を調査するためです。」
「……ユニーク級の調査……?」
「はい。陛下は、あの異様な個体がどこから現れたのか、非常に懸念されておられます。」
公王直々の命令――勅命だと聞き、クレアも頷いた。
「……事情は分かりました。二郎さんもよろしいですね?」
「ああ、もちろん構わない。」
こうして、俺たちは近衛騎士団と王女を加えた大所帯で、再び辺境伯領へ向かうこととなった。
◇
馬車の中。
レン、クレア、リリエルの三人は、道中にもかかわらず楽しそうな笑い声を響かせている。
「わぁ、やっぱり公都っていろんなものがあってすごかったよね!」
「そうね、レンちゃん。あの市場のパン屋さん、忘れられないわ。」
「私、次はあのお菓子をもっと食べたいなぁ!」
窓から差し込む風が彼女たちの髪を揺らす。
その光景を、俺は隣を走る騎士団の列からちらりと眺めた。
しばらくして、クレアが何かを思い出したように手を叩く。
「そういえば、あのトランプ、またやりたいな。」
「えっ、何それ?」とリリエルが首をかしげる。
レンが嬉しそうに答えた。
「二郎おにーちゃんが見せてくれた遊びだよ! カードを使って遊ぶの!」
「まあ、そんなのがあるのね……! わたしもやってみたい!」
その期待に満ちた瞳を見て、俺は苦笑しながら荷袋からカードを取り出した。
「……ほらよ。気をつけて遊べよ。」
「わぁ、ありがとう!」
「じゃあ、私が配るね!」
「ねぇねぇ、このジョーカーって何? あっ、取られた~!」
馬車の中から、楽しげな声と笑い声が絶え間なく響く。
道中の緊張を和らげるようなその音に、俺も思わず口元が緩んだ。
◇
しかし、そんな和やかな時間は長く続かなかった。
馬車の進む街道の先――
木々の陰から、奇妙な服装をした集団が現れた。
肩には奇怪な模様のマント、腰には粗末な剣や棍棒。
だが、その目は鋭く光り、こちらを獲物を見るように値踏みしている。
「……あれは……盗賊か?」
前を走る騎士が低く唸り、すぐに剣に手をかけた。
辺境伯の馬車を守るため、隊列がわずかに広がる。
俺も思わずリボルバーを構える
(……来やがったな……)
レンとクレアとリリエルの笑い声がぴたりと止む。
馬車の窓から彼女たちが不安そうに外を見つめる。
「……レン、クレア、リリエル、下がってろ。」
俺は静かにそう言い、前を睨みつけた。
街道を塞ぐように広がる盗賊たちの影が、じわじわとこちらへ近づいてくる。
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