『総理になった男』

KAORUwithAI

文字の大きさ
119 / 179
第3部:旋風 - 国民支持のうねり

第119話 仲間を増やしたい

しおりを挟む
 三浦颯太の当選から数日が経った。
 だが健人の胸にある熱は、まだ冷めていない。むしろ、その日からずっと心の奥で燻り続けていた。

 「仲間が増えるって……こんなに心強いんだな」

 議員会館の自室で、健人はぽつりと呟いた。
 取材のメール、地方議員からの挨拶、大学の政治サークルからのメッセージ――窓口には毎日のように“繋がりたい”という声が届く。
 三浦の勝利が全国に広がり、無所属の健人の存在は“現実的な政治の選択肢”として浸透し始めていた。

 その一方で、胸の奥にひっそりと芽生えたものがある。
 ――もっと仲間が必要だ。
 ――一人では、この国は動かせない。

 それは野心ではなく、責任に近い感覚だった。

 机に積んだ資料を眺めていると、田島が缶コーヒーを二本持って部屋に入ってきた。

「健人、今日も問い合わせがすげぇぞ。地方の市議とか、若手の議員とか……お前の話聞きたいってよ」
「本当に……ありがたいな」
「仲間一人できるだけで、空気って変わるんだな。三浦、すげぇよ」

 田島が笑う。
 その笑顔に健人は、少しだけ肩の力が抜けた。

 一方、真田はパソコンの画面をにらみながら言った。

「全国の地方選のデータを見ているんですが……“坂本ライン”って言うんでしょうか。無所属でも勝てるという象徴として、名前が使われていますね」
「坂本ライン……なんだか恥ずかしいな」
「でも、それだけ期待されているということです」

 真田の言葉は淡々としていたが、その目には確かな手応えの光が宿っていた。

 健人は窓の外――国会議事堂の白い輪郭を眺めながら、ゆっくりと言った。

「ひとりじゃ変えられない……本当に実感してるんだ。だから、もっと仲間を増やしたいんだ」

 その言葉には迷いも震えもなかった。
 だが同時に、健人の脳裏にはこれまで経験してきた孤独が蘇る。

 ――党に属さない孤独。
 ――ロビー活動での無視。
 ――与党にも野党にも相手にされず、議会では“透明人間”の扱い。

 仲間を増やす難しさも、痛いほど知っていた。

 そんなときだった。スマホが震え、地元後援会長からの電話が入った。

『坂本さん、次の市議選でも応援してほしい候補者が出てきています』

 健人は言葉を詰まらせた。
 応援したい気持ちがある。理念に共鳴する人を支えたい気持ちもある。

 しかし同時に――利用される危険性。

 自分を利用するために近づいてくる人間もいる。
 政治の世界では、それは避けられない。

 電話を切ると、田島がすぐに言った。

「健人、お前に“寄ってくる人”と“乗っかろうとする人”は別だぞ。判断、マジで間違えるなよ」
「わかってる。でも……考えるよ」

 真田は資料を机に広げながら付け加える。

「仲間を選ぶ基準を明確にするべきです。理念です。政策です。人柄です。
 “坂本だから”じゃなく、“坂本のやろうとしている政治”に共鳴する人と組むべきです」

「そうだな……」

 健人は深く頷いた。
 
 理念に共鳴してくれる人を、一人ずつ増やせるなら。

 政治はきっと、変えられる。

「仲間を増やしたい。
 無所属だからこそ、他の誰にも縛られない形で……理念で繋がる仲間を」

 健人がそう言うと、真田はホワイトボードを引き寄せ、何かを書き始めた。

「まず、地方訪問を増やしましょう。
 オンラインでは限界があります。直接話し、直接熱を伝える。それが最も効果的です」

「いいね。やろう」

 田島が缶コーヒーを掲げた。

「っしゃ、じゃあいっそ“坂本チーム”って名前つけようぜ。
 ダサいけど、なんか強そうだろ」

「ダサいよ」と健人が笑い、真田まで小さく吹き出した。

 だが――その瞬間、三人の間にあった“薄い壁”のようなものが、静かに崩れた。
 既に、仲間はここにいる。

 健人は手帳を取り出し、大きく文字を書く。

――仲間を増やす。それが日本を変える一歩だ。

 どれほど遠回りでもいい。
 手探りでもいい。
 一人ひとりの理念が繋がる政治なら、必ず強くなる。

 その確信だけは、揺らがなかった。



“ひとりの声では届かなくても、仲間の声が重なれば、国は動く。
理念で繋がる仲間こそ、未来を変える力だ”
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

処理中です...