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第4部:政権奪取 - 総理就任
第161話 総裁選出馬表明
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与党入りから、もう一か月以上が経っていた。
最初の数日は「異例の新人加入」として騒がれていたが、その熱はすぐ別の形へ変わっていった。
――“次の総裁候補は誰だ?”
――“世論は圧倒的に坂本健人を求めている”
そんな言葉が、党内の廊下でも、メディアの報道でも、SNSでも飛び交うようになっていた。
政治家になってわずか一年。
与党入りして一か月。
その男が、今や日本の行方を左右する“総裁候補”として扱われている。
健人自身は、まだその実感を完全には掴めていなかったが、周囲は違った。
若手議員のグループは急速に膨らみ、派閥を超えて“坂本派”に近い形が生まれ始めていた。
党本部へ向かうたび、挨拶もしていない議員から「期待してるぞ」「頼むから立ってくれ」と声をかけられる。
明らかに、風が変わっていた。
そんなある日の午後。
城戸幹事長から、一本の短い連絡が
届く。
《至急。本部へ来られたし》
ただそれだけの言葉だったが、健人はすぐに理解した。
“いよいよ来たのだ”と。
議員会館から車で五分。
党本部の重厚な建物の前に降り立つと、黒いスーツ姿の職員が深く頭を下げて案内に立った。
「お待ちしておりました。城戸幹事長がすでに応接室に」
応接室の扉が静かに開いた。
「来たか、坂本君」
城戸幹事長が書類の束に目を落としながら言う。その声には焦りも圧力もなく、ただ静かな確信だけがあった。
「座ってくれ。話は短い」
健人が席に着くと、城戸は机上の一枚の紙を指で叩いた。
――総裁選のスケジュール案だ。
「君の名前が、すでに国民の支持率トップだ。
党内の若手、中堅議員も半数近くが“坂本支持”に傾いている。
つまり――今なら勝てる」
健人は息を呑んだ。
「……総裁選に、出ろと言うことですか?」
城戸はゆっくりとうなずく。
「ここまで来たら、もう避けられんよ。
党も、国も、君を必要としている。
そして――出馬するなら、今日が最適なタイミングだ」
“今日”。
その言葉に、健人の胸が鳴った。
「この国の針路を変えられるのは、君しかいない。
私はそう判断している」
城戸の声は、自分の利益のためではなく、国を俯瞰して語る“政治家”の声だった。
そこに、あの時のような派閥の思惑は感じなかった。
「勝ちたいのか?」
突然の問い。
健人は少し考えてから、首を横に振った。
「勝ちたいわけじゃありません。
……必要だから、やるだけです」
城戸は満足そうに目を細めた。
「その言葉を聞きたかった。実に坂本君らしい」
そして、静かに立ち上がる。
「よし。では――記者会見だ」
◆
党本部の控室は、異様な緊張感に包まれていた。
真田が原稿を整え、田島が狭い室内をそわそわと歩き回っている。
「坂本さん、深呼吸を。今日からすべてが変わります」
真田が淡々と告げる。
普段冷静な男の表情にも、わずかな熱が宿っていた。
田島は健人の肩を軽く叩く。
「おい健人。お前……本当にここまで来ちまったな。
でも大丈夫だ。お前はやれる。俺は信じてる」
健人は小さく笑い、二人にうなずいた。
扉の向こうから、記者たちのざわめきが聞こえる。
フラッシュの音が、準備段階からすでに鳴っていた。
(逃げたくない。逃げてもいけない)
心の奥で、静かな炎が燃えた。
◆
扉が開いた瞬間、眩い光が健人を照らした。
テレビ局のカメラ、新聞社のカメラ、ネットメディアの撮影スタッフが一斉にレンズを向ける。
ざわめきが止む。
健人が壇上に上がり、マイクの前に立つ。
息を吸い、吐く。
たったそれだけのことで、これほど多くの視線が自分の動きを追うのだと実感する。
「……坂本健人です」
声が静かに響く。
「私は――国民の未来のために」
少し言葉を置き、
次の瞬間、真っ直ぐに顔を上げた。
「国民革新党総裁選に、出馬します!」
記者席が揺れた。
フラッシュが再び爆ぜ、記者たちが一斉に身を乗り出す。
質問が飛び交い、それを受け止めながら健人は思った。
――この瞬間から、本当の戦いが始まるのだ。
壇上の後ろでは、真田が小さく頷き、田島が涙ぐんだ目で親指を立てていた。
そして健人は、改めて心に誓った。
この道の先にあるのは、権力ではない。
この国の未来だ。
”総理になりたいわけじゃない。
この国を前に進めるために、俺が立つしかなかった。
覚悟とは、必要だから踏み出す一歩だ“
最初の数日は「異例の新人加入」として騒がれていたが、その熱はすぐ別の形へ変わっていった。
――“次の総裁候補は誰だ?”
――“世論は圧倒的に坂本健人を求めている”
そんな言葉が、党内の廊下でも、メディアの報道でも、SNSでも飛び交うようになっていた。
政治家になってわずか一年。
与党入りして一か月。
その男が、今や日本の行方を左右する“総裁候補”として扱われている。
健人自身は、まだその実感を完全には掴めていなかったが、周囲は違った。
若手議員のグループは急速に膨らみ、派閥を超えて“坂本派”に近い形が生まれ始めていた。
党本部へ向かうたび、挨拶もしていない議員から「期待してるぞ」「頼むから立ってくれ」と声をかけられる。
明らかに、風が変わっていた。
そんなある日の午後。
城戸幹事長から、一本の短い連絡が
届く。
《至急。本部へ来られたし》
ただそれだけの言葉だったが、健人はすぐに理解した。
“いよいよ来たのだ”と。
議員会館から車で五分。
党本部の重厚な建物の前に降り立つと、黒いスーツ姿の職員が深く頭を下げて案内に立った。
「お待ちしておりました。城戸幹事長がすでに応接室に」
応接室の扉が静かに開いた。
「来たか、坂本君」
城戸幹事長が書類の束に目を落としながら言う。その声には焦りも圧力もなく、ただ静かな確信だけがあった。
「座ってくれ。話は短い」
健人が席に着くと、城戸は机上の一枚の紙を指で叩いた。
――総裁選のスケジュール案だ。
「君の名前が、すでに国民の支持率トップだ。
党内の若手、中堅議員も半数近くが“坂本支持”に傾いている。
つまり――今なら勝てる」
健人は息を呑んだ。
「……総裁選に、出ろと言うことですか?」
城戸はゆっくりとうなずく。
「ここまで来たら、もう避けられんよ。
党も、国も、君を必要としている。
そして――出馬するなら、今日が最適なタイミングだ」
“今日”。
その言葉に、健人の胸が鳴った。
「この国の針路を変えられるのは、君しかいない。
私はそう判断している」
城戸の声は、自分の利益のためではなく、国を俯瞰して語る“政治家”の声だった。
そこに、あの時のような派閥の思惑は感じなかった。
「勝ちたいのか?」
突然の問い。
健人は少し考えてから、首を横に振った。
「勝ちたいわけじゃありません。
……必要だから、やるだけです」
城戸は満足そうに目を細めた。
「その言葉を聞きたかった。実に坂本君らしい」
そして、静かに立ち上がる。
「よし。では――記者会見だ」
◆
党本部の控室は、異様な緊張感に包まれていた。
真田が原稿を整え、田島が狭い室内をそわそわと歩き回っている。
「坂本さん、深呼吸を。今日からすべてが変わります」
真田が淡々と告げる。
普段冷静な男の表情にも、わずかな熱が宿っていた。
田島は健人の肩を軽く叩く。
「おい健人。お前……本当にここまで来ちまったな。
でも大丈夫だ。お前はやれる。俺は信じてる」
健人は小さく笑い、二人にうなずいた。
扉の向こうから、記者たちのざわめきが聞こえる。
フラッシュの音が、準備段階からすでに鳴っていた。
(逃げたくない。逃げてもいけない)
心の奥で、静かな炎が燃えた。
◆
扉が開いた瞬間、眩い光が健人を照らした。
テレビ局のカメラ、新聞社のカメラ、ネットメディアの撮影スタッフが一斉にレンズを向ける。
ざわめきが止む。
健人が壇上に上がり、マイクの前に立つ。
息を吸い、吐く。
たったそれだけのことで、これほど多くの視線が自分の動きを追うのだと実感する。
「……坂本健人です」
声が静かに響く。
「私は――国民の未来のために」
少し言葉を置き、
次の瞬間、真っ直ぐに顔を上げた。
「国民革新党総裁選に、出馬します!」
記者席が揺れた。
フラッシュが再び爆ぜ、記者たちが一斉に身を乗り出す。
質問が飛び交い、それを受け止めながら健人は思った。
――この瞬間から、本当の戦いが始まるのだ。
壇上の後ろでは、真田が小さく頷き、田島が涙ぐんだ目で親指を立てていた。
そして健人は、改めて心に誓った。
この道の先にあるのは、権力ではない。
この国の未来だ。
”総理になりたいわけじゃない。
この国を前に進めるために、俺が立つしかなかった。
覚悟とは、必要だから踏み出す一歩だ“
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