『総理になった男』

KAORUwithAI

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第4部:政権奪取 - 総理就任

第194話 議員定数削減案、準備開始

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数日後、官邸の閣議室には、いつもとは違う緊張が漂っていた。
長い楕円形のテーブルを囲む閣僚たちの表情は硬く、誰一人として雑談を交わす者はいない。

壁の時計の秒針だけが、やけに大きな音を立てて進んでいる。

健人は、総理席に静かに座っていた。
視線は資料に落とされているが、その表情はどこか遠くを見ているようでもあった。

「それでは、閣議を始めます」

官房長官・城之内の声で、室内の空気が一気に引き締まる。

最初の議題が読み上げられた瞬間、閣議室の空気はさらに張り詰めた。

――子ども政策を社会保障枠から国家安全保障政策へ移行する法案。

この国の制度構造そのものを書き換える議題だった。

健人は静かに立ち上がった。

「これは福祉政策ではありません」

落ち着いた声だったが、その一言には強い意思が込められていた。

「国家存続政策です」

閣僚たちの視線が一斉に集まる。

「人口が減る国は、国として弱体化する。
経済も、外交も、防衛も、すべての土台は“人”です」

健人は資料を示しながら続けた。

「子ども政策を“余裕がある時の支援”に位置づけてきたこと自体が間違いだった。
これは社会保障ではない。国家戦略です」

最初に口を開いたのは財務大臣・高瀬健吾だった。

「財源はどうする?」
「増税か? 国債か?」

その問いは鋭く、現実的だった。

健人は一瞬だけ目を閉じ、それから静かに答えた。

「増税ありきではありません」
「構造転換です」

「既存予算の再編成、無駄の削減、優先順位の再構築。
“新しく取る”前に、“今あるものの使い方”を変える」

「国家予算の思想を変えるんです」

高瀬は黙って健人を見つめていた。

次に口を開いたのは文部科学大臣・新海さつきだった。

「子どもへの支援は……」
「本当に、今まで以上に増やせるのか?」

その問いには、不安と期待が混じっていた。

健人ははっきりと答えた。

「量の問題じゃない」
「優先順位の問題です」

「“余った予算で支援する”時代を終わらせる」
「“国家の責任として守る”に変える」

「削られる対象から、守られる対象にする」

新海は小さく息を吸い、深く頷いた。

防衛大臣・榊原大吾が腕を組んだまま問いかける。

「国家安全保障政策にするなら、防衛費とは完全に切り離すのか?」

健人は即答した。

「完全に切り離します」

「国防費とは別枠です」
「国を守ることと、国を存続させることは別の概念だ」

さらに榊原は続ける。

「管轄はどこだ?」
「どの省庁が責任を持つ?」

健人は一呼吸置いて答えた。

「内閣直轄組織にします」

「省庁縦割りにはしない」
「横断型の国家戦略組織として再編します」

閣議室に静かなざわめきが走った。

質問は続いた。
制度設計、予算構造、法体系、国会対応、国民説明。

議論は長時間に及んだ。

そして最後に、健人は静かに言った。

「もしこの中に、反対する方がいるなら──」

空気が張り詰める。

「その方を罷免して、僕が総理兼任でこの政策を担っても構いません」

一瞬、言葉の意味が理解されなかった。

だが次の言葉で、全員が理解した。

「それくらいの覚悟でやります」

健人の声は低く、しかし迷いはなかった。

「この国は、もう悠長に構えていられるほど時間は残っていない」

子ども政策を社会保障枠から国家安全保障政策へ移行する法案の決議が取られ
全員賛成で決まった。

沈黙が落ちた。

誰も言葉を発しなかった。

その沈黙の中で、健人は次の資料を開いた。

「次の議題に移ります」

一瞬、閣僚たちは資料名を見て息を呑んだ。

――議員定数削減案。

健人は言った。

「政治の構造が重すぎる」
「人が多すぎる」
「調整が多すぎる」
「責任が分散しすぎている」

「構造そのものを軽くしなければ、改革は持続しません」

「政策を変えても、政治の身体が重ければ、動かない」

「だから、政治の構造から変えます」

誰かが息を呑む音が聞こえた。

それは改革だった。
同時に、既得権益への宣戦布告でもあった。

健人は静かに言い切った。

「これは象徴ではありません」
「実務です」
「構造改革です」

閣議室に、重く、深い沈黙が広がった。

それは反対の沈黙ではなく、理解と衝撃と覚悟が混じった沈黙だった。

国家改造が、正式に始まった瞬間だった。



”この国に残された時間は、
もう“調整”のための時間じゃない。

議論のための政治じゃない。

決断のための政治だ。

守るべきは制度じゃない。
守るべきは未来だ。

それが総理の仕事なら、
俺は迷わない“
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