74 / 184
日常編
第74話「姫様のポイントカードデビュー」
しおりを挟む
その夜、ミッドナイトマートの自動ドアが静かに開いた。
「こんばんは」レンがいつものように挨拶すると、そこに現れたのは豪奢なマントを羽織った国王と、その隣に立つ、金糸の髪をゆるくまとめた少女――年の頃は十六、七ほど。
「おお、レン殿!」国王が笑顔で片手を上げる。「先日は駄菓子をたくさん買わせてもらったが……この娘がな、私ばかり楽しんでずるいとせがむので連れてきたのだ」
「お父様だけ楽しい思いなんて、不公平ですわ」姫は頬をふくらませながらレンとニナに微笑みかけた。
「いらっしゃいませ。ゆっくりご覧ください」
そう言うと、姫はまるで小鳥が籠から飛び立つように、軽やかな足取りで店内を回り始めた。
まずは化粧品コーナーへ。並ぶコンパクトや口紅を一つずつ手に取り、光にかざしては「まぁ、こんな色味、宮廷の化粧部屋にもありませんわ」と感嘆の声を上げる。
続いてシャンプーの棚では、ボトルの蓋を開けて香りを確かめ、「薔薇の香り……まるで庭園の中にいるみたい」とうっとりした表情を浮かべた。
そしてお菓子コーナーでは、和菓子と洋菓子の棚を行き来しながら、国王に「こちらとこちら、どちらも欲しいです」と迷いなく両方カゴに入れていく。国王は苦笑しつつも何も言わない。どうやら完全に娘の買い物モードだ。
やがて会計カウンターへ向かうと、レンが「もしよければ、ミッドナイトポイントカード――ナイポをお作りになりますか?」と提案した。
「ポイントカード?」姫は小首をかしげる。
「お買い物のたびにポイントがたまって、景品や割引に使えます」
説明を聞いた姫はぱっと顔を輝かせ、「ぜひ作りますわ!」と即答。ニナが手際よく登録を進めると、姫は自分の名前が書かれたカードを嬉しそうに眺めていた。
「これでまた来る楽しみができましたわ」
「姫がそう言うなら、次回は護衛も増やしてゆっくり来るとしよう」国王も満足げに頷く。
袋詰めを終えたレンとニナが、声を揃えて頭を下げた。
「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
姫は笑顔で「必ずまた来ますわ」と言い残し、国王とともに夜の街へ消えていった。
ドアが閉まった後、ニナが小声で「姫様って、本当に目がきらきらしてますね」と呟くと、レンは「うん、ああいう人にこの店を気に入ってもらえるのは嬉しいよ」と微笑んだ。
「こんばんは」レンがいつものように挨拶すると、そこに現れたのは豪奢なマントを羽織った国王と、その隣に立つ、金糸の髪をゆるくまとめた少女――年の頃は十六、七ほど。
「おお、レン殿!」国王が笑顔で片手を上げる。「先日は駄菓子をたくさん買わせてもらったが……この娘がな、私ばかり楽しんでずるいとせがむので連れてきたのだ」
「お父様だけ楽しい思いなんて、不公平ですわ」姫は頬をふくらませながらレンとニナに微笑みかけた。
「いらっしゃいませ。ゆっくりご覧ください」
そう言うと、姫はまるで小鳥が籠から飛び立つように、軽やかな足取りで店内を回り始めた。
まずは化粧品コーナーへ。並ぶコンパクトや口紅を一つずつ手に取り、光にかざしては「まぁ、こんな色味、宮廷の化粧部屋にもありませんわ」と感嘆の声を上げる。
続いてシャンプーの棚では、ボトルの蓋を開けて香りを確かめ、「薔薇の香り……まるで庭園の中にいるみたい」とうっとりした表情を浮かべた。
そしてお菓子コーナーでは、和菓子と洋菓子の棚を行き来しながら、国王に「こちらとこちら、どちらも欲しいです」と迷いなく両方カゴに入れていく。国王は苦笑しつつも何も言わない。どうやら完全に娘の買い物モードだ。
やがて会計カウンターへ向かうと、レンが「もしよければ、ミッドナイトポイントカード――ナイポをお作りになりますか?」と提案した。
「ポイントカード?」姫は小首をかしげる。
「お買い物のたびにポイントがたまって、景品や割引に使えます」
説明を聞いた姫はぱっと顔を輝かせ、「ぜひ作りますわ!」と即答。ニナが手際よく登録を進めると、姫は自分の名前が書かれたカードを嬉しそうに眺めていた。
「これでまた来る楽しみができましたわ」
「姫がそう言うなら、次回は護衛も増やしてゆっくり来るとしよう」国王も満足げに頷く。
袋詰めを終えたレンとニナが、声を揃えて頭を下げた。
「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
姫は笑顔で「必ずまた来ますわ」と言い残し、国王とともに夜の街へ消えていった。
ドアが閉まった後、ニナが小声で「姫様って、本当に目がきらきらしてますね」と呟くと、レンは「うん、ああいう人にこの店を気に入ってもらえるのは嬉しいよ」と微笑んだ。
24
あなたにおすすめの小説
『召喚ニートの異世界草原記』
KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。
ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。
剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。
――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。
面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。
そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。
「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー
コーヒー微糖派
ファンタジー
勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"
その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。
そんなところに現れた一人の中年男性。
記憶もなく、魔力もゼロ。
自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。
記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。
その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。
◆◆◆
元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。
小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。
※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。
表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる