『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI

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日常編

第74話「姫様のポイントカードデビュー」

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その夜、ミッドナイトマートの自動ドアが静かに開いた。
 「こんばんは」レンがいつものように挨拶すると、そこに現れたのは豪奢なマントを羽織った国王と、その隣に立つ、金糸の髪をゆるくまとめた少女――年の頃は十六、七ほど。

 「おお、レン殿!」国王が笑顔で片手を上げる。「先日は駄菓子をたくさん買わせてもらったが……この娘がな、私ばかり楽しんでずるいとせがむので連れてきたのだ」
 「お父様だけ楽しい思いなんて、不公平ですわ」姫は頬をふくらませながらレンとニナに微笑みかけた。

 「いらっしゃいませ。ゆっくりご覧ください」
 そう言うと、姫はまるで小鳥が籠から飛び立つように、軽やかな足取りで店内を回り始めた。

 まずは化粧品コーナーへ。並ぶコンパクトや口紅を一つずつ手に取り、光にかざしては「まぁ、こんな色味、宮廷の化粧部屋にもありませんわ」と感嘆の声を上げる。
 続いてシャンプーの棚では、ボトルの蓋を開けて香りを確かめ、「薔薇の香り……まるで庭園の中にいるみたい」とうっとりした表情を浮かべた。

 そしてお菓子コーナーでは、和菓子と洋菓子の棚を行き来しながら、国王に「こちらとこちら、どちらも欲しいです」と迷いなく両方カゴに入れていく。国王は苦笑しつつも何も言わない。どうやら完全に娘の買い物モードだ。

 やがて会計カウンターへ向かうと、レンが「もしよければ、ミッドナイトポイントカード――ナイポをお作りになりますか?」と提案した。
 「ポイントカード?」姫は小首をかしげる。
 「お買い物のたびにポイントがたまって、景品や割引に使えます」
 説明を聞いた姫はぱっと顔を輝かせ、「ぜひ作りますわ!」と即答。ニナが手際よく登録を進めると、姫は自分の名前が書かれたカードを嬉しそうに眺めていた。

 「これでまた来る楽しみができましたわ」
 「姫がそう言うなら、次回は護衛も増やしてゆっくり来るとしよう」国王も満足げに頷く。

 袋詰めを終えたレンとニナが、声を揃えて頭を下げた。
 「ありがとうございました。またお越し下さいませ」

 姫は笑顔で「必ずまた来ますわ」と言い残し、国王とともに夜の街へ消えていった。

 ドアが閉まった後、ニナが小声で「姫様って、本当に目がきらきらしてますね」と呟くと、レンは「うん、ああいう人にこの店を気に入ってもらえるのは嬉しいよ」と微笑んだ。
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