『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI

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異世界の異変

第5話「春の街に忍び寄る影」

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深夜0時を過ぎると、ミッドナイトマートのBGMが静かに途切れる。
 外の石畳はまだ春の夜気が冷たく、街灯の下には淡く霞がかかっている。
 店内には湯気を立てるおでん鍋と、パンコーナーから漂う甘い香りが混じっていた。

 カラン、と扉の鈴が鳴る。
 入ってきたのは、革靴に長衣をまとった中年の男性。腰には帳簿らしき革のバッグ――旅慣れた商人らしい。
「いらっしゃいませ」
 レンが声を掛けると、商人は軽く会釈し、店内を歩き出した。

 棚の奥から水のボトルを取り、次に干し肉のパック、さらに焼き菓子を数袋かごに入れていく。
 その途中、商人は周囲をちらと見回し、レジへ向かう通路で声を潜めた。

「……ここのところ、別の街で魔物が出たそうですよ」
 レンはスキャンを続けながら、少しだけ目を上げる。
「そうなんですね」
 短く返したが、その胸の奥では小さな波紋が広がっていた。

 商人はさらに言葉を継ぐ。
「噂では、街道沿いの集落がいくつも被害にあっているとか。私は昼間に通ったから無事でしたが……夜は避けた方がいいでしょうな」
 レジ横のランプが、わずかに揺れるように見えた。

 会計を済ませた商人は「助かりました」と礼を言い、荷物を抱えて店を後にする。
「ありがとうございました。またお越し下さいませ。」
 扉が閉まり、鈴の音が余韻を残して消えた。

 扉が閉まって間もなく、バックヤードからニナが戻ってきた。
「レンさん、今のお客様、何の話してたんですか?」
 棚に補充用の商品を置きながら、首をかしげる。

 レンは一瞬迷い、笑みを作って答えた。
「……ちょっと、遠くの街で魔物が出たって話」
「えっ……」ニナの表情が少し強張る。
「でも、ここからはだいぶ遠いらしいし、大丈夫だよ」

 そう言いながらも、レンの胸の奥には、商人の低い声と街道の情景が残っていた。
 何事もなければいい――そう願いつつ、レンはまたレジのディスプレイに視線を落とした。
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