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忍び寄る影編
第55話「冒険者の撤退」
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深夜。
カラン――鈴の音とともに、革鎧を着た二人組の冒険者が店へ飛び込んできた。
その姿は、狩りの成果を誇る冒険者のそれではなく、逃げ帰ってきた者のように疲れ果てていた。泥と埃にまみれた靴、肩からずり落ちそうな荷物袋。彼らの表情には焦燥が色濃く刻まれていた。
まっすぐに保存食の棚へ向かい、干し肉や乾パン、瓶詰めの水袋を手当たり次第に籠へ詰めていく。
「こっちも全部持って行け」
「水は多めにしろ。もう補給は望めないかもしれん」
互いに確認する声は低く早口で、切羽詰まっていた。
レジに並んだ瞬間、そのうちの一人が小声で漏らした。
「……もう無理だ。依頼は取りやめだ」
もう一人が、肩をすくめるように応じる。
「仕方ない。誰が相手でも、命あってのものだ」
その言葉は抑えきれず、空気を震わせるように響いた。
ニナは袋詰めをしながら、思わず耳をそばだててしまう。手の動きがわずかに鈍り、目だけでレンを見やった。
レンは遠くからそのやり取りを聞きながらも、いつもの笑顔を崩さずレジを打っていた。しかし視線は一瞬だけ二人に向かい、心の奥では重いものがのしかかっていた。
会計を終えた冒険者たちは、深く息を吐き、短く「助かった」とだけ告げる。
袋を受け取り、足早に店を出る背中は、戦いに挑む者ではなく、何かを振り切ろうとする者のようだった。
カラン――鈴の音が夜に溶ける。
残された店内は一気に静まり返り、彼らの言葉「依頼は取りやめ」が空気の中に重く残っていた。
レンはレジ台に手を置き、ほんの少しだけ視線を落とした。
「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
その声は確かに店内に響いたが、空虚さを帯びて広がっていった。
ニナは小さく唇を噛み、袋詰めの台をじっと見つめていた。
冒険者たちが依頼を放棄する――それは、この町を取り巻く情勢が、想像以上に深刻であることを示していた。
カラン――鈴の音とともに、革鎧を着た二人組の冒険者が店へ飛び込んできた。
その姿は、狩りの成果を誇る冒険者のそれではなく、逃げ帰ってきた者のように疲れ果てていた。泥と埃にまみれた靴、肩からずり落ちそうな荷物袋。彼らの表情には焦燥が色濃く刻まれていた。
まっすぐに保存食の棚へ向かい、干し肉や乾パン、瓶詰めの水袋を手当たり次第に籠へ詰めていく。
「こっちも全部持って行け」
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互いに確認する声は低く早口で、切羽詰まっていた。
レジに並んだ瞬間、そのうちの一人が小声で漏らした。
「……もう無理だ。依頼は取りやめだ」
もう一人が、肩をすくめるように応じる。
「仕方ない。誰が相手でも、命あってのものだ」
その言葉は抑えきれず、空気を震わせるように響いた。
ニナは袋詰めをしながら、思わず耳をそばだててしまう。手の動きがわずかに鈍り、目だけでレンを見やった。
レンは遠くからそのやり取りを聞きながらも、いつもの笑顔を崩さずレジを打っていた。しかし視線は一瞬だけ二人に向かい、心の奥では重いものがのしかかっていた。
会計を終えた冒険者たちは、深く息を吐き、短く「助かった」とだけ告げる。
袋を受け取り、足早に店を出る背中は、戦いに挑む者ではなく、何かを振り切ろうとする者のようだった。
カラン――鈴の音が夜に溶ける。
残された店内は一気に静まり返り、彼らの言葉「依頼は取りやめ」が空気の中に重く残っていた。
レンはレジ台に手を置き、ほんの少しだけ視線を落とした。
「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
その声は確かに店内に響いたが、空虚さを帯びて広がっていった。
ニナは小さく唇を噛み、袋詰めの台をじっと見つめていた。
冒険者たちが依頼を放棄する――それは、この町を取り巻く情勢が、想像以上に深刻であることを示していた。
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