『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI

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敵の正体編

第72話「領主の決断」

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深夜――。
カラン、と鈴が鳴る。
入ってきたのは見慣れぬ役人風の男だった。深い紺色の外套は土埃にまみれ、それでも胸に輝く領都の紋章付きの徽章が彼の立場を物語っていた。背後には無言で控える兵士が二人。甲冑の擦れる音が、いつもの客とは異なる緊張感を漂わせる。

役人は棚を回り、乾パンや水袋を籠に入れるだけでなく、羊皮紙やインク壺まで手に取った。兵士たちは周囲を警戒するように立ち、他の客に聞かれないよう目配せをしている。その様子は、ただの買い出しとは違っていた。

やがてレジに来た役人は、商品を並べながら吐き出すように言葉を零す。
「……領主様の決断で、討伐隊が編成されることになった。明朝には正式に布告されるだろう」

ニナの手が止まりかけ、紙袋を落としそうになる。彼女は慌てて取り繕うが、瞳には驚きと不安がはっきりと浮かんでいた。
「討伐隊……」小さな声が漏れる。

役人は視線を上げ、レンをまっすぐに見据えた。その目は「これ以上は聞くな」「ここで聞いたことは他に漏らすな」と無言で語っていた。兵士の一人も軽く手を剣の柄にかけ、言葉にせず威圧を加える。

レンはそれを受け止め、深く頷いて笑顔を崩さずにレジを打ち続ける。
「ありがとうございました。またお越し下さいませ」

役人は短く礼を返し、兵士たちと共に商品を抱えて夜の闇へ消えていった。カラン――鈴の音が遠ざかり、店内に再び機械音だけが残る。

ニナはしばらく無言のまま、手にしたレジ袋を見つめていた。やがて小さな声で呟く。
「……ついに、領主様が動いたんですね。これで本当に……戦いになるんでしょうか」

レンは答えず、カウンターに両手を置いたまま視線を落とした。
(相手は“人”でも“魔物”でもない。討伐隊が通用するのか……)

レジの機械音が、妙に大きく響いていた。
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