『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI

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決戦編

第87話「救護所への手伝い」

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 深夜のミッドナイトマートは、いつもよりも空気が重たかった。
 窓の外には兵士の姿がちらほらと見え、遠くからは担架を担いで走る音がかすかに聞こえる。戦場はまだ町の外にあるはずなのに、その影は確実に中へと入り込んでいた。

 カラン――。
 扉の鈴が鳴り、鎧の隙間から血を滲ませた兵士が入ってくる。顔は疲れ切り、目は虚ろ。彼は水と干し肉を無言でかごに放り込み、レジに置いた。
 「……仲間がまだ向こうに残ってるんだ」
 それだけ言って、彼は商品を受け取ると駆け出すように去って行った。

 その背を見送ったレンは、胸の奥に重いものを抱えたままレジに手を置いた。
 (この店は、ただ物を売る場所でしかない……はずなのに)

 その時、店の奥から段ボール箱を抱えたニナが現れた。
 箱には包帯や消毒液、鎮痛薬、缶詰が詰め込まれている。

 「レンさん」
 彼女は真剣な目で言った。
 「わたし、救護所にこれを届けてきます」

 レンは一瞬呆気にとられ、それから低く問い返した。
 「……おい、それ、ぜんぶ売り物だぞ。代金はどうするんだ?」

 ニナは驚いた顔をしたが、すぐに強い眼差しに戻った。
 「分かってます。わたしが払います」
 迷いのない声だった。

 レンは思わずため息を吐き、頭をかいた。
 「ったく……お前ひとりに背負わせる気はない。俺も少し出す。……オーナーには、どうせ俺が言い訳することになるんだ」
 ニナの瞳が潤み、頬をわずかに緩めた。
 「ありがとうございます……」

 二人で代金を折半し、レンはレジに金を打ち込む。紙のレシートがカサリと吐き出される。レンはそれを引き抜き、ニナへ手渡した。
 「ほら、これで正式に“買った”ことになる。オーナーも文句は言えない」
 ニナはそれを両手で受け取り、深々と頭を下げた。

 裏口へ二人で箱を運ぶ。扉を開けると、冷たい夜気が押し寄せ、遠くから兵士の掛け声や負傷者のうめき声が届く。街路には松明の灯りが揺れ、兵士が担架を運んでいる姿が見えた。

 近くにいた兵士が駆け寄り、息を切らしながら荷を受け取った。
 「助かります……本当に助かります」
 その言葉は重く、切実だった。

 裏口を閉めたあと、ニナが小さく呟く。
 「少しだけでも……役に立てましたかね」
 レンはしばらく黙り込み、やがて微笑んだ。
 「間違いなく役に立ったさ。……ありがとう、ニナ」

 正面の扉が再びカラン――と鳴り、新たな客が入ってくる。
 レンはレジへ戻り、深く息を吸ってから、いつもの言葉を響かせた。

 「ありがとうございました。またお越し下さいませ」

 それは客を迎える言葉であると同時に、自分たちの日常を守るための誓いのようにも聞こえた。
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