『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI

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日常編

第19話「願いをひとつ、笹の下で」

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深夜のミッドナイトマート。
 入口近くには、季節を感じさせる飾りがひとつ——青々とした小さな笹が、竹籠に立てられていた。
 短冊が数枚、色とりどりに揺れている。

 「ふう、飾りつけ、間に合ったな……」

 レンは脚立を降り、笹の枝先を整えながらレジへ戻る。
 今夜は七夕。異世界の客たちにも、ほんの少しだけ季節を届けたかった。

 カラン。

 扉が開き、ひとりの客が入ってくる。
 見るからに戦士タイプの中年男性。肩幅広く、風雨にさらされたマントの下から、傷の癒えかけた腕が覗く。

 「……これは、なんだ?」

 笹の前で足を止め、不思議そうに枝を見つめる。

 「“笹”っていって、日本の行事なんですよ。短冊に願い事を書いて飾るんです。叶うかどうかは……その人次第、ですけど」

 「願い……か。戦の道には無縁と思っていたが……」

 レンはカウンター下から短冊とペンを差し出す。

 「よければ、一枚どうぞ。自由に書いてください」

 戦士は少しだけためらいながら、短冊を受け取り、黙って書き始めた。
 ごつごつした手で、不器用に、それでも丁寧に。

 書き終えると、そっと差し出した。

 「……飾ってくれるか」

 「もちろん」

 レンは短冊を笹の枝先に結びつけ、軽く揺れるのを確認する。

 「……叶うといいですね」

 戦士は一瞬だけ目をそらし、口元をわずかに緩めた。

 「……そうだな。たまには、信じてみるか」

 そのあとは、いつも通り。
 ツナおにぎりと麦茶、それからチキンを手に取り、レジへと並ぶ。

 「合計で460ストーです。ナイポもお付けしておきますね」

 「……いつもすまんな。ここは不思議な店だが……嫌いじゃない」

 袋を受け取ると、戦士は笹をちらりと見上げ、霧の中へと歩き出した。

 レンとニナは、静かにその背を見送りながら、声をそろえる。

 「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
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