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第9話 二人だけの秘密
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ミアは、朝食を終えるとすぐに家を飛び出した。
(……いまなら)
迷っている時間はなかった。
昨夜の出来事が、頭から離れない。
夜の畑。
ルークの背中。
そして、今朝の元気な作物。
(……やっぱり、聞かないと)
胸の奥で、何かが固まっていく感覚があった。
ルークの家の扉を叩く。
「はーい」
出てきたのは、セシリアだった。
「おはよう、リアねぇ」
「おはよう、ミア」
一瞬、空気が止まる。
いつも通り――
いや、いつもより少しだけ、ぎこちない。
「ルークは?」
「中よ」
ミアが家に入ると、居間の奥から元気な声が聞こえた。
「ミアー!」
ルークが駆け寄ってくる。
「おはよ!」
「おはよう、ルーク」
その直後。
「……ちょっと、朝から距離近くない?」
セシリアが割り込む。
「別にいいでしょ」
「よくないわ」
(……始まった)
いつものやり取り。
ルークの取り合い。
だが、今日は――。
(……それどころじゃない)
三人は結局、奥の部屋で積み木遊びを始めた。
床に広げられた色とりどりの積み木。
ルークを真ん中に、ミアとセシリアが座る。
「ねぇ、ルーク」
ミアは、何気ないふりをして声を掛けた。
「なに?」
「……きのうの夜さ」
ルークの手が、一瞬止まった。
「夜?」
「うん。起きて、どこか行かなかった?」
ルークは、きょとんとした顔でミアを見る。
「……しらないよ?」
あっさりとした答え。
三歳児らしい、無邪気な否定。
「……そっか」
ミアはそう言ったが、
すぐに視線を逸らした。
その瞬間――。
セシリアの顔が、わずかに強張ったのを、ミアは見逃さなかった。
(……やっぱり)
確信が、胸に落ちる。
ルークは、知らないと言った。
だが、セシリアは――。
「……」
セシリアは何も言わず、積み木を見つめている。
その様子が、何よりの答えだった。
しばらくして。
「のどかわいたー」
ルークが立ち上がった。
「ジュースのむ」
「じゃあ、私取ってくる」
セシリアが立ち上がるが、
ルークは首を振る。
「だいじょうぶ。ひとりでいく」
そう言って、部屋を出て行った。
――二人きり。
部屋に残されたのは、ミアとセシリアだけだった。
しばしの沈黙。
先に口を開いたのは、セシリアだった。
「……ミアも、見てしまったのね」
ミアは、はっとして顔を上げる。
「……え?」
「夜のこと」
セシリアの声は、低く、静かだった。
「……どういうこと?」
ミアは問い返す。
セシリアは、少し迷うように視線を伏せ、
それから、ゆっくりと言葉を選んだ。
「私もね……何をしているのかは、分からない」
「……」
「でも」
セシリアは、はっきりと言った。
「ルークが、ああやって畑に行った日の朝は……必ず、畑が元気になってる」
ミアの息が、詰まる。
「……やっぱり」
「うちだけじゃない。村中」
セシリアは続ける。
「最初は偶然だと思ってた。でも、もう……違うって分かる」
ミアは、唇を噛んだ。
「……リアねぇは、ルークに聞いたの?」
「聞いたわ」
即答だった。
「でも、教えてくれなかった」
ミアは、少し驚いた顔をする。
「怒らなかったの?」
「怒らないわよ」
セシリアは、きっぱりと言った。
「話したくないなら、それでいい」
「……」
「でも」
声に、強さが宿る。
「危ないことだったら、止める。
危なくないなら……守る」
ミアは、しばらく黙っていた。
そして、意を決したように言った。
「……だったら」
セシリアが、ミアを見る。
「……わたしも、協力する」
「……え?」
「ルークが、なにしてるか分からなくても」
ミアは、ぎゅっと拳を握る。
「危ないことがあったら、止めたい」
「……」
「それに」
少し、照れたように。
「……ひとりで抱えるの、こわいでしょ?」
その言葉に。
セシリアの胸の奥が、ふっと軽くなった。
(……ああ)
初めてだ。
この秘密を、
誰かと共有できたのは。
「……ありがとう」
セシリアは、小さく微笑んだ。
「助かるわ、ミア」
その瞬間、
二人の間に、静かな“協力関係”が生まれた。
――その時。
「ただいまー」
ルークが部屋に戻ってきた。
ジュースを片手に、不思議そうに二人を見る。
「……なにしてたの?」
ミアとセシリアは、顔を見合わせ――。
「「なんでもない」」
声が、綺麗に重なった。
ルークは首を傾げる。
(……なんだ?)
だが、深く考える前に、
セシリアが彼を抱き寄せた。
「ほら、遊びの続き」
「うん!」
ミアも、いつもより少しだけ距離を詰める。
(……?)
ルークは、二人に挟まれながら、
胸の奥で、嫌な予感を覚えていた。
(……何か、始まったな)
元・賢者ゼノン・マギウスの勘が、
静かに告げていた。
秘密は、もう一人では守れない。
(……いまなら)
迷っている時間はなかった。
昨夜の出来事が、頭から離れない。
夜の畑。
ルークの背中。
そして、今朝の元気な作物。
(……やっぱり、聞かないと)
胸の奥で、何かが固まっていく感覚があった。
ルークの家の扉を叩く。
「はーい」
出てきたのは、セシリアだった。
「おはよう、リアねぇ」
「おはよう、ミア」
一瞬、空気が止まる。
いつも通り――
いや、いつもより少しだけ、ぎこちない。
「ルークは?」
「中よ」
ミアが家に入ると、居間の奥から元気な声が聞こえた。
「ミアー!」
ルークが駆け寄ってくる。
「おはよ!」
「おはよう、ルーク」
その直後。
「……ちょっと、朝から距離近くない?」
セシリアが割り込む。
「別にいいでしょ」
「よくないわ」
(……始まった)
いつものやり取り。
ルークの取り合い。
だが、今日は――。
(……それどころじゃない)
三人は結局、奥の部屋で積み木遊びを始めた。
床に広げられた色とりどりの積み木。
ルークを真ん中に、ミアとセシリアが座る。
「ねぇ、ルーク」
ミアは、何気ないふりをして声を掛けた。
「なに?」
「……きのうの夜さ」
ルークの手が、一瞬止まった。
「夜?」
「うん。起きて、どこか行かなかった?」
ルークは、きょとんとした顔でミアを見る。
「……しらないよ?」
あっさりとした答え。
三歳児らしい、無邪気な否定。
「……そっか」
ミアはそう言ったが、
すぐに視線を逸らした。
その瞬間――。
セシリアの顔が、わずかに強張ったのを、ミアは見逃さなかった。
(……やっぱり)
確信が、胸に落ちる。
ルークは、知らないと言った。
だが、セシリアは――。
「……」
セシリアは何も言わず、積み木を見つめている。
その様子が、何よりの答えだった。
しばらくして。
「のどかわいたー」
ルークが立ち上がった。
「ジュースのむ」
「じゃあ、私取ってくる」
セシリアが立ち上がるが、
ルークは首を振る。
「だいじょうぶ。ひとりでいく」
そう言って、部屋を出て行った。
――二人きり。
部屋に残されたのは、ミアとセシリアだけだった。
しばしの沈黙。
先に口を開いたのは、セシリアだった。
「……ミアも、見てしまったのね」
ミアは、はっとして顔を上げる。
「……え?」
「夜のこと」
セシリアの声は、低く、静かだった。
「……どういうこと?」
ミアは問い返す。
セシリアは、少し迷うように視線を伏せ、
それから、ゆっくりと言葉を選んだ。
「私もね……何をしているのかは、分からない」
「……」
「でも」
セシリアは、はっきりと言った。
「ルークが、ああやって畑に行った日の朝は……必ず、畑が元気になってる」
ミアの息が、詰まる。
「……やっぱり」
「うちだけじゃない。村中」
セシリアは続ける。
「最初は偶然だと思ってた。でも、もう……違うって分かる」
ミアは、唇を噛んだ。
「……リアねぇは、ルークに聞いたの?」
「聞いたわ」
即答だった。
「でも、教えてくれなかった」
ミアは、少し驚いた顔をする。
「怒らなかったの?」
「怒らないわよ」
セシリアは、きっぱりと言った。
「話したくないなら、それでいい」
「……」
「でも」
声に、強さが宿る。
「危ないことだったら、止める。
危なくないなら……守る」
ミアは、しばらく黙っていた。
そして、意を決したように言った。
「……だったら」
セシリアが、ミアを見る。
「……わたしも、協力する」
「……え?」
「ルークが、なにしてるか分からなくても」
ミアは、ぎゅっと拳を握る。
「危ないことがあったら、止めたい」
「……」
「それに」
少し、照れたように。
「……ひとりで抱えるの、こわいでしょ?」
その言葉に。
セシリアの胸の奥が、ふっと軽くなった。
(……ああ)
初めてだ。
この秘密を、
誰かと共有できたのは。
「……ありがとう」
セシリアは、小さく微笑んだ。
「助かるわ、ミア」
その瞬間、
二人の間に、静かな“協力関係”が生まれた。
――その時。
「ただいまー」
ルークが部屋に戻ってきた。
ジュースを片手に、不思議そうに二人を見る。
「……なにしてたの?」
ミアとセシリアは、顔を見合わせ――。
「「なんでもない」」
声が、綺麗に重なった。
ルークは首を傾げる。
(……なんだ?)
だが、深く考える前に、
セシリアが彼を抱き寄せた。
「ほら、遊びの続き」
「うん!」
ミアも、いつもより少しだけ距離を詰める。
(……?)
ルークは、二人に挟まれながら、
胸の奥で、嫌な予感を覚えていた。
(……何か、始まったな)
元・賢者ゼノン・マギウスの勘が、
静かに告げていた。
秘密は、もう一人では守れない。
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