10 / 48
第10話 見つかってしまった夜
しおりを挟む
セシリアとミアが、ルークを“見守る”と決めてから、数日が経った。
表向きは、何も変わらない日常。
朝は一緒に遊び、昼は喧嘩をして、夜はそれぞれ家に帰る。
だが――。
(……まただ)
その夜も、ルークは静かに目を覚ました。
月明かりが差し込む部屋。
隣のベッドからは、セシリアの寝息が聞こえる。
(よし……)
慎重に身体を起こし、音を立てないように床へ降りる。
この数日で、動きはかなり洗練されていた。
(今日も、数軒分でいい)
最近は、村全体を一晩で回ることはしない。
負担を分散させ、痕跡を薄めるためだ。
ルークは裏口から外へ出て、畑へ向かった。
*
その少し後。
「……行った」
セシリアが、小さく囁いた。
「出て来た……」
ミアも、部屋の窓を見て囁いた
二人は音を立てないように家を抜け出し、セシリアとミアは合流して
距離を保ちながら、ルークの後を追った。
夜の畑は、昼とはまるで違う顔を見せる。
静かで、広くて、どこか怖い。
(……ほんとに、毎晩こんなことを)
ミアは、胸の奥がきゅっとなるのを感じていた。
やがて、ルークが立ち止まる。
いつもの場所。
畑の端。
小さな背中が、月明かりに照らされる。
セシリアとミアは、少し離れた物陰に身を隠した。
(……始まる)
ルークは、畑に向かって手を伸ばした。
指先が、ゆっくりと宙をなぞる。
(……なにを)
その瞬間だった。
――ぱきっ。
乾いた音。
ミアが踏んでしまった木の枝が、足元で折れた。
(……っ)
ルークの手が止まる。
空気が、張り詰める。
彼は、ゆっくりと振り返った。
月明かりの中。
物陰から、二つの影が浮かび上がる。
――セシリアと、ミア。
ルークの表情が、はっきりと変わった。
(……しまった)
それは、三歳児の顔ではなかった。
状況を即座に理解した者の顔だった。
ルークは、ため息を一つだけ吐き、
二人の方へ歩み寄った。
「……なに、してるの?」
先に声を出したのは、ルークだった。
セシリアとミアは、顔を見合わせる。
そして。
「……それは」
「こっちのセリフだよ」
ミアが、はっきりと言った。
逃げ場は、もうなかった。
(……隠せない、か)
ルークは一瞬だけ考え、
すぐに結論を出した。
ここで誤魔化すのは、悪手だ。
「……きょうは、おそいから」
二人を見上げて、言う。
「……あしたの、あさ」
「え?」
「ちゃんと、はなす」
セシリアが、じっとルークを見る。
その目は、責めていなかった。
ただ、真剣だった。
「……約束?」
ミアが聞く。
ルークは、こくりと頷いた。
「……うん」
二人は、不服そうな顔をしたが――。
「……分かった」
最終的に、セシリアが頷いた。
「ちゃんと話してくれるなら、それでいい」
ミアも、小さく息を吐く。
「……ぜったいだよ」
「……ぜったい」
その夜は、それで終わった。
ミアは自宅へ戻り、
セシリアとルークも、家へ帰った。
並んで歩く夜道。
誰も、余計なことは言わなかった。
*
そして、朝。
ミアは、昨日よりも少し早く目を覚ました。
(……ほんとに、話してくれるよね)
朝食を簡単に済ませ、
すぐにルークの家へ向かう。
扉を叩くと――。
「はーい」
リリアの声。
「ミア?」
「うん……あの、ルークいる?」
「いるわよ」
家の奥から、足音が聞こえてくる。
「ミアー」
ルークが現れた。
いつもと同じ顔。
同じ声。
けれど――。
(……ちがう)
ミアには分かった。
この朝は、
今までとは違う。
昨夜の“秘密”が、
ついに、言葉になる朝だ。
セシリアも、少し遅れて姿を見せる。
三人の視線が、交わる。
誰も、笑わなかった。
――そして。
ルークは、静かに口を開こうとしていた。
表向きは、何も変わらない日常。
朝は一緒に遊び、昼は喧嘩をして、夜はそれぞれ家に帰る。
だが――。
(……まただ)
その夜も、ルークは静かに目を覚ました。
月明かりが差し込む部屋。
隣のベッドからは、セシリアの寝息が聞こえる。
(よし……)
慎重に身体を起こし、音を立てないように床へ降りる。
この数日で、動きはかなり洗練されていた。
(今日も、数軒分でいい)
最近は、村全体を一晩で回ることはしない。
負担を分散させ、痕跡を薄めるためだ。
ルークは裏口から外へ出て、畑へ向かった。
*
その少し後。
「……行った」
セシリアが、小さく囁いた。
「出て来た……」
ミアも、部屋の窓を見て囁いた
二人は音を立てないように家を抜け出し、セシリアとミアは合流して
距離を保ちながら、ルークの後を追った。
夜の畑は、昼とはまるで違う顔を見せる。
静かで、広くて、どこか怖い。
(……ほんとに、毎晩こんなことを)
ミアは、胸の奥がきゅっとなるのを感じていた。
やがて、ルークが立ち止まる。
いつもの場所。
畑の端。
小さな背中が、月明かりに照らされる。
セシリアとミアは、少し離れた物陰に身を隠した。
(……始まる)
ルークは、畑に向かって手を伸ばした。
指先が、ゆっくりと宙をなぞる。
(……なにを)
その瞬間だった。
――ぱきっ。
乾いた音。
ミアが踏んでしまった木の枝が、足元で折れた。
(……っ)
ルークの手が止まる。
空気が、張り詰める。
彼は、ゆっくりと振り返った。
月明かりの中。
物陰から、二つの影が浮かび上がる。
――セシリアと、ミア。
ルークの表情が、はっきりと変わった。
(……しまった)
それは、三歳児の顔ではなかった。
状況を即座に理解した者の顔だった。
ルークは、ため息を一つだけ吐き、
二人の方へ歩み寄った。
「……なに、してるの?」
先に声を出したのは、ルークだった。
セシリアとミアは、顔を見合わせる。
そして。
「……それは」
「こっちのセリフだよ」
ミアが、はっきりと言った。
逃げ場は、もうなかった。
(……隠せない、か)
ルークは一瞬だけ考え、
すぐに結論を出した。
ここで誤魔化すのは、悪手だ。
「……きょうは、おそいから」
二人を見上げて、言う。
「……あしたの、あさ」
「え?」
「ちゃんと、はなす」
セシリアが、じっとルークを見る。
その目は、責めていなかった。
ただ、真剣だった。
「……約束?」
ミアが聞く。
ルークは、こくりと頷いた。
「……うん」
二人は、不服そうな顔をしたが――。
「……分かった」
最終的に、セシリアが頷いた。
「ちゃんと話してくれるなら、それでいい」
ミアも、小さく息を吐く。
「……ぜったいだよ」
「……ぜったい」
その夜は、それで終わった。
ミアは自宅へ戻り、
セシリアとルークも、家へ帰った。
並んで歩く夜道。
誰も、余計なことは言わなかった。
*
そして、朝。
ミアは、昨日よりも少し早く目を覚ました。
(……ほんとに、話してくれるよね)
朝食を簡単に済ませ、
すぐにルークの家へ向かう。
扉を叩くと――。
「はーい」
リリアの声。
「ミア?」
「うん……あの、ルークいる?」
「いるわよ」
家の奥から、足音が聞こえてくる。
「ミアー」
ルークが現れた。
いつもと同じ顔。
同じ声。
けれど――。
(……ちがう)
ミアには分かった。
この朝は、
今までとは違う。
昨夜の“秘密”が、
ついに、言葉になる朝だ。
セシリアも、少し遅れて姿を見せる。
三人の視線が、交わる。
誰も、笑わなかった。
――そして。
ルークは、静かに口を開こうとしていた。
1
あなたにおすすめの小説
2週目の人生ですが、生きていた世界にファンタジーがあるとは思ってなかった
竹桜
ファンタジー
1人で生きていた男はある事故に巻き込まれて、死んでしまった。
何故か、男は生きていた世界に転生したのだ。
2週目の人生を始めたが、あまり何も変わらなかった。
ある出会いと共に男はファンタジーに巻き込まれていく。
1周目と2週目で生きていた世界で。
WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!
TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。
その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。
競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。
俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。
その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。
意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。
相変わらずの豪華客船の中だった。
しかし、そこは地球では無かった。
魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。
船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。
ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ……
果たして、地球と東の運命はどうなるの?
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~
アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる