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第23話 それぞれの場所へ
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昼近くになり、
太陽が高く昇った頃。
ルーク、セシリア、ミアの三人は、
いつもと変わらぬ場所で訓練をしていた。
土を動かし、
風を操り、
魔力の流れを確かめる。
表面だけ見れば、
昨日までと何も変わらない。
だが――
三人の胸の内には、
確実に“違い”が生まれていた。
*
「……はい、休憩」
リリアの声で、
三人は一斉に腰を下ろす。
水筒を回し飲みしながら、
しばし、静かな時間。
その沈黙を破ったのは、
セシリアだった。
「……ねえ」
視線を前に向けたまま、
ぽつりと口にする。
「わたし……学園に行くことにする」
ミアの手が、わずかに止まった。
ルークは、何も言わずに聞いている。
「決めたの」
セシリアは、ゆっくりと続ける。
「ルークとの約束もあるし」
「それに……」
少しだけ、照れたように。
「ちゃんと強くなって、
胸を張って待っていたいから」
一瞬の沈黙。
そして――
ミアが、ふっと笑った。
「そっか」
少しだけ、
寂しそうな笑顔だった。
「じゃあさ」
わざと軽い口調で、
ルークを見る。
「リアねぇがいない間は、
わたしがルークと仲良くしておくね?」
「ちゃんと、面倒みてあげる」
それは、冗談めいた言い方だったが――
わずかな“本音”が、混じっていた。
「……ミア!」
セシリアが、むっとする。
「なにそれ」
「冗談だよ、冗談」
ミアは、くすっと笑う。
「でも……」
一拍置いて、
セシリアを見る。
「ルークのこと、任せてね」
その言葉は、
からかいではなく、真剣だった。
セシリアは、一瞬だけ表情を和らげ――
小さく頷いた。
「……うん」
「お願い」
ミアは、元気よく答える。
「うん!」
そのやり取りを、
ルークは黙って見ていた。
そして――
静かに口を開く。
「……おねえちゃん」
セシリアが振り向く。
「がくえんでは……」
少しだけ、間を置いて。
「いまは、つかっちゃ、だめだけど」
「……つよく、なったら」
ルークは、地面に小さな円を描く。
「……これ」
魔力を流すと、
円の中で、土と風が同時に揺れた。
「……ごうせい、まほう」
リリアが、思わず息を呑む。
「……合成魔法?」
ルークは、頷いた。
「……ふたつ、いじょうの、ぞくせい」
「いっしょに、つかう」
セシリアの目が、大きく見開かれる。
「そんなの……聞いたことない」
「……がくえん、なら」
ルークは、はっきりと言った。
「まなべる、はず」
「……でも」
真剣な顔で、続ける。
「いまは……まだ、だめ」
「まりょくも、せいぎょも、たりない」
「だから……」
セシリアの額に、そっと指を当てる。
「つよく、なってから」
セシリアは、しばらく黙っていたが――
やがて、力強く頷いた。
「……分かった」
「絶対、強くなる」
「ルークが来ても、
すぐ追い抜かれないくらいにはね」
「……それ、むり」
ミアが、思わず突っ込む。
三人が、同時に笑った。
リリアは、その光景を見ながら、
内心で思う。
(……もう、何を見せられても驚かないと思ってたけど)
(……やっぱり、規格外ね)
合成魔法。
それは、
王都の魔法師団でも限られた者だけの
領域だ。
それを――
子供が、感覚で理解している。
だが、もはや驚くよりも。
(……見届けるしか、ないわね)
*
訓練は、その後も続いた。
だが、どこか空気は柔らかい。
それぞれが、
自分の“これから”を意識し始めている。
夕方。
空が茜色に染まる中、
三人は並んで座っていた。
「……離れても」
セシリアが、ぽつりと言う。
「変わらないよね」
ミアが、即答する。
「当たり前でしょ」
ルークも、頷いた。
「……また、あえる」
約束は、
言葉にしなくても、そこにあった。
同じ場所に立つ日は、
まだ先だ。
けれど――
それぞれの道は、もう分かれている。
それは、別れではない。
前に進むための距離だった。
三人は、
沈みゆく太陽を見つめながら、
静かにそれを受け入れていた。
太陽が高く昇った頃。
ルーク、セシリア、ミアの三人は、
いつもと変わらぬ場所で訓練をしていた。
土を動かし、
風を操り、
魔力の流れを確かめる。
表面だけ見れば、
昨日までと何も変わらない。
だが――
三人の胸の内には、
確実に“違い”が生まれていた。
*
「……はい、休憩」
リリアの声で、
三人は一斉に腰を下ろす。
水筒を回し飲みしながら、
しばし、静かな時間。
その沈黙を破ったのは、
セシリアだった。
「……ねえ」
視線を前に向けたまま、
ぽつりと口にする。
「わたし……学園に行くことにする」
ミアの手が、わずかに止まった。
ルークは、何も言わずに聞いている。
「決めたの」
セシリアは、ゆっくりと続ける。
「ルークとの約束もあるし」
「それに……」
少しだけ、照れたように。
「ちゃんと強くなって、
胸を張って待っていたいから」
一瞬の沈黙。
そして――
ミアが、ふっと笑った。
「そっか」
少しだけ、
寂しそうな笑顔だった。
「じゃあさ」
わざと軽い口調で、
ルークを見る。
「リアねぇがいない間は、
わたしがルークと仲良くしておくね?」
「ちゃんと、面倒みてあげる」
それは、冗談めいた言い方だったが――
わずかな“本音”が、混じっていた。
「……ミア!」
セシリアが、むっとする。
「なにそれ」
「冗談だよ、冗談」
ミアは、くすっと笑う。
「でも……」
一拍置いて、
セシリアを見る。
「ルークのこと、任せてね」
その言葉は、
からかいではなく、真剣だった。
セシリアは、一瞬だけ表情を和らげ――
小さく頷いた。
「……うん」
「お願い」
ミアは、元気よく答える。
「うん!」
そのやり取りを、
ルークは黙って見ていた。
そして――
静かに口を開く。
「……おねえちゃん」
セシリアが振り向く。
「がくえんでは……」
少しだけ、間を置いて。
「いまは、つかっちゃ、だめだけど」
「……つよく、なったら」
ルークは、地面に小さな円を描く。
「……これ」
魔力を流すと、
円の中で、土と風が同時に揺れた。
「……ごうせい、まほう」
リリアが、思わず息を呑む。
「……合成魔法?」
ルークは、頷いた。
「……ふたつ、いじょうの、ぞくせい」
「いっしょに、つかう」
セシリアの目が、大きく見開かれる。
「そんなの……聞いたことない」
「……がくえん、なら」
ルークは、はっきりと言った。
「まなべる、はず」
「……でも」
真剣な顔で、続ける。
「いまは……まだ、だめ」
「まりょくも、せいぎょも、たりない」
「だから……」
セシリアの額に、そっと指を当てる。
「つよく、なってから」
セシリアは、しばらく黙っていたが――
やがて、力強く頷いた。
「……分かった」
「絶対、強くなる」
「ルークが来ても、
すぐ追い抜かれないくらいにはね」
「……それ、むり」
ミアが、思わず突っ込む。
三人が、同時に笑った。
リリアは、その光景を見ながら、
内心で思う。
(……もう、何を見せられても驚かないと思ってたけど)
(……やっぱり、規格外ね)
合成魔法。
それは、
王都の魔法師団でも限られた者だけの
領域だ。
それを――
子供が、感覚で理解している。
だが、もはや驚くよりも。
(……見届けるしか、ないわね)
*
訓練は、その後も続いた。
だが、どこか空気は柔らかい。
それぞれが、
自分の“これから”を意識し始めている。
夕方。
空が茜色に染まる中、
三人は並んで座っていた。
「……離れても」
セシリアが、ぽつりと言う。
「変わらないよね」
ミアが、即答する。
「当たり前でしょ」
ルークも、頷いた。
「……また、あえる」
約束は、
言葉にしなくても、そこにあった。
同じ場所に立つ日は、
まだ先だ。
けれど――
それぞれの道は、もう分かれている。
それは、別れではない。
前に進むための距離だった。
三人は、
沈みゆく太陽を見つめながら、
静かにそれを受け入れていた。
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