賢者転生〜世界最強の賢者、赤ん坊からやり直す〜

KAORUwithAI

文字の大きさ
24 / 48

第24話 背中を押す手

しおりを挟む
 夕方。

 セシリアとルークと別れ、
 ミアは自宅への道を一人で歩いていた。

 村の道は、いつもと同じはずなのに、
 どこか少し広く感じる。

(……リアねぇ、行っちゃうんだ)

 頭では分かっている。
 学園に行くことは、良いことだ。

 セシリアは強い。
 そして、もっと強くなる。

 それでも――
 胸の奥に、ぽっかりと穴が空いたような感覚があった。



「ただいま……」

 扉を開けると、
 家の中から、慣れ親しんだ匂いが流れてくる。

「おかえり、ミア」

 母のシアが、台所から顔を出した。

「お腹、空いてる?」

「……うん」

 短く答えながら、
 ミアは椅子に腰を下ろした。

 少し迷ってから、
 意を決したように口を開く。

「……お母さん」

「なあに?」

「リアねぇ……学園に行くんだって」

 シアの手が、一瞬止まる。

「……そう」

 だが、驚いた様子はなかった。

「リリアから、もう聞いてるわ」

 ミアは、少し驚く。

「……もう?」

「ええ」

「あなたたち、最近すごく頑張ってるもの」

 その言葉に、
 ミアの胸が少しだけ軽くなる。

 その時、
 外から足音が聞こえた。

「ただいま」

 父のドルンだった。

 仕事帰りの、
 少し疲れた声。

「おかえりなさい」

 シアが返す。

 ミアは、父の顔を見ると、
 ぐっと唇を噛んだ。

(……今、言わなきゃ)

「……お父さん」

 ドルンは、ミアの前に座り、
 優しく目を細めた。

「どうした?」

「……わたし」

 一度、深呼吸をして。

「わたしも……学園に行きたい」

 ドルンの眉が、少しだけ動く。

 ミアは、続けた。

「今はまだ、年が足りないけど」

「十歳になったら……」

「王立魔法学園に、入りたい」

 一瞬の沈黙。

 ミアは、思わず俯く。

「……でも」

 声が、少し小さくなる。

「お金、かかるよね」

「ルークの家みたいに、
 畑がたくさんあるわけじゃないし……」

 それは、
 ずっと心の奥にあった不安だった。

 ドルンは、黙ってミアを見つめ――
 やがて、静かに笑った。

「……そんな顔するな」

 大きな手が、
 ミアの頭に乗せられる。

 優しく、ぽんぽんと撫でる。

「お金の心配なんて、
 子供がすることじゃない」

「でも……」

「いいから」

 ドルンは、はっきりと言った。

「お前のやりたいことを、やりなさい」

 ミアの目が、見開かれる。

「……いいの?」

「ああ」

 ドルンは、頷く。

「お前が本気で学びたいなら」

「俺と母さんで、どうにかする」

 シアも、ミアの隣に来て、
 そっと肩に手を置いた。

「あなたの魔法が、
 すごく成長してるってこと」

「リリアから、ちゃんと聞いてるわ」

 ミアの胸が、じんわりと熱くなる。

「……わたし」

「リアねぇみたいに、
 すごくはないけど……」

「そんなこと、ない」

 シアは、きっぱりと言った。

「あなたは、あなたのやり方で伸びてる」

「それに……」

 少しだけ、微笑む。

「ルークのそばで、
 ちゃんと学んできたでしょ?」

 その言葉に、
 ミアは思わず笑ってしまった。

「……うん」

 涙が、少し滲む。

 ドルンは、ミアの頭をもう一度撫でながら言った。

「学園に行くなら」

「今まで以上に、大変になるぞ」

「それでも、いいか?」

 ミアは、迷わず頷いた。

「うん!」

「頑張る!」

 その声は、
 不安よりも、希望の方が大きかった。



 その夜。

 ミアは、布団の中で目を閉じながら、
 今日のことを思い返していた。

(……行けるんだ)

(……学園)

 まだ少し先の未来。

 でも、確かに、
 そこへ続く道が見えた。

 リアねぇは、先に行く。

 自分は、後から追いかける。

 そして――
 ルークは、そのもっと先で待っている。

 ミアは、胸の前で小さく拳を握った。

(……負けない)

(……置いていかれない)

 背中を押してくれる人がいる。

 だから、前に進める。

 静かな夜の中で、
 ミアは、確かな一歩を踏み出した気がしていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

2週目の人生ですが、生きていた世界にファンタジーがあるとは思ってなかった

竹桜
ファンタジー
 1人で生きていた男はある事故に巻き込まれて、死んでしまった。  何故か、男は生きていた世界に転生したのだ。  2週目の人生を始めたが、あまり何も変わらなかった。  ある出会いと共に男はファンタジーに巻き込まれていく。     1周目と2週目で生きていた世界で。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。

処理中です...