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第27話 王都、そして試練の日
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馬車に揺られること、一週間。
石畳の道が増え、
行き交う人々の服装が変わり、
建物が次第に高くなっていくにつれ――
セシリアは、自分が本当に遠くまで来たのだと実感していた。
「……王都」
馬車の窓から見えた景色に、
思わず息を呑む。
ハルネ村とは比べ物にならないほどの人の数。
広く整備された道。
空へ伸びるような白い建物。
胸が高鳴ると同時に、
きゅっと締め付けられる感覚もあった。
(……ルーク、いないんだ)
その事実が、
思った以上に重かった。
*
セシリアは、あらかじめ手配されていた宿に入った。
清潔な部屋。
窓の外には、王都の街並み。
荷物を置き、
ベッドに腰を下ろした瞬間――
どっと疲れが押し寄せてくる。
「……さびしい」
ぽつりと、独り言が漏れた。
いつも隣にいた弟。
何かあれば、すぐに助言をくれる存在。
今は、いない。
それだけで、
こんなにも心細いなんて。
だが――。
セシリアは、ぎゅっと拳を握る。
(……だめ)
(ルークが来ても困らないように、強くなるんでしょ)
自分に言い聞かせるように、
何度も心の中で繰り返す。
その夜は、
試験に備えて、早めに休んだ。
*
翌朝。
宿を出ると、
王都の空気は、昨日よりもさらに張り詰めているように感じられた。
通りを進むにつれ、
同じ目的を持った人々が増えていく。
――王立魔法学園。
その正門が見えた瞬間、
セシリアは思わず立ち止まった。
「……すご」
高い石造りの門。
精緻な装飾。
魔法陣が刻まれた外壁。
周囲には、
すでに多くの受験生が集まっていた。
質素な服装の平民。
明らかに裕福そうな貴族。
年齢も、立場も、ばらばら。
(……みんな、ライバルなんだ)
自然と、背筋が伸びる。
*
受付で名前を告げると、
事前に両親が手続きを済ませてくれていたおかげで、
驚くほどスムーズに通過できた。
「セシリア様ですね」
「はい」
「では、こちらへ」
深く考える暇もなく、
試験は始まった。
*
最初は、筆記試験。
魔法理論。
属性の性質。
魔力循環。
そして――
無詠唱魔法についての設問。
(……これ)
問題文を読んだ瞬間、
セシリアは、少し驚いた。
無詠唱は、
“不可能”とされている。
その説明を読みながら、
彼女は、思わず苦笑する。
(……ルークなら、「できるよ?」って言いそう)
答案用紙に、
教わった通りのことを書く。
魔力感知。
体内循環。
体外放出。
そして、明確なイメージ。
それが、
当たり前だと思っていた。
*
筆記試験が終わると、
次は実技試験だった。
広い演習場。
教官たちが並び、
一人ずつ、順番に魔法を行使していく。
詠唱を唱え、
火を出す者。
風を起こす者。
「……すごい」
セシリアは、素直に感心した。
どの受験生も、
一定以上の実力を持っている。
(……油断しちゃだめ)
自分の番が近づき、
心臓の音が大きくなる。
そして――
セシリアの名前が呼ばれた。
「前へ」
深呼吸。
――詠唱しなきゃ。
頭では、そう思っていた。
だが。
普段から、中級魔法まで無詠唱で使っていたため――
身体が、先に動いてしまった。
魔力が流れ、
掌から――。
初級魔法が、無詠唱で放たれる。
次の瞬間。
演習場が、揺れた。
空気が震え、
地面が軋む。
「……!?」
威力は、
どう見ても初級のそれではない。
後方にいた教官たちが、
目を見開いた。
「……無詠唱?」
「しかも、初級……?」
「……いや、この威力は……」
受験生たちも、
ざわめきを隠せない。
セシリアは、はっと我に返る。
(……やっちゃった)
だが、もう遅い。
教官の一人が、
じっとセシリアを見つめた。
「……次」
短い言葉。
それ以上、何も言われなかった。
*
すべての試験が終わり、
受験生たちは集められた。
「合格発表は、明日行う」
「今日は、解散だ」
その言葉を聞き、
セシリアは、宿へと戻った。
部屋に入った瞬間、
大きく息を吐く。
「……どう、だったんだろ」
ベッドに腰を下ろし、
天井を見上げる。
(……ルーク)
頭の中に、
あの小さな背中が浮かぶ。
(……見てたら、怒られたかな)
それとも――
笑われただろうか。
「……明日、か」
結果は、もう出ている。
出来ることは、何もない。
セシリアは、目を閉じ、
静かに眠りについた。
王都の夜は、
村よりも、少し騒がしい。
だがその喧騒の中で、
一人の少女は、次の扉が開くのを待っていた。
石畳の道が増え、
行き交う人々の服装が変わり、
建物が次第に高くなっていくにつれ――
セシリアは、自分が本当に遠くまで来たのだと実感していた。
「……王都」
馬車の窓から見えた景色に、
思わず息を呑む。
ハルネ村とは比べ物にならないほどの人の数。
広く整備された道。
空へ伸びるような白い建物。
胸が高鳴ると同時に、
きゅっと締め付けられる感覚もあった。
(……ルーク、いないんだ)
その事実が、
思った以上に重かった。
*
セシリアは、あらかじめ手配されていた宿に入った。
清潔な部屋。
窓の外には、王都の街並み。
荷物を置き、
ベッドに腰を下ろした瞬間――
どっと疲れが押し寄せてくる。
「……さびしい」
ぽつりと、独り言が漏れた。
いつも隣にいた弟。
何かあれば、すぐに助言をくれる存在。
今は、いない。
それだけで、
こんなにも心細いなんて。
だが――。
セシリアは、ぎゅっと拳を握る。
(……だめ)
(ルークが来ても困らないように、強くなるんでしょ)
自分に言い聞かせるように、
何度も心の中で繰り返す。
その夜は、
試験に備えて、早めに休んだ。
*
翌朝。
宿を出ると、
王都の空気は、昨日よりもさらに張り詰めているように感じられた。
通りを進むにつれ、
同じ目的を持った人々が増えていく。
――王立魔法学園。
その正門が見えた瞬間、
セシリアは思わず立ち止まった。
「……すご」
高い石造りの門。
精緻な装飾。
魔法陣が刻まれた外壁。
周囲には、
すでに多くの受験生が集まっていた。
質素な服装の平民。
明らかに裕福そうな貴族。
年齢も、立場も、ばらばら。
(……みんな、ライバルなんだ)
自然と、背筋が伸びる。
*
受付で名前を告げると、
事前に両親が手続きを済ませてくれていたおかげで、
驚くほどスムーズに通過できた。
「セシリア様ですね」
「はい」
「では、こちらへ」
深く考える暇もなく、
試験は始まった。
*
最初は、筆記試験。
魔法理論。
属性の性質。
魔力循環。
そして――
無詠唱魔法についての設問。
(……これ)
問題文を読んだ瞬間、
セシリアは、少し驚いた。
無詠唱は、
“不可能”とされている。
その説明を読みながら、
彼女は、思わず苦笑する。
(……ルークなら、「できるよ?」って言いそう)
答案用紙に、
教わった通りのことを書く。
魔力感知。
体内循環。
体外放出。
そして、明確なイメージ。
それが、
当たり前だと思っていた。
*
筆記試験が終わると、
次は実技試験だった。
広い演習場。
教官たちが並び、
一人ずつ、順番に魔法を行使していく。
詠唱を唱え、
火を出す者。
風を起こす者。
「……すごい」
セシリアは、素直に感心した。
どの受験生も、
一定以上の実力を持っている。
(……油断しちゃだめ)
自分の番が近づき、
心臓の音が大きくなる。
そして――
セシリアの名前が呼ばれた。
「前へ」
深呼吸。
――詠唱しなきゃ。
頭では、そう思っていた。
だが。
普段から、中級魔法まで無詠唱で使っていたため――
身体が、先に動いてしまった。
魔力が流れ、
掌から――。
初級魔法が、無詠唱で放たれる。
次の瞬間。
演習場が、揺れた。
空気が震え、
地面が軋む。
「……!?」
威力は、
どう見ても初級のそれではない。
後方にいた教官たちが、
目を見開いた。
「……無詠唱?」
「しかも、初級……?」
「……いや、この威力は……」
受験生たちも、
ざわめきを隠せない。
セシリアは、はっと我に返る。
(……やっちゃった)
だが、もう遅い。
教官の一人が、
じっとセシリアを見つめた。
「……次」
短い言葉。
それ以上、何も言われなかった。
*
すべての試験が終わり、
受験生たちは集められた。
「合格発表は、明日行う」
「今日は、解散だ」
その言葉を聞き、
セシリアは、宿へと戻った。
部屋に入った瞬間、
大きく息を吐く。
「……どう、だったんだろ」
ベッドに腰を下ろし、
天井を見上げる。
(……ルーク)
頭の中に、
あの小さな背中が浮かぶ。
(……見てたら、怒られたかな)
それとも――
笑われただろうか。
「……明日、か」
結果は、もう出ている。
出来ることは、何もない。
セシリアは、目を閉じ、
静かに眠りについた。
王都の夜は、
村よりも、少し騒がしい。
だがその喧騒の中で、
一人の少女は、次の扉が開くのを待っていた。
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