賢者転生〜世界最強の賢者、赤ん坊からやり直す〜

KAORUwithAI

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第27話 王都、そして試練の日

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 馬車に揺られること、一週間。

 石畳の道が増え、
 行き交う人々の服装が変わり、
 建物が次第に高くなっていくにつれ――
 セシリアは、自分が本当に遠くまで来たのだと実感していた。

「……王都」

 馬車の窓から見えた景色に、
 思わず息を呑む。

 ハルネ村とは比べ物にならないほどの人の数。
 広く整備された道。
 空へ伸びるような白い建物。

 胸が高鳴ると同時に、
 きゅっと締め付けられる感覚もあった。

(……ルーク、いないんだ)

 その事実が、
 思った以上に重かった。



 セシリアは、あらかじめ手配されていた宿に入った。

 清潔な部屋。
 窓の外には、王都の街並み。

 荷物を置き、
 ベッドに腰を下ろした瞬間――
 どっと疲れが押し寄せてくる。

「……さびしい」

 ぽつりと、独り言が漏れた。

 いつも隣にいた弟。
 何かあれば、すぐに助言をくれる存在。

 今は、いない。

 それだけで、
 こんなにも心細いなんて。

 だが――。

 セシリアは、ぎゅっと拳を握る。

(……だめ)

(ルークが来ても困らないように、強くなるんでしょ)

 自分に言い聞かせるように、
 何度も心の中で繰り返す。

 その夜は、
 試験に備えて、早めに休んだ。



 翌朝。

 宿を出ると、
 王都の空気は、昨日よりもさらに張り詰めているように感じられた。

 通りを進むにつれ、
 同じ目的を持った人々が増えていく。

 ――王立魔法学園。

 その正門が見えた瞬間、
 セシリアは思わず立ち止まった。

「……すご」

 高い石造りの門。
 精緻な装飾。
 魔法陣が刻まれた外壁。

 周囲には、
 すでに多くの受験生が集まっていた。

 質素な服装の平民。
 明らかに裕福そうな貴族。

 年齢も、立場も、ばらばら。

(……みんな、ライバルなんだ)

 自然と、背筋が伸びる。



 受付で名前を告げると、
 事前に両親が手続きを済ませてくれていたおかげで、
 驚くほどスムーズに通過できた。

「セシリア様ですね」

「はい」

「では、こちらへ」

 深く考える暇もなく、
 試験は始まった。



 最初は、筆記試験。

 魔法理論。
 属性の性質。
 魔力循環。

 そして――
 無詠唱魔法についての設問。

(……これ)

 問題文を読んだ瞬間、
 セシリアは、少し驚いた。

 無詠唱は、
 “不可能”とされている。

 その説明を読みながら、
 彼女は、思わず苦笑する。

(……ルークなら、「できるよ?」って言いそう)

 答案用紙に、
 教わった通りのことを書く。

 魔力感知。
 体内循環。
 体外放出。
 そして、明確なイメージ。

 それが、
 当たり前だと思っていた。



 筆記試験が終わると、
 次は実技試験だった。

 広い演習場。

 教官たちが並び、
 一人ずつ、順番に魔法を行使していく。

 詠唱を唱え、
 火を出す者。
 風を起こす者。

「……すごい」

 セシリアは、素直に感心した。

 どの受験生も、
 一定以上の実力を持っている。

(……油断しちゃだめ)

 自分の番が近づき、
 心臓の音が大きくなる。

 そして――
 セシリアの名前が呼ばれた。

「前へ」

 深呼吸。

 ――詠唱しなきゃ。

 頭では、そう思っていた。

 だが。

 普段から、中級魔法まで無詠唱で使っていたため――
 身体が、先に動いてしまった。

 魔力が流れ、
 掌から――。

 初級魔法が、無詠唱で放たれる。

 次の瞬間。

 演習場が、揺れた。

 空気が震え、
 地面が軋む。

「……!?」

 威力は、
 どう見ても初級のそれではない。

 後方にいた教官たちが、
 目を見開いた。

「……無詠唱?」

「しかも、初級……?」

「……いや、この威力は……」

 受験生たちも、
 ざわめきを隠せない。

 セシリアは、はっと我に返る。

(……やっちゃった)

 だが、もう遅い。

 教官の一人が、
 じっとセシリアを見つめた。

「……次」

 短い言葉。

 それ以上、何も言われなかった。



 すべての試験が終わり、
 受験生たちは集められた。

「合格発表は、明日行う」

「今日は、解散だ」

 その言葉を聞き、
 セシリアは、宿へと戻った。

 部屋に入った瞬間、
 大きく息を吐く。

「……どう、だったんだろ」

 ベッドに腰を下ろし、
 天井を見上げる。

(……ルーク)

 頭の中に、
 あの小さな背中が浮かぶ。

(……見てたら、怒られたかな)

 それとも――
 笑われただろうか。

「……明日、か」

 結果は、もう出ている。

 出来ることは、何もない。

 セシリアは、目を閉じ、
 静かに眠りについた。

 王都の夜は、
 村よりも、少し騒がしい。

 だがその喧騒の中で、
 一人の少女は、次の扉が開くのを待っていた。
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