賢者転生〜世界最強の賢者、赤ん坊からやり直す〜

KAORUwithAI

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第37話 すれ違う再会

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 馬車に揺られること、一週間。

 長い旅路の果て、
 ようやく視界の向こうに王都の城壁が見えた。

「……着いた」

 ミアは窓に張りつくようにして、
 目を輝かせている。

「おっき……!」

「……ひと、多い」

 ルークは、素直な感想を口にした。

 石畳の道。
 高く連なる建物。
 行き交う人々の数は、村とは比べものにならない。

 二人は馬車を降り、
 事前に予約してあった宿へと向かった。



「お部屋は、二部屋ですね」

 受付の言葉に、
 ルークは頷き、鍵を受け取る。

「……じゃあ、いこう」

 そう言って歩き出そうとした瞬間――

「……ちょっと待って」

 ミアが、ぴたりと足を止めた。

「別々は、嫌」

「……え?」

 ルークが振り返る。

「なんで?」

「だって……」

 ミアは、少しだけ視線を逸らす。

「知らない街だし……」

「……一人、やだ」

 ルークは、困ったように頭を掻いた。

「……でもなぁ」

 言葉を選んでいると、
 ミアが、じっとこちらを見つめてくる。

「……私と同じ部屋、嫌なの?」

「……嫌じゃない」

 即答だった。

 それを聞いた瞬間、
 ミアの顔が、ぱっと明るくなる。

「じゃあ、一緒でいいよね?」

「……決定?」

「決定」

 満面の笑み。

 ルークは、小さくため息をついた。

「……はぁ」

 こうして、
 二人は同じ部屋へ向かうことになった。



 部屋の扉を開けると、
 中は思っていたよりも簡素だった。

 机。
 椅子。
 そして――

「……ベッド、ひとつ」

 ルークが、呟く。

「……やっぱり、もう一部屋……」

 受付へ戻ろうとした、その時。

 ミアが、ルークの手を掴んだ。

「一緒でいいって、言ったじゃん」

(……言ってない)

 心の中でそう突っ込みながら、
 ルークはミアを見る。

「……ほんとに、いいの?」

「うん」

 即答。

 揺るぎない。

 ルークは、観念したように肩を落とした。

「……明日の試験の準備しよっか」

「ふふ、真面目」

 こうして、
 二人は翌日の試験に備えて準備を進めた。



 一方、その頃――
 王立魔法学園。

 セシリアは、自室で外出の準備をしていた。

「……そろそろ、着いた頃かな」

 鏡の前で身なりを整えながら、
 自然と笑みが浮かぶ。

 ようやく弟が、王都に来る日。

「……迎えに行かないと」

 そう思った瞬間。

 ――コンコン。

 ノックの音が響いた。

「どうぞ」

 扉が開き、
 一人の女子生徒が顔を出す。

「会長、どちらへ行かれるんですか?」

「……なんだ、エミリか」

 セシリアは、気を抜いた笑顔を向けた。

「今から、弟のところ」

「ようやく来たの」

 その言葉に、
 エミリは少し驚いたように目を瞬かせる。

「弟さん、来られるんですね?」

「ええ!」

 セシリアは、嬉しそうに頷く。

「五年ぶりだから、楽しみで……」

 言いかけたところで、
 エミリが、セシリアの肩に手を置いた。

「……会長」

「今日、会議があるの、
 お忘れですか?」

「……え?」

 セシリアは、一瞬きょとんとする。

「……そんな予定、あったかな?」

 とぼけた声。

「ありました」

 即答だった。

 エミリは、ぐっとセシリアの手を掴む。

「さ、行きましょう」

「ちょ、ちょっと……!」

 ずるずると引きずられながら、
 セシリアは必死に抵抗する。

「今から、弟のところ……!」

「会議、優先です」

「うぅ……!」

 廊下を引きずられながら、
 セシリアは叫んだ。

「ルークー!!」

「待ってるぞー!!」



 その頃。

 宿の前を歩いていたルークは、
 ふと立ち止まった。

「……?」

「どうしたの?」

 ミアが、不思議そうに尋ねる。

「……今誰かに、呼ばれた気が……」

「気のせいじゃない?」

「……そう、かな」

 ルークは、肩をすくめた。

 だが、
 なぜか背中に、
 ぞわりとした感覚が残る。

「……さむ」

「え? 暑いよ?」

「……きのせい」

 二人は、再び試験準備をする。



 王都の夜は、
 にぎやかで、広くて、少し落ち着かない。

 すぐ近くにいるはずなのに、
 まだ会えない。

 だが――
 すれ違いの先に、再会は待っている。

 それぞれの場所で、
 同じ名前を胸に浮かべながら。

 王都の灯りは、
 その小さな奇跡の瞬間を、
 静かに照らしていた。
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