賢者転生〜世界最強の賢者、赤ん坊からやり直す〜

KAORUwithAI

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第38話 才能は隠しきれない

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 翌朝。

 王都の空は、少しだけ曇っていた。

 宿の窓から差し込む光は柔らかく、
 街のざわめきが、すでに始まっている。

「……いよいよ、だね」

 身支度を整えながら、ミアが言った。

「……うん」

 ルークは短く答え、
 小さく深呼吸をする。

 今日は、王立魔法学園の入学試験。

 五年前、セシリアが越えた道。
 そして今、自分たちが立つ場所。

 二人は宿を出て、
 学園へ向かって歩き出した。



 王都の中心部から少し外れた道。

 学園へ近づくにつれ、人の流れも増えていく。

 そんな途中――
 一本、脇へ逸れた路地裏から、
 聞き慣れない声がした。

「……やめて……!」

 震えた声。

 足を止めたのは、ルークだった。

「……ミア」

「なに?」

「……ちょっと、まってて」

 ミアは、すぐに察した。

「……分かった」

 ルークは、一人で路地裏へと入っていく。



 そこには、三人ほどのガラの悪そうな男たちと、
 壁際に追い詰められた少女がいた。

「……そこで、何してんの?」

 突然の声に、男たちが振り返る。

「あぁ?」

「誰だ、お前」

 一人が、面倒そうに吐き捨てる。

「……関係ないだろ」

「怪我したくなかったら、
 首突っ込まない方がいいぜ」

 ルークは、首を傾げた。

「……大丈夫」

「……多分、ぼく」

「……君たちより、強いよ」

 完全に煽りだった。

「……は?」

 男の一人が、顔を歪める。

「ガキが……!」

 次の瞬間。

 男は地面を蹴り、
 ルークに殴りかかった。

 だが――
 その拳は、空を切る。

 ルークは、最小限の動きでかわし、
 同時に身体強化を発動。

 そして――
 男の腹部へ、一撃。

「――っ!?」

 鈍い音と共に、
 男の身体が宙を舞い、壁に叩きつけられた。

「な……!」

 残りの男たちが、驚愕する間もなく、
 一斉に襲いかかる。

 だが、結果は同じだった。

 拳を避け、
 足を捌き、
 急所を的確に叩く。

 数秒後。

 路地裏には、呻き声だけが残った。

 ルークは、少女の方を振り返る。

「……早く、逃げて」

「でも、お礼を......」

「良いから、行って」

 少女は、何度も頭を下げ、走り去って
いった。

 ルークは、何事もなかったかのように、
 通りへ戻る。



「……おまたせ」

「……何してたの?」

「……ちょっとね」

 ミアは、じっとルークを見る。

「……怪我、してない?」

「……してない」

「……なら、いい」

 それ以上、何も聞かなかった。

 二人は、再び学園へ向かう。



 王立魔法学園。

 その門をくぐると、
 空気が変わった。

 多くの受験生。
 張り詰めた緊張。

 そして――
 試験の開始。



 まずは、筆記試験。

 ルークは、問題用紙を見た瞬間、
 迷いなくペンを走らせた。

 無詠唱魔法の理論。
 合成魔法の可否。
 基礎四属性の相互干渉。

 どれも――
 知っていることばかりだった。

 ミアも、隣で真剣に書き進めている。

 ルークに教わった通りに。
 理解した通りに。



 続いて、実技試験。

 広い演習場。

 順番に、受験生が魔法を行使していく。

 詠唱。
 発動。
 評価。

 そして――
 ルークとミアの番。

 二人とも、
 迷うことなく、無詠唱で魔法を放った。

 教官たちの視線が、
 明らかに変わる。

 だが、試験は淡々と進み、
 大きな混乱は起きなかった。



 夕方。

 二人は宿へ戻り、
 疲れ切った身体をベッドに投げ出す。

「……つかれた……」

「……うん」

 それ以上、話すこともなく、
 二人はすぐに眠りに落ちた。



 その頃――
 学園では、採点が始まっていた。

 答案用紙を前に、
 教官たちが眉をひそめる。

 そこへ、
 アインが現れる。

「……その二人の答案、見せてもらえますか」

 渡された紙を見た瞬間、
 アインは確信した。

(……やはり)

「これ、ちょっと借りるよ」

 彼は、その答案を手に取り、
 そのまま学園長室へ向かった。



「……学園長」

「ルークとミア、
 その二人の解答です」

 エルドリヒ・ヴァルツァーは、
 答案に目を落とし――
 ゆっくりと笑った。

「……ようやく、来たか」

「実技試験は?」

「……二人とも、無詠唱でした」

 エルドリヒは、目を閉じ、
 深く息を吐く。

「……無詠唱の才女の弟」

「そして、その隣に立つ少女」

 アインは、苦笑しながら言った。

「正直……」

「私が教えることが、
 あるのかどうか……」

 エルドリヒは、静かに答える。

「あるさ」

「……我々は、
 “見届ける役”だ」



 その夜。

 宿の一室で、
 ルークとミアは、静かに眠っていた。

 まだ知らない。

 自分たちが、
 学園にとって――
 どれほど待ち望まれていた存在なのかを。

 だが、もう隠すことはできない。

 才能は、
 すでに、扉の向こう側に立っていた。
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