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第38話 才能は隠しきれない
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翌朝。
王都の空は、少しだけ曇っていた。
宿の窓から差し込む光は柔らかく、
街のざわめきが、すでに始まっている。
「……いよいよ、だね」
身支度を整えながら、ミアが言った。
「……うん」
ルークは短く答え、
小さく深呼吸をする。
今日は、王立魔法学園の入学試験。
五年前、セシリアが越えた道。
そして今、自分たちが立つ場所。
二人は宿を出て、
学園へ向かって歩き出した。
*
王都の中心部から少し外れた道。
学園へ近づくにつれ、人の流れも増えていく。
そんな途中――
一本、脇へ逸れた路地裏から、
聞き慣れない声がした。
「……やめて……!」
震えた声。
足を止めたのは、ルークだった。
「……ミア」
「なに?」
「……ちょっと、まってて」
ミアは、すぐに察した。
「……分かった」
ルークは、一人で路地裏へと入っていく。
*
そこには、三人ほどのガラの悪そうな男たちと、
壁際に追い詰められた少女がいた。
「……そこで、何してんの?」
突然の声に、男たちが振り返る。
「あぁ?」
「誰だ、お前」
一人が、面倒そうに吐き捨てる。
「……関係ないだろ」
「怪我したくなかったら、
首突っ込まない方がいいぜ」
ルークは、首を傾げた。
「……大丈夫」
「……多分、ぼく」
「……君たちより、強いよ」
完全に煽りだった。
「……は?」
男の一人が、顔を歪める。
「ガキが……!」
次の瞬間。
男は地面を蹴り、
ルークに殴りかかった。
だが――
その拳は、空を切る。
ルークは、最小限の動きでかわし、
同時に身体強化を発動。
そして――
男の腹部へ、一撃。
「――っ!?」
鈍い音と共に、
男の身体が宙を舞い、壁に叩きつけられた。
「な……!」
残りの男たちが、驚愕する間もなく、
一斉に襲いかかる。
だが、結果は同じだった。
拳を避け、
足を捌き、
急所を的確に叩く。
数秒後。
路地裏には、呻き声だけが残った。
ルークは、少女の方を振り返る。
「……早く、逃げて」
「でも、お礼を......」
「良いから、行って」
少女は、何度も頭を下げ、走り去って
いった。
ルークは、何事もなかったかのように、
通りへ戻る。
*
「……おまたせ」
「……何してたの?」
「……ちょっとね」
ミアは、じっとルークを見る。
「……怪我、してない?」
「……してない」
「……なら、いい」
それ以上、何も聞かなかった。
二人は、再び学園へ向かう。
*
王立魔法学園。
その門をくぐると、
空気が変わった。
多くの受験生。
張り詰めた緊張。
そして――
試験の開始。
*
まずは、筆記試験。
ルークは、問題用紙を見た瞬間、
迷いなくペンを走らせた。
無詠唱魔法の理論。
合成魔法の可否。
基礎四属性の相互干渉。
どれも――
知っていることばかりだった。
ミアも、隣で真剣に書き進めている。
ルークに教わった通りに。
理解した通りに。
*
続いて、実技試験。
広い演習場。
順番に、受験生が魔法を行使していく。
詠唱。
発動。
評価。
そして――
ルークとミアの番。
二人とも、
迷うことなく、無詠唱で魔法を放った。
教官たちの視線が、
明らかに変わる。
だが、試験は淡々と進み、
大きな混乱は起きなかった。
*
夕方。
二人は宿へ戻り、
疲れ切った身体をベッドに投げ出す。
「……つかれた……」
「……うん」
それ以上、話すこともなく、
二人はすぐに眠りに落ちた。
*
その頃――
学園では、採点が始まっていた。
答案用紙を前に、
教官たちが眉をひそめる。
そこへ、
アインが現れる。
「……その二人の答案、見せてもらえますか」
渡された紙を見た瞬間、
アインは確信した。
(……やはり)
「これ、ちょっと借りるよ」
彼は、その答案を手に取り、
そのまま学園長室へ向かった。
*
「……学園長」
「ルークとミア、
その二人の解答です」
エルドリヒ・ヴァルツァーは、
答案に目を落とし――
ゆっくりと笑った。
「……ようやく、来たか」
「実技試験は?」
「……二人とも、無詠唱でした」
エルドリヒは、目を閉じ、
深く息を吐く。
「……無詠唱の才女の弟」
「そして、その隣に立つ少女」
アインは、苦笑しながら言った。
「正直……」
「私が教えることが、
あるのかどうか……」
エルドリヒは、静かに答える。
「あるさ」
「……我々は、
“見届ける役”だ」
*
その夜。
宿の一室で、
ルークとミアは、静かに眠っていた。
まだ知らない。
自分たちが、
学園にとって――
どれほど待ち望まれていた存在なのかを。
だが、もう隠すことはできない。
才能は、
すでに、扉の向こう側に立っていた。
王都の空は、少しだけ曇っていた。
宿の窓から差し込む光は柔らかく、
街のざわめきが、すでに始まっている。
「……いよいよ、だね」
身支度を整えながら、ミアが言った。
「……うん」
ルークは短く答え、
小さく深呼吸をする。
今日は、王立魔法学園の入学試験。
五年前、セシリアが越えた道。
そして今、自分たちが立つ場所。
二人は宿を出て、
学園へ向かって歩き出した。
*
王都の中心部から少し外れた道。
学園へ近づくにつれ、人の流れも増えていく。
そんな途中――
一本、脇へ逸れた路地裏から、
聞き慣れない声がした。
「……やめて……!」
震えた声。
足を止めたのは、ルークだった。
「……ミア」
「なに?」
「……ちょっと、まってて」
ミアは、すぐに察した。
「……分かった」
ルークは、一人で路地裏へと入っていく。
*
そこには、三人ほどのガラの悪そうな男たちと、
壁際に追い詰められた少女がいた。
「……そこで、何してんの?」
突然の声に、男たちが振り返る。
「あぁ?」
「誰だ、お前」
一人が、面倒そうに吐き捨てる。
「……関係ないだろ」
「怪我したくなかったら、
首突っ込まない方がいいぜ」
ルークは、首を傾げた。
「……大丈夫」
「……多分、ぼく」
「……君たちより、強いよ」
完全に煽りだった。
「……は?」
男の一人が、顔を歪める。
「ガキが……!」
次の瞬間。
男は地面を蹴り、
ルークに殴りかかった。
だが――
その拳は、空を切る。
ルークは、最小限の動きでかわし、
同時に身体強化を発動。
そして――
男の腹部へ、一撃。
「――っ!?」
鈍い音と共に、
男の身体が宙を舞い、壁に叩きつけられた。
「な……!」
残りの男たちが、驚愕する間もなく、
一斉に襲いかかる。
だが、結果は同じだった。
拳を避け、
足を捌き、
急所を的確に叩く。
数秒後。
路地裏には、呻き声だけが残った。
ルークは、少女の方を振り返る。
「……早く、逃げて」
「でも、お礼を......」
「良いから、行って」
少女は、何度も頭を下げ、走り去って
いった。
ルークは、何事もなかったかのように、
通りへ戻る。
*
「……おまたせ」
「……何してたの?」
「……ちょっとね」
ミアは、じっとルークを見る。
「……怪我、してない?」
「……してない」
「……なら、いい」
それ以上、何も聞かなかった。
二人は、再び学園へ向かう。
*
王立魔法学園。
その門をくぐると、
空気が変わった。
多くの受験生。
張り詰めた緊張。
そして――
試験の開始。
*
まずは、筆記試験。
ルークは、問題用紙を見た瞬間、
迷いなくペンを走らせた。
無詠唱魔法の理論。
合成魔法の可否。
基礎四属性の相互干渉。
どれも――
知っていることばかりだった。
ミアも、隣で真剣に書き進めている。
ルークに教わった通りに。
理解した通りに。
*
続いて、実技試験。
広い演習場。
順番に、受験生が魔法を行使していく。
詠唱。
発動。
評価。
そして――
ルークとミアの番。
二人とも、
迷うことなく、無詠唱で魔法を放った。
教官たちの視線が、
明らかに変わる。
だが、試験は淡々と進み、
大きな混乱は起きなかった。
*
夕方。
二人は宿へ戻り、
疲れ切った身体をベッドに投げ出す。
「……つかれた……」
「……うん」
それ以上、話すこともなく、
二人はすぐに眠りに落ちた。
*
その頃――
学園では、採点が始まっていた。
答案用紙を前に、
教官たちが眉をひそめる。
そこへ、
アインが現れる。
「……その二人の答案、見せてもらえますか」
渡された紙を見た瞬間、
アインは確信した。
(……やはり)
「これ、ちょっと借りるよ」
彼は、その答案を手に取り、
そのまま学園長室へ向かった。
*
「……学園長」
「ルークとミア、
その二人の解答です」
エルドリヒ・ヴァルツァーは、
答案に目を落とし――
ゆっくりと笑った。
「……ようやく、来たか」
「実技試験は?」
「……二人とも、無詠唱でした」
エルドリヒは、目を閉じ、
深く息を吐く。
「……無詠唱の才女の弟」
「そして、その隣に立つ少女」
アインは、苦笑しながら言った。
「正直……」
「私が教えることが、
あるのかどうか……」
エルドリヒは、静かに答える。
「あるさ」
「……我々は、
“見届ける役”だ」
*
その夜。
宿の一室で、
ルークとミアは、静かに眠っていた。
まだ知らない。
自分たちが、
学園にとって――
どれほど待ち望まれていた存在なのかを。
だが、もう隠すことはできない。
才能は、
すでに、扉の向こう側に立っていた。
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