愚者の恋

橋本かおす

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白昼夢

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 私たちは高3になった。春との関係はいまだに続いている。休みの日にはもっぱら図書館で勉強三昧だ。そろそろ進路のことも考えなくてはいけない時期だ。


 私は京都の大学に行こうと決めていた。理由は、京都という場所が風情があって一度は住んでみたい場所という安易な発想だ。春にも京都の大学に行く予定であるということは伝えていた。


 すると彼女も私と離れたくないらしく京都の同じ大学を受けることに決めた。


『ストーカーみたいに思われたくないけど私離れたくないんだ』


 彼女はそう言っていた。私も春と同じ気持ちである。一緒の大学を受けて一緒のキャンパスライフを送れるなんて夢のような話である。私と春は来る日も来る日も勉強に励んでいた。


 今思い出してもこの時の春の言葉は鮮明に胸に刻まれている。


『男の子は恋愛してたら成績が上がって女の子は恋愛してたら成績が落ちるらしいよ。実際今は私の方が成績悪いし(笑)でもがんばるぞ~』


 どこで聞いたかわからない話を自分の理論のように得意げに話す彼女はとても可愛かった。


『大学に入って私よりも可愛い女の子がいたらどうする?』


 そんな風に未来を予見して嫉妬する彼女も可愛かった。


 もう自分にはこの子しかいないとこの時の自分は強く思っていた。自分のことがこんなにも好きで愛してくれている。そんな子と付き合えたのが私にはとても幸せだった。


 宗教なんて信じていないけれど神様はいるのかもしれない。日頃の私の行いを神は見ていて私に幸福という存在を与えてくれたのかもしれない。そう思うほどに幸せの絶頂期であった。


 しかし、幸せは永遠に続かない。出会いがあれば別れがある。それは当然のことである。彼女との出会いは必然で別れも必然だったのかもしれない。


 今にして思えばこの高校1年生から大学2年生の出来事は白昼夢だったのかもしれないと思った。
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