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幕間
ヒロインとしての自覚
しおりを挟む真名はデビュタントの年齢になった子どもたちに明かされる。
私も例外なく、10歳の誕生日に教えられた。そのとき、ここが乙女ゲームの世界だということに気づいた。
レアーヌ・リリス・ダンフォール。
それは「紅乙女の幻想曲~ファンタジア~」というタイトルの乙女ゲームのヒロインだ。
そう、それはまさに私。
転生者であるヒロインがクルーゼ学園で、素敵な攻略対象者と巡り合う。
そして学園の試験や一部の攻略対象者にいる婚約者(悪役令嬢)からの嫌がらせ、ある一定周期でモンスターが大量発生する魔物暴走現象の対応など様々な困難を乗り越えて恋に落ち、結ばれていくストーリーだ。
…今までこの世界で育ってきた常識では、婚約者がいる異性に言い寄るなんて言語道断。前の世界でも、彼女がいる男に言い寄られたら顰蹙を買うだろう。
でも今回は見逃せない。そう、この乙女ゲーには隠しキャラがいて、私はその隠しキャラが推しなのだ。
イェルク・ヴェラリオン。ゲームの舞台であり、今私が住んでいるプレヴェド王国の南に位置するヴェラリオン皇国の第一皇子。精霊族のひとりだ。
皇帝の座には興味がなく、ふらふらと国内を回っては冒険者としてモンスター退治をしたりダンジョン攻略をしたりしている。
彼はプレヴェド王国にはいない。あるルートを進むことで、プレヴェド王国にあるクルーゼ学園へ留学してくるのだ。
そのルートは、第二王子イーリスの攻略ルート。
イーリスは婚約者であるエリザベス・フェーマスを愛しているものの、心の奥底では外交官の娘として完璧な彼女にコンプレックスを抱いている。
だから、イーリスルートには分岐点がある。
エリザベスは嫉妬深いキャラクターだ。だから、イーリスと協力して不貞しているように見せかけて、彼女を追い込むのだ。
イーリスの好感度が高すぎず、低すぎずの状態でイェルクを招いた夜会を迎えると、エリザベスを断罪しつつもイーリスは彼女がこれ程までに自分のことを愛してくれているとわかって、和解する。
好感度を上げすぎるとこの夜会で断罪、婚約破棄をしてしまうので好感度には要注意だ。
『楽しそうだね』
『どうしたの、レアーヌ』
「ふふふ…ねぇ、ヴェラリオンの第一皇子のこと知ってる?噂ではとってもいい人だって聞いたの」
『知ってるよ!イェルクいいひと』
『きになるの?』
「ええ、噂で聞いて、とっても素敵な人だなって…お会いしたいわ」
だからね、と言葉を続ける。
「私が魔法の練習をしてるとき、邪魔してちょうだい」
『どうして?』
『じゃましたら、レアーヌこまるよ』
「困りたいの。困れば、イェルク様を講師としてこちらにお呼びできるかもしれないから」
弟皇子は次期皇帝として決定しているから、国外には出られない。
全属性適正で精霊の愛し子である私を教えられるのは、冒険者として実力を積んだイェルク以外いない。
だからゲームでは、イーリスを通してヴェラリオン皇国にヒロインの講師兼留学生としてイェルクをクルーゼ学園へ招く。
そう。ゲームのとおりにやればいいのだ。
そうすれば私はイェルクに会える。精霊の愛し子の効果は精霊族にも効くって設定資料集にあった。ただ、精霊と違って精霊族は理性が強いのでそう簡単には靡いてくれない。
そこで登場するのが、サポート道具の魔道具だ。
攻略対象キャラの好感度をアップしてくれるという優れもの。
普通に都内でも流通しているからそこら辺の雑貨店に入れば買える。
年齢制限があるため、購入できるのは入学後になるがそれで問題ない。
ただひとつ気になることがある。レオナルド・プレヴェド王太子のことだ。
設定では、ひと月前にあったデビュタントでの晩餐会でレオナルドの婚約者が決まり、数日後に発表されるはずだった。
でもいつまで経っても婚約者が発表されない。ゲームではヴィクトリア・クランク侯爵令嬢が婚約者となっていたはずだ。
それとなく、お父様やお母様に聞いてみたけど分からなかった。
精霊たちにお願いして情報を集めてもらったところ、レオナルドに好きな人ができたらしい。あの日、婚約してほしいとお願いしたが振られたそうで。
……そんな出来事、設定資料集にはなかった。
でも、シナリオの強制力というものがあるから大丈夫だろう。どのみち、レオナルドルートは選ばないから問題はない。
「ふふふ、楽しみだわ」
『ぼくらもぼくらも!』
『レアーヌのねがいが叶うように、おてつだいするね!』
「ありがとう、みんな」
さあ、私のためのストーリーが始まるまでちゃんと勉強しなくちゃ!
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