【完結】彼女が幸せを掴むまで〜モブ令嬢は悪役令嬢を応援しています〜

かわもり かぐら(旧:かぐら)

文字の大きさ
24 / 48
幕間

ヒロインとしての自覚

しおりを挟む



 真名はデビュタントの年齢になった子どもたちに明かされる。
 私も例外なく、10歳の誕生日に教えられた。そのとき、ここが乙女ゲームの世界だということに気づいた。

 レアーヌ・リリス・ダンフォール。
 それは「紅乙女べにおとめの幻想曲~ファンタジア~」というタイトルの乙女ゲームのヒロインだ。
 そう、それはまさに私。

 転生者であるヒロインがクルーゼ学園で、素敵な攻略対象者と巡り合う。
 そして学園の試験や一部の攻略対象者にいる婚約者(悪役令嬢)からの嫌がらせ、ある一定周期でモンスターが大量発生する魔物暴走現象アウトオブコントロールの対応など様々な困難を乗り越えて恋に落ち、結ばれていくストーリーだ。

 …今までこの世界で育ってきた常識では、婚約者がいる異性に言い寄るなんて言語道断。前の世界でも、彼女がいる男に言い寄られたら顰蹙を買うだろう。
 でも今回は見逃せない。そう、この乙女ゲーには隠しキャラがいて、私はその隠しキャラが推しなのだ。

 イェルク・ヴェラリオン。ゲームの舞台であり、今私が住んでいるプレヴェド王国の南に位置するヴェラリオン皇国の第一皇子。精霊族のひとりだ。
 皇帝の座には興味がなく、ふらふらと国内を回っては冒険者としてモンスター退治をしたりダンジョン攻略をしたりしている。
 彼はプレヴェド王国にはいない。あるルートを進むことで、プレヴェド王国にあるクルーゼ学園へ留学してくるのだ。

 そのルートは、第二王子イーリスの攻略ルート。
 イーリスは婚約者であるエリザベス・フェーマスを愛しているものの、心の奥底では外交官の娘として完璧な彼女にコンプレックスを抱いている。
 だから、イーリスルートには分岐点がある。

 エリザベスは嫉妬深いキャラクターだ。だから、イーリスと協力して不貞しているように見せかけて、彼女を追い込むのだ。
 イーリスの好感度が高すぎず、低すぎずの状態でイェルクを招いた夜会を迎えると、エリザベスを断罪しつつもイーリスは彼女がこれ程までに自分のことを愛してくれているとわかって、和解する。
 好感度を上げすぎるとこの夜会で断罪、婚約破棄をしてしまうので好感度には要注意だ。


『楽しそうだね』
『どうしたの、レアーヌ』
「ふふふ…ねぇ、ヴェラリオンの第一皇子のこと知ってる?噂ではとってもいい人だって聞いたの」
『知ってるよ!イェルクいいひと』
『きになるの?』
「ええ、噂で聞いて、とっても素敵な人だなって…お会いしたいわ」


 だからね、と言葉を続ける。


「私が魔法の練習をしてるとき、邪魔してちょうだい」
『どうして?』
『じゃましたら、レアーヌこまるよ』
「困りたいの。困れば、イェルク様を講師としてこちらにお呼びできるかもしれないから」


 弟皇子は次期皇帝として決定しているから、国外には出られない。
 全属性適正セクステュープルで精霊の愛し子である私を教えられるのは、冒険者として実力を積んだイェルク以外いない。
 だからゲームでは、イーリスを通してヴェラリオン皇国にヒロインの講師兼留学生としてイェルクをクルーゼ学園へ招く。

 そう。ゲームのとおりにやればいいのだ。
 そうすれば私はイェルクに会える。精霊の愛し子の効果は精霊族にも効くって設定資料集にあった。ただ、精霊と違って精霊族は理性が強いのでそう簡単には靡いてくれない。

 そこで登場するのが、サポート道具の魔道具だ。
 攻略対象キャラの好感度をアップしてくれるという優れもの。

 普通に都内でも流通しているからそこら辺の雑貨店に入れば買える。
 年齢制限があるため、購入できるのは入学後になるがそれで問題ない。


 ただひとつ気になることがある。レオナルド・プレヴェド王太子のことだ。
 設定では、ひと月前にあったデビュタントでの晩餐会でレオナルドの婚約者が決まり、数日後に発表されるはずだった。
 でもいつまで経っても婚約者が発表されない。ゲームではヴィクトリア・クランク侯爵令嬢が婚約者となっていたはずだ。

 それとなく、お父様やお母様に聞いてみたけど分からなかった。
 精霊たちにお願いして情報を集めてもらったところ、レオナルドに好きな人ができたらしい。あの日、婚約してほしいとお願いしたが振られたそうで。

 ……そんな出来事、設定資料集にはなかった。
 でも、シナリオの強制力というものがあるから大丈夫だろう。どのみち、レオナルドルートは選ばないから問題はない。


「ふふふ、楽しみだわ」
『ぼくらもぼくらも!』
『レアーヌのねがいが叶うように、おてつだいするね!』
「ありがとう、みんな」



 さあ、私のためのストーリーが始まるまでちゃんと勉強しなくちゃ!




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

処理中です...