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第一章 死んでないが死にかけた
第3話 出会い
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「君、大丈夫!?」
自分を案じる声が空から降ってくる。
蛇から視線を外し、声のしたほ方を向くと大きな樹木の幹の上に女性が立っていて、こちらを見下ろしていた。
その光景はまるで一つの絵のようだった。
緑豊かな自然の中に溶け込むような美しさにオレは息を呑む。
金色のロングヘアーが風に柔らかく揺れる。
まるでゲームの中に登場するような魔法使いさながらの格好だ。
「今助けるわ! 魔導の序、炎! 燃え盛れ、焔の槍‼」
彼女が掲げた杖に炎が突然纏わり付き、幾本もの槍となって蛇に襲い掛かる。
(え……一体何が……?)
杖から炎が飛び出した。
2回言うが、杖から(?)炎が飛び出したのだが。
これは盛大なドッキリとか、或いはマジックショーとかだろうか。
あんぐり口を開けて炎上する蛇を見つめる。
側にいるだけで熱風が吹き付け、焦げたような匂いが漂い始める。
慌てて距離を置き、離れた所から様子を見守っていると──。
拘束された蛇は恐ろしい悲鳴を上げてうねっていたが、やがて黒い塊と化して地に伏す。
その重量から辺り一体に地鳴りがし、樹木の何本かは巻き込まれて薙ぎ倒された。
「おお……すげー……!」
どういった原理なのか、倒木は発生したものの草木には一切燃え移っていない。
「あのー……これって何かの撮影かドッキリですか? オレ、さっきまで気絶してたからイマイチ状況が……」
頭を搔きながら彼女に今の状況について説明を乞おうとする。
しかし彼女は軽い身のこなしで木から飛び降りると怖い形相でこっちにやってきた。
(なッ……!? あの高さ、ビルの三階ぐらいはあるぞ……!?)
どうやって飛び降りたのだろう。
背中にワイヤーロープ等が付いている様子はない。
ここから見えているのは天使のような翼だけだ。
しかも女の子と距離が近付くにつれて、違和感はどんどん膨らんでいく。
彼女がどんどん見上げるように高くなっていくのだ。
目の前に来た時、彼女と俺の身長は半分程の差になっていた。
(身長高っ……オレだって165センチはあるってのにその倍って……どうなってるんだ?)
何かがおかしい、そう思い始めていた時だった。
彼女は前屈みになり、オレの肩を掴んで怒った表情で言葉を発した。
「何で君みたいな幼い子がこんな所に一人でいるの!? 危ないじゃない!!」
「えっ……」
他の誰かのことかと思ったけど、辺りには自分しかいないし、彼女の視線は一心に自分に注がれている。
オレは年齢は20代前半だが、そこまで童顔じゃないし子供に見間違えられたこともない。
困惑を隠せないまま、オレは彼女をじっも見返して返事をする。
「あの……オレ、二十歳過ぎてますけど……」
「はあ? 何言ってるの? 君、どう見ても子供じゃない! 私をからかおうたってそうはいかないんだから」
「いや、本当に……」
「事情があるのは分かったけど、どうせ嘘つくならもっとバレにくい嘘吐きなさいよね」
彼女は腕を組んで頬を膨らませる。
その様子は背後に転がる焦げた蛇とはあまりにアンバランスだが、とても可愛くて和む……ってそうじゃなくてだな。
本当のことを和言ってるのに信じてもらえないのは何故だ。
「君、パーティの人達は? はぐれちゃったの?」
「元々一人ですけど……あの、これって何かのイベントですか?」
「イベント……? こんな魔物がウヨウヨしてる所でイベントなんて開かれる訳ないじゃない。怪我人が出ちゃうもの」
オレの問いに彼女は怪訝そうな顔で返答をする。
これが演技だというのなら早く止めて、この混乱した頭を鎮めさせてほしい。
が、彼女もどんどん不安そうになっているのでどうやら、からかって遊んでいるわけではないようだ。
「ちょっと、大丈夫? とても顔色が悪いけど……」
覗き込んでくる彼女の顔がぐにゃぐにゃ溶ける。
まるで飴細工のようで、目を擦るが視界は何も変わらない。
その内、自分が立っているのか座っているのかすら分からなくなり、気が付いたらオレは空を見上げていた。
「ねぇ、どうしたの!? す、すぐお医者様の所に連れて行くから!」
軽々と彼女がオレを抱き上げる。
その温もりに、自分の身体が芯まで冷え切っていたのだと気付かされる。
(あぁ……ヤバい、本当にどこかから出血してたのかも……)
徐々に暗く、狭まっていく視界。
オレはそのまま、2回目の失神に陥ったのだった。
自分を案じる声が空から降ってくる。
蛇から視線を外し、声のしたほ方を向くと大きな樹木の幹の上に女性が立っていて、こちらを見下ろしていた。
その光景はまるで一つの絵のようだった。
緑豊かな自然の中に溶け込むような美しさにオレは息を呑む。
金色のロングヘアーが風に柔らかく揺れる。
まるでゲームの中に登場するような魔法使いさながらの格好だ。
「今助けるわ! 魔導の序、炎! 燃え盛れ、焔の槍‼」
彼女が掲げた杖に炎が突然纏わり付き、幾本もの槍となって蛇に襲い掛かる。
(え……一体何が……?)
杖から炎が飛び出した。
2回言うが、杖から(?)炎が飛び出したのだが。
これは盛大なドッキリとか、或いはマジックショーとかだろうか。
あんぐり口を開けて炎上する蛇を見つめる。
側にいるだけで熱風が吹き付け、焦げたような匂いが漂い始める。
慌てて距離を置き、離れた所から様子を見守っていると──。
拘束された蛇は恐ろしい悲鳴を上げてうねっていたが、やがて黒い塊と化して地に伏す。
その重量から辺り一体に地鳴りがし、樹木の何本かは巻き込まれて薙ぎ倒された。
「おお……すげー……!」
どういった原理なのか、倒木は発生したものの草木には一切燃え移っていない。
「あのー……これって何かの撮影かドッキリですか? オレ、さっきまで気絶してたからイマイチ状況が……」
頭を搔きながら彼女に今の状況について説明を乞おうとする。
しかし彼女は軽い身のこなしで木から飛び降りると怖い形相でこっちにやってきた。
(なッ……!? あの高さ、ビルの三階ぐらいはあるぞ……!?)
どうやって飛び降りたのだろう。
背中にワイヤーロープ等が付いている様子はない。
ここから見えているのは天使のような翼だけだ。
しかも女の子と距離が近付くにつれて、違和感はどんどん膨らんでいく。
彼女がどんどん見上げるように高くなっていくのだ。
目の前に来た時、彼女と俺の身長は半分程の差になっていた。
(身長高っ……オレだって165センチはあるってのにその倍って……どうなってるんだ?)
何かがおかしい、そう思い始めていた時だった。
彼女は前屈みになり、オレの肩を掴んで怒った表情で言葉を発した。
「何で君みたいな幼い子がこんな所に一人でいるの!? 危ないじゃない!!」
「えっ……」
他の誰かのことかと思ったけど、辺りには自分しかいないし、彼女の視線は一心に自分に注がれている。
オレは年齢は20代前半だが、そこまで童顔じゃないし子供に見間違えられたこともない。
困惑を隠せないまま、オレは彼女をじっも見返して返事をする。
「あの……オレ、二十歳過ぎてますけど……」
「はあ? 何言ってるの? 君、どう見ても子供じゃない! 私をからかおうたってそうはいかないんだから」
「いや、本当に……」
「事情があるのは分かったけど、どうせ嘘つくならもっとバレにくい嘘吐きなさいよね」
彼女は腕を組んで頬を膨らませる。
その様子は背後に転がる焦げた蛇とはあまりにアンバランスだが、とても可愛くて和む……ってそうじゃなくてだな。
本当のことを和言ってるのに信じてもらえないのは何故だ。
「君、パーティの人達は? はぐれちゃったの?」
「元々一人ですけど……あの、これって何かのイベントですか?」
「イベント……? こんな魔物がウヨウヨしてる所でイベントなんて開かれる訳ないじゃない。怪我人が出ちゃうもの」
オレの問いに彼女は怪訝そうな顔で返答をする。
これが演技だというのなら早く止めて、この混乱した頭を鎮めさせてほしい。
が、彼女もどんどん不安そうになっているのでどうやら、からかって遊んでいるわけではないようだ。
「ちょっと、大丈夫? とても顔色が悪いけど……」
覗き込んでくる彼女の顔がぐにゃぐにゃ溶ける。
まるで飴細工のようで、目を擦るが視界は何も変わらない。
その内、自分が立っているのか座っているのかすら分からなくなり、気が付いたらオレは空を見上げていた。
「ねぇ、どうしたの!? す、すぐお医者様の所に連れて行くから!」
軽々と彼女がオレを抱き上げる。
その温もりに、自分の身体が芯まで冷え切っていたのだと気付かされる。
(あぁ……ヤバい、本当にどこかから出血してたのかも……)
徐々に暗く、狭まっていく視界。
オレはそのまま、2回目の失神に陥ったのだった。
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