どっちも好き♡じゃダメですか?~After Story~

藤宮りつか

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After Story

    春~新たなる始まり~(9)

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 俺に体力がないから、二人の恋人とするセックスは週に一回ずつ、それも同じ日は避ける、という決まりを作ったはずなんだけど
「んんっ……ぁっ、ん……んっ……ぁっ……」
 前にも言ったように、その決まりは場合によっては簡単に破られてしまうこともある。
 それというのも、二人が週に一度のセックスでは物足りないと思っていること、二人とも隙あらばいつでも俺とセックスしたいと思っていることに加え、俺自身も流されやすいところが大いに関係があるのだと思う。
 もちろん、俺としては雪音や頼斗に決まりを守って欲しいと思う気持ちはあるんだけれど、そのわりには簡単に流されてしまう俺に
「お前さ、そろそろ〈セックスは週に一回だけ〉とかケチなこと言ってないで、〈ヤりたい時にシてもいい〉ってことにしてくんね?」
 頼斗からもそんな事を言われてしまった。
「うぅ……ゃ、ん……それは……」
 自分でもいつかそう言われる日が来るんじゃないかと思っていた。
 だって、俺の言いつけを守らない二人に俺はいつも寛大だし、これといったペナルティーを科すわけでもないんだもん。
 それどころか、いざセックスを始めてしまえばしっかり感じちゃうし、いっぱい気持ち良くなっている姿を二人に見せ放題でもある。
 そんな俺を見て、〈もう週一じゃなくても良くね?〉って頼斗が思うのは無理もないよね。
 でも、だからといって今の頼斗の発言を受け入れるわけにはいかない。
 もし、俺が二人とするセックスに何の制限も掛けなくなってしまったら、それこそ俺はセックス三昧の日々を送ることになってしまうじゃん。さすがにそれはちょっと無理。
 恋人が二人いる以上、何かしらの制限を設けることは、二人を平等に扱うためでもあるし、〈無制限にセックスしていい〉ってことになったら、俺の身体は一ヶ月ももたないんじゃないかと思う。
「それは……ダメっ……ん……雪音や頼斗とするセックスは好き……だけど……何の制限も掛けないのは……ぁんっ……俺の身体がもたない、よぉ……」
 ちょっと前に雪音とセックスしたばかりだというのに、今度は頼斗のナニに中を掻き回されるのが堪らなく気持ちいい俺は、まるで泣いているかのような途切れ途切れになる声で、頼斗からの申し出を必死に断った。
 しかし
「俺達とするセックスが好きなのは認めるんだ」
 どうやら余計な一言が入ってしまったらしく、その部分を意地悪く抜粋してきた頼斗は俺の腰を掴み、俺の奥をズンッと深く突き上げてきた。
「んぁあっ! んっ……ゃっ、あ……ぁあっ……ん……」
 身体中を突き抜ける強い刺激と快感に、俺は目の前がチカチカとした。
 更に、俺の奥を意地悪く突き上げてきた頼斗が、そのまま奥をナニの先でぐりぐりと刺激してくるから
「ゃあっ、ん……待っ……ぁんんっ……ゃんっ……ぁあっ……」
 俺の腰はガクガクと震え、勃ち上がったナニの先っぽからは透明な蜜が滴り落ちてしまった。
「すげーやらしい。コレ、そんなに気持ちいいの?」
「んんっ……ぁんっ……んんー……」
 奥を何度も激しく突き上げられるのではなく、捏ねるように掻き回されることも、俺が堪らなく気持ち良くなってしまうことを知っている癖に。あえて「気持ちいいの?」って聞いてくるなんて意地悪だよ。俺が気持ち良くなっているのなんか見ればわかるじゃん。
 だけど
「ぁんっ……んんっ……気持ちい……気持ちいいよぉ……」
 俺も無意識のうちに言っちゃうんだよね。「気持ちいい」って。
 多分、あれこれ考える余裕なんてないから、正直な気持ちが口から出てしまうだけなんだろうけど。
「そっか。気持ちいいのか。じゃあ、もっといっぱいがいいよな」
「んんっ……ぁっ……ぁんんっ……」
 もっといっぱいなんてされちゃったら、俺、あっという間にイっちゃいそうなんだけど。
 でも、頼斗だってそんな事はわかっている。わかっているから、俺がイくかイかないかの絶妙な腰の動きで、俺が喘ぎ疲れるまで俺のことを感じさせてきたりするんだよね。
 俺の喉、今日はもう喘ぎ疲れて限界なはずなのに、まだこんなに声が出るんだと自分でもびっくりだよ。
 っていうか、俺が今、自分の部屋で頼斗とセックスしていることは雪音にもバレバレなのでは?
 確かに、雪音はしばらくの間、頼斗が俺を独占することを許してはいるけれど、その頼斗が俺とセックスすることまで許しているのだろうか。
 ひょっとして、雪音の言う「独占してもいいよ」は、セックスすることを前提に放たれた言葉だったとでもいう?
 あり得なくはない話だ。だって、もし雪音が頼斗に
『しばらく深雪を独占してもいいぞ』
 なんて言われたら、雪音は絶対俺とセックスするつもりになるもん。
 自分がそうなら頼斗もそうだ、ということで、雪音は今の状況を知った上で、俺と頼斗の好きにさせているのだろうか。
 それはそれでちょっと――いや、かなり恥ずかしい。
 だって、俺がこうして頼斗とセックスしている声が、全部雪音に聞かれていたらどうするの? ってなるじゃん。
 雪音のことだから、どうせ俺と頼斗の様子は隣りの部屋で窺っていそうだし。
 俺と頼斗の会話やら俺の喘ぎ声が全部雪音の耳に入っていたら、そんな羞恥プレイはないって感じじゃん。
「ゃっ……ぁ……ダメっ……ぁんっ……頼斗……ダメぇっ……」
 今、この状況が雪音に全部筒抜けだと思うと気持ちが焦ると同時に、何とも言えない興奮を覚えた。
 焦る気持ちは当然だとして、そこに興奮まで覚えてしまうのはどうかと思う。俺、一体何に興奮しているの?
 いつも雪音や頼斗が俺にいっぱい恥ずかしい思いをさせてくるから、俺も羞恥が興奮へと変わる体質にでもなっちゃったのかな?
 できれば自分にそんなアブノーマルな一面があるとは思いたくないんだけれど。
「ん? 何がダメなんだよ。イきそうになるのがダメなのか?」
「んんっ……じゃなくて……ぁんんっ……」
 頼斗が与えてくる絶妙な加減の刺激に俺がイきそうになっているのは確かだけれど、俺が制止したいのはそこじゃない。
 むしろ、制止したいのは頼斗じゃなくて俺自身で、頼斗に与えられる刺激にどうしても上がってしまう声を、どうにかして抑えなくては……と必死になった。
 それなのに
「今更恥ずかしがることなんかないだろ? もう散々俺の前で恥ずかしい姿を嫌っていうほど見せてんだからさ。むしろ、もっと乱れてくれてもいいくらいだ」
 なんて言う頼斗は、俺にもっと淫らな声を上げさせようとして俺の弱いところばかり攻めてくるし、挙げ句の果てには
「どうせなら雪音にも聞かせてやろうぜ。俺とお前がセックスしてる声」
 なんて言ってきて、俺はもう……。
「ぁんっ! ゃっ、あ……ぁんっ、あっ……ぁんんっ……」
 自分でもどうしていいのかわからないくらい、感じる声がひっきりなしに上がってしまった。
「お? どうした? なんかすげー感じてるじゃん。もしかして、雪音に聞かれてるって思うと興奮しちまうの?」
「ゃんんっ……ゃっ……ぁんっ……そんなこと……ぁあんっ……」
「そっかそっか。深雪は俺とエッチな事してる時の声を雪音に聞かれると、自分でも制御できないくらいにやらしい声が止まらなくなっちまうんだな。かわい」
「ちがっ……ぁんんっ……ぁっ……違うもんっ……んんっ……」
 くぅ……。一体何が悲しくて、二人いる彼氏の一人に、もう一人の彼氏とセックスしている時の声を聞かせなくちゃいけないんだよ。
 三人でシている時ならまだしも、頼斗と二人だけでセックスしている時の声を雪音に聞かせるなんて罰ゲームでしかないよ。
 しかも、それで「興奮してる」なんて言われたら、俺はどんだけ変態なの? ってなっちゃうし。
「ほらほら、深雪。もっとエッチで可愛い声をいっぱい雪音に聞かせてやれよ。ちょっと前に散々聞かせてやっちゃいるんだろうが、ヤってる時の深雪の声は何回聞いてもいいもんだし、一日中でも聞いていられるからな」
「んんっ……何言って……ゃあっ、んんっ……っ!」
 そもそも聞かせてどうするの? って感じだし、俺と頼斗がセックスしている声を聞いた雪音が
『興奮したからもう一回シよう』
 なんて言い出したらどうするつもりだよ。
 ただでさえ、今日はもう週一のセックスを二人とやっちゃっているのに、頼斗のせいで雪音の暴走が始まったら、この後〈三人で……〉って流れになりそうで怖いよ。
 もうすぐ新学期が始まるし、雪音も高校生になるんだから、今年の春休みはもっとゆっくりとした気持ちで新学期を迎える準備がしたかったっていうのに。
「ぁんっ……ぁっ……頼斗っ……ほんとにもう……ぁあんっ!」
「今日の深雪の声、いつもより甘くて可愛く聞こえる。もっと聞きたい」
「んんっ……ゃあっ、ん……ぁっ、ん……んんっ……」
 さっきからもう充分過ぎるくらい聞かせているんだから、もっと聞きたいだなんて欲張りだよ。これ、絶対明日になったら声が枯れているパターン。
 それでも
「深雪可愛い。大好きだよ。愛してる」
 頼斗に「大好き」と「愛してる」を言われると俺も嬉しいから、結局頼斗の要望に応えてあげる結果になってしまう俺だった。



 その後。俺と頼斗の睦事が終わったタイミングを見計らったように、俺の部屋に現れた雪音が
「二人ともさ、僕がただ黙って二人のすることを見守っているとでも思ったの? まあ、ある意味貴重な体験ができたっちゃできたけど。でも、それに伴うストレスもかなりのものだったんだからね」
 と言い始めた時は、これから雪音の長い説教が始まるのだと思った。
 しかし、雪音は口で言うほど怒っているわけでもなく、何だかよくわからない言葉をつらつらと並べたかと思うと
「ま、早い話、僕がもう一度深雪とセックスすればいいだけのことなんだけどね。今日はもう僕も頼斗も一回ずつシちゃったから、今度は三人でシよ」
 なんて真顔で言うから、俺は自分の嫌な予感が的中してしまったのだと悟った。
 やっぱり俺と頼斗がセックスしている時の声を聞いて、雪音がおとなしくしているはずがなかったんだ。絶対こうなるって俺もわかっていたよね。
 そして、三人でするセックスはノーカウントになってしまうせいで、今日の俺は一日に三回もセックスする羽目になった。
 おかげで俺の声は明日を待つまでもなく枯れ果ててしまい、仕事から帰って来た父さんや宏美さんに
「どうしたんだ? 深雪。その声」
「風邪でも引いちゃったのかしら。春だからって油断しちゃダメよ? 日中は暖かくても、夜はまだ肌寒かったりするんだから」
 と心配をされてしまった。
 二人にしなくてもいい心配を掛けてしまった俺は、ヒリヒリと痛む喉にしかめ面になりながら
(新学期が始まってしまう前に、もう一度俺達三人の中でしっかりとした決まり事を作っておかなくちゃ……)
 そう強く心に誓った。


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