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モノグサ彼氏とラブラブ大作戦っ!
Chapter 20
しおりを挟む俺が天馬を休憩室で待っている間、俺と水嶋さんがどんな会話をしていたのかは、家に帰ってから包み隠さず天馬に報告した。
ということはつまり、水嶋さんが天馬のことをどう思っているのかも天馬の知るところとなり、それはある意味水嶋さんに協力したことになるような気がするけれど、そもそも水嶋さんは天馬が好きだって気持ちを隠してはいない。天馬が鈍いから気付かないだけで、天馬以外の人間は全員気付いていることだと思う。
だから、水嶋さんが天馬のことを好きであることを天馬本人に伝えてしまったところで、あまり水嶋さんに協力した気持ちにもならなかった。
天馬も天馬で、俺から
「水嶋さんは天馬の彼女になりたいみたい」
と聞かされても、水嶋さんを恋愛対象として意識するようになるどころか
「いや。無理なんだが」
と心の底から困惑した表情を見せたものだから、逆に俺の方が水嶋さんに対して申し訳ない気持ちになったほどだ。
天馬は俺が水嶋さんから天馬との仲を取り持って欲しいと頼まれたことや、水嶋さんと安西さん、俺と天馬の四人でダブルデートをしようと提案されて、俺が必死に断ろうとした話を聞くと、何やら少し頭が痛そうにしていたけれど、俺がうっかり水嶋さんに天馬との関係をバラしそうになってしまい、天馬のことを咄嗟に“親友”だと偽ってしまった話を聞いた時は
「別にバラしても良かったんだけどな。その方が亜美も俺や智加に付き纏わなくなりそうだから」
と、心なしか少し残念そうな顔をした。
だけど、実際に俺達の関係が水嶋さんに知られた後のことを想像したのだろう。
「いや……。言わなくて正解だったかな。知ったら知ったであいつは余計に面倒臭いことになりそうだしな」
すぐさま考えを改め直した。
うん。俺もそう思う。だから俺、本当は偽りたくなかった天馬との関係を、水嶋さんの前では偽っちゃったんだもん。
俺が水嶋さんに何をどう口説かれていたのかがよくわかった天馬は、安心したと同時に
「話は変わるけど、智加の保護者を名乗るあの謎の人物は何者なんだ?」
今度は俺が知らないところで天馬に絡んでくれた溝口さんのことを俺に聞いてきた。
そうだった。溝口さんは溝口さんで天馬に余計なことをしてくれていたんだよね。
さっき天馬が水嶋さんに絡まれた俺の話を聞いて頭が痛そうな顔をした理由がわかった。これは確かに頭が痛くなりそうだ。
水嶋さんにしても溝口さんにしても、本当に余計なことをしてくれて迷惑なんだから。
まあ、溝口さんにはお世話になることも多いんだけどさ。
でもさ、前に溝口さんが天馬の姿を見に行こうとした時、俺、「やめてください」って言ったよね?
それなのに、まだ天馬の姿を見るだけなら許せたものを、天馬に声まで掛けてくれちゃってさ。俺の言うことなんてちっとも聞いてくれないじゃんか。
それにしても、初対面でいきなり俺の保護者を名乗るってどういうことなの? 一体溝口さんは天馬にどんな絡み方をしたんだよ。
「あ……あの人は俺のお世話係っていうか、俺に色々と仕事を教えてくれる溝口さんっていうんだけどね。なんか俺のことをやたらと可愛がってくれるから、勝手に保護者気分になっちゃってるみたい」
天馬に対し、溝口さんのことをどう説明していいものかと迷ったりもしたけれど、まずは普通に説明することにしてみた。
今のところ、俺は溝口さんにしょっちゅう絡まれたり、さり気なく口説かれたりはしているものの、本気で溝口さんから迫られて困るようなことにはなっていないし。
溝口さんがどこまで俺に本気なのかもわからないから、溝口さんが俺を狙っている情報は、もう少し溝口さんの様子を見てから天馬に報告しようと思っている。
これって天馬に隠し事をしていることになるのかな? 俺にそんなつもりはないんだけれど。
でも、もし話の流れでそれっぽいことを天馬に聞かれたら、俺もそれとなく溝口さんから狙われているかもしれない話はしておこう。もちろん、その時は俺の身の潔白と、俺が天馬一筋だって主張もしっかりしておくつもり。
「そうか。あの人、溝口さんっていうんだな。いきなり話し掛けられてびっくりしたうえ、凄い絡み口調でこられたから、名札を見る余裕がなかった。向こうも名乗ってくれなかったしな」
「~……」
ああもう……。なんとなく想像ができちゃうけど、俺の彼氏に何してくれちゃってるんだろう。今度会った時にはちょっと説教しておかなくちゃ。
「あの人、智加のことを“ちいちゃん”って呼んでたけど、智加はいつもあの人から“ちいちゃん”って呼ばれてるのか?」
「ぐぅ……」
もーっ! 本当に余計なことをっ!
大体ね、俺のことを“ちいちゃん”だなんてふざけた呼び方をしているのは溝口さんくらいのものだよ。天馬もいきなり“ちいちゃん”なんて言われても、それが誰のことかはすぐにわからなかったんじゃない?
「最初に“お前がちいちゃんと同棲中の彼氏、高杉天馬かっ!”って言われた時は、二重の意味で“誰?”ってなったけどな。俺の知らない人間が、俺の知らない人間のことで俺に絡んできたのかと思った」
やっぱり。いくら天馬が日頃から俺のことを「智加」って下の名前で呼んでくれていても、《智加=ちいちゃん》とは思わないよね。
大学生になった俺が、大学生になってから知り合った相手から、そんな子供っぽい呼ばれ方をしているとは天馬も思わないだろうしさ。
(っていうかさぁ……)
まさかとは思うけど、溝口さんの天馬への初絡みの言葉って、今天馬が言った
『お前がちいちゃんと同棲中の彼氏、高杉天馬かっ!』
だとか……言わないよね?
で……でも、天馬が溝口さんのセリフをそっくりそのまま再現したのだとしたら、最初に言わなかったらいつ言うの? って感じのセリフだよね。溝口さんの性格なら、相手が初対面だろうとなんだろうと、平気でそうやって声を掛けちゃいそうだし。
一体どこで、どういう状況の天馬に向かって、そんな言葉で天馬に声を掛けたんだろう。文字にしたらそんなに長くないし、むしろ短い一文だとは思うけど、その中に俺と天馬の関係が全て含まれてしまっている。
もし、溝口さんが天馬に向かってそう言っているところを傍で目撃し、二人の会話を聞いていたとしたら、天馬には現在“ちいちゃん”という彼女がいて、その彼女とは同棲中……ということになってしまう。
幸い“ちいちゃん”という呼び方では、それが男なのか女なのかの判断はつき難いし、ちいちゃんの“ち”が智加の“ち”だと断定することもできまい。名前の最初の一文字に“ち”がつく人なんていっぱいいるんだから。
そう考えると、溝口さんの“ちいちゃん”呼びに助けられたって気もするけれど、そもそも俺がいないことをいいことに、バイト中の天馬を捕まえてそんな発言をしないで欲しい。
この際だから、身バレを防いでくれた“ちいちゃん”呼びは大目に見るとして、第一声の「お前」は「君」に。続く「同棲中」は「ルームシェアしている」にしてもらって、「彼氏」は省略。天馬のこともちゃんと君付けにして、最後は言い切りではなく優しく尋ねるようにしてくれれば
『君、ちいちゃんとルームシェアしている高杉天馬君だよね?』
となり、印象がだいぶ変わったと思うのに。
言い方を変えたところで、結局天馬には“誰?”って思われるだろうけれど、少なくとも第一印象は悪くなかったと思う。
まあ、溝口さんに天馬からの第一印象を気にするつもりがあったのかどうかはよくわからないけれど。
「しかし、智加と同じ職場に俺と同じ趣味の人間がいたとはな。迂闊だった」
「え?」
俺が天馬に余計な絡み方をしてくれた溝口さんのことを苦々しく思っていると、天馬は天馬で何やら面白くなさそうな顔になった。
あれ? これって、もしかしなくても……。
「智加がヤキモチ焼きになる気持ちが少しわかった気がする。自分の恋人にちょっかい出されるのって面白くないな」
「……………………」
ヤキモチだ。天馬が俺のことでヤキモチを焼いてくれている。
水嶋さんが俺を“口説いてる”って聞いた時も、一瞬ヤキモチを焼いてくれたようにも思えたけれど、はっきりとした確信は持てなかった。
あれはヤキモチなんかじゃなくて、いないと思っていた水嶋さんがいて、すんなり帰れるはずのところを邪魔されたことが面白くなかっただけかもしれないし。
でも、今はそうじゃない。俺がヤキモチ焼きになる気持ちが少しわかったってことは、天馬が今、俺に対してヤキモチを焼いてくれている証拠にもなるよね?
(天馬にヤキモチ焼いてもらえるなんて夢みたい……)
面倒臭がり屋の天馬だから、ヤキモチを焼く、という行為そのものを面倒臭がって、ヤキモチなんて焼いてくれないのかと思ったよ。
「智加。その溝口さんって人に変なことされてないか? 強引に迫られて迷惑してる、とかもないか?」
「ううん。今のところは大丈夫」
「そうか。何か困ったことがあったらすぐに言えよ。智加は気が小さいから、自分が困るようなことをしてくる相手にもあんまり強く出られないだろ?」
「天馬……」
はうぅ……天馬、優しい。智加が困った時はいつでも助けてやるぞ、というスパダリアピールですか? 好き。
でも
「ありがと、天馬。でも、俺も最近は結構言うようになったんだよ。なんか俺、天馬と付き合い始めて少しだけ強くなれた気がする」
最近の俺は言う時は言う人間になりつつある。
天馬に心配してもらえることは嬉しいけれど、心配されてばっかりじゃ情けないもんね。
それに、俺の周りには常に天馬に想いを寄せる人間が存在するから、そういう人間から天馬を守るため、天馬を奪われないようにするためにも、俺も最低限の言いたいことは言えるようにならなくちゃ、って思う。
「そうなのか。俺と付き合うことで智加は頼もしくなったのか」
「えっと……頼もしくってほどじゃないかもしれないけど、ほんと、ほんの少しだけ……ね。だって、水嶋さんが相手だったら、言われっぱなしのままだと天馬を取られちゃいそうなんだもん」
「ははは。そんなことには絶対にならないよ。智加は心配性だな」
「だって……」
天馬そのものにはその気がなくたって、水嶋さんって積極的だし強引なんだもん。気持ち的には奪われる心配はなくても、肉体的には奪われちゃう可能性だってありそうじゃない?
この場合の“肉体的に”って意味は、天馬と水嶋さんがエッチなことをするって意味ではなくて、俺から天馬を奪い去って、天馬をどこかに連れて行くって意味ではあるけれど。
「でもまあ、俺も溝口って人のことを考えると、智加のことが心配になるからな。それと同じような感じってことか」
「……かな? 俺も天馬を差し置いて、溝口さんと怪しい関係になるなんてありえないって思うけど」
「俺も智加のことを言えないくらいにはヤキモチ焼きなのかもな」
「天馬がヤキモチ焼いてくれるなんて、俺としては嬉しいだけだけど」
なんか俺達、なんだかんだと周りの人間のせいっていうか、おかげで、急速に仲が発展したって感じがしなくもないよね。
特に、水嶋さんと溝口さんの出現は、俺や天馬に今までにない危機感を与え、お互いの警戒心を強めてくれる効果があるみたい。
それによって、お互いを想う気持ちがもっともっと高まって……って気がしなくもない。
そういう意味では、あの二人に感謝したい気持ちにもなるけれど、あの二人はそんな理由で俺から感謝されても、ちっとも嬉しくなんかないんだろうな。
でも、俺が天馬と念願のファーストキスを果たせたのって、水嶋さんの出現があったからこそって感じ――と言っても、俺はその前に既に天馬からキスをしてもらえていたみたいではあるんだけれど、俺の意識がしっかりしていて、俺の記憶に残るキスをしてもらえたのは水嶋さんと出逢ってからだから、俺の中での天馬とのファーストキスに水嶋さんが全く関与していないとは言い切れない。
で、溝口さんは溝口さんで俺に初エッチの準備云々とか言い出すから、俺がアナル開発に乗り出し、その時の声を天馬に聞かれちゃったから、天馬と初エッチなことをする流れになったっていうか……。
まあ、天馬に一人エッチをしている時の声を聞かれてしまったのはたまたま、偶然だったって気がするし、俺の不注意ではあったんだけどね。天馬が家にいる時だって、俺は天馬にバレないようにオナニーはしていたんだから。
だけど、俺と天馬の新生活が始まっただけじゃ、ここまで早い進展は望めなかったような気がする。
実際、天馬との共同生活が始まったばかりの頃は、俺と天馬の間に進展らしい進展は全く感じられなかった気がするもん。
強いて言うなら、バイトを始めるにあたり、俺が天馬にお願いして、おはようとおやすみのキスをしてもらうようになったことくらいかな。
でも、それも結局はバイト関連っていうか、バイトを始めることで、天馬との時間が減ってしまうことに対する俺の不満が、俺に我儘を言わせたって感じではあったよね。
あの習慣は今も続いているし、天馬とファーストキスをした後は、キスしてもらえる場所がおでこから唇に変わっていたりするから、俺は最低でも一日二回、天馬から唇にキスをしてもらえるという、夢のような生活を手に入れられたわけである。
それはさておき、つまりところ、俺と天馬の進展はバイトを始めたことがきっかけだった……ということになるのかな? 今日、俺と天馬がバイト先にあそこのスーパーを選んだことは失敗だったのかも……なんて思ったところだけれど。
環境が変わると人生も変わるってよく聞くけど、この春から実家を離れ、天馬と二人暮らしを始めた俺には、今年が変化の一年になることが約束されていたのかな?
「それに、溝口さんは俺と天馬の関係を知っちゃったし、恋人がいる人間には手を出さない、みたいなことも言っていたから、あんまり心配する必要はないのかも」
水嶋さんや溝口さんのおかげで、俺と天馬の仲が進展したのかも……と思うと、二人のことを悪く言ってばかりもいられない気持ちになった。
正直、水嶋さんには全く恩義を感じないけれど、溝口さんにはこれまで沢山仕事を教えてもらってお世話になったし、天馬にキスして欲しい俺が、悩みに悩んだリップ選びを手伝ってもらった恩がある。
溝口さんを庇うわけではないし、初対面の天馬にウザ絡みされたことは困りものだけど、溝口さん自体は決して悪い人ではない。だから、俺も憎むに憎みきれないところはあった。
「それなんだが、智加は溝口さんって人には俺との関係を話したのか?」
「え? えっと……話したっていうか……」
話したというより、バレてしまったわけだから、そこを説明するのはちょっと気まずいし格好が悪い。
でも俺、天馬に隠し事はしたくないから、俺と天馬の関係が溝口さんにバレてしまった経緯を、正直に天馬に告白することにした。
俺の説明を聞き終わった後の天馬は
「なるほどな。そういうことか。智加は嘘が吐けない性格だもんな。しかし、その溝口って人、智加のプライベートを執拗に知りたがる傾向にあって危なくないか?」
再びちょっと不満そうな顔になって言ってくるから、俺もちょっとだけ心配になってしまった。
溝口さんにストーカー気質みたいな暗い部分があるようには感じられないけれど、俺のことをやたらと知りたがるところはあるよね。やっぱり俺、溝口さんとはある程度距離をおいて接した方がいいんだろうか。多分ないとは思うけど、万が一、溝口さんにストーカーになられたら物凄く面倒臭そうだし。
だけど、俺のことを心配して機嫌を損ねちゃう天馬ってちょっと可愛いな。天馬は本気で俺の心配をしてくれているわけだから、心配を掛けている立場の俺が萌えている場合でもないんだけれど。
「うーん……ストーカー行為に走るような人ではないと思うけど、俺も一応気を付けるし、警戒もしておくね。何かあったらすぐ天馬に相談する」
「そうしてくれ」
直接溝口さんと接する機会が多い俺は、溝口さんにこれといって危険性を感じなかったけれど、溝口さんとほとんど交流がない天馬からしてみれば、溝口さんは充分に怪しい人物になってしまうらしい。
きっと第一印象が良くなかったからだ。これも今度溝口さんに会った時に忠告しておこうかな。
お世話になっている溝口さんに対して説教と忠告をしようだなんて、生意気が過ぎるって感じではあるけれど。
「でも、そんな相手に俺と付き合っていることは認めてくれたわけだから、俺としては嬉しいな」
溝口さんに俺と天馬の関係がバレてしまった経緯は、溝口さんがいつも俺がバイト終わりに約束をしている相手を執拗に知りたがったことにある。そのことが天馬的には不安要素に繋がってしまいはしたけれど、俺が天馬との関係が溝口さんにバレてしまった後、そのことを否定しなかったことは素直に喜んでくれたみたいだった。
「そんなの当たり前だよ。水嶋さんの時はそうできなかったけど、本当は俺、天馬との関係を誰の前でも偽りたくないし、天馬と恋人同士になれて幸せだもん。溝口さんが思いの外に俺のことを気に入っていることにはちょっとびっくりしてるけど、だったら尚更天馬への気持ちを隠したくないっていうか……。俺は天馬だけだってことを伝えておかなくちゃって思うもん」
溝口さんの前では決して堂々と天馬との関係を認めたわけじゃなかったけれど、気持ち的には堂々と認めてしまいたかった。
バレた以上は……で認めてしまった俺は、そこがちょっと悔しかったりもする。
「智加は本当に俺のことが大好きなんだな。智加にそんなに好きになってもらえたら俺も嬉しいし、智加のことを物凄く大事にしたくなる」
「ほ……本当?」
「ああ。本当」
おお。なんかもう最近の俺と天馬、本当にいい感じでラブラブしちゃってるよね。あまりにも理想的過ぎるラブラブな毎日に、一瞬夢か現実かわからなくなっちゃいそうだよ。
「お……俺も天馬のこと、物凄く大事だって思ってるよ」
天馬から嬉しい言葉を貰うばかりじゃなくて、俺からも天馬が喜んでくれる言葉を返そうと思うんだけど、俺のどんな言葉に天馬が喜んでくれるのかがよくわからなかった。
結果、天馬の言葉を真似しただけみたいになっちゃったけど、天馬は優しく微笑むように小さく笑い、俺に向かって両手を広げてみせてきた。
「おいで」
「うん……」
今から抱き締めてあげるよ。と言わんばかりに両手を広げられたら、俺がそこに飛び込んでいかないわけがない。
でも、こういう甘い雰囲気にはまだ少し不慣れなところがある俺だから、やや遠慮がちに、おずおずといった感じで天馬の胸に顔を埋めてみると、天馬の両手が俺をふんわりと包み込んできてくれた。
天馬の腕の中って物凄く安心感がある。俺、天馬にこうやって抱き締められるのが物凄く好きだな。
「こうして智加を抱き締めているとしみじみ感じるけど、智加って抱き心地がいいよな」
「え? そ……そう?」
「うん。このまま智加を抱き締めて寝てしまいたいくらいだ」
「……………………」
それはいわゆる抱き枕ってことでしょうか。
でも、天馬に抱き締められたまま寝られるのであれば、天馬専用の抱き枕になってもいいかも。
いや。むしろ天馬専用の抱き枕にして欲しい。
「い……いいよ。俺のこと、抱き締めたまま寝ちゃっても」
天馬とキスはした。エッチなこともした。一緒にお風呂にも入った。ってなると、やっぱり“一緒に寝る”も経験しておきたいよね。
別に一緒に寝るついでにエッチなことをして欲しいってわけでもなかったけれど、恋人同士が同じベッドで一緒に寝るってことはエッチなこともするものなのかな。
だとしたら、今の俺の発言って天馬を誘ってることになっちゃう?
昨日天馬とエッチなことをしたばっかりの俺に、そんな心の余裕はないって感じではあるんだけれど。
「ん? じゃあ一緒に寝るか?」
天馬的に今の俺の発言はちょっと意外だったのか、少しだけ驚いた反応を見せて俺を見下ろしてきた。
だって、俺を抱き締めて寝たいって言ったのは天馬だよね?
「智加ってさ、意外とエッチなことに積極的なんだな」
「っ⁈」
やっぱり⁈ やっぱりそういう風に取られちゃったの⁈
「違っ……俺は……」
違うぅ~っ! 違うのにっ! 俺はただ、天馬にぎゅっとされたまま寝たかっただけで、決して天馬にエッチなことをして欲しかったわけじゃ……いや。されたらされたで嬉しんだけど。でも……。
昨日の今日で「またシたいな」なんて思っている人間だと思われたら、天馬にエッチな奴だと思われそうで嫌だったのに。
「昨日凄く疲れてたっぽいから、今日はそういう気分にならないのかと思ってた」
「あぅー……」
どうやら天馬は完全に俺が天馬を誘ったと受け取ってしまったみたいだけれど、そう思われるならそれでも別にいっか。天馬も別に呆れている様子がないし。
だって俺、本当は今日も天馬とエッチなことができたらいいな……って、心の奥で密かに思ってたもん。だから、俺が天馬に自分のことを抱き締めたまま寝てもいいって言った言葉の中には、天馬にエッチなことをして欲しいという期待も含まれていたと思う。
むしろ、これまで俺相手に全然盛ったことがない(ように見えた)天馬が、次にその気になってくれるのはいつだろう? って心配していたくらいなんだから。
俺の言葉をそういう意味で捉えたってことは、天馬にもその気がないわけじゃないんだよね? こんなに早く天馬がその気になってくれたのだとしたら、俺は喜びしかない。
やっぱり天馬も男の子ってことなのかな。俺と同じでそれなりに性欲はあるみたいだ。
「天馬が相手なら、俺は毎日だってその気になっちゃうよ」
これは物凄く恥ずかしい発言だったけど、俺のその言葉に嘘はない。
多分、天馬にエッチなことをされるたびに物凄く翻弄されちゃうだろうし、どうしていいのかわからなくなって泣いちゃうかもしれないけれど、俺は天馬なら二十四時間、三六五日いつでも大歓迎だもん。
天馬にいっぱいエッチなことをしてもらって、もっともっと天馬のことを好きになって、天馬を好きって気持ちで満たされたいって思うもん。
「ああもう……。智加は本当に可愛いな」
最早、自分から天馬を誘ったことにしてしまった俺相手に、天馬は心底“参った”って顔をした。
でも、それは決して天馬を困らせたわけではなくて、逆に天馬を喜ばせてしまったみたいだから、天馬は改めて俺をぎゅうっと強く抱き締めてくると、薄く開いたままになっている俺の唇に、おはようやおやすみのキスとは全く別物のキスをしてきてくれた。
最初はお互いのヤキモチから始まったやり取りが、最終的にはただのイチャイチャになっているという俺得過ぎる展開。
「んっ……ぁ……」
天馬の唇が俺の唇に触れた瞬間、身も心も蕩けてしまいそうなくらいにうっとりしてしまう俺は、天馬に触れられたら触れられただけ、天馬のことを益々好きになっていく。
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