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Episode9
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恭一と一緒にご飯を食べに行った週の土曜日。
「ふーん……俺との関係を恭一に疑われてるんだ」
今日は勉強が終わったからと言って、すぐに俺に手を出してこない鷹夜に安心しつつ、恭一と一緒にご飯を食べに行った時の話をした俺は、珍しく不満そうな顔をする鷹夜にちょっとだけ狼狽えた。
もしかして、俺が恭一と一緒にご飯を食べに行ったのが面白くないんだろうか。
恭一は俺が鷹夜とばっかりいると寂しいって言うし、鷹夜は俺が恭一と仲良くするとヤキモチ妬くし……。俺はどうしたらいいんだよ。
「うん」
十八歳にしてモテ期到来? と思ったけど、鷹夜にしても恭一にしても男だから、俺はちっとも嬉しくない。
そもそも、鷹夜は恋愛的な意味で俺を好きみたいだけど、恭一の方は違うからな。モテ期というほどのモテ期もきていないわけだ。
「別にいいんじゃないの? そう思いたい人間にはそう思わせておけば。実際、俺と由依が怪しい関係なのには違いないんだし」
「よっ……良くないよっ! 俺と鷹夜ってそういうのじゃないじゃんっ!」
「じゃあどういうの? 確かに、俺と由依は恋人同士ってわけでもないんだろうけど、俺の気持ちは知ってるよね? それなのに、由依はこうして俺の家に足を運ぶし、俺にエッチなこともされ放題。そういうのじゃないって言うなら、なんで由依は俺にやられ放題なの?」
「そ……それは……」
人からどう見られようともお構いなしな鷹夜にはちょっと呆れる。お構いなしどころか、むしろ開き直っちゃってるし。
でも、反論する俺に突っ込んでくる鷹夜のセリフには何も言い返せないから、俺は早々に口を噤んでしまった。
なんでって聞かれてもなぁ……。そこは俺もなんでなのかがわからないよ。
「この際だから聞くけど、由依ってどういうつもりなの? 俺はもちろん由依が好きだし、由依とは恋人同士になりたいって思ってるけど。由依は?」
「俺は……」
鷹夜には何度も「好きだよ」って言われているけど、俺の気持ちを聞いてこられたのはこれが初めてだった。
本当はずっと聞きたかったのかもしれない。俺が鷹夜の立場だったら、拒まれない時点で相手の気持ちを聞きたがると思う。
だけど、下手に聞き出そうとして逆に拒まれるのは嫌だし、思うような返事が返ってこなかったら……っていう不安もある。今まで鷹夜が俺の気持ちを聞いてこなかったのは、そのへんを危惧していたからなのかもしれない。
「由依は俺のこと好き? それとも、嫌い?」
「っ……」
その二択は狡い。その二択だと、俺の答えは「好き」になってしまう。
大体、こんなに毎日一緒に過ごしている相手を嫌いなわけないじゃんか。嫌いだと思っているなら、鷹夜と一緒になんかいないよ。
「好きか嫌いかって言ったら、そりゃ好きだよ。だから一緒にいるんだし」
一度噤んでしまった口を、このまま噤み続けてしまおうかとも思ったけど、それじゃあまりにも情けないし、卑怯な感じがするから口を開いた。
「そう」
俺の答えを聞いた鷹夜は、とても嬉しそうな顔をした。
あんまり嬉しそうな顔とかしないで欲しい。俺はあくまで、好きか嫌いかで言ったらの答えを返しただけなんだから。
「で、でも、鷹夜と同じ意味で好きなのかって聞かれたら、そこはまだよくわからないっていうか……」
鷹夜を喜ばせた後に言うのは心苦しかったけど、そこはちゃんと言っておくべきところだった。
“好き”とだけ言って終わりだと、鷹夜に期待を持たせてしまうし。
鷹夜のことは好きだけど、俺は別に鷹夜と恋人同士になりたいとまでは思ってないんだよね。そこまでハッキリした感情は持っていないんだ。
「そう……」
案の定、鷹夜はあからさまに残念そうな顔になった。
うぅ……。鷹夜がしょんぼりする姿を見ると、どうしても罪悪感というものが……。
でも、この際だからちゃんと話し合っておいた方がいいのかもしれない。俺だって、鷹夜とのことはいい加減なんとかしなきゃって思ってるし、こんなよくわからない関係を続けるのにも限度がある。
これまで散々したい放題されてきたけれど、このへんで一度リセットするわけにはいかないだろうか。せめて、俺の気持ちがハッキリするまでは。
「だから、もう俺にエッチなことしないで欲しいんだけど」
流されに流され続けた手前、そう言うのには物凄く勇気がいった。だけど、意を決した俺は、真剣な顔になってキッパリとそう言った。
鷹夜は最初きょとんとした顔をしていたけど、俺が真剣なことに気が付くと、鷹夜の顔も真剣になった。
「それはつまり、由依に触るなってこと?」
鷹夜の目にジッと見詰められると、申し訳ないって気持ちでいっぱいになる。鷹夜の生い立ちを知っている俺は、鷹夜が人の温もりに飢えていることを知っているし、どうして俺に触れたいのかも知っている。
そもそも、俺が鷹夜とこんなことになっているのも、鷹夜の話を聞いた俺が、鷹夜にエッチなことをされた後も、鷹夜が俺に触ることを許したからだと思う。
にも拘わらず、都合が悪くなったから触るなというのも、随分勝手な話だよね。
まあ……その時に「エッチなのは困る」って言ったから、そういう目的じゃなく触るのであれば、今も問題はないんだけど。俺だって、鷹夜に触られるのが嫌ってわけじゃないんだから。
「……………………」
「……………………」
鷹夜と見詰め合ったまま、数秒が流れた。
鷹夜と見詰め合ったままの俺は、鷹夜がどういう行動に出るのかとドキドキしてしまう。
「わかったよ」
ちょっとくらいはごねられるかと思ったけど、鷹夜は意外とあっさり折れてくれた。
文句を言うでも、不満を零されるでもなく、俺の言葉に従ってくれるらしい鷹夜に、俺は内心ホッと胸を撫で下ろした。
「その代わり、由依は俺への気持ちをちゃんと考えてくれるってことでいいんだよね?」
「え? う、うん。そのつもりだけど……」
「なら俺も我慢する。由依に嫌われたくないしね」
若干決まりの悪い俺は、いつも通りの笑顔になる鷹夜に、どんな顔をしていいのかわからなかった。
でも、これでしばらくは鷹夜にエッチなことをされなくて済むし、俺もゆっくり考えられる時間ができた。
自分で言ったことだから、俺も鷹夜への気持ちにちゃんと向き合おうと思う。俺がどんな意味で鷹夜を好きなのかって……。
鷹夜以外の人間を特別な意味で好きになったことがない俺には、その答えを出すのに少し時間が掛かってしまうかもしれないけど、しっかり考えて、ちゃんとした答えを出さなくちゃ。
「ありがと、鷹夜。俺、ちゃんと考えるね」
鷹夜の柔らかい笑みに釣られて、俺もようやく笑顔になれたかと思いきや……。
「うん。でも……」
人のいい笑顔を浮かべたまま、俺との距離をグッと縮めてきた鷹夜にギョッとする。
「来週からでいいよね?」
ここへきて、まさかの前言撤回するような言葉を浴びせられ、俺は盛大に驚いてしまった。
確かに、いつからって指定はしなかったけど、この流れでそんな反則技みたいなのってあり?
「しばらく由依に触れないなら、今日はいっぱい触らせて」
「え? え? えぇっ⁈」
焦る俺は鷹夜にヒョイと抱え上げられ、そのままベッドへと連れて行かれる。
俺の身体をいとも簡単に抱き上げてしまう鷹夜にも驚いたけど、それより何より、この展開には驚かずにはいられない。
どうしたものかと必死に考える俺は
「好きだよ、由依」
俺をベッドの上に優しく下ろした後、俺に覆い被さってくる鷹夜に、どうしても胸の高鳴りが抑えられなかった。
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