初恋♡DESTINY☆

藤宮りつか

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Episode15

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   初恋♡DESTINY☆



「ん……んん……」
 カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しくて目を覚ました俺は……。
「あ……」
 すぐ目の前にある鷹夜の寝顔にドキッとして目を見開いた。
 鷹夜の寝顔を見るのなんて初めて。だって鷹夜、いつも俺より後に寝るし、先に起きてるんだもん。
「……………………」
 初めて見る鷹夜の寝顔をまじまじと見詰めてしまう俺は、寝顔はあどけなくて可愛い鷹夜に、胸がキュンってしてしまう。
 俺よりずっと大人っぽく見える鷹夜も、寝顔は年相応っていうか、まだ少年らしさも残ってるんだな。
 規則正しい寝息を立てる鷹夜にそっとくっついて、そのまま鷹夜に抱き付くと、胸いっぱいに幸せ気分が広がった。
「ん……あれ……?」
 俺が抱き付いたりなんかしちゃったから、鷹夜が目を覚ましてしまったらしい。頭の上で鷹夜が目を擦ったのがわかった。
「由依……もう起きたの?」
 鷹夜は自分より先に目を覚ました俺に、ちょっと驚いている様子だった。
「うん」
 起こしてしまったのなら仕方ないから、俺は改めて鷹夜にギュッと抱き付いた。
「鷹夜の寝顔、初めて見た」
「由依に先に目を覚まされちゃうなんて……不覚だ」
「どうして? 俺、鷹夜の寝顔が見れて嬉しいよ?」
「由依の寝顔を見てる時間が幸せなんだよ」
「うぅ……」
 一体どこでそんな殺し文句を覚えてくるんだろう。これまでも鷹夜は、何も知らずに無防備に寝ている俺の寝顔を、ずっと眺めてたってこと?
 目を覚ました鷹夜は、鷹夜に抱き付く俺の身体を抱き返してくると、俺の顔にチュッチュッてキスを落としてきた。
 昨日の余韻が抜け切っていないようで、そんなことをされると物凄く甘い気分になっちゃって、俺の身体が一気に熱くなってしまうから困る。
「ぁん……擽ったい……」
「ん? じゃあもっとする」
「ゃっ……」
 起きたばかりでまだ頭がハッキリしていないのか、それとも寝惚けているのか。鷹夜はややのんびりした口調と動きで、俺をぎゅうぅって抱き締めて、何度も何度も俺にキスをしてきたりする。
「ぁっ、ん……鷹夜ってば……」
「由依……」
 昨日あんなにいっぱいしたのに……。目が覚めるなり、また俺とエッチなことをしそうな勢いの鷹夜に慌ててしまう。
「ダメだったら……これ以上エッチなことしたら、俺が壊れちゃう……」
 流れで俺のお尻を撫でてくる鷹夜の手を強めに抓った俺は、拗ねたようにほっぺたを膨らませて鷹夜を見上げた。
 鷹夜にキスされたり、触られたりするのが嫌なんじゃなくて、起きて早々にエッチなことをするのに抵抗があるというか、照れ臭くてしょうがないって感じ。
 でも、こうやって同じベッドの中でじゃれ合うのも、なんだか凄く幸せな時間だなって思う。
「それは大変。由依のことはいくら愛でても足りないくらいだけど、壊したくはないからね」
 俺が本気で怒っているわけじゃないのはわかっているだろう。でも、今朝の鷹夜は比較的聞き分けがよかった。素直に俺のお尻から手を離すと、唇に触れるだけのキスをそっとしてから、俺の寝乱れた髪を撫でてきた。
「おはよ、由依。身体は平気?」
「うん。大丈夫……だと思う」
 エッチなしの甘い雰囲気というのも、それはそれで照れ臭い。
 昨日までとは何もかもが違う……とまでは言わないけど、俺と鷹夜の間には、明らかに恋人同士の空気が流れるようになったと感じる。
 その甘くて優しい空気にはまだ慣れないけど、鷹夜とこうなったことは後悔していない。
 正直、一夜明けてみたら……と、ちょっと心配していたところもあるんだけど、そんな心配は全く必要なかったみたいだ。
「お風呂入れてくるね。一緒にお風呂入ったら朝御飯食べよう」
「うん」
 鷹夜は俺から離れるのが少し名残惜しそうだったけど、ベッドの下に脱ぎ捨ててあったズボンに手を伸ばして穿くと、上半身は裸のままバスルームに向かった。
 鷹夜の背中を見送りながら改めて思う。鷹夜って本当にいい身体つきをしてるんだなって。
 そう言えば、中高ではバスケをやってたって言ってたっけ? 鷹夜の背が高いのも、バスケをやっていたおかげなんだろうか。思わず抱き付いてしまいたくなりそうな鷹夜の背中に、同じ男ながらに頼もしさを感じてしまう。
「はぁぁぁ~…………わっ!」
 キャンパス内の注目の的であり、誰もが羨むであろう鷹夜の恋人になったことが、未だにちょっと信じられない。信じられないけど幸せな気分……。
 昨夜の余韻に浸りながら、幸せに満ちた溜息を零していたら、突然スマホが鳴り出したからびっくりした。
「もう……何? 誰? こんな朝っぱらから」
 せっかくの幸せ気分をぶち壊しにしてくれたスマホにムッとして手を伸ばすと、電話を掛けてきた相手は恭一だとわかった。
「もしもし?」
 一体なんの用なのかと電話に出てみれば
《おっす、由依。今どこにいんの?》
 いきなり所在を聞いてこられて、俺は思わず狼狽えてしまった。
 だけど、よくよく考えたらそんなに狼狽えることでもなかった。恭一は俺が週末には鷹夜の家に泊まりに行くってことを知っている人間だもんね。
「どこって……鷹夜の家だけど?」
《なんだ。また泊まってんの?》
「うん」
 恭一の声の向こうでは、人の話し声や、車の音なんかが聞こえている。
 どうやら外から掛けてきているらしい。
《鷹夜の住んでるマンションって、大学の近くって言ってたよな?》
「え? うん。そうだけど……」
《今から行ってもいいか? 近くまでは来てるんだけど》
「えぇっ⁈」
 ど……どうして? なんでいきなりそんなことに?
「いや……それはちょっと……俺の一存ではなんとも……」
 まだ素っ裸のままだし、ベッドの中からも抜け出していない俺は、今恭一に来られたら物凄く困る。それに、ここは俺の家ってわけでもないんだから、勝手に「いいよ」なんて返事も返せない。
 俺がスマホを握り締めたままあたふたしていると、バスルームから鷹夜が戻ってきて
「どうしたの? 由依」
 泣きそうな顔になって困っている俺の顔を見て、不思議そうに首を傾げた。
「鷹夜っ……恭一が……」
 すっかりテンパった俺が、鷹夜に向かって自分のスマホを差し出すと、鷹夜はそれを受け取り、普通に耳に押し当てた。
「恭一? ごめん。由依が電話代わってくれって。何?」
 別に電話を代わってもらうつもりはなかったんだけど、さも代わってくれと言わんばかりにスマホを差し出せば、そう思われても仕方ないか。
 でも、俺じゃ恭一の問いに答えは返せないから、鷹夜に代わってもらった方が話も早くて良かったと思う。
「そうなんだ……うん……あー……できれば別の……うん、いいよ。でも、今すぐはちょっと……俺も由依も起きたばっかりなんだ。いや、気にするよ……」
 ベッドの上で膝を抱えて座る俺は、鷹夜と恭一の電話にそわそわと落ち着かない。
 対する鷹夜の方は落ち着いたもので、恭一との電話に淡々と答えている。
「せめて三十分……いや、四十分くれない? お風呂に入りたいんだ。……え? そうだけど?」
 き……気になる……。一体二人でどんな会話をしているんだろう。鷹夜の声だけじゃ、恭一との会話が全然把握できないよ。
「会った時に話すよ。はいはい。じゃあ四十分後ね」
 始終落ち着いた様子の鷹夜は通話を終了すると、画面が真っ暗になったスマホを俺に返してきた。
 二人の会話の内容はよくわからなかったけど、わかったこともある。
「恭一がここに来るの?」
 今から四十分後に、ここ、もしくはどこか別の場所で、俺達は恭一と会うことになったらしい。
「ここには来ないよ。俺、由依以外の人間を家に入れたくないんだ。だから、恭一には昨日も行ったファミレスで待ってもらうことにした」
「一体なんの用なの?」
「さあ? それはよくわからないけど、由依のことが気になってるって感じかな?」
「俺?」
 小学校の頃からの付き合いである恭一は、何かと俺のことを気に掛けてくれているんだとは思うけど……。
 何も休みの日の朝っぱらから、俺が気になるからって電話なんか掛けてくるものだろうか。しかも、このあたりをうろついているということは、俺と直接会って話すつもりだったみたいだし。
「せっかく由依とのんびりした朝を過ごそうと思ってたのに。とんだ邪魔が入っちゃったね」
「邪魔って……」
 だったら恭一と会うのを断ればいいのに。もしくは、もうちょっと時間を遅らせるとか。
 恭一の家は俺の家とそんなに離れていないから、鷹夜の家とも遠くはない。ここまで出て来たからと言って、家に引き返すのは苦じゃない距離だ。
 しかも、恭一は移動手段として自転車を使っているからなおのこと。ここから家まで自転車を飛ばせば十分も掛からないと思う。
 そんなこと、鷹夜は知らないんだろうけど。
「何はともあれ、まずはお風呂に入ろうか。昨日はお風呂も入らず寝ちゃったもんね」
「もう……誰のせいだと思ってるの?」
 悪戯っぽい笑顔で笑う鷹夜に、俺はぷくっとほっぺたを膨らませた。
 なんか当然のように一緒にお風呂に入る流れになっているけれど、そこに異存はなかった。



 四十分という時間は貰っていたけれど、鷹夜と一緒にのんびりお風呂に入り、ちゃんと髪の毛を乾かしてから支度をしていたら、恭一の待つファミレスに着いたのは電話を貰ってから一時間後になってしまった。
 二十分の遅刻になってしまったけれど、恭一は特に文句を言わなかった。そもそも、急に俺達を呼び出した恭一も悪い。ということにしておこう。俺と鷹夜がまだ寝ている可能性だってあったんだから。
 朝御飯を食べる余裕まではなかったから、今朝はファミレスで朝御飯を食べることになってしまった。鷹夜の作る朝御飯を食べられなかったのは少し残念。
「ふーん……そういう経緯があって、結局は付き合うことになったと……そういうことなんだな?」
「うん。そう」
 ファミレスに入り、恭一の座っているテーブルに着いた俺が、あまり食べることのないファミレスのモーニングメニューを見ている時から、鷹夜と恭一の会話は始まっていて、鷹夜は俺と恋人同士になったという話を、あっさり恭一に話してしまった。
 その瞬間は俺もギョッとしたし恥ずかしくもなったけど、今更隠しても仕方ないって気がしたから、我関せずを装い、メニューを見るのに必死なフリをしておいた。
 そのまま二人の会話は進み、俺と鷹夜が朝御飯を食べ終わる頃には、大体の経緯を全て話し終わってしまっていた。
「つまり、付き合う前から由依には手を出していたってことでもあるんだな」
「うーん……まあ、そういうことになっちゃうね」
 やや決まり悪そうな顔はしたものの、悪いことをしたという意識のない鷹夜は、のんびりとした仕草でコーヒーを口に運んだ。
 ここに来た時からほとんど口を開いていない俺は、何も喋っていないにも拘わらず、動揺が凄いというのに。
「はぁぁぁ~……」
 一通りの話を聞き終わった恭一は、盛大な溜息を一つ零すと、今度は俺をギロッと睨み付けてきた。
「で、お前はそんなことになっているのに、今まで俺に一言も話してくれなかったってことなんだな」
「う……」
 なんでそんなに怖い顔をされるのかと思ったら、俺が鷹夜とのことを恭一に黙っていたことが面白くなかったようだ。
 だって……言えなかったんだもん。どう説明していいかもわからなかったし。
「ったく。なんかあったら遠慮なく言えって言ったのに。俺は悩み相談の相手にもならないってことか?」
「そういうわけじゃないよっ。そうじゃないけど……ごめん……」
 別に恭一が頼りないと思っているわけじゃないんだけど、人に話せるようなことじゃないと思ってしまったし、恭一に引かれてしまうんじゃないかと思うとなかなか言い出せなかった。
 でも、それが逆に恭一に嫌な思いをさせてしまったらしい。
「ま、いいけどな。こうして丸く収まったんなら。っつーか、相談するほど悩んでもいなかったってことなんだろうな。本当にどうしていいかわからないなら、由依が俺に相談しないはずもないだろうし」
「え……」
 罪悪感からしょんぼりと肩を落としてしまう俺は、次の恭一の言葉には目を見開き、まじまじと恭一を見てしまった。
 俺、悩んでたけど? 物凄く悩んでるつもりだったけど?
「俺が思うに、由依は由依でずっと鷹夜が好きっつーか、忘れられなかったんだと思うんだよ。実際、お前ってことあるごとに鷹夜の話してきたし、自分に好きな人間ができないのは鷹夜のせいだって決めつけてたもんな」
「あぅ……」
 俺が鷹夜のことを忘れられなかったのは事実だとしても、鷹夜のせいで好きな人ができないって嘆いていた話はしないで欲しかった。
 そんな言い方したら、俺が鷹夜を疎ましく思ってたみたいになるじゃんか。
 事実、鷹夜と再会するまでは、そう思っているところもあったけど。
「えー……由依はそんなこと言ってたの?」
「~……」
 ほら。鷹夜もちょっと面白くなさそうな顔になっちゃったじゃんか。
「忘れたいとか、別に会わなくてもいいとかも言ってたな。その癖、実際再会したら泣くほど喜んでたけど」
「わぁぁぁ~っ!」
 なんでそんな暴露話するんだよっ! 俺が恭一に相談しなかった腹いせ? 全部事実ではあるけれど、鷹夜の前で言わなくてもいいじゃんかっ!
 せっかく鷹夜と恋人同士になれたのに、恭一のせいで喧嘩になったら恨むからねっ!
「ふーん……由依は俺を忘れたいと思ってたし、会わなくてもいいと思ってたんだ」
「違っ……違わないけど……それは鷹夜と再会する前の話だもんっ! 今はそうじゃないよっ!」
 みるみる顔が怖くなる鷹夜に、俺はもうどう言い訳していいのやら。
 言い訳のしようなんてないから、事実だと認めて謝るしかない。
「それに、実際は忘れなかったし、再会できて良かったって思ってるもんっ! 鷹夜と再会した時、俺は鷹夜に会いたかったんだって気付いたしっ!」
 もちろん、しっかり弁解もさせてもらうけど。
 鷹夜は慌てふためく俺の姿をしばらく怖い顔で見詰めていたけれど、フッと小さく溜息を吐くと、俺の頭に手を伸ばし、優しく撫でてきてくれた。
「十三年間も会わないでいるとそうなっちゃうか。いいよ。許してあげる」
 今回ばかりはさすがに臍を曲げられるかと思ったけど、やっぱり鷹夜は俺に甘かった。
 あっさり俺を許してしまう鷹夜に、恭一の方がうんざりした顔になる。
「自覚はなくても鷹夜のことは好きだったんだろうよ。だから、俺に相談しなくてもどうにかなってたんじゃね? なんにせよ、十三年越しの初恋が実って良かったじゃん。俺からしてみれば気が長すぎる話だし、あんまり羨ましいとも思わねーけど」
 呆れた顔はしているものの、俺と鷹夜が上手くいったことに関しては、祝福してくれるつもりがあるらしい。
 恭一の言葉を受け、意外そうな顔をしたのは鷹夜の方で
「祝福されるとは思わなかったな。別れさせようとしてくるかと思ったのに」
 もうほとんど残っていないアイスティーをストローで吸い上げる恭一の顔をまじまじと見返した。
「あん? なんで?」
 グラスの中のアイスティーを飲み干してしまった恭一は、鷹夜に言われた言葉がよくわからなかったらしく、不思議そうに首を傾げる。
「恭一は由依のことが好きなんじゃないかと思ってたから」
「なっ……!」
 これには恭一だけじゃなく、俺もびっくりして声を上げてしまった。
 何を言い出すんだよ。恭一が俺を好きだなんてことがあるわけないじゃんか。現に、恭一は過去に何度も女の子と付き合ったことがあるし、俺への扱いもわりと雑なんだけど?
「はぁ⁈ 俺が由依を? ないない。それはないから」
 決して冗談を言ったわけではなさそうな鷹夜に、恭一は大袈裟過ぎるくらいのリアクションで手を振った。
「でも、電話で話した時、由依と一緒にお風呂に入るって知った途端に凄い剣幕だったじゃん。こんな朝早くから由依に電話掛けてくるし、由依と直接会うつもりだったでしょ? 由依から俺との仲を疑ってるって話も聞かされていたし、何かと由依のことが気になるみたいだから」
「そりゃ一緒に風呂に入るってなれば、なんでそうなんの? ってなるだろ。由依からお前とどうなってるかの話は聞かされてなかったんだから。由依に電話したのは、最近由依の様子がちょっとおかしいって思ったからだよ。なんかあったのか心配してたんだ。直接会って話を聞いてやろうと思ってさ。これでも由依とは付き合いも長いから、由依のことを少なからずは可愛いと思っているところもあるんだよ。ほら、よく言うだろ? 馬鹿な子ほど可愛いって。こいつ頼りないし、ほっとけないところがあるから、ついつい気になるし、過保護にもなっちまうんだよ。でも、由依をそういう目では見てないから」
「ふーん……そうなんだ。それなら良かった」
 朝の電話の中で、二人がそんなやり取りをしていただなんて知らなかった。もしかして、“会った時に話す”って言ってたのは、俺と鷹夜が一緒にお風呂に入ることになった経緯についてなんだろうか。
 どうりで鷹夜が俺との関係をすぐに明かしたわけだ。俺と鷹夜がここに来る前から、恭一は俺達がどうなったのかを、なんとなく知らされていたってことなんだな。
 どうでもいいけど、“馬鹿な子”は余計だし、嬉しくない。
「心配しなくても、お前から由依を取り上げるようなことはしねーよ。っつーか、どっちかっつーと俺が取り上げられた側じゃん」
「それは悪かったね。でも、由依を誰かに渡すつもりはないんだ。相手が由依とは十二年来の友達であってもね」
「へいへい。わかったわかった。でも、たまには借りるぜ?」
「それはもちろん。由依に邪な感情を抱かないのであれば」
「信用しろって。大体、そんな感情持ってるなら、とっくに手出してるよ。こいつ、あっという間に襲われてくれるだろうし」
「そうだね。それは言えてる」
「ちょっと!」
 友達を作る気がない鷹夜と恭一が仲良くなってくれるのは嬉しいんだけど、二人揃って俺のことを“あっという間に襲われてくれる”って何事なの? 特に、実際に襲ってきた鷹夜が言うと洒落にならないよ。
「由依と付き合うのはいいけど、こいつの危機管理能力はもうちょっと上げといた方がいいんじゃね? こいつ、中高の頃もわりと男から人気あったぞ」
「やっぱりそうなんだ。気をつけないと」
「何それっ! 俺、知らないよっ!」
 昨日、ここで鷹夜の中学時代からの友達に鷹夜の話を聞かせてもらったけれど、今日はその逆の展開みたいになっている。
 でも、鷹夜と違って俺にはその記憶が一切ない……というよりも、身に覚えのないことまで話されて、俺まで初耳なんだけど?
「しかしまあ、十三年越しってのは凄いよな。そんなに衝撃的な出逢いだったのかねぇ。十三年間も想い続けるなんて普通は無理だぜ? まさに運命の出逢いってやつだったんだろうな」
「だから、運命なんかじゃないってばっ!」
 俺が中高の頃に男から人気があった云々はどうでもいい。が、昔から、俺が鷹夜の話をするたびに、恭一は“運命”って言葉を使いたがる節がある。
 この世に運命なんてものが本当にあるんだろうか。
 運の良し悪しはあると思うけど、運命というものをいまいち信じられない俺は、運命という言葉をあまり信用していないし、好きでもない。
「運命かどうかはわからないけど、初恋はある意味運命を左右する出逢いって気がするね」
 出逢ってから十三年。ずっと俺を想い続けてきたという鷹夜が言うと、その言葉に言いようのない重みや説得力が生まれるように感じる。
「だって、人生で最初に好きになる相手だよ? なんの影響も与えないなんてことはなくない?」
 人生で最初……という言葉は、それ自体が運命じみていて、運命なんて胡散臭いと思っている俺でも、全てはそこから始まるような感じさえする。
「確かに。俺の初恋は幼稚園の先生だったんだけどさ。そのせいか、俺って実は年上の女がいいと思っちまうんだよな。髪型や性格だって、先生に似てる子がいいって思っちまうし」
「それはただ恭一の好みがそうってだけの話じゃないの?」
「だから、その好みが初恋の影響を受けてるって話だろ」
「それって運命になるの? 途中で好みが変わる人だっているじゃん」
「それはそうかもしれないけど、ある意味運命みたいなもんじゃん。俺の好みはそこで決まってるんだから」
「ふーん……そういうものかなぁ……」
 運命というものを信じているのか、恭一は運命という言葉を当たり前のように使う。
 運命……運命ねぇ……。
「んなことより、奈美が知ったら大騒ぎするぜ? お前と鷹夜がくっ付いたなんて聞いたら」
「ちょっと! 言わないでよ⁈ 言ったら許さないからっ! ねっ! 鷹夜っ!」
「俺は別に知られても構わないけど」
「鷹夜っ⁈」
「でも、南さんに知られると色々面倒臭そうだから、そこは言わないでいて欲しいかな」
 ほんの少し前までは、好きな人ができないと嘆いていた俺が、今じゃ初めてできた恋人と、長年の友人と一緒に恋だの運命だのの話をするようになっている。
 運命という言葉は好きじゃないし信じていないけど、これから何が起こるかわからない未来を、鷹夜と一緒に切り開いて行けたら……と、そう思う。
(鷹夜と一緒ならきっと大丈夫だよね)
 もうすぐ始まる本格的な夏を目の前に、俺の胸は期待で膨らむ一方だった。



                     ~END~


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