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アラン様はデレデレです
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「アラン様、おはようございます。本日はマリアンヌ様とのお茶会の日でございますよ。」
「もう起きてる。」
寝起きが悪く普段は十回ほど呼びかけてようやく布団から這い出てくるアラン様ですが、マリアンヌ様とお会いになる日は私が起こしに来る前には既に起き、お召し物もご自身で着ていらっしゃいます。これがいつもの事なら良いと思う反面、こちらの仕事が減ってしまうのも心寂しく、なんとも微妙な心地です。
アラン様とマリアンヌ様は今年で13歳となられます。初対面の日から今まで、アラン様の恋心は衰退する事なく、ましてや停滞することもなく、日に日に増幅していらっしゃいます。それもこれも、マリアンヌ様の可愛らしさが要因である、とは、勿論アラン様の発言でございます。
アラン様はトパーズの御髪にエメラルドの瞳をしておられます。今日のお召し物はアラン様自らマリアンヌ様と会う時のために選んだ服で、アラン様のエメラルドの瞳と合った、統一感のあるデザインのものです。某老舗店で誂えたそのお召し物は、アラン様の輝かしい尊顔に劣らず、胸元にあるエメラルドの宝石を中心に洗礼された雰囲気を醸し出しております。
「フィディ、マリーが来るまでに後何分ある?」
「はっ、約4時間はございます。」
「……… そうか。」
マリアンヌ様とお会いする前は決まって私に時間を尋ねてきます。それも一度ではなく何度も、定期的に。
アラン様の自室には、王家御用達の商人が取り寄せた、木製の、精細な彫刻が施されている振り子時計があるにも関わらず、私に尋ねるのです。その上、私に確認したにも関わらず、その振り子時計をご自身で頻繁に確認し、時計を見ては溜息を吐き、ソワソワと落ち着きのないご様子でいらっしゃるのです。
マリアンヌ様にお会いになる前の御公務の際も、時計から目を離す時間がありません。もし、マリアンヌ様を理由に身が入らないとおっしゃられる事があれば、牢屋にぶち込んで御公務から逃げられないようにして差し上げるのですが……。
…………コホンっ、少々口が過ぎました。そんな目でこちらを見ないでくださいませ。
さて、そうこうしているうちに、マリアンヌ様とのお茶会の時間が迫って参りました。アラン様の瞳が非常にキラキラしております。コンコンコンっと、軽いノック音が響き、部屋の外から侍女の声が聞こえます。どうやらマリアンヌ様がいらっしゃったようです。
「アラン様、本日もお招きいただきありがとうございます。」
「マリー!待っていたぞ!」
「アラン様、私もお会い出来る時を待ち遠しく思っておりました。」
「マリーはいつも可憐で清楚で可愛らしいな!とりあえずこちらに座って。ゆっくり語らおうではないか!」
………うわぁ……。
あ、いえ、なんでもありませんよ?マリアンヌ様のお姿を見た時の生き生きさと、今までの御公務へのやる気の無さ具合のギャップにドン引きしたとか、席に促す時に勢いでマリアンヌ様のお腰に手を当てようとしてその1歩手前で手を降ろすヘタレさに呆れたとか、そんなこと考えてはおりません。本当に何でもないのでご安心を。
アラン様とマリアンヌ様のお茶会は、基本、アラン様の後ろにこの私、フィデリオが控え、マリアンヌ様の後ろにはマリアンヌ様の侍女であるサリィ殿が控えております。私たちは主人方から話しかけられた時以外は無言を貫いております。ですから、アラン様のお話がツッコミどころ満載でも、発言は許されていないのでツッコむことはできません。
マリアンヌ様は私の目から見てもとても可愛らしい……というより綺麗な方でいらっしゃいます。光沢のあるスノーホワイトの御髪にサファイアの瞳。ローズピンクの唇に、これまたローズの如く染まった頬。これから13歳になられる御令嬢とは思えない色気を感じさせます。
マリアンヌ様は比較的大人しいお方でして、お茶会のお話はアラン様が主導権を握る事がほとんどです。アラン様があることないこと面白おかしくお話になると、マリアンヌ様は口元に細い指をあててクスっと控えめにその口を緩めさせ、アラン様がマリアンヌ様に話しかけなさると、鈴のようなお声でお返事なさいます。アラン様を立て、けれど、自分の意志もしっかり乗せた発言に、アラン様はいつもご気分を良くなされます。といいますか、どのような発言をしたにせよ、マリアンヌ様のお声を聞くだけでアラン様の気分は鰻登りです。
マリアンヌ様がお帰りになられる時間になると、マリアンヌ様が帰る直前まではハイテンションなノリでいらっしゃるのですが、マリアンヌ様のお姿が視界から無くなると、たちまち魂の抜けた傀儡のような表情をなさるのです。はいはい、楽しいお茶会はもうおしまいです。次は帝王学の勉強でございます。と、引きづるのがいつもの私の役目でございます。………これだけの為にお茶会に同席している気がしてならないのは気の所為ではないはずです。
アラン様は一部の御公務と様々な習い事をしていらっしゃるため、マリアンヌ様とのお茶会は月に一回あるかないかの頻度で行われます。その一回をどれだけ楽しみに思っておられるのか、それはもうお腹いっぱいですと思う程度には理解しているつもりです。
ですからそんな鬼を見るような目でこちらを見ないでください。貴方様がなんと言おうとも帝王学は必修です。マリアンヌ様に見限られてもよろしいのでしたら私から逃げて頂いても構いませんよ?
こう言うと大人しくなるので、まぁ、思わざるを得ませんよね。
アラン様、チョロすぎでございます。
「もう起きてる。」
寝起きが悪く普段は十回ほど呼びかけてようやく布団から這い出てくるアラン様ですが、マリアンヌ様とお会いになる日は私が起こしに来る前には既に起き、お召し物もご自身で着ていらっしゃいます。これがいつもの事なら良いと思う反面、こちらの仕事が減ってしまうのも心寂しく、なんとも微妙な心地です。
アラン様とマリアンヌ様は今年で13歳となられます。初対面の日から今まで、アラン様の恋心は衰退する事なく、ましてや停滞することもなく、日に日に増幅していらっしゃいます。それもこれも、マリアンヌ様の可愛らしさが要因である、とは、勿論アラン様の発言でございます。
アラン様はトパーズの御髪にエメラルドの瞳をしておられます。今日のお召し物はアラン様自らマリアンヌ様と会う時のために選んだ服で、アラン様のエメラルドの瞳と合った、統一感のあるデザインのものです。某老舗店で誂えたそのお召し物は、アラン様の輝かしい尊顔に劣らず、胸元にあるエメラルドの宝石を中心に洗礼された雰囲気を醸し出しております。
「フィディ、マリーが来るまでに後何分ある?」
「はっ、約4時間はございます。」
「……… そうか。」
マリアンヌ様とお会いする前は決まって私に時間を尋ねてきます。それも一度ではなく何度も、定期的に。
アラン様の自室には、王家御用達の商人が取り寄せた、木製の、精細な彫刻が施されている振り子時計があるにも関わらず、私に尋ねるのです。その上、私に確認したにも関わらず、その振り子時計をご自身で頻繁に確認し、時計を見ては溜息を吐き、ソワソワと落ち着きのないご様子でいらっしゃるのです。
マリアンヌ様にお会いになる前の御公務の際も、時計から目を離す時間がありません。もし、マリアンヌ様を理由に身が入らないとおっしゃられる事があれば、牢屋にぶち込んで御公務から逃げられないようにして差し上げるのですが……。
…………コホンっ、少々口が過ぎました。そんな目でこちらを見ないでくださいませ。
さて、そうこうしているうちに、マリアンヌ様とのお茶会の時間が迫って参りました。アラン様の瞳が非常にキラキラしております。コンコンコンっと、軽いノック音が響き、部屋の外から侍女の声が聞こえます。どうやらマリアンヌ様がいらっしゃったようです。
「アラン様、本日もお招きいただきありがとうございます。」
「マリー!待っていたぞ!」
「アラン様、私もお会い出来る時を待ち遠しく思っておりました。」
「マリーはいつも可憐で清楚で可愛らしいな!とりあえずこちらに座って。ゆっくり語らおうではないか!」
………うわぁ……。
あ、いえ、なんでもありませんよ?マリアンヌ様のお姿を見た時の生き生きさと、今までの御公務へのやる気の無さ具合のギャップにドン引きしたとか、席に促す時に勢いでマリアンヌ様のお腰に手を当てようとしてその1歩手前で手を降ろすヘタレさに呆れたとか、そんなこと考えてはおりません。本当に何でもないのでご安心を。
アラン様とマリアンヌ様のお茶会は、基本、アラン様の後ろにこの私、フィデリオが控え、マリアンヌ様の後ろにはマリアンヌ様の侍女であるサリィ殿が控えております。私たちは主人方から話しかけられた時以外は無言を貫いております。ですから、アラン様のお話がツッコミどころ満載でも、発言は許されていないのでツッコむことはできません。
マリアンヌ様は私の目から見てもとても可愛らしい……というより綺麗な方でいらっしゃいます。光沢のあるスノーホワイトの御髪にサファイアの瞳。ローズピンクの唇に、これまたローズの如く染まった頬。これから13歳になられる御令嬢とは思えない色気を感じさせます。
マリアンヌ様は比較的大人しいお方でして、お茶会のお話はアラン様が主導権を握る事がほとんどです。アラン様があることないこと面白おかしくお話になると、マリアンヌ様は口元に細い指をあててクスっと控えめにその口を緩めさせ、アラン様がマリアンヌ様に話しかけなさると、鈴のようなお声でお返事なさいます。アラン様を立て、けれど、自分の意志もしっかり乗せた発言に、アラン様はいつもご気分を良くなされます。といいますか、どのような発言をしたにせよ、マリアンヌ様のお声を聞くだけでアラン様の気分は鰻登りです。
マリアンヌ様がお帰りになられる時間になると、マリアンヌ様が帰る直前まではハイテンションなノリでいらっしゃるのですが、マリアンヌ様のお姿が視界から無くなると、たちまち魂の抜けた傀儡のような表情をなさるのです。はいはい、楽しいお茶会はもうおしまいです。次は帝王学の勉強でございます。と、引きづるのがいつもの私の役目でございます。………これだけの為にお茶会に同席している気がしてならないのは気の所為ではないはずです。
アラン様は一部の御公務と様々な習い事をしていらっしゃるため、マリアンヌ様とのお茶会は月に一回あるかないかの頻度で行われます。その一回をどれだけ楽しみに思っておられるのか、それはもうお腹いっぱいですと思う程度には理解しているつもりです。
ですからそんな鬼を見るような目でこちらを見ないでください。貴方様がなんと言おうとも帝王学は必修です。マリアンヌ様に見限られてもよろしいのでしたら私から逃げて頂いても構いませんよ?
こう言うと大人しくなるので、まぁ、思わざるを得ませんよね。
アラン様、チョロすぎでございます。
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