美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾

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川エビたっぷりのとろけるキッシュ

川エビたっぷりのとろけるキッシュ4

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 二人とも緊張し、ココがそれを煽るように唸り続けている。

 アリシャの頭の中では目まぐるしく色んな案が飛び交っていた。遭遇しなかったことにするか、事情を聞いてみてレオに判断を仰ぐか。もし盗みを働いたなら盜んだ以上に返して貰うのならどうだろうか、など。

「返したい気持ちはあっても……食べてしまったのです。お姉さん、ごめんなさい。見逃してください。この通りです」

 予想よりあっさり盗みを認められ、しかも見逃して欲しいなどと懇願されてアリシャは狼狽えていた。

「見逃してあげたら、私が村の人を裏切る ことになるのよ……弁償は出来ないの?」

 言い終えてからココの名を呼んでなだめたら、大人しくなった。ただ、逆立てた毛はそのままにジッと女の子の出方を窺っていた。

「出来るなら盗みません! お金があればちゃんと支払うもの」

 止むに止まれぬ状況だったと言いたいのだろうが、季節は春だ。森には苺もなっているし、川だってエビが簡単に捕れたりするのだ。

 この子が幾つかはっきりしないが、見たところアリシャより五つくらい下のように見える。その歳なら苺くらい難なく採れるはずだ。

「ごめんなさい。やはり見逃したりは出来ないわ。大人に判断してもら──」

 まだ言い終わらないうちに、その子はアリシャの横を抜けて表に飛び出して行く。あまりのすばしっこさに驚くアリシャを置いて逃げ出し、その後を吠えながらココが追いかけ出した。

「待って! ちょっと二人とも待ちなさい!」

 一足遅れて食料庫を出ると腕を組んで立っていたレオが居て驚いた。

「レオさん! あの、あの子……」

「食料を盗んでいた子供だな」

 レオはまるで動じず、ココが吠えて追いかけていくのを指さした。

「ココについていこう。実は行き先は見当がついておるのだ。行こう」

 レオは歩み出すがいつもより一歩が大きい。アリシャは小走りで横に並んで進んでいく。

 ココが大騒ぎするものだから、草を食んでいた牛が顔を上げてココを見ていた。

「あの先には岩場があって昔岩を掘り出した坑道があるのだ」

 綺麗に整備された畑の横を上がっていく。勾配がキツく、アリシャは何度か前のめりに躓くがレオは険しい顔をしたままずんずん歩いていく。

「物がなくなり出してから、いつもとは違うところで薬草をとるようにしていたのだ。見廻りも兼ねて。ほら、見てご覧」

 山肌が見えてきた。そこには何個かぽっかりと口を開けた坑道の入り口があった。その一つに向かってココが盛んに吠え立てている。

 目的地は見えてはいても勾配がキツイので思ったより坑道の入り口に辿り着くまでに時間がかかってしまった。ココはその間アリシャ達の元に駆けてきては早く早くと急かして戻るの繰り返し。

 岩場の近くは木々が綺麗サッパリなくなっている。坑道の前についてから振り返り村を確認すると、すっかり一望出来ることを知った。

 夜はカンテラや松明といった火を持って移動するから、どこに人が居るのか一目瞭然だっただろう。

「さて、説教でもしてやるか」

 レオは坑道に向かって吠えているココを掬い上げると、アリシャに振り返りココを渡した。

「事情があるのかもしれないので……その、寛容に」

 お人好しかもしれないが、アリシャより小さな子だったのもあり庇わずにはいられなかった。

「ちゃんと説明をしてもらわねばな」

 おりたくて仕方がないココをなだめながら頷いた。走っていく女の子の服はかなり汚れていた。服だけではなく顔や髪も酷い有様だった。それだけでアリシャの心はギュッと絞られるような感覚を覚えていた。

「隠れていても何も解決せんぞ! 盗みは盗みだ!」

 レオがに向けて大声を発すると、ますますアリシャは泣きたくなるほど心が痛んだ。女の子はきっと怯えて小さくなっているだろう。

「出てきなさい、

 アリシャは思わずレオの口をまじまじと見つめていた。二人と言った。アリシャは女の子しか知らない。

「理由を話せば相談にのる。しかしこのまま立て籠もるならこちらとしても考えなければならん」

 真っ直ぐ坑道の中に語りかけるレオに応えて、老人とその老人を支えるように先程の女の子が出てきた。アリシャは息を呑んだ。老人は脚を引き摺っていた。服は裂かれドス黒い血が滲んでいる。

「……すまない。ワシが動けぬからリアナが私の為にそちらの食料を……しかし、ワシらには払う金がない。罰はワシが受けるからリアナは許してやってくれ」

「おじいちゃん! 私が勝手に持ってきたのよ」

 レオは二人に向けて掌をあげ、言葉を遮った。

「ご老人、傷を負っているな。獣によるものに見える。直ぐに手当てをしよう」

 レオはアリシャに向けて指示を出しながら老人に肩を貸した。

「アリシャ、先に宿屋に行き、井戸水を汲んでボリスのベッドに運びなさい。その後、私の家付近にいるドクを呼んできて欲しい」

「はい」

「ああ、それとドクに家から薬を持ってくるように言ってくれ」

 レオの家には沢山の薬がある。小さな壺に効用が異なる薬が入ってずらりと並んでいるのだ。

「どの薬かドクさんに言わなくて大丈夫ですか?」

 アリシャの返しを聞きながら老人とレオは少しずつ移動をしだす。動くと脚に響くようで老人の顔が苦痛に歪んでいた。

「獣傷だと言ってくれ。それでわかるはずだ」

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