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トロリ秋の恵みのカルツォーネ
トロリ秋の恵みのカルツォーネ7
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「じゃあ、アリシャのベッドに下ろすよ。その後、レオさんを探して連れてくる」
体の大きなボリスを担ぐルクはよろめきながらなんとかアリシャのベッドに向かっていった。
「炉で湯を沸かしておこう」
年長者のジャンに促されて、アリシャはショックを受けているアヴリルの腕に手を置いた。
「行きましょう。出血はみたところ少なそうだし、温めてあげれば大丈夫よ」
きっと。と、アリシャは音には出さずに付け足した。その後はとにかくお湯を沸かし、部屋の温度を上げていった。そうしている間にドヤドヤと皆が宿屋に戻ってきた。
全員戻ってきたところでアヴリルが「ジョゼフが戻らないわね」と小声で呟き、アリシャはその時ちょうど横にいたウィンと目があった。
「アヴリル……私はあなたに言わなければならないことがあるの」
ボリスが発見されて騒ぎになっていたからといって、伝えていなかったのはアリシャなのだから、自分が言うべきだと思っていた。しかし、ウィンがアリシャの肩に手を置き「君は当事者だから僕から話そう」と言った。
そこでウィンは率直にアヴリルに事実を打ち明けていく。
「残念だけどジョゼフは亡くなったよ。アリシャを誘拐しようとしたから。ジョゼフの懐にはアリシャの銀貨が入っていたんだ。この意味わかるだろ?」
アヴリルは息を呑み、深刻な表情でそのままそっと息を吐き出した。
「じゃあ、ボリスの事を話した内容も嘘だったのね……」
「たぶん。僕はエドから聞かされただけだし、アリシャが後で──話してくれるかな? 見聞きしたことを」
頷いたアリシャにアヴリルが震える唇でごめんなさいと言った。
「私のせいだわ。私の……。ジョゼフは初めからちょっと信用出来ないとボリスが言っていたのに」
アヴリルの目から大粒の涙が溢れ出し、ポタポタと床に落ちていく。
「皆に私は嘘を吐いていたの。ああ……もしボリスが死んだりしたら、私は自分を許せない。あんなにジョゼフを連れて行くのは反対だと言われたのに、言われたのよ……ボリスに」
取り乱して泣く姿に声の掛けようがない。気になることは沢山あるけれどアヴリルの涙が二人の口を噤ませた。最後に肩を震わせて泣くアヴリルをウィンが抱き締めた。
「ここは僕が。アリシャは皆の食事を用意して」
むせび泣くアヴリルが気がかりでもアリシャにはやれることはない。だから、疲れた村の人々を癒やすような温かな料理を作ろうと決心し、その場を離れたのだった。
アリシャが料理部屋に入っていくとレゼナとリアナが待っていた。互いに相手を思いやり、そっとハグを交わしてからレゼナがいつもの調子で「さあ、アリシャ。私に何をしてほしい? キノコが山程あるみたいだけど」と、部屋の隅にあるキノコ入りのカゴの元へと歩いていく。
「キノコはラードとニンニクでまずサッと炒めてください」
アリシャも気持ちを切り替え、腕まくりをして、汲み置きの水で手を洗う。リアナも腕まくりをして「私はどうしたらいい?」とアリシャに問う。
「じゃあニンニクを一つ、全部皮を剥いてレゼナに渡して。一度台の所でニンニクを潰してから渡すのよ。その間に私は生地を練るわ」
三人は分担し、料理に取り掛かった。もちろん隣の部屋のボリスは気になるが、レオが処置してくれている。レオ以上に医学に精通している者はいないのだから、あとは待つしかないのだ。
ニンニクとキノコを炒めて貰い器にあげておいて貰い、アリシャはせっせと小麦粉を練って少し寝かせておく。
生地作りが終わると塩漬け肉とキノコ、牛乳で煮込み、胡椒を振りかけてから小麦粉がダマにならないよう慎重にかき混ぜていく。こうするとトロトロになるのだ。今日はスープとして飲むわけではないので牛乳の量はかなり抑え気味にしてある。
「美味しい匂いがしてきたね、アリシャ」
リアナは鍋を覗き込んで顔を輝かせた。
(どんな日でも、美味しい料理は気持ちを和らげてくれる。私には私の役割がある)
レオには医学の知識が、ウィンには人を慰めたりする優しさがある。レゼナはいつだって皆を明るくしてくれるのだ。だから、アリシャもどんな日でも料理を作って皆の体を満たしたいと思った。
キノコのクリームが出来上がり、寝かし終わった生地を薄く伸ばしていく。円形の生地の上にまだ熱々のクリームを乗せて素早く包み、端を折り返してからナイフの柄で等間隔に押さえつけた。これで中身は出てこない。
「リアナ、表面がぷっくりしてきたら一度ひっくり返してね。返してちょっと焼け目が付いたら炉から下ろしてちょうだい。生地が薄いし火力が強いから瞬きしていたら焦げるわよ」
「え! そんなのムリだわ」
「かなり早く焼けるから注意しててって意味! さぁ、焼くわよ」
アリシャが炉に出来上がったものを置き、リアナが真剣な眼差しで生地の変化に目を光らせる。その間、レゼナは食器類を広間に運んでいった。
巾着に似たパンがキツネ色に焼き上がっていく。それと共にパンの焼ける芳ばしい香りが料理部屋を包んでいく。
「美味しそうな匂いだ」
アリシャもリアナも動きを止めて声の主に顔を向けた。ドクに肩を貸してもらったボリスだった。
「ボリス! 横になっていなくて大丈夫なの?」
その問いには横についていたレオが答えた。
「低体温で動けなかったが、今はかなり回復した。それに腹が空いているらしい」
「でも、頭の怪我はどうなんですか?」
「軽症だから問題ない」
それよりパンが焦げると言われて、アリシャとリアナは慌てて料理に気持ちを集中させた。
体の大きなボリスを担ぐルクはよろめきながらなんとかアリシャのベッドに向かっていった。
「炉で湯を沸かしておこう」
年長者のジャンに促されて、アリシャはショックを受けているアヴリルの腕に手を置いた。
「行きましょう。出血はみたところ少なそうだし、温めてあげれば大丈夫よ」
きっと。と、アリシャは音には出さずに付け足した。その後はとにかくお湯を沸かし、部屋の温度を上げていった。そうしている間にドヤドヤと皆が宿屋に戻ってきた。
全員戻ってきたところでアヴリルが「ジョゼフが戻らないわね」と小声で呟き、アリシャはその時ちょうど横にいたウィンと目があった。
「アヴリル……私はあなたに言わなければならないことがあるの」
ボリスが発見されて騒ぎになっていたからといって、伝えていなかったのはアリシャなのだから、自分が言うべきだと思っていた。しかし、ウィンがアリシャの肩に手を置き「君は当事者だから僕から話そう」と言った。
そこでウィンは率直にアヴリルに事実を打ち明けていく。
「残念だけどジョゼフは亡くなったよ。アリシャを誘拐しようとしたから。ジョゼフの懐にはアリシャの銀貨が入っていたんだ。この意味わかるだろ?」
アヴリルは息を呑み、深刻な表情でそのままそっと息を吐き出した。
「じゃあ、ボリスの事を話した内容も嘘だったのね……」
「たぶん。僕はエドから聞かされただけだし、アリシャが後で──話してくれるかな? 見聞きしたことを」
頷いたアリシャにアヴリルが震える唇でごめんなさいと言った。
「私のせいだわ。私の……。ジョゼフは初めからちょっと信用出来ないとボリスが言っていたのに」
アヴリルの目から大粒の涙が溢れ出し、ポタポタと床に落ちていく。
「皆に私は嘘を吐いていたの。ああ……もしボリスが死んだりしたら、私は自分を許せない。あんなにジョゼフを連れて行くのは反対だと言われたのに、言われたのよ……ボリスに」
取り乱して泣く姿に声の掛けようがない。気になることは沢山あるけれどアヴリルの涙が二人の口を噤ませた。最後に肩を震わせて泣くアヴリルをウィンが抱き締めた。
「ここは僕が。アリシャは皆の食事を用意して」
むせび泣くアヴリルが気がかりでもアリシャにはやれることはない。だから、疲れた村の人々を癒やすような温かな料理を作ろうと決心し、その場を離れたのだった。
アリシャが料理部屋に入っていくとレゼナとリアナが待っていた。互いに相手を思いやり、そっとハグを交わしてからレゼナがいつもの調子で「さあ、アリシャ。私に何をしてほしい? キノコが山程あるみたいだけど」と、部屋の隅にあるキノコ入りのカゴの元へと歩いていく。
「キノコはラードとニンニクでまずサッと炒めてください」
アリシャも気持ちを切り替え、腕まくりをして、汲み置きの水で手を洗う。リアナも腕まくりをして「私はどうしたらいい?」とアリシャに問う。
「じゃあニンニクを一つ、全部皮を剥いてレゼナに渡して。一度台の所でニンニクを潰してから渡すのよ。その間に私は生地を練るわ」
三人は分担し、料理に取り掛かった。もちろん隣の部屋のボリスは気になるが、レオが処置してくれている。レオ以上に医学に精通している者はいないのだから、あとは待つしかないのだ。
ニンニクとキノコを炒めて貰い器にあげておいて貰い、アリシャはせっせと小麦粉を練って少し寝かせておく。
生地作りが終わると塩漬け肉とキノコ、牛乳で煮込み、胡椒を振りかけてから小麦粉がダマにならないよう慎重にかき混ぜていく。こうするとトロトロになるのだ。今日はスープとして飲むわけではないので牛乳の量はかなり抑え気味にしてある。
「美味しい匂いがしてきたね、アリシャ」
リアナは鍋を覗き込んで顔を輝かせた。
(どんな日でも、美味しい料理は気持ちを和らげてくれる。私には私の役割がある)
レオには医学の知識が、ウィンには人を慰めたりする優しさがある。レゼナはいつだって皆を明るくしてくれるのだ。だから、アリシャもどんな日でも料理を作って皆の体を満たしたいと思った。
キノコのクリームが出来上がり、寝かし終わった生地を薄く伸ばしていく。円形の生地の上にまだ熱々のクリームを乗せて素早く包み、端を折り返してからナイフの柄で等間隔に押さえつけた。これで中身は出てこない。
「リアナ、表面がぷっくりしてきたら一度ひっくり返してね。返してちょっと焼け目が付いたら炉から下ろしてちょうだい。生地が薄いし火力が強いから瞬きしていたら焦げるわよ」
「え! そんなのムリだわ」
「かなり早く焼けるから注意しててって意味! さぁ、焼くわよ」
アリシャが炉に出来上がったものを置き、リアナが真剣な眼差しで生地の変化に目を光らせる。その間、レゼナは食器類を広間に運んでいった。
巾着に似たパンがキツネ色に焼き上がっていく。それと共にパンの焼ける芳ばしい香りが料理部屋を包んでいく。
「美味しそうな匂いだ」
アリシャもリアナも動きを止めて声の主に顔を向けた。ドクに肩を貸してもらったボリスだった。
「ボリス! 横になっていなくて大丈夫なの?」
その問いには横についていたレオが答えた。
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