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冬キャベツとベーコンのスープ
冬キャベツとベーコンのスープ4
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仰々しいレオに驚き、アリシャはまたしてもレオに触れそうになっていた。顔を上げてほしいと肩に手を置きそうになったのだ。
「レオさん、そんな……顔を上げてください。私は頭を下げる方の人間であって──」
「いや、アリシャよ。君が防御の主であるとわかった瞬間から、私は君に仕える運命を感じていた。我らの主だ」
困惑するアリシャに顔を向けると「まだ幼く可愛らしい我らの君主よ。目指すは穏やかな生活、人々の平和だ。どうか、道を誤らず真っ直ぐに導き給え」と言い終えるといま一度頭を下げた。
「レオさん。わ、わたしにはそのように重大な責務を全うすることなど──」
レオは顔を上げると首を横に振る。
「アリシャの定めだ。全力で我々がサポートするから安心しなさい。アリシャの平民と変わらぬ心持ちが皆を導くだろう。それでいいのだ」
レオが炉に顔を向け「パンがかなり焼けておるが」とパンを指さす。アリシャは弾かれたように炉に駆け寄り、近くにあった料理用の清潔な布でパンを掴んでテーブルに投げた。熱々で投げずに持っていたら火傷してしまう。既に火は十分に通っていて、むしろ焦げ始めたパンがテーブルでコロコロ転がっていた。
「エド用の解熱薬をとってくる。料理を焦がさぬように頼むぞ」
愉快そうに言うレオにアリシャは「はい」と返事をし、また熱々のパンを取り上げてテーブルに投げた。
料理を作り終え、アリシャは各家庭に食べ物を届けに行ってきた。
扉越しに話すのは寂しいが皆食事を楽しみにしてくれていて、しかも温める手間はあっても、熱々の料理を食せると喜ばれた。宿屋にいる面々には鍋からよそって直ぐに持っていくことで温かさをキープした。
「アリシャ! もうずっといい匂いがしていてドクとご飯はなにかしらって話していたのよ」
とりわけレゼナが喜んでくれたのは嬉しかった。母性の強いレゼナがこの状況に気落ちしていないはずがない。エドは息子だし、そんな息子のそばにいられないのだから。
「レゼナ。私がエドのところに行くことになったの──自分に防御を使って。それで何か取ってくるものとか、エドに伝えたい事とかあれば」
扉の向こうで二人の話し合う声がモゴモゴと聞こえ、再びレゼナが扉の前に立ったのが音で伝わってきた。
「必要なものはもってきたから大丈夫よ。ドクと私からエドに『愛している』と伝えてちょうだい。『愛しているわ、エド。私達の宝よ』そう、言って」
「はい。精一杯看病してきますから──」
アリシャには他に何も言えることはなかった。もっと力付けたいとか、もどかしい気持ちはあるが今はなにもかける言葉がない。
扉の向こう側で神に祈りを捧げているのがアリシャの耳にも届いていた。アリシャも同じ気持ちで小さく祈りを捧げた。
ナジの家に料理を届けた足で薪置場に寄った。エドの家に薪を持って行く為に抱えられるだけ持つと砂利の道を歩いていく。
やはり今年の秋は何かがおかしい。秋というより早春のような気温の高い日がある。春に見る花が咲いてしまっていることに薄気味悪さすら覚えて足早に小道を抜けていった。
「アリシャ、薪を持とうか」
宿屋の横まで来た時にボリスに声をかけられたが、もうエドの家も近いしそれを断った。
「エドの家に持っていくから私がやるわ。ありがとう」
「え? まさか家の中までは運ばないよな?」
「防御の力を使うから大丈夫なの。ご心配ありがとう」
そのままボリスの前を通り過ぎようとすると行く手を阻むようにボリスがアリシャの前にたちはだかった。村の中でも一番身長が高いボリスにそんなことをされたら全く前に進めない。
「ボリス?」
「エドのところに行かせるわけにはいかないな」
ボリスの口調はいつも楽しげで戯けているような愉快なものだ。だが、今はまるでいつもと違う。低く落とした声音が別人みたいだ。
「ちゃんと防御を張るから、本当に危なくないのよ」
「咳をしたときの唾なんかでうつるというのはあくまで通説だろ? 本当かどうか、わからないじゃないか。それに君の使える魔力だって絶対に有効だと言い切れるか?」
もちろん自分に振り掛けた粉は体に付かなかったしアリシャは防御の力を信じていた。いや、ボリスの言うように絶対ではないかもしれない。どこかに穴がある可能性はもちろんある。しかし、ローブを被るよりずっと確かな防御策だと考えていた。
「私はこの力を信じているし、レオさんがローブを羽織ってエドを診るよりも絶対に私の方が安全だと思う」
「率直に言う。俺はアリシャに危険を犯してほしくないんだ。君の力を疑っているわけではなく、ただ単にアリシャが心配なんだ」
アリシャは一瞬黙り、「でも」と反論する。
「私は確かに百パーセント安全な訳ではないかもしれないけど、エドが直ぐそこで苦しんでいるのよ? 誰かが行かなきゃならないなら、一番危険のない私が適任だわ」
「アリシャが行くくらいなら俺が行こう」
「ボリス。それはレオさんが行くのと差がないわ。どうしたっていうの? なぜ私を信じてくれないの」
ボリスは多くの場面でアリシャを助け、手を貸してくれた。それなのにこんな大事な場面で行く手を阻むなんて、アリシャには理解できなかった。
ボリスは「わからないのか?」と、アリシャに問う。あんなにいつも楽しそうな瞳をしているのに、今のボリスの目はアリシャからしたら怒っているようにすら見えた。
「レオさん、そんな……顔を上げてください。私は頭を下げる方の人間であって──」
「いや、アリシャよ。君が防御の主であるとわかった瞬間から、私は君に仕える運命を感じていた。我らの主だ」
困惑するアリシャに顔を向けると「まだ幼く可愛らしい我らの君主よ。目指すは穏やかな生活、人々の平和だ。どうか、道を誤らず真っ直ぐに導き給え」と言い終えるといま一度頭を下げた。
「レオさん。わ、わたしにはそのように重大な責務を全うすることなど──」
レオは顔を上げると首を横に振る。
「アリシャの定めだ。全力で我々がサポートするから安心しなさい。アリシャの平民と変わらぬ心持ちが皆を導くだろう。それでいいのだ」
レオが炉に顔を向け「パンがかなり焼けておるが」とパンを指さす。アリシャは弾かれたように炉に駆け寄り、近くにあった料理用の清潔な布でパンを掴んでテーブルに投げた。熱々で投げずに持っていたら火傷してしまう。既に火は十分に通っていて、むしろ焦げ始めたパンがテーブルでコロコロ転がっていた。
「エド用の解熱薬をとってくる。料理を焦がさぬように頼むぞ」
愉快そうに言うレオにアリシャは「はい」と返事をし、また熱々のパンを取り上げてテーブルに投げた。
料理を作り終え、アリシャは各家庭に食べ物を届けに行ってきた。
扉越しに話すのは寂しいが皆食事を楽しみにしてくれていて、しかも温める手間はあっても、熱々の料理を食せると喜ばれた。宿屋にいる面々には鍋からよそって直ぐに持っていくことで温かさをキープした。
「アリシャ! もうずっといい匂いがしていてドクとご飯はなにかしらって話していたのよ」
とりわけレゼナが喜んでくれたのは嬉しかった。母性の強いレゼナがこの状況に気落ちしていないはずがない。エドは息子だし、そんな息子のそばにいられないのだから。
「レゼナ。私がエドのところに行くことになったの──自分に防御を使って。それで何か取ってくるものとか、エドに伝えたい事とかあれば」
扉の向こうで二人の話し合う声がモゴモゴと聞こえ、再びレゼナが扉の前に立ったのが音で伝わってきた。
「必要なものはもってきたから大丈夫よ。ドクと私からエドに『愛している』と伝えてちょうだい。『愛しているわ、エド。私達の宝よ』そう、言って」
「はい。精一杯看病してきますから──」
アリシャには他に何も言えることはなかった。もっと力付けたいとか、もどかしい気持ちはあるが今はなにもかける言葉がない。
扉の向こう側で神に祈りを捧げているのがアリシャの耳にも届いていた。アリシャも同じ気持ちで小さく祈りを捧げた。
ナジの家に料理を届けた足で薪置場に寄った。エドの家に薪を持って行く為に抱えられるだけ持つと砂利の道を歩いていく。
やはり今年の秋は何かがおかしい。秋というより早春のような気温の高い日がある。春に見る花が咲いてしまっていることに薄気味悪さすら覚えて足早に小道を抜けていった。
「アリシャ、薪を持とうか」
宿屋の横まで来た時にボリスに声をかけられたが、もうエドの家も近いしそれを断った。
「エドの家に持っていくから私がやるわ。ありがとう」
「え? まさか家の中までは運ばないよな?」
「防御の力を使うから大丈夫なの。ご心配ありがとう」
そのままボリスの前を通り過ぎようとすると行く手を阻むようにボリスがアリシャの前にたちはだかった。村の中でも一番身長が高いボリスにそんなことをされたら全く前に進めない。
「ボリス?」
「エドのところに行かせるわけにはいかないな」
ボリスの口調はいつも楽しげで戯けているような愉快なものだ。だが、今はまるでいつもと違う。低く落とした声音が別人みたいだ。
「ちゃんと防御を張るから、本当に危なくないのよ」
「咳をしたときの唾なんかでうつるというのはあくまで通説だろ? 本当かどうか、わからないじゃないか。それに君の使える魔力だって絶対に有効だと言い切れるか?」
もちろん自分に振り掛けた粉は体に付かなかったしアリシャは防御の力を信じていた。いや、ボリスの言うように絶対ではないかもしれない。どこかに穴がある可能性はもちろんある。しかし、ローブを被るよりずっと確かな防御策だと考えていた。
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「率直に言う。俺はアリシャに危険を犯してほしくないんだ。君の力を疑っているわけではなく、ただ単にアリシャが心配なんだ」
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「アリシャが行くくらいなら俺が行こう」
「ボリス。それはレオさんが行くのと差がないわ。どうしたっていうの? なぜ私を信じてくれないの」
ボリスは多くの場面でアリシャを助け、手を貸してくれた。それなのにこんな大事な場面で行く手を阻むなんて、アリシャには理解できなかった。
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