112 / 131
キャベツの塩漬け入りマスのほかほかシチュー
キャベツの塩漬け入りマスのほかほかシチュー7
しおりを挟む
アリシャも本当はその部屋に合流したかったのでアヴリル同様肩を落としていた。
(エドが隣の部屋に居る……変な寝言言ったりしたらどうしよう)
想像しただけで少し緊張してしまうアリシャに気がついたレゼナとアヴリル。二人がこっそり顔を見合わせてウィンクしていたことなどアリシャは気が付きもしなかった。
食事の片付けまで終えると翌日のフロランタンの準備をするのが日課になっていた。
ココはギリギリまで炉の前で丸まって寝そべっている。キティーは暖炉の前と決まっているからあちらの方がずっと暖かいはずだ。
「本当にエドは来るのかしら?」
火の番をしている二人の兵を残し、男たちも皆、引き上げていた。けれど今のところエドはやって来ていない。
話しかけてもココは顔を尻尾で隠してノーリアクションだ。
アリシャは炉の前でエドが夜を明かすなら、何か敷くものを用意すべきなのではないかと思案していた。椅子もなければ何もないのだ。あるのは樽と樽と樽。おまけにカゴくらいなものだった。
(椅子を持ってくるのかしら?)
そこに一晩中座っているのは苦行なのではないかとソワソワしてしまう。
(レゼナの気持は嬉しいけど断るのが一番良さそうね)
炉の前で、時の流れを気にせず二人で話していたり火を眺めていることが出来たら幸せなのにと名残惜しい気持ちもあるが、断らなければならないと思った。
なかなか来ないエドを待つのは諦めて炉の火に蓋を被せた。こうしておけば完全には消えず、しかも火事の心配もない。
「アリシャ」
名前を呼んでからノック。エドのやり方だ。思わずシャキッと立ち上がって、戸のところに飛んでいった。
「来ないのかと思ったわ」
エドを中に通すと戸を閉めた。するとエドが中から閂をかけたので、アリシャは目をパチクリさせた。
「閉めるの?」
「閉めるだろ」
エドが居るなら閉めなくても安心な気がするが、そう断言されるとそうなのかと納得した。いや、アリシャは火の番をしてもらうのは申し訳ないと思って断るつもりなのだから……。
アリシャの部屋の扉は開いていた。もちろん炉からの熱を少しでも部屋に入れるためだった。
エドは今しがた閉じた火用の蓋をあげて、枝を割って火を大きくする。
「あのエド? やっぱり火をつけてて貰うのって申し訳ないわ」
フゥっと息を吹きかけ炎が上がると、エドは枝の上に薪を置いた。
「火をつけておかなきゃ寒いだろ? あっちに行くぞ」
「え?」
アリシャは手を引かれて何故かエドに部屋へと連れて行かれた。
「一人で行けるのに……」
ベッドの前まで来るとエドは振り返りアリシャの方に体を向けた。
「レオにも話した。もう、何も我慢する必要はなくなった」
「え……?」
暗い部屋でもエドの瞳がアリシャを見ているのがわかる。冷たい手がアリシャの唇をなぞった。
急展開にアリシャの脳は考えることを放棄して真っ白になっていた。ボンと心臓が破裂したみたいになって、どこもかしこも脈を打っている。
「赤いぞ」
「く、暗くて……見えないでしょう」
「……確かに」
暗いと言ったのはアリシャだったが、アリシャもエドが笑ったのを見た気がした。
エドはアリシャの唇を指でなぞってから体を落としていく。重なった唇が僅かに動く。
「俺はお前のものだ」
二人の唇が同じように揺れるからそれはまるでアリシャの言葉のようでもあった。
(エドは私の……)
抱き上げられベッドに下ろされると、エドの手がアリシャの服を脱がそうとする。
「あのあの……待って皆、宿屋にいるのよ?」
エドの行動にアリシャは慌て、小声で囁いた。
「知ってる」
エドはサラリと言って返し、アリシャの服を留めている紐を解いていく。
「止める気はない。止めるなんてムリだし」
アリシャの鎖骨に唇を押し当てて「皆に知られたって構わない」と自分のチェニックを一気に脱いだ。
「え、それは……」
「困る? じゃあ──」
これまでとは比べ物にならないようなキスを浴びせられアリシャはくぐもった声を漏らす。呼吸が出来なくて必死にエドの手を掴んでいた。
「これなら声も出せない」
ハァハァと息が上がるアリシャの耳元でそっと囁く。
「アリシャが欲しい。この先もずっと」
ゴクリと唾を飲み込んだアリシャが答えた。
「私も」
琥珀の瞳がアリシャを見た時から、アリシャはこの時を待ち望んでいたのだとエドのキスに応えていくのだった。
(エドが隣の部屋に居る……変な寝言言ったりしたらどうしよう)
想像しただけで少し緊張してしまうアリシャに気がついたレゼナとアヴリル。二人がこっそり顔を見合わせてウィンクしていたことなどアリシャは気が付きもしなかった。
食事の片付けまで終えると翌日のフロランタンの準備をするのが日課になっていた。
ココはギリギリまで炉の前で丸まって寝そべっている。キティーは暖炉の前と決まっているからあちらの方がずっと暖かいはずだ。
「本当にエドは来るのかしら?」
火の番をしている二人の兵を残し、男たちも皆、引き上げていた。けれど今のところエドはやって来ていない。
話しかけてもココは顔を尻尾で隠してノーリアクションだ。
アリシャは炉の前でエドが夜を明かすなら、何か敷くものを用意すべきなのではないかと思案していた。椅子もなければ何もないのだ。あるのは樽と樽と樽。おまけにカゴくらいなものだった。
(椅子を持ってくるのかしら?)
そこに一晩中座っているのは苦行なのではないかとソワソワしてしまう。
(レゼナの気持は嬉しいけど断るのが一番良さそうね)
炉の前で、時の流れを気にせず二人で話していたり火を眺めていることが出来たら幸せなのにと名残惜しい気持ちもあるが、断らなければならないと思った。
なかなか来ないエドを待つのは諦めて炉の火に蓋を被せた。こうしておけば完全には消えず、しかも火事の心配もない。
「アリシャ」
名前を呼んでからノック。エドのやり方だ。思わずシャキッと立ち上がって、戸のところに飛んでいった。
「来ないのかと思ったわ」
エドを中に通すと戸を閉めた。するとエドが中から閂をかけたので、アリシャは目をパチクリさせた。
「閉めるの?」
「閉めるだろ」
エドが居るなら閉めなくても安心な気がするが、そう断言されるとそうなのかと納得した。いや、アリシャは火の番をしてもらうのは申し訳ないと思って断るつもりなのだから……。
アリシャの部屋の扉は開いていた。もちろん炉からの熱を少しでも部屋に入れるためだった。
エドは今しがた閉じた火用の蓋をあげて、枝を割って火を大きくする。
「あのエド? やっぱり火をつけてて貰うのって申し訳ないわ」
フゥっと息を吹きかけ炎が上がると、エドは枝の上に薪を置いた。
「火をつけておかなきゃ寒いだろ? あっちに行くぞ」
「え?」
アリシャは手を引かれて何故かエドに部屋へと連れて行かれた。
「一人で行けるのに……」
ベッドの前まで来るとエドは振り返りアリシャの方に体を向けた。
「レオにも話した。もう、何も我慢する必要はなくなった」
「え……?」
暗い部屋でもエドの瞳がアリシャを見ているのがわかる。冷たい手がアリシャの唇をなぞった。
急展開にアリシャの脳は考えることを放棄して真っ白になっていた。ボンと心臓が破裂したみたいになって、どこもかしこも脈を打っている。
「赤いぞ」
「く、暗くて……見えないでしょう」
「……確かに」
暗いと言ったのはアリシャだったが、アリシャもエドが笑ったのを見た気がした。
エドはアリシャの唇を指でなぞってから体を落としていく。重なった唇が僅かに動く。
「俺はお前のものだ」
二人の唇が同じように揺れるからそれはまるでアリシャの言葉のようでもあった。
(エドは私の……)
抱き上げられベッドに下ろされると、エドの手がアリシャの服を脱がそうとする。
「あのあの……待って皆、宿屋にいるのよ?」
エドの行動にアリシャは慌て、小声で囁いた。
「知ってる」
エドはサラリと言って返し、アリシャの服を留めている紐を解いていく。
「止める気はない。止めるなんてムリだし」
アリシャの鎖骨に唇を押し当てて「皆に知られたって構わない」と自分のチェニックを一気に脱いだ。
「え、それは……」
「困る? じゃあ──」
これまでとは比べ物にならないようなキスを浴びせられアリシャはくぐもった声を漏らす。呼吸が出来なくて必死にエドの手を掴んでいた。
「これなら声も出せない」
ハァハァと息が上がるアリシャの耳元でそっと囁く。
「アリシャが欲しい。この先もずっと」
ゴクリと唾を飲み込んだアリシャが答えた。
「私も」
琥珀の瞳がアリシャを見た時から、アリシャはこの時を待ち望んでいたのだとエドのキスに応えていくのだった。
53
あなたにおすすめの小説
【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!
加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。
カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。
落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。
そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。
器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。
失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。
過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。
これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。
彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。
毎日15:10に1話ずつ更新です。
この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
【完結】没落令嬢、異世界で紅茶店を開くことにいたしました〜香りと静寂と癒しの一杯をあなたに〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
夜会で父が失脚し、家は没落。屋敷の裏階段で滑り落ち、気づけば異世界――。
王国貴族だったアナスタシアが転移先で授かったのは、“極上調合”という紅茶とハーブのスキルだった。
戦う気はございませんの。復讐もざまぁも、疲れますわ。
彼女が選んだのは、湖畔の古びた小屋で静かにお茶を淹れること。
奇跡の一杯は病を癒やし、呪いを祓い、魔力を整える力を持つが、
彼女は誰にも媚びず、ただ静けさの中で湯気を楽しむのみ。
「お代は結構ですわ。……代わりに花と静寂を置いていってくださる?」
騎士も王女も英雄も訪れるが、彼女は気まぐれに一杯を淹れるだけ。
これは、香草と紅茶に囲まれた元令嬢の、優雅で自由な異世界スローライフ。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/387029553/episode/10775138
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
平民に転落した元令嬢、拾ってくれた騎士がまさかの王族でした
タマ マコト
ファンタジー
没落した公爵令嬢アメリアは、婚約者の裏切りによって家も名も失い、雨の夜に倒れたところを一人の騎士カイルに救われる。
身分を隠し「ミリア」と名乗る彼女は、静かな村で小さな幸せを見つけ、少しずつ心を取り戻していく。
だが、優しくも謎めいたカイルには、王族にしか持ちえない気品と秘密があり――
それが、二人の運命を大きく動かす始まりとなるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる