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チーズとかぼちゃのタルト蜂蜜掛け
チーズとかぼちゃのタルト蜂蜜掛け2
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暖炉の前で寛ぐキティーを眺めながらエドは魔力同士の力関係を考えていた。単純に考えれば攻撃が最強に思えるが、防御はそれら二つの力を跳ね除ける力があると考えると、一番強いのかとも思ったりする。
「どんな魔力をも寄せ付けない防御を味方につければ……攻撃も回復も、やり方次第で相手を屈伏させられる。影響力が強い力だからこそ、防御は身を潜めていたのかもな」
自由気ままに生きるキティーは普段はあまり姿を現さない。今は天候悪化の非常事態だから宿屋に来ているが、ここ何年も冬でも人間と生活を共にすることはなかった。人間に使われたり、ちやほやされるより自由を選んでのことなのかもしれない。
エドの独り言のようなまとめにエクトルが「ではなぜ今、表に姿を現した」と問いかけてきた。
「知らねぇよ。イライザが暴れてるから神が防御の主を遣わしたんじゃねぇのか」
エドの適当な返しに、イザクは真面目な顔であり得ると答えた。
「ストルカ国は有力者の心を掌握し、武力を拡大させている。今のところ我が国に攻め込んで来るほどではないが、いつかは触手を伸ばすというのが国の重鎮たちの意見だ。それにだ。イライザ女王も防御を探していると聞いている。これを意味するところは」
憂鬱な面持ちで「戦だな」とエクトルが続きを言った。
「イライザの魔力がどれくらいあるのかわからんが、戦になり、片っ端から兵を回復していかれたらこちらももたない。まぁ、アリシャが居れば首都に入っていけるだろうし──」
「おい。アリシャを巻き込むなよ」
エドが先を言わさず割り込んだが、エクトルは眉を上げて答えた。
「巻き込むなとは論点がずれている。魔力を使う者は否が応でも参加せねばならん。単なる人間同士の戦いではないのだ。アリシャこそが勝利への礎になるはずだ」
険しい表情で首を横に振るエドにエクトルも眉間に皺を寄せる。
「エドワードよ、イライザの悪行を見て来たのではないのか? それでもそのような我儘を貫こうというのか」
「じゃあ、お前は愛する女を危険に晒すことについて何とも思わないのか」
「忘れてくれるな、アリシャは防御の主だ、危険はない」
「保証はないだろ」
「保証などない。ただ、私にとってもアリシャは愛おしい女だ。みすみす危険に晒すわけがなかろう」
エドが反論しようと息を吸ったところをイザクが手を広げて制止する。
「堂々巡りになりますやめておきましょう。お二人の意見はこの先もきっと平行線です。この議論はまた状況が変わった時にいたしましょう」
丁度申し合わせたように宿屋の扉が開いて兵が顔を覗かせた。今日は比較的天気が落ち着いており、数人の兵が外で作業したりしていた。手にしている道具を見ると雪かきをしていたらしい。
「エクトル様、イザク様。川沿いなら馬を連れて歩けそうなので少し運動させますが、お二人はいかがなさいますか?」
エクトルが立ち、イザクも直ぐにそれに続いた。
「部屋から外套をとって参ります」
エクトルはその場に残り、イザクだけ二人が使っている部屋の中に入って行った。
「エドワード。お前は国に戻りたいという気持ちはないのか」
見下ろす形でエドに問うと、エドはじりじりと視線を上げていってエクトルと視線を合わせた。
「なぜそんなことを聞く」
「イライザと戦い我が国が勝った時、どのみち領主が必要になる」
「あんた、せっかちだな。戦もはじまっちゃいないのに。まあ、答えはノーだ。俺はもう王族ではないし、国は捨てたんだ。戻りたいなどと半端な気持ちだったら出て来ていない」
珍しく険のある眼差しでエドを睨みつけたエクトルが、戻ってきたイザクを見ながらいう。外套をイザクに掲げられ、体を預けて着せてもらっている。
「それは心底ガッカリする。国を捨てるとはすなわち国民を見捨てるということだ。捨てられた民はどうなるのであろう。ああ、守ってくれる依代を失い野垂れ死にするのか」
エクトルはエドの拳に力が入るのを見て、口先で笑った。
「貶されれば悔しいが、拳を握るだけか。エドワード王子。残念だ」
残されたエドは不機嫌に作りかけのナイフを取り上げ、しばらく意味もなくそれを睨み付けていた。
アリシャは雪のチラつく中、ボリスとユーリ、それにリアナとで水車小屋へとむかっていた。
「こんなに寒くてもいるの?」
リアナは先頭をいくボリスに声を張り上げて質問する。ボリスが先頭を行くのは深い雪に埋もれることがないことと、皆のために通り道を作るためだった。
「物陰でじっと寒さに耐えてるよ」
二人の会話の内容は鰻やマスの魚のことだった。今日は雪があまり降っていないので新鮮な魚を捕ろうという話なのだ。
ボリスはアリシャにだけこっそり子供たちに外の空気を吸わせてやろうとウィンクしていたが、リアナたち二人はそのことを知らない。
リアナは寒くて嫌だと始めはごねたが、ユーリは勉強から逃れられるので大喜びだった。
「エクトルは出来ないと木の棒で叩くんだよ」
ユーリは口を尖らせて文句を言う。
「ダメよ、ユーリ。エクトルではなくエクトル様よ」
リアナの指摘にそんなことどうでもいいじゃないかと更に文句を重ねる。そんなユーリにリアナが後ろから雪をかけていた。
「あーあ、私もエクトル様から教わりたいわ。なんで小さい頃に計算を学びに行っちゃったんだろ」
先を行くボリスが雪を掻き分けながら笑い声をあげた。
「そんなにエクトルに教わりたいかい? 棒で叩かれるらしいのに」
「どんな魔力をも寄せ付けない防御を味方につければ……攻撃も回復も、やり方次第で相手を屈伏させられる。影響力が強い力だからこそ、防御は身を潜めていたのかもな」
自由気ままに生きるキティーは普段はあまり姿を現さない。今は天候悪化の非常事態だから宿屋に来ているが、ここ何年も冬でも人間と生活を共にすることはなかった。人間に使われたり、ちやほやされるより自由を選んでのことなのかもしれない。
エドの独り言のようなまとめにエクトルが「ではなぜ今、表に姿を現した」と問いかけてきた。
「知らねぇよ。イライザが暴れてるから神が防御の主を遣わしたんじゃねぇのか」
エドの適当な返しに、イザクは真面目な顔であり得ると答えた。
「ストルカ国は有力者の心を掌握し、武力を拡大させている。今のところ我が国に攻め込んで来るほどではないが、いつかは触手を伸ばすというのが国の重鎮たちの意見だ。それにだ。イライザ女王も防御を探していると聞いている。これを意味するところは」
憂鬱な面持ちで「戦だな」とエクトルが続きを言った。
「イライザの魔力がどれくらいあるのかわからんが、戦になり、片っ端から兵を回復していかれたらこちらももたない。まぁ、アリシャが居れば首都に入っていけるだろうし──」
「おい。アリシャを巻き込むなよ」
エドが先を言わさず割り込んだが、エクトルは眉を上げて答えた。
「巻き込むなとは論点がずれている。魔力を使う者は否が応でも参加せねばならん。単なる人間同士の戦いではないのだ。アリシャこそが勝利への礎になるはずだ」
険しい表情で首を横に振るエドにエクトルも眉間に皺を寄せる。
「エドワードよ、イライザの悪行を見て来たのではないのか? それでもそのような我儘を貫こうというのか」
「じゃあ、お前は愛する女を危険に晒すことについて何とも思わないのか」
「忘れてくれるな、アリシャは防御の主だ、危険はない」
「保証はないだろ」
「保証などない。ただ、私にとってもアリシャは愛おしい女だ。みすみす危険に晒すわけがなかろう」
エドが反論しようと息を吸ったところをイザクが手を広げて制止する。
「堂々巡りになりますやめておきましょう。お二人の意見はこの先もきっと平行線です。この議論はまた状況が変わった時にいたしましょう」
丁度申し合わせたように宿屋の扉が開いて兵が顔を覗かせた。今日は比較的天気が落ち着いており、数人の兵が外で作業したりしていた。手にしている道具を見ると雪かきをしていたらしい。
「エクトル様、イザク様。川沿いなら馬を連れて歩けそうなので少し運動させますが、お二人はいかがなさいますか?」
エクトルが立ち、イザクも直ぐにそれに続いた。
「部屋から外套をとって参ります」
エクトルはその場に残り、イザクだけ二人が使っている部屋の中に入って行った。
「エドワード。お前は国に戻りたいという気持ちはないのか」
見下ろす形でエドに問うと、エドはじりじりと視線を上げていってエクトルと視線を合わせた。
「なぜそんなことを聞く」
「イライザと戦い我が国が勝った時、どのみち領主が必要になる」
「あんた、せっかちだな。戦もはじまっちゃいないのに。まあ、答えはノーだ。俺はもう王族ではないし、国は捨てたんだ。戻りたいなどと半端な気持ちだったら出て来ていない」
珍しく険のある眼差しでエドを睨みつけたエクトルが、戻ってきたイザクを見ながらいう。外套をイザクに掲げられ、体を預けて着せてもらっている。
「それは心底ガッカリする。国を捨てるとはすなわち国民を見捨てるということだ。捨てられた民はどうなるのであろう。ああ、守ってくれる依代を失い野垂れ死にするのか」
エクトルはエドの拳に力が入るのを見て、口先で笑った。
「貶されれば悔しいが、拳を握るだけか。エドワード王子。残念だ」
残されたエドは不機嫌に作りかけのナイフを取り上げ、しばらく意味もなくそれを睨み付けていた。
アリシャは雪のチラつく中、ボリスとユーリ、それにリアナとで水車小屋へとむかっていた。
「こんなに寒くてもいるの?」
リアナは先頭をいくボリスに声を張り上げて質問する。ボリスが先頭を行くのは深い雪に埋もれることがないことと、皆のために通り道を作るためだった。
「物陰でじっと寒さに耐えてるよ」
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「エクトルは出来ないと木の棒で叩くんだよ」
ユーリは口を尖らせて文句を言う。
「ダメよ、ユーリ。エクトルではなくエクトル様よ」
リアナの指摘にそんなことどうでもいいじゃないかと更に文句を重ねる。そんなユーリにリアナが後ろから雪をかけていた。
「あーあ、私もエクトル様から教わりたいわ。なんで小さい頃に計算を学びに行っちゃったんだろ」
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「そんなにエクトルに教わりたいかい? 棒で叩かれるらしいのに」
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