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チーズとかぼちゃのタルト蜂蜜掛け
チーズとかぼちゃのタルト蜂蜜掛け4
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アリシャはナジが鼻を啜るのを聞いて、胸が痛かった。希望はまだあるということだ。
「ここで提案なのだが、子供や妊婦以外の者で捜索をしてみてはどうだろうか。もちろん天候が悪化したら直ぐに捜索は中止するが――」
ここでレオが村人たちの方を向いて「足が悪いジャンとナジも残りなさい」と言うと、ナジが弾かれたように顔を上げた。
「何で俺も! 探しに行きます、探させてください!」
ナジの横に立っていたドクがナジの肩を叩く。
「聞いたろ? 獣にやられているかもしれん。もしかするとルクもそうなっているかもしれないという事だ。そうだったとしたら、お前さんは見ない方がいい」
やっと状況が飲み込めたのかユーリが「え……ルクが死んだのか? 嘘だ」と、手に持っていた帽子を落とした。
「まだわからん。何があったのかわからないのだから答えを急ぐべきではない。ただ、ナジは動揺しておるし、捜索の妨げになりそうだから残るべきだと私は思っている」
ジャンがゆっくりと足を引き摺りながらナジの元へと歩いて行くと腕を二回撫でた。
「わしは足が悪い。残って一緒に家畜の世話をしてくれ。ユーリ、君も家畜の世話をしてくれるな?」
ユーリはナジを見上げてから、おずおずと首を縦に振った。
アヴリルがアリシャにそっと話かけてきた。
「今夜は何を作るつもりだったの? 簡単なものなら私が引き受けるわ。ほら、リアナもいるし」
「今日は塩漬けの肉を焼いて、それとは別にカボチャのパイを作るつもりだったの。薄くスライスしたカボチャをパイ生地の上に花びらのように広げて焼くだけよ。最後にチーズと蜂蜜をお願い。シナモンも少し掛けてください」
熱心に耳を傾けながらアヴリルがアリシャの言ったことを繰り返していく。そして、横で一緒に聞いていたリアナに「覚えた?」と問う。リアナは真面目な顔でこくんと一つ頷いた。
「たぶんそれなら出来そうよ。じゃあ、私たちは行けないからお願いね」
段取りができ、準備ができて順に外へと出ていった。エドは外に出ていく前に「絶対に一人にはなるなよ」とアリシャの額に唇をおとしていった。
外套を纏ったレゼナがアリシャの帽子を手から取って、アリシャに被せてくれた。
「男の人がまずはご遺体を一か所にまとめてくれるらしいわ。ココを連れて行きましょう。犬は匂いがわかるし……雪の中に埋もれていても教えてくれるかもしれないわ」
頷いたアリシャは自室に居たココにウィンが作ってくれた革製のリードを付けて連れてきた。紐など付けなくてもココは一緒に来てくれるのだが、匂いを追ってどんどん雪深い所に行かれると困るので、作っておいてもらったのだ。雪が降ってからはココがトイレに出たがったり、運動しに行く時にリードを使用している。
なぜ連れてこられたか分からないココははしゃいでいたのが、アリシャにはそれが少しだけ救いだった。とにかく憂鬱な空気が辺りを支配していたから。
アリシャがレゼナと森の方へと歩いて行くと、既に男たちが探索を始めていた。場所によっては腰より深い場所もあり男たちは皆棒を手にし、深さを確認しながら進んでいく。
「レゼナとアリシャ、こっちへ」
エクトルはレオと一緒に歩いたが、二人も呼び寄せ川沿いの雪がほぼないところへと連れて行った。そこには広げられた服が置いてあった。ココが服の匂いをしきりに嗅いでいる。
「……見覚えはあるな?」
エクトルに問われた二人は互いに顔を見合わせて頷いた。ジャンヌの服にはそれは豪華なレースがついていた。それが今目の前に広げられている。悲しいことに服はかなり破れてぼろぼろだった。
「あの、身体はどこに?」
レゼナが服しかないことに疑問を感じてエクトルに問うと、エクトルは少し離れたところに視線を投げた。
「あちらに穴を掘ってそっちに。見ない方がいい。はっきり言えばいくばくかの肉片と骨になっている」
レオがエクトルの視線の先に首を伸ばして覗いていたが見ることを諦めて首を引っ込めた。敢えて遠い場所に穴を掘ったのだろう。この場所から見ることは出来ないのだ。
「その遺体がジャンヌのものだというのは服でしか判断できないということか?」
エクトルに代わってイザクが答える。
「残念ながら頭部は骨になっておりましたので。他に身体的な特徴がわかればよいのですが……レオ様はご覧になりますか?」
「見てみよう。骨ばかりではわからぬかもしれぬが、死因も気になるのでな」
そこでレゼナも一歩前へと足を出した。
「私もお供いたします」
レゼナの申し出にアリシャは驚いていたが、レオはそれをすんなり受け入れた。二人がイザクと共に行ってしまうとエクトルが呟く。
「さすがドクトールの妻だな。なかなか肝が据わっておる」
「大丈夫なのかしら……」
アリシャは恐ろしくて自分も行くとは言えなかった。それどころかここにある服ですらあまり直視できない。無残に引き裂かれているところを見ると、ジャンヌがどんな目に遭ったのか想像してしまって気分が悪くなりそうだった。
「アリシャはここに居ればよい。見たところで生き返るわけでもないのでな。私もあの女のことは何度か見たが……まぁ、あれではわからん」
問題は死因だと最後に付け足すと、足元にある服を屈んでまじまじと観察し始めた。
「刃物キズは見当たらない。刺された訳ではなさそうだな。他殺か、自殺か、自然死か」
「え?」
驚いてアリシャもエクトル同様に屈んで服をよく見てみた。アリシャはてっきり凍死してしまったのかと思っていたのだが、エクトルはそうは考えてないらしい。
切り裂かれているが、確かに服の傷には刃物で切られたような鋭さはない。引き裂いた時に出来るギザギザな切り口ばかりだ。
「血の跡はないのかしら。私には見つけられないけど」
生き物を捌いたときに血が飛ぶこともあるのでたぶん血がついていればアリシャでもわかると思った。ジャンヌの服は見た感じ泥汚れだ。
「ここで提案なのだが、子供や妊婦以外の者で捜索をしてみてはどうだろうか。もちろん天候が悪化したら直ぐに捜索は中止するが――」
ここでレオが村人たちの方を向いて「足が悪いジャンとナジも残りなさい」と言うと、ナジが弾かれたように顔を上げた。
「何で俺も! 探しに行きます、探させてください!」
ナジの横に立っていたドクがナジの肩を叩く。
「聞いたろ? 獣にやられているかもしれん。もしかするとルクもそうなっているかもしれないという事だ。そうだったとしたら、お前さんは見ない方がいい」
やっと状況が飲み込めたのかユーリが「え……ルクが死んだのか? 嘘だ」と、手に持っていた帽子を落とした。
「まだわからん。何があったのかわからないのだから答えを急ぐべきではない。ただ、ナジは動揺しておるし、捜索の妨げになりそうだから残るべきだと私は思っている」
ジャンがゆっくりと足を引き摺りながらナジの元へと歩いて行くと腕を二回撫でた。
「わしは足が悪い。残って一緒に家畜の世話をしてくれ。ユーリ、君も家畜の世話をしてくれるな?」
ユーリはナジを見上げてから、おずおずと首を縦に振った。
アヴリルがアリシャにそっと話かけてきた。
「今夜は何を作るつもりだったの? 簡単なものなら私が引き受けるわ。ほら、リアナもいるし」
「今日は塩漬けの肉を焼いて、それとは別にカボチャのパイを作るつもりだったの。薄くスライスしたカボチャをパイ生地の上に花びらのように広げて焼くだけよ。最後にチーズと蜂蜜をお願い。シナモンも少し掛けてください」
熱心に耳を傾けながらアヴリルがアリシャの言ったことを繰り返していく。そして、横で一緒に聞いていたリアナに「覚えた?」と問う。リアナは真面目な顔でこくんと一つ頷いた。
「たぶんそれなら出来そうよ。じゃあ、私たちは行けないからお願いね」
段取りができ、準備ができて順に外へと出ていった。エドは外に出ていく前に「絶対に一人にはなるなよ」とアリシャの額に唇をおとしていった。
外套を纏ったレゼナがアリシャの帽子を手から取って、アリシャに被せてくれた。
「男の人がまずはご遺体を一か所にまとめてくれるらしいわ。ココを連れて行きましょう。犬は匂いがわかるし……雪の中に埋もれていても教えてくれるかもしれないわ」
頷いたアリシャは自室に居たココにウィンが作ってくれた革製のリードを付けて連れてきた。紐など付けなくてもココは一緒に来てくれるのだが、匂いを追ってどんどん雪深い所に行かれると困るので、作っておいてもらったのだ。雪が降ってからはココがトイレに出たがったり、運動しに行く時にリードを使用している。
なぜ連れてこられたか分からないココははしゃいでいたのが、アリシャにはそれが少しだけ救いだった。とにかく憂鬱な空気が辺りを支配していたから。
アリシャがレゼナと森の方へと歩いて行くと、既に男たちが探索を始めていた。場所によっては腰より深い場所もあり男たちは皆棒を手にし、深さを確認しながら進んでいく。
「レゼナとアリシャ、こっちへ」
エクトルはレオと一緒に歩いたが、二人も呼び寄せ川沿いの雪がほぼないところへと連れて行った。そこには広げられた服が置いてあった。ココが服の匂いをしきりに嗅いでいる。
「……見覚えはあるな?」
エクトルに問われた二人は互いに顔を見合わせて頷いた。ジャンヌの服にはそれは豪華なレースがついていた。それが今目の前に広げられている。悲しいことに服はかなり破れてぼろぼろだった。
「あの、身体はどこに?」
レゼナが服しかないことに疑問を感じてエクトルに問うと、エクトルは少し離れたところに視線を投げた。
「あちらに穴を掘ってそっちに。見ない方がいい。はっきり言えばいくばくかの肉片と骨になっている」
レオがエクトルの視線の先に首を伸ばして覗いていたが見ることを諦めて首を引っ込めた。敢えて遠い場所に穴を掘ったのだろう。この場所から見ることは出来ないのだ。
「その遺体がジャンヌのものだというのは服でしか判断できないということか?」
エクトルに代わってイザクが答える。
「残念ながら頭部は骨になっておりましたので。他に身体的な特徴がわかればよいのですが……レオ様はご覧になりますか?」
「見てみよう。骨ばかりではわからぬかもしれぬが、死因も気になるのでな」
そこでレゼナも一歩前へと足を出した。
「私もお供いたします」
レゼナの申し出にアリシャは驚いていたが、レオはそれをすんなり受け入れた。二人がイザクと共に行ってしまうとエクトルが呟く。
「さすがドクトールの妻だな。なかなか肝が据わっておる」
「大丈夫なのかしら……」
アリシャは恐ろしくて自分も行くとは言えなかった。それどころかここにある服ですらあまり直視できない。無残に引き裂かれているところを見ると、ジャンヌがどんな目に遭ったのか想像してしまって気分が悪くなりそうだった。
「アリシャはここに居ればよい。見たところで生き返るわけでもないのでな。私もあの女のことは何度か見たが……まぁ、あれではわからん」
問題は死因だと最後に付け足すと、足元にある服を屈んでまじまじと観察し始めた。
「刃物キズは見当たらない。刺された訳ではなさそうだな。他殺か、自殺か、自然死か」
「え?」
驚いてアリシャもエクトル同様に屈んで服をよく見てみた。アリシャはてっきり凍死してしまったのかと思っていたのだが、エクトルはそうは考えてないらしい。
切り裂かれているが、確かに服の傷には刃物で切られたような鋭さはない。引き裂いた時に出来るギザギザな切り口ばかりだ。
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