家に帰ると幼女ががお出迎えしてくれる日常

てる-たこ

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はじまり

幼女は今までに食べたパンの枚数を覚えている

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慧は部屋を片付け始めた。幸い荒らされた部屋は居間だけだったし、壊されたものもなかった。

幼女はさっきつけたテレビを興味津々に見ている。テレビの中ではヒーローがどこかの国の武術で敵をどんどん倒していく。
最後、敵のボスを必殺技の「超スーパーダイナミックパンチ」なるただの腹パンで倒す時、幼女は目をキラキラ輝かせていた。

慧はほとんど片付け終わると、あることに気付いた。それは、大事なものが盗まれたということではない。むしろ逆である。

何一つ盗まれてないのだ

慧は一応全ての部屋を念入りに調べてみたが、預金通帳や腕時計などの貴重品も盗まれていなかった。

「じゃあ空き巣じゃないのか…」

早くも仮説が崩れたな、と慧は苦笑した。

居間に帰ると幼女がふらふらと歩み寄ってきて

「お兄ちゃん、おなかすいたよー」

と言った。時計を見ると帰ってきてからもう1時間近くたっていた。

「もうこんな時間か。急いで作るよ」

慧は台所に向かい、冷蔵庫を開けた。しかし中はほとんど空っぽだった。

「そーだ、買い物行けなかったからろくな食材がないじゃん」

慧はそう言って舌打ちをした。少しの間に非日常的なことが起きすぎて日常のちょっとしたミスを忘れていた。

「そう言えば米炊くのも忘れてた。どーしよ。なんかあったかな…」

戸棚を漁ると中から食パンの袋が出てきた。賞味期限は今日までだった。

「まーこれでいいか、時間もないし」

そう言うと慧は食パンを二枚取り出し、トースターに放り込んだ。そしてフライパンを温め油をひき、奇跡的に余っていた卵を割り入れる。卵が丁度いい半熟に焼きあがる直前でトーストが焼きあがる。素早く取り出し軽くマーガリンをぬる。その上に目玉焼きを乗せればエッグトーストの完成だ。

「出来たぞ」

慧がエッグトーストを居間に運ぶと幼女は不思議そうな顔でそれを見つめた。そして慧に向かって

「なにこれ?お皿が2枚重なってるよ?」

と言った。

「え?これは食パンだけど…」
「しょくぱん?このお皿食べれるの!?」

まさかこの幼女、食パンを食べたことがないのか。どこかの吸血鬼が聞いたら驚きそうだ。今まで食べたパンの枚数を聞いて『0枚』なんて言った日にはロードローラーをぶん投げてくるかもしれない。

「まあ、食べてみろよ」
「うん、あ、いただきます!」
「お前自分の名前忘れても挨拶は忘れないんだな」

日本人離れした容姿の幼女に日本人の心が残っていたことに少し感動した。

「しゃむしゃむ…なにこれ!?すっごくおいしい!」
「そうか、よかった」

こんな簡単な料理で喜んでもらたことに、慧はホッとした。

幼女はものすごい勢いでトーストを食べ終わると、慧の分のトーストをじっと見つめ始めた。口からはよだれがたれていた。

「いいよ、やるよ」

そう言うと幼女の顔がぱぁぁっと明るくなり2枚目のトーストに勢いよくかじりついた。

「じゃあ、俺はシャワー浴びてくるからな」

慧は雨で服が濡れていることを思い出し、居間を後にした。

シャワーを浴びている時も慧は今日のことを考えていた。

このままずっと面倒を見るわけにもいかない。どんな事情があるにせよ彼女には帰るべき場所があるはずだ。てかなんでうちに入ってきたんだ。空き巣説は否定されたし…

「待てよ。なんであいつは濡れてなかったんだ?」

今日は雨だった。雨がひどかったせいで制服が濡れ、買い物に行けなかった。しかし彼女は少しも濡れてなかった。もちろんシャワーを使った痕跡もなかったし家の中も濡れていなかった。

「はは、もうわけわかんねぇや」

とりあえず今日は疲れたから明日考えよう。そう思い慧は考えるのをやめた。

風呂から出ると幼女は口にパンの屑をつけ、座ったまま眠っていた。慧は幼女を抱きソファーに寝かせ、毛布をかけた。幼女の体は想像したよりも軽かった。

そして慧も寝室へ行き布団に入った。

全く大変なことなった。慧は明日から起こる様々な面倒なことを想像しため息をつくと同時に久しく感じていなかった感情を胸に、眠った。
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