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第二章 公爵子息はみんなを幸せにして
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「マリアンヌ。アリッサがチョコケーキを作ってくれたよ。一緒に食べよう」
黒髪と琥珀色の目が美しい少年が、愛想よく声をかける。
「いらない!」
少女は不機嫌そうに行ってしまう。茶色の流れるような髪とくりっとした目が特徴の美貌が、いらだちからブスになってしまっている。
13歳に成長したジョルジュには悩みがあった。最近、同い年の姉であるマリアンヌがそっけないのだ。自分の顔を見るたびに御機嫌斜めになる。あの手この手で仲良くしようとするが、そのたびにこうして冷たくあしらわれる。
(ボク、なんか悪いことしたかな……?)
少年はひたすら困惑する。
半分しか血がつながっていなくとも、彼女は大事な家族だ。歳が同じであることもあって、小さいころはそれなりに仲がよかった。最近急にすげなく扱われるようになった理由が、いくら考えてもわからなかった。
テーブルに載ったふたり分のチョコケーキとにらめっこになる。ふたつ食べては多すぎる。夕食に響いてしまうだろう。その時だった。
「ジョルジュ、ちょっと邪魔してもいいかな?」
金髪で背が高く、歳の割に大人びた少年が訪ねてくる。
タンジェント伯爵家の三男、ウォルターだ。ジョルジュとマリアンヌと同い年の13歳。馬術が特技で、幼くして公式競技の選手でもある。名馬を多数所有しているフォルバン公爵家に、時々馬のことで相談に来る。
「ああ、ウォルターか。かまわないよ。せっかくだ、チョコケーキ食べて行かないかい?」
マリアンヌと一緒に食べる予定だったが、彼女があれではどうにもならない。もったいないので少年に勧めてみる。
「いいのかい?じゃあ頂くよ」
ウォルターが、年相応の幼い笑顔になる。思春期の男の子だ。甘いものが嫌いである方が珍しい。
「うん。アリッサはお菓子作りが上手だけど、本当に美味しい」
「ほらほら、食べかすついてるよ。もう13何だから、紳士の自覚持ちなさいな」
ウォルターがナプキンでジョルジュの口元を拭く。こうしてみると、容貌も立ち振る舞いも同い年とは思えない。
(うん……?視線を感じたような……?)
紅茶で口を濡らしながら、ジョルジュは突き刺さるような感触を覚える。振り返ると、長い茶色の髪が翻って遠ざかるのが見えた。
………………………………………………………
「アリーチェ姉様。最近ボク、マリアンヌに嫌われてるみたいなんだけど……」
いたたまれなくなった少年は、真ん中の姉に相談することにした。
「そうねえ……。嫌われているのとは少し違うかしら……?」
今や20代後半。妖艶な雰囲気をまとった姉が柔らかく微笑む。既婚で子どもも2人いる。女としての優雅さと貫禄を身につけている。
「じゃあ、なんなの?ボクがなにしたっていうのさ?」
しっかり者と評判のジョルジュだが、家の中ではまだまだ子どもで甘ったれだ。包容力のある姉を前にしていると、相応に子どもらしい表情になる。
「それは、姉様に教わることではないわよ。自分で調べて理解しないといけないことなの。厳しいかも知れないけどね」
きっぱりと申し渡される。ともあれ、年長者がそういうならそれが正しいのだろう。
(よし……。とりあえずマリアンヌと話し合ってみるか)
ジョルジュは決意していた。
今まで、問題解決から逃げてきた。同い年の姉をこれ以上不機嫌にさせたくないと、触らないようにしてきた。だが、それではだめだ。半分だけとはいえ自分たちは姉と弟だ。仲良くしたい。そのためには、マリアンヌの不機嫌の理由をなんとしても突き止めなくては。
「それにしても……。本当にわからないの……?」
「え……?なにが……?」
アリーチェがクスリと笑った趣旨が、ジョルジュにはわからなかった。
「ま、それも自分できづくべきことよ」
そう言った姉が、手鏡を掲げる。
ジョルジュの顔が大写しになる。みんなかわいいと言ってくれるし、手前味噌だが自分でも美形であると思っている。だが、それがなんなのだろう?13歳の少年には難解すぎた。
黒髪と琥珀色の目が美しい少年が、愛想よく声をかける。
「いらない!」
少女は不機嫌そうに行ってしまう。茶色の流れるような髪とくりっとした目が特徴の美貌が、いらだちからブスになってしまっている。
13歳に成長したジョルジュには悩みがあった。最近、同い年の姉であるマリアンヌがそっけないのだ。自分の顔を見るたびに御機嫌斜めになる。あの手この手で仲良くしようとするが、そのたびにこうして冷たくあしらわれる。
(ボク、なんか悪いことしたかな……?)
少年はひたすら困惑する。
半分しか血がつながっていなくとも、彼女は大事な家族だ。歳が同じであることもあって、小さいころはそれなりに仲がよかった。最近急にすげなく扱われるようになった理由が、いくら考えてもわからなかった。
テーブルに載ったふたり分のチョコケーキとにらめっこになる。ふたつ食べては多すぎる。夕食に響いてしまうだろう。その時だった。
「ジョルジュ、ちょっと邪魔してもいいかな?」
金髪で背が高く、歳の割に大人びた少年が訪ねてくる。
タンジェント伯爵家の三男、ウォルターだ。ジョルジュとマリアンヌと同い年の13歳。馬術が特技で、幼くして公式競技の選手でもある。名馬を多数所有しているフォルバン公爵家に、時々馬のことで相談に来る。
「ああ、ウォルターか。かまわないよ。せっかくだ、チョコケーキ食べて行かないかい?」
マリアンヌと一緒に食べる予定だったが、彼女があれではどうにもならない。もったいないので少年に勧めてみる。
「いいのかい?じゃあ頂くよ」
ウォルターが、年相応の幼い笑顔になる。思春期の男の子だ。甘いものが嫌いである方が珍しい。
「うん。アリッサはお菓子作りが上手だけど、本当に美味しい」
「ほらほら、食べかすついてるよ。もう13何だから、紳士の自覚持ちなさいな」
ウォルターがナプキンでジョルジュの口元を拭く。こうしてみると、容貌も立ち振る舞いも同い年とは思えない。
(うん……?視線を感じたような……?)
紅茶で口を濡らしながら、ジョルジュは突き刺さるような感触を覚える。振り返ると、長い茶色の髪が翻って遠ざかるのが見えた。
………………………………………………………
「アリーチェ姉様。最近ボク、マリアンヌに嫌われてるみたいなんだけど……」
いたたまれなくなった少年は、真ん中の姉に相談することにした。
「そうねえ……。嫌われているのとは少し違うかしら……?」
今や20代後半。妖艶な雰囲気をまとった姉が柔らかく微笑む。既婚で子どもも2人いる。女としての優雅さと貫禄を身につけている。
「じゃあ、なんなの?ボクがなにしたっていうのさ?」
しっかり者と評判のジョルジュだが、家の中ではまだまだ子どもで甘ったれだ。包容力のある姉を前にしていると、相応に子どもらしい表情になる。
「それは、姉様に教わることではないわよ。自分で調べて理解しないといけないことなの。厳しいかも知れないけどね」
きっぱりと申し渡される。ともあれ、年長者がそういうならそれが正しいのだろう。
(よし……。とりあえずマリアンヌと話し合ってみるか)
ジョルジュは決意していた。
今まで、問題解決から逃げてきた。同い年の姉をこれ以上不機嫌にさせたくないと、触らないようにしてきた。だが、それではだめだ。半分だけとはいえ自分たちは姉と弟だ。仲良くしたい。そのためには、マリアンヌの不機嫌の理由をなんとしても突き止めなくては。
「それにしても……。本当にわからないの……?」
「え……?なにが……?」
アリーチェがクスリと笑った趣旨が、ジョルジュにはわからなかった。
「ま、それも自分できづくべきことよ」
そう言った姉が、手鏡を掲げる。
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