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01
ステージに上がればできる子
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02
その日はミニライブだった。
客の入りは上々。
数人のアイドルが代わる代わる歌い、会場のテンションは最高潮。
いよいよ、大トリになろうとしていた。
が…。
「レベッカ。もうすぐ出番なんだから」
「む~り~。むりですって~!」
本日の目玉であるはずのアイドルが、歌うことを拒否していた。
プロデューサーである克正は、必死で説得している。
もう時間がないのだ。
彼女の名はレベッカ・コステロ。
異世界の生まれで、魔族と呼ばれる種だ。
と言っても、別に邪悪な種族というわけではない。
絹のようにきめ細かい褐色の肌と、琥珀色の瞳。
そして、異世界特有の笹穂耳が特徴だ。
引き締まった体と、メートル越えの爆乳。長身と、さながら南米出身のアスリートのような雰囲気だ。
エキゾチックな美貌も目を引く。
が、豪快そうな見た目に比して、気が小さくすさまじいまでのびびりなのだ。
おまけに恥ずかしがりだ。
「そんなこと言ったって、みんなレベッカの歌を聴きに来てくれてるんだぞ」
「それはわかってるけど…わかってるけど…」
レベッカは舞台衣装のまま、テーブルの下に上半身だけ突っ込んで震えている。
頭隠して尻隠さずとはこのことだ。
(尻がしゃべってるみたいで不気味だなあ…)
そんなことを思わずにはいられない。
「レベッカさーん。準備してくださーい!」
ついに、ADが声をかけてくる。
(しょうがない。あまりやりたい手ではないが…)
克正は意を決する。
ここでファンを裏切るわけにはいかない。
「うりゃ!」
「ひいいいいー!」
震えるレベッカをテーブルの下から引っこ抜く。そして、お姫様抱っこする。
「プ…プロデューサー…!下ろしてくださいよお!」
「だめ!なんとしてでも歌ってもらう」
手足をばたつかせるレベッカを、ステージ脇まで運んでいく。
「ま…まだ心の準備が~…!」
「そんなもの待ってたら日が暮れちまう!ほら行け!」
克正は、褐色肌の少女をステージに向けて無理矢理押し出す。
(うわ…お客さん多い…。恥ずかしいよお…)
ステージに立ったレベッカは、一瞬固まってしまう。
客の声援に応えて手を振るが、その表情は見事な苦笑いになっていた。
心の準備などできていないのに、無情に音楽のイントロが流れ出す。
(ええい!もうどうにでもなれ!)
いっそ開き直った気持ちになり、大きく息を吸って歌い始めた。
(どうなることかと思ったが、できるじゃないか。まあ、わかってたことだが)
ステージ脇の克正は、額の汗を拭いながら思う。
ステージ中央のレベッカは、美しい笑顔を浮かべながら力強いバラードを見事に歌い上げる。
先ほどまでのびびりが嘘のようだ。
まあ、これがいつもの流れだ。
ライブの出番やグラビア撮影が近づくと、緊張してガチガチになるレベッカを、無理にでもステージの上に送り出す。
客の声援を浴びて、曲のイントロが始まると、いやでも覚悟が決まるらしい。実際、歌も表情も振り付けも危なげがない。
背が高く、凶悪にスタイルがいいので、非常に絵になる。
「みんなー!ありがとーっ!ありがとーーーっ!」
歌い終えたレベッカが、満面の笑みで手を振る。
結果、その日のライブは大成功のうちに終わるのだった。
帰りの車の中。
「も~。プロデューサーひどいよお…。緊張で心臓止まるかと思ったよ~」
ライブが終わり、集中力が途切れたレベッカが再びびびりになる。
ほっぺたをぷくっと膨らませ、泣きそうな顔で不平を漏らす。
「おかげでちゃんと歌えたろ?俺はレベッカを信じてたぞ」
「だからって…」
褐色肌の魔族のアイドルは、まだ不満そうに唇を尖らせる。
克正は、あえて問題の本質には踏み込まない。
それは時期尚早だ。
レベッカは、今のままでいいとは思えない。
いずれは、びびりを克服して自分だけの意思と力で歌えるようにならなければ。
だが、きつい言葉で叱責したり突き放したりすれば、彼女の心は折れてしまうかも知れない。
(面倒だが、今は無理にでもステージに送り出すのが最善か)
克正はハンドルを握る手を調整しつつ、そんなことを思う。
もう少し、この手のかかる恥ずかしがりで小心なお嬢さんの面倒を見るのが自分の勤め。
今は現状維持が重要なのだ。
レベッカは、アイドルとしては相当の優良物件だ。
焦ってつぶすことはないのだ。
その日はミニライブだった。
客の入りは上々。
数人のアイドルが代わる代わる歌い、会場のテンションは最高潮。
いよいよ、大トリになろうとしていた。
が…。
「レベッカ。もうすぐ出番なんだから」
「む~り~。むりですって~!」
本日の目玉であるはずのアイドルが、歌うことを拒否していた。
プロデューサーである克正は、必死で説得している。
もう時間がないのだ。
彼女の名はレベッカ・コステロ。
異世界の生まれで、魔族と呼ばれる種だ。
と言っても、別に邪悪な種族というわけではない。
絹のようにきめ細かい褐色の肌と、琥珀色の瞳。
そして、異世界特有の笹穂耳が特徴だ。
引き締まった体と、メートル越えの爆乳。長身と、さながら南米出身のアスリートのような雰囲気だ。
エキゾチックな美貌も目を引く。
が、豪快そうな見た目に比して、気が小さくすさまじいまでのびびりなのだ。
おまけに恥ずかしがりだ。
「そんなこと言ったって、みんなレベッカの歌を聴きに来てくれてるんだぞ」
「それはわかってるけど…わかってるけど…」
レベッカは舞台衣装のまま、テーブルの下に上半身だけ突っ込んで震えている。
頭隠して尻隠さずとはこのことだ。
(尻がしゃべってるみたいで不気味だなあ…)
そんなことを思わずにはいられない。
「レベッカさーん。準備してくださーい!」
ついに、ADが声をかけてくる。
(しょうがない。あまりやりたい手ではないが…)
克正は意を決する。
ここでファンを裏切るわけにはいかない。
「うりゃ!」
「ひいいいいー!」
震えるレベッカをテーブルの下から引っこ抜く。そして、お姫様抱っこする。
「プ…プロデューサー…!下ろしてくださいよお!」
「だめ!なんとしてでも歌ってもらう」
手足をばたつかせるレベッカを、ステージ脇まで運んでいく。
「ま…まだ心の準備が~…!」
「そんなもの待ってたら日が暮れちまう!ほら行け!」
克正は、褐色肌の少女をステージに向けて無理矢理押し出す。
(うわ…お客さん多い…。恥ずかしいよお…)
ステージに立ったレベッカは、一瞬固まってしまう。
客の声援に応えて手を振るが、その表情は見事な苦笑いになっていた。
心の準備などできていないのに、無情に音楽のイントロが流れ出す。
(ええい!もうどうにでもなれ!)
いっそ開き直った気持ちになり、大きく息を吸って歌い始めた。
(どうなることかと思ったが、できるじゃないか。まあ、わかってたことだが)
ステージ脇の克正は、額の汗を拭いながら思う。
ステージ中央のレベッカは、美しい笑顔を浮かべながら力強いバラードを見事に歌い上げる。
先ほどまでのびびりが嘘のようだ。
まあ、これがいつもの流れだ。
ライブの出番やグラビア撮影が近づくと、緊張してガチガチになるレベッカを、無理にでもステージの上に送り出す。
客の声援を浴びて、曲のイントロが始まると、いやでも覚悟が決まるらしい。実際、歌も表情も振り付けも危なげがない。
背が高く、凶悪にスタイルがいいので、非常に絵になる。
「みんなー!ありがとーっ!ありがとーーーっ!」
歌い終えたレベッカが、満面の笑みで手を振る。
結果、その日のライブは大成功のうちに終わるのだった。
帰りの車の中。
「も~。プロデューサーひどいよお…。緊張で心臓止まるかと思ったよ~」
ライブが終わり、集中力が途切れたレベッカが再びびびりになる。
ほっぺたをぷくっと膨らませ、泣きそうな顔で不平を漏らす。
「おかげでちゃんと歌えたろ?俺はレベッカを信じてたぞ」
「だからって…」
褐色肌の魔族のアイドルは、まだ不満そうに唇を尖らせる。
克正は、あえて問題の本質には踏み込まない。
それは時期尚早だ。
レベッカは、今のままでいいとは思えない。
いずれは、びびりを克服して自分だけの意思と力で歌えるようにならなければ。
だが、きつい言葉で叱責したり突き放したりすれば、彼女の心は折れてしまうかも知れない。
(面倒だが、今は無理にでもステージに送り出すのが最善か)
克正はハンドルを握る手を調整しつつ、そんなことを思う。
もう少し、この手のかかる恥ずかしがりで小心なお嬢さんの面倒を見るのが自分の勤め。
今は現状維持が重要なのだ。
レベッカは、アイドルとしては相当の優良物件だ。
焦ってつぶすことはないのだ。
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