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01 尾張、美濃の制覇編
天下への足がかりと膨らみの誘惑
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08
「時間です。信長様、準備は?」
『できている。いつでもいいぞ!』
「了解。
諸君、攻撃開始だ」
田宮の言葉に応じて、普通科の隊員たちが迫撃砲の発射体勢を取る。
「半装填!」
「半装填よし!」
「発射!」
迫撃砲弾が空高く舞い、やがて落下していく。
「だんちゃーく、今!」
同時多発的に爆発が起こり、前衛の兵たちはなすすべもないまま駆逐されていく。
「キャリバー、グレネード、射撃はじめ!」
浮足立った斎藤勢の兵たちに、軽装甲機動車の屋根に装備されたRWSの50口径機関銃と連射式40ミリグレネードランチャーが火を吹く。あるものは体の一部を吹き飛ばされ、ある者は全身にグレネードの破片を食らって息絶えた。
それでも忠実に持ち場を守ろうとする斎藤勢の兵たちに、仕上げとばかりに89式小銃と分隊支援火器の十字砲火が浴びせられる。鉄砲が普及する以前の時代の戦闘はは密集陣形が基本だったから、兵たちはいいカモだった。味方の体が邪魔になり、進むことも引くこともできないまま一方的に射殺されていく。
墨俣に出城が築かれたことで、織田勢は本格的に美濃に向けて侵攻することが可能になった。
海自のエアクッション揚陸艇と陸自のCH-47J輸送ヘリによって、織田勢の兵力が水路と空路でピストン輸送される。斎藤勢を破るのに必要と目される5000の兵は3日にして墨俣周辺に集結したのである。
自衛隊の支援もあり、斎藤勢の支城はたちまち落とされ、残るは本拠地の稲葉山城のみとなったのである。
一方で、藤吉郎と田宮は別の仕事に取り掛かっていた。
美濃の住人の中でも、味方にできそうな者を抱き込むという任務である。
「今日もまた追い返されるんじゃないの?」
「まあそう言いなさんな。何度でもたずねる価値のある人物なんだから」
「例えば諸葛亮みたいな?」
「まあね」
藤吉郎と田宮が修行僧に変装して訪れた先は、例によって美濃の小さな町にある質素な家だった。今まで2度たずねているが、2回とも都合が悪いとかで追い返されている。
(三顧の礼。やはり相手はあの人物だよなあ?)
藤吉郎が美濃でなんとしても迎え入れたい人物と言われると、田宮には他に思い当たらなかった。
家の門を叩くと、意外にも使用人は藤吉郎と田宮を迎え入れた。
「竹中半兵衛です」
「ボクは木下藤吉郎。よろしくね」
「田宮悟です」
通された座敷に現れたのは、中学生か、下手をすれば小学生にも見える小柄な美少女だった。長い銀髪、驚くほど白い肌、全身にまとう儚げな雰囲気。
(この女の子がわずか十何人率いて城を奪取したってのか?)
竹中半兵衛なる人物がわずかな手勢と奇策を持って城一つを奪ったものの、すぐに自主的に退去したというのは本当らしい。が、田宮にはこの触れれば折れてしまいそうな女の子がそんな大それたことをしているところが想像できなかった。
「お話はわかりました。
しかし、失礼ながらあなたに味方して私に何の得があるでしょうか?」
「そうだね。まずはこれをお近づきの印にどうぞ」
藤吉郎がそう言って差し出した重箱の中には、シベリアが入っていた。早い話がカステラで羊羹をサンドしたようなもので、バタ臭いものが好みでない日本人向けに開発されたお菓子だ。大きく切ったものをぱくつくのがだいご味だ。
「もぐもぐ。これは珍しいお菓子ですね。甘過ぎず、ふっくらして美味しい」
「でしょ。この田宮隊長のお手製なんだ。
うちに来れば、こんなおいしいお菓子が毎日食べられるよ?」
秀吉は自分もシベリアをぱくつきながら、幸せいっぱいという表情で半兵衛に訴えかける。
(こんなんでなびくのか?)
という田宮の不安は杞憂であったらしい。シベリアを一切れ食べ終えた半兵衛は、重箱の中の残りとにらめっこになる。明らかに心を惹かれているらしい。
「一つお伺いしますが、織田家で私はどのような役割を担うのでしょう?」
「不可能を可能にすること」
半兵衛の問いに、シベリアを呑み込んだ藤吉郎が即答する。
「織田家が目指しているものは大きいよ。
ただそれだけに、敵も多くなる。というより、いつも周りは敵だらけということにきっとなる。そのときこそ、あなたの知略の出番てわけ」
藤吉郎の物言いは物騒だったが、半兵衛はむしろ興味をそそられたらしい。
「では、そんな困難な道を抜けた先にあるものはなんです?多くの血を流した先と言ってもいい。あなたは信長公が作る国に何を望みます?」
「みんながお腹いっぱい食べられる国、かな?」
藤吉郎が笑顔だが真剣な目で即答する。
「ボクは元は百姓だったけど、戦ばかりで収穫が安定したためしなんてありゃしない。百姓が自分で作った五穀食べられないなんておかしいでしょ?
国がまとまって戦がなくなれば、やがてはみんながたらふく食べられる。それがボクの望みさ」
あまりに素朴で、だがもっともな藤吉郎の物言いに、半兵衛は思わず吹き出してしまう。田宮もつられて笑ってしまう。
「もう、二人とも笑うなんてひどいな!ボクは難しいことを考えるのが苦手なんだ!それに、無学な猿だけど間違ったことは言っていないつもりだよ!」
半兵衛はおかしさで涙目になりながらも、藤吉郎にほれ込んだらしい。田宮にはわかった。
「わかりました。織田信長公ではなく、あなたのために我が知略と策を用いましょう」
半兵衛は藤吉郎の手を強く握る。藤吉郎も握り返す。
(俺、もしかしてすごい場面に立ち会ってるんじゃ?)
一見すると女の子二人が笑い合っているだけだが、後々のことを考えれば歴史的な瞬間ではないか。田宮はそんなことを思っていた。
何はともあれ、木下藤吉郎は竹中半兵衛という稀代の参謀各を得ることに成功したのである。
そして、織田勢の侵攻からわずか20日ほどで、斎藤勢はたちまち外堀を埋められて行く。最後に残った稲葉山城も織田勢と自衛隊の猛攻の前に、陥落は秒読みとなっていた。
『こちらフクロウ。斎藤勢が城内に向けて後退していきます!』
「オッケー!全部隊前へ。軽MATは城門を破壊しろ!迫撃砲は城内を狙え!」
上空を警戒中のUH-60Jが、敵が城内に逃げ込み始めていることを察知する。田宮の命令で、01式対戦車誘導弾が放たれ、城門が爆発四散して元の材木と鉄板に戻ってしまう。
城門を閉じて、城壁を防衛線とするという斎藤勢のもくろみはたちまち挫かれる。追い打ちをかけるように、迫撃砲が城内にも撃ち込まれ始め、斎藤勢は組織的な抵抗を維持することも困難になって行く。
「さて、ここまでは予定通りだが、この後がうまくいってくれるかどうか」
城門を破壊し、城内にも砲撃を加えているとはいえ、稲葉山城は強固だ。城内にも2重3重の防御施設が構築されているはず。万一にも立て籠もられてしまうといささか厄介だった。
史実において、徳川家康が真田信繫に城の中に誘い込まれ、手痛い反撃を食らったことを考えても、城に攻め入るというのは簡単ではないのだ。
『知!お待たせ!”援軍”連れて来たよ!』
無線に不意に藤吉郎の声が入る。
田宮が振り向くと、織田の旗を掲げた大規模な行列がこの稲葉山城を目指してゆっくりと向かってくるのが見える。目算でも1万はいる。
『こちらフクロウ。斎藤勢が城から撤退していきます!敵は城を放棄する模様!』
UH-60Jから興奮気味の通信が入る。どうやら斎藤勢がこちらの策にひっかかってくれたらしい。田宮は半兵衛の策に素直に感心する。前衛がやられれば城門の中へ。城門が破壊されればさらに後ろの防衛線へ。と粘りを見せていた斎藤勢が、蜘蛛の子を散らすように逃げ出したのだから。
織田勢と自衛隊が5000と少しなら消耗戦に持ち込むという手がある。美濃は織田にとっては遠征試合だ。だが、15000では消耗戦に持ち込む前に叩き潰されるだけだ。臆病風に吹かれたのではなく、用兵上常識的な選択を斎藤勢はしたに過ぎない。
”お金とお米どれだけ用意できますか?”
半兵衛が藤吉郎の下について最初に発した言葉がそれだった。
苦労して藤吉郎とともに調達した金と米は有効に利用されたらしい。
実を言えば、織田の旗を掲げた行列はほとんどが美濃の百姓や野伏たちだった。斎藤道三の死から内乱状態になった美濃で、斎藤家に本気で忠義を持つ者は少ない。
”織田の旗を掲げて稲葉山城まで歩く簡単なお仕事”
と呼び掛けて、報酬に米や金を払ってやれば協力する人間はいくらでもいた。どうせ戦闘を行うことはないのだからと、老人や子供、病人まで駆り出して、数にして1万の行列を見事そろえたのだった。
「今後が楽しみだな」
田宮の口をついてそんな言葉が出る。半兵衛の策。そして、それを見事実行する藤吉郎の行動力。そばで見ていて実に面白く、わくわくするのだった。
「今だ!城を制圧する!進めえ!」
信長の号令で、織田軍が稲葉山城になだれ込む。斎藤勢はすでに撤退を終えていたから、城の中では戦闘は起きることがなかった。
かくして、織田勢は斎藤勢を破り美濃を勢力下におく。井口は岐阜と改名され織田家の新たな拠点として機能することになる。美濃は畿内、北陸、甲信に至る交通の要衝。いよいよ織田が天下を目指す足がかりが固まりつつあったのだった。
09
「ふー極楽極楽」
城の大浴場の中、田宮はつい親父臭い言葉を漏らしてしまう。
まあ仕方ないことだ。ここしばらく斎藤勢との戦いで忙しく、風呂にゆっくりつかるなど久しぶりなのだから。それに、時間が遅いからか他の将兵は入っておらず、貸し切り状態だ。こちらの人間は時計に従って生活する習慣がない。朝日が昇れば起床し、暗くなれば飯を食い、酒を飲んで眠る。そういう生活サイクルだ。すっかり日が落ちた今の時間では眠っている者も多いのだろう。
いつもの芋洗い状態とは違って、のんびり湯に浸かることができる。
「だ…大丈夫だ…。夫婦なんだからな…!これぐらい夫婦の営みとして普通のことだ…」
「ん?」
脱衣所の方から何やら声が聞こえる。女の声のようだが。
「さ…知。邪魔するぞ!」
なにやら裏返り気味の声でそう言いながら風呂場に入って来たのはなんと信長だった。美しい裸の前面、シークレットゾーンだけを手拭いで隠している。長い燃えるような赤毛をアップにしているのが、いつもと違って新鮮な印象を受ける。
「の…信長さま…?どうなさったんです?」
「どうなさったもなにも…ここは風呂場だ。湯を使う以外に何かあるか…?」
「いや、それはそうですが、俺の記憶が正しければここは男湯だったはずですが?」
日本人は総じて風呂が好きだ。平安時代でさえ、白河法王や鳥羽上皇が熊野もうでに行ったときは必ず温泉で心の洗濯をしたとされる。時は流れて戦国時代にあって、誰しも体を動かし汗を流すことが増えたことで、風呂はさらに身近なものとなった。普通の家屋でさえ、所謂五右衛門風呂で汗を流しているほどだ。
だが、織田家の風呂は21世紀の基準からするといささか非効率でもあった。大浴場があるのはいいのだが、男と女で入る日がわけられているのだ。これでは、どれだけ汗をかいていても風呂に入れない日が出て来る。
そこで、田宮の進言で、脱衣所から風呂までを板張りの壁によって分け、男湯と女湯に仕切ることが決められたのだ。これは将兵たちに大変好評だった。なにせ、この世界では軍組織といえども男女の比はほぼ同じ。部隊によっては女の方が多いくらいだ。毎日風呂を使えるというのは嬉しいことだったのだ。
ゆえに、信長が男湯に入って来たというのはイレギュラーな事態だった。
「べ…別に良いではないか?他に誰もおらんし、私とお前は夫婦なのだからな」
そう言いながらも、恥ずかしさで真っ赤になっている信長。なんか無理してない?田宮がそう思う間にも、信長はかけ湯をし、湯船に入って来る。
(改めてみると、やっぱり美しいな…)
田宮はそう思わずにはいられない。すらっとしてバランスがいいのに、胸の膨らみは大変に素晴らしい。それでいてお尻は小さい。どんなグラビアアイドルも裸足で逃げ出すと思えるほどのきれいな裸をしている。それに、肌が絹のようで木目が細かい。
顔立ちは端正で、釣り目気味の大きな目が魅力的。燃えるような赤い髪も、美しさの演出に一役買っている。
「さ、遠慮するでない。夫婦なのだからな…もそっと近う…」
手拭いを湯船に入れるなと教育されて来たのだろう。手拭いを湯船のふちに置いて、美しい裸をさらした信長が田宮を抱き寄せる。
(やばい…美しいのにエロい…!俺だって男だ…理性が…理性が…)
「良いのだ。私はお前の妻ぞ。好きにして…良い…」
信長が田宮を抱き寄せて、耳元でそんなことを言う。
(い…いいんだよな…?新米の三尉の分際では信長様と吊り合わないって思ってたけど。いいんだよな…!?)
田宮の理性は崩壊していく。が…。
「おっじゃましまーっす!!」
突然、ハイテンションな声が大浴場に響く。振り返れば、そこにいたのは藤吉郎だった。
「と…藤吉郎!なんのつもりだ!?なぜ入って来る…?」
「えーと、なんのつもりと言われましても…。知と信長さまの着物が脱衣所にあったからボクも入ってもいいのかなー?なんて思って。だめでした?」
「そ…それは…」
しれっととぼける藤吉郎に信長は言葉に詰まる。考えてみれば、自分が良くて藤吉郎が入ってきて良くない道理がない。自分も、体で田宮を誘惑するために男湯にわざわざ入って来たのだ。
「じゃあ、失礼しまーす。おお、やっぱり知、お肌きれい。男にしておくのがもったいないくらい!」
藤吉郎はあからさまに田宮にすり寄ると、田宮の肌をさわさわと触り始める。
「い…いや…。それほどでも…。藤吉郎に比べれば大したことはないだろう…」
田宮は、生まれたままの姿の藤吉郎がそばにいることでまたしても理性の危機を迎えていた。その田宮の態度に、信長が唇を尖らせる。
「知!私の肌はどうなのだ?」
「あ…もちろん信長さまの肌も素敵です!
なんというか…信長さまが絹なら、藤吉郎は陶器ってところかな?信長さまは繊細で、藤吉郎は質実剛健というところかな」
田宮はてんぱっていて自分でも何を言っているかわからない。が、信長と藤吉郎は田宮の言葉に気を良くしたようだった。甲乙をつけられないのは不満だが、誉められるのは悪い気はしないということか。
「いやいや、さすが知。よくものを見てるね。さすがは信長さまが夫に選んだ方だ」
藤吉郎は感服していた。
これで引いてくれるだろうか?そう思った田宮は甘かった。
「では、ボクは妾ということで!
そうだ、いっそ3人で楽しんじゃいません?」
そう言って、藤吉郎は信長と田宮を抱き寄せる。3人の肌がぎゅっと密着する。
(藤吉郎め!何を言っているのだ…。でも…知と藤吉郎のにおいが…なんだか変な気持ちになりそうだ…)
信長は田宮も藤吉郎も憎からず思っている。このまま3人で愛し合うのもいいのではないか…?藤吉郎の申し出を受け入れかける。が…。
「その…上がらせてもらいまーす!」
肝心の田宮が湯船から上がり、脱兎のごとく走り去っていく。
「あらら…行っちゃった。手ごわい相手ですなあ…」
「お前が話をややこしくするからだ!」
しれっと言う藤吉郎の頭を信長がはたく。藤吉郎は「てへぺろ」と受け流す。
「恥ずかしがり屋の朴念仁め。私は諦めんぞ!」
信長は改めて名実ともに田宮と伴侶となる決意を固めたのだった。
「やれやれ、どうしたもんかなあ」
田宮は風呂から上がって風にあたりながらぼやいていた。信長も藤吉郎も、男女の関係に積極的らしい。それは嬉しいのだが、はっきり言ってハーレムというのには抵抗があるのだ。
別に操を立てている女がいるとか、誠実さゆえとかいうわけではない。単に何人もの女に対して責任を負うのが怖いのだ。ヘタレと言ってかまわない。
”英雄色を好むは、権利でもあり義務でもある”陸自の上司が冗談めかして言っていた言葉が今更身に染みる。単に個人の放蕩や欲のためだけではない。女を籠絡すると言うことは、軍事的に政治的にも重要な意味を持つ。
どういうわけか、女が活躍してるこの世界ではなおのこと。
理屈ではわかる。だが、世界の半分は俺のもの。何人もの女を愛し子供を産ませる。そういう大それた話になると、田宮はどうしてもしり込みしてしまうのである。
「まあ、今日はとりあえず寝よう」
問題を先送りにして、田宮は就寝するべく、城にあてがわれた自室の障子を開ける。
「お待ちしておりました」
田宮は自分の目を疑う。部屋にはいつの間にか布団が敷かれ、布団の脇で白い湯巻姿の勝家が三つ指をついて出迎えたのだから。
(ここ…俺の部屋だよな…?)
「あの…勝家殿、なにをなさっておられる?」
「その…さしつかえなければ田宮殿のお伽をと思ってだな…」
田宮はつい息を呑んでしまう。勝家の大変にけしからん体は、湯巻で隠せるものではない。元々背が高く、肩幅も広くバランスのいい体に加え、立派な胸の膨らみ、きゅっと締まった腰、大きく肉感的なお尻は、大変に魅力的なのだ。
「あの…しかしいいのか?俺よりいい男なんて、その辺にいくらでも落ちてるだろ…?」
「言わないで欲しい!私は変なのだ。今まで男や男女のことにあまり興味はなかった。
なのに、あの日、貴殿におっぱいを揉まれ、”邪気”から解放された時以来、その…気が付けば田宮殿のことばかり考えているのだ…」
勝家の言葉に、田宮は頭を抱える。
これはあれだ。今まで勉学や仕事一筋だった女の子が恋と言う免疫のない毒に当たったようなもの。”ちょろイン”という言葉を田宮は呑み込む。
「厚かましい申し出なのはわかる!だが、この胸のもやもやした気持ちはなんなのか…。確かめさせて欲しいのだ」
”それは困る”の言葉を、田宮はどうしても発することができなかった。勝家の気持ちは純粋なものだ。軽い気持ちで受け入れてはならない。それはわかるのだが、湯巻越しでもわかる勝家の美しく魅力的な体を見ると、どうしても理性的になることができないのだ。
(どうしよう?今まで意識してなかったけど、勝家はエロいし美し過ぎる…。据え膳食わぬはなんとやらともいうけど、俺は一応信長の夫という立場だし…)
「なにをやっとるかーーー!?」
田宮の逡巡は、大きな女の声と、障子が乱暴に明けられる音で断ち切られる。
「信長様?」
「信長様…?」
振り向けば、そこにいるのは湯巻姿の信長だった。これまた、豊かな胸の膨らみが湯巻程度では隠しきれず、大変にけしからんことになっている。
「権六、まさか我が夫を寝取ろうという気ではなかろうな!?」
ゴゴゴゴという黒いオーラをまとった信長の言葉に、勝家は一瞬気圧される。が、決意を新たにしたように、三つ指をつき平伏する。
「信長様!寝取るなどとは滅相もないこと!
ただ、伏してお願いいたします!この権六が田宮殿の側室として侍ることをお許しください!」
これには信長のほうが気圧されてしまう。まじめで武人気質の勝家とは思えない爛れた話だったからだ。
「この権六。
あの日以来、田宮殿のことを思うと胸がいっぱいでどうにかなってしまいそうなのです!
田宮殿は信長さまの夫。それはわかっているのです!でも、自分が抑えきれないのです!」
田宮と信長は思わず顔を見合わせる。恋は盲目とはいうが、今の勝家は正にそれだろう。それだけ純粋かつ強い恋心なら、無下に否定するのも忍びない気がしたのだ。
信長は少し考えて口を開く。
「男の価値は女の数で決まるともいうしな。
あいわかった。権六が側室として知の横に侍るのは認める。
だ…だが忘れるな!知のことを一番愛しているのは私なのだからな!」
「信長様、ありがたき幸せです!
ああ、この権六、幸せ過ぎてどうにかなってしまいそう!」
信長と勝家が、両方からぎゅっと抱き付いてくる。
(嬉しい。柔らかいしふかふかしてるし、いい匂いがする。けど、これでいいのかなあ?)
ヘタレである田宮は、美しく魅力的で素晴らしい胸の膨らみをお持ちの美女2人に抱き付かれても、まだ本能に素直になれないのだった。
「あの、二人とも大変申し訳ないんだけど、俺は今日はもう寝る予定なんです。明日も忙しいし」
信長と勝家が不満そうな顔をする。だが、信長がすぐに”閃いた”という顔をする。
「では、私と権六が添い寝をするというのはどうだ?」
「なんと、それは素晴らしいお考えです!」
「え…ええ…!?」
結局、田宮は信長と勝家にブルドーザーのように押し切られ、3人で添い寝をすることになったのだった。
(添い寝ってけっこう心地よくて安心するかも…。JKビジネスが蔓延するのってこういう理由なのかな?
しかし、二人のいい匂いと胸の膨らみが大変けしからんことになって…。俺眠れるのか…?)
穏やかに寝息を立てる信長と勝家を意識して、しばしの間悶々とする田宮だったが、やがて心地よさと安心感に包まれながら眠りに落ちるのだった。
いつもは寝る前にセットしているスマホの目覚ましをかけるのを忘れたまま。
翌朝、3人の起床が遅いことを怪しんだ腰元が田宮の部屋で目撃した光景は、たちまち城内の噂となり、尾びれ背びれがついて駆け巡ることになる。
「3人でなんて大胆よね」
「まあ、いい男だとは思うけど、信長様と権六さまがあそこまでめろめろになってしまうなんて」
「ああ…3人でどんな逢引きをなさったんでしょ?あ…なんだかじゅんってしてきちゃった…」
「まあ、自衛隊と織田家の友好関係にはプラスなんじゃない?」
「手が早すぎて修羅場にならなきゃいいけどねー」
「ちくしょう!うらやましくなんかないからなあ!」
かくして、田宮は織田家と自衛隊の多くから、生温かい祝福とからかい、そして痛い嫉妬の視線を頂戴することとなったのだった。
「だから違うんだってば――――!」
田宮の絶叫は誰にも届くことはなかったのである。
「でーきた!さ、見てみて!」
「これが、俺…?」
藤吉郎が掲げた鏡をのぞき込んだ田宮は絶句する。
そこには、ものすごい美女が映っていたのだから。
「やだ、すごくきれい!やっぱり、ボクの目に狂いはなかった!」
そう言って藤吉郎が抱き付いてくる。美しく女装した田宮に。
実際、今の田宮は美しかった。薄くおしろいと紅で化粧をし、セミロングの姫カットのかつらをつけている。いかにもいいところのお嬢様という感じだ。女にしては背が高いのも、むしろバランスよくエキゾチックにさえ見える。
藤吉郎が用意した、白と薄紫の着物も清楚ながらどこか艶やかでよく似合っている。
眼鏡をかけているので、いつもと印象が大きく違って見える。
「よし!さっそくお出かけしよー!」
「ええ…?このまま出かけるの…?」
自分の手を引いて自室から歩き出す藤吉郎に、田宮は困惑する。
「だって、こんな美しい女の子、みんなに見せびらかしたいじゃない!?
ま、ちん〇んのついた美女だけどねー!
嬉しいよ!最高のご褒美だよ!」
藤吉郎がいつものハイテンションで手を引く。
藤吉郎が求めた”ご褒美”がこれだった。田宮を女装させること。藤吉郎が所謂ガチレズであることは公然の事実だが、女っぽく美しい容姿の田宮には興味があるようだった。
”女装させたら絶対素敵だとおもうんだよね!”
目に星を浮かべてそういう藤吉郎の願いを、田宮は拒めなかったのだ。
(それにしてもこれは…)
着慣れない女物の着物の着心地に、田宮はためらう。なにより、女装しているのを知り合いにでも見られたらまずいことになる。
「なあ、藤吉郎…。みんなが振り向いて俺を見てないか…?」
藤吉郎と手をつないで町を歩く田宮は、心臓が止まりそうだった。
「心配ないよ!知があまりに美しいからみんな目を奪われてるのさ。気にしないでどうどうとしてなよ」
藤吉郎はそういうが、田宮は緊張が抜けない。時々織田家でも顔見知りの人間や、迷彩服姿の自衛隊員とすれ違うからだ。
ともあれ、行く人行く人こちらを見るものの、不審な視線を向けてくるわけではない。
(でもそれはそれで男としてどうなのか?)
女装が似合い、女と区別がつかないというのは嬉しい話でもあるのだが、男としてはどうにも複雑なのだ。
「お、藤吉郎じゃないか」
「ああ、権六さま」
(げ!勝家!)
田宮は心臓が口から飛び出そうになる。街はずれでよりによって勝家に会ってしまったのだ。
(いくらなんでもごまかせないだろ…!)
田宮の全身に嫌な汗が流れる。が…。
「なんだ、またすごい美人じゃないか?お前、また新しい女か?」
「そですよー!きれいでかわいいでしょ!?」
そう言って藤吉郎は田宮に抱き付く。
「まあ、ほどほどにな」
女趣味はない勝家は苦笑して歩き去る。
「ええ…本当にばれてないの…?」
「だから言ったでしょ?こんなにきれいでかわいいんだもん!誰にもわからないよ!」
勝家にばれなかったという事実と、にししという藤吉郎の満面の笑みに、田宮は肩から力を抜く。
この際だ。今日は女装して藤吉郎にとことん付き合ってやろう。そういう気分になったのだ。
(いや、別に女装とか男の娘とかに目覚めたわけじゃないぞ!決して!)
古来、女装は文化だ。
古典文学では”とりかえばや物語”などもある。平治の乱が起きた時、二条天皇が女装して内裏を抜け出したことも有名なエピソードだ。
そんな言い訳をしながら、なんだかんだで田宮は藤吉郎とのデートを楽しんだのだった。
「時間です。信長様、準備は?」
『できている。いつでもいいぞ!』
「了解。
諸君、攻撃開始だ」
田宮の言葉に応じて、普通科の隊員たちが迫撃砲の発射体勢を取る。
「半装填!」
「半装填よし!」
「発射!」
迫撃砲弾が空高く舞い、やがて落下していく。
「だんちゃーく、今!」
同時多発的に爆発が起こり、前衛の兵たちはなすすべもないまま駆逐されていく。
「キャリバー、グレネード、射撃はじめ!」
浮足立った斎藤勢の兵たちに、軽装甲機動車の屋根に装備されたRWSの50口径機関銃と連射式40ミリグレネードランチャーが火を吹く。あるものは体の一部を吹き飛ばされ、ある者は全身にグレネードの破片を食らって息絶えた。
それでも忠実に持ち場を守ろうとする斎藤勢の兵たちに、仕上げとばかりに89式小銃と分隊支援火器の十字砲火が浴びせられる。鉄砲が普及する以前の時代の戦闘はは密集陣形が基本だったから、兵たちはいいカモだった。味方の体が邪魔になり、進むことも引くこともできないまま一方的に射殺されていく。
墨俣に出城が築かれたことで、織田勢は本格的に美濃に向けて侵攻することが可能になった。
海自のエアクッション揚陸艇と陸自のCH-47J輸送ヘリによって、織田勢の兵力が水路と空路でピストン輸送される。斎藤勢を破るのに必要と目される5000の兵は3日にして墨俣周辺に集結したのである。
自衛隊の支援もあり、斎藤勢の支城はたちまち落とされ、残るは本拠地の稲葉山城のみとなったのである。
一方で、藤吉郎と田宮は別の仕事に取り掛かっていた。
美濃の住人の中でも、味方にできそうな者を抱き込むという任務である。
「今日もまた追い返されるんじゃないの?」
「まあそう言いなさんな。何度でもたずねる価値のある人物なんだから」
「例えば諸葛亮みたいな?」
「まあね」
藤吉郎と田宮が修行僧に変装して訪れた先は、例によって美濃の小さな町にある質素な家だった。今まで2度たずねているが、2回とも都合が悪いとかで追い返されている。
(三顧の礼。やはり相手はあの人物だよなあ?)
藤吉郎が美濃でなんとしても迎え入れたい人物と言われると、田宮には他に思い当たらなかった。
家の門を叩くと、意外にも使用人は藤吉郎と田宮を迎え入れた。
「竹中半兵衛です」
「ボクは木下藤吉郎。よろしくね」
「田宮悟です」
通された座敷に現れたのは、中学生か、下手をすれば小学生にも見える小柄な美少女だった。長い銀髪、驚くほど白い肌、全身にまとう儚げな雰囲気。
(この女の子がわずか十何人率いて城を奪取したってのか?)
竹中半兵衛なる人物がわずかな手勢と奇策を持って城一つを奪ったものの、すぐに自主的に退去したというのは本当らしい。が、田宮にはこの触れれば折れてしまいそうな女の子がそんな大それたことをしているところが想像できなかった。
「お話はわかりました。
しかし、失礼ながらあなたに味方して私に何の得があるでしょうか?」
「そうだね。まずはこれをお近づきの印にどうぞ」
藤吉郎がそう言って差し出した重箱の中には、シベリアが入っていた。早い話がカステラで羊羹をサンドしたようなもので、バタ臭いものが好みでない日本人向けに開発されたお菓子だ。大きく切ったものをぱくつくのがだいご味だ。
「もぐもぐ。これは珍しいお菓子ですね。甘過ぎず、ふっくらして美味しい」
「でしょ。この田宮隊長のお手製なんだ。
うちに来れば、こんなおいしいお菓子が毎日食べられるよ?」
秀吉は自分もシベリアをぱくつきながら、幸せいっぱいという表情で半兵衛に訴えかける。
(こんなんでなびくのか?)
という田宮の不安は杞憂であったらしい。シベリアを一切れ食べ終えた半兵衛は、重箱の中の残りとにらめっこになる。明らかに心を惹かれているらしい。
「一つお伺いしますが、織田家で私はどのような役割を担うのでしょう?」
「不可能を可能にすること」
半兵衛の問いに、シベリアを呑み込んだ藤吉郎が即答する。
「織田家が目指しているものは大きいよ。
ただそれだけに、敵も多くなる。というより、いつも周りは敵だらけということにきっとなる。そのときこそ、あなたの知略の出番てわけ」
藤吉郎の物言いは物騒だったが、半兵衛はむしろ興味をそそられたらしい。
「では、そんな困難な道を抜けた先にあるものはなんです?多くの血を流した先と言ってもいい。あなたは信長公が作る国に何を望みます?」
「みんながお腹いっぱい食べられる国、かな?」
藤吉郎が笑顔だが真剣な目で即答する。
「ボクは元は百姓だったけど、戦ばかりで収穫が安定したためしなんてありゃしない。百姓が自分で作った五穀食べられないなんておかしいでしょ?
国がまとまって戦がなくなれば、やがてはみんながたらふく食べられる。それがボクの望みさ」
あまりに素朴で、だがもっともな藤吉郎の物言いに、半兵衛は思わず吹き出してしまう。田宮もつられて笑ってしまう。
「もう、二人とも笑うなんてひどいな!ボクは難しいことを考えるのが苦手なんだ!それに、無学な猿だけど間違ったことは言っていないつもりだよ!」
半兵衛はおかしさで涙目になりながらも、藤吉郎にほれ込んだらしい。田宮にはわかった。
「わかりました。織田信長公ではなく、あなたのために我が知略と策を用いましょう」
半兵衛は藤吉郎の手を強く握る。藤吉郎も握り返す。
(俺、もしかしてすごい場面に立ち会ってるんじゃ?)
一見すると女の子二人が笑い合っているだけだが、後々のことを考えれば歴史的な瞬間ではないか。田宮はそんなことを思っていた。
何はともあれ、木下藤吉郎は竹中半兵衛という稀代の参謀各を得ることに成功したのである。
そして、織田勢の侵攻からわずか20日ほどで、斎藤勢はたちまち外堀を埋められて行く。最後に残った稲葉山城も織田勢と自衛隊の猛攻の前に、陥落は秒読みとなっていた。
『こちらフクロウ。斎藤勢が城内に向けて後退していきます!』
「オッケー!全部隊前へ。軽MATは城門を破壊しろ!迫撃砲は城内を狙え!」
上空を警戒中のUH-60Jが、敵が城内に逃げ込み始めていることを察知する。田宮の命令で、01式対戦車誘導弾が放たれ、城門が爆発四散して元の材木と鉄板に戻ってしまう。
城門を閉じて、城壁を防衛線とするという斎藤勢のもくろみはたちまち挫かれる。追い打ちをかけるように、迫撃砲が城内にも撃ち込まれ始め、斎藤勢は組織的な抵抗を維持することも困難になって行く。
「さて、ここまでは予定通りだが、この後がうまくいってくれるかどうか」
城門を破壊し、城内にも砲撃を加えているとはいえ、稲葉山城は強固だ。城内にも2重3重の防御施設が構築されているはず。万一にも立て籠もられてしまうといささか厄介だった。
史実において、徳川家康が真田信繫に城の中に誘い込まれ、手痛い反撃を食らったことを考えても、城に攻め入るというのは簡単ではないのだ。
『知!お待たせ!”援軍”連れて来たよ!』
無線に不意に藤吉郎の声が入る。
田宮が振り向くと、織田の旗を掲げた大規模な行列がこの稲葉山城を目指してゆっくりと向かってくるのが見える。目算でも1万はいる。
『こちらフクロウ。斎藤勢が城から撤退していきます!敵は城を放棄する模様!』
UH-60Jから興奮気味の通信が入る。どうやら斎藤勢がこちらの策にひっかかってくれたらしい。田宮は半兵衛の策に素直に感心する。前衛がやられれば城門の中へ。城門が破壊されればさらに後ろの防衛線へ。と粘りを見せていた斎藤勢が、蜘蛛の子を散らすように逃げ出したのだから。
織田勢と自衛隊が5000と少しなら消耗戦に持ち込むという手がある。美濃は織田にとっては遠征試合だ。だが、15000では消耗戦に持ち込む前に叩き潰されるだけだ。臆病風に吹かれたのではなく、用兵上常識的な選択を斎藤勢はしたに過ぎない。
”お金とお米どれだけ用意できますか?”
半兵衛が藤吉郎の下について最初に発した言葉がそれだった。
苦労して藤吉郎とともに調達した金と米は有効に利用されたらしい。
実を言えば、織田の旗を掲げた行列はほとんどが美濃の百姓や野伏たちだった。斎藤道三の死から内乱状態になった美濃で、斎藤家に本気で忠義を持つ者は少ない。
”織田の旗を掲げて稲葉山城まで歩く簡単なお仕事”
と呼び掛けて、報酬に米や金を払ってやれば協力する人間はいくらでもいた。どうせ戦闘を行うことはないのだからと、老人や子供、病人まで駆り出して、数にして1万の行列を見事そろえたのだった。
「今後が楽しみだな」
田宮の口をついてそんな言葉が出る。半兵衛の策。そして、それを見事実行する藤吉郎の行動力。そばで見ていて実に面白く、わくわくするのだった。
「今だ!城を制圧する!進めえ!」
信長の号令で、織田軍が稲葉山城になだれ込む。斎藤勢はすでに撤退を終えていたから、城の中では戦闘は起きることがなかった。
かくして、織田勢は斎藤勢を破り美濃を勢力下におく。井口は岐阜と改名され織田家の新たな拠点として機能することになる。美濃は畿内、北陸、甲信に至る交通の要衝。いよいよ織田が天下を目指す足がかりが固まりつつあったのだった。
09
「ふー極楽極楽」
城の大浴場の中、田宮はつい親父臭い言葉を漏らしてしまう。
まあ仕方ないことだ。ここしばらく斎藤勢との戦いで忙しく、風呂にゆっくりつかるなど久しぶりなのだから。それに、時間が遅いからか他の将兵は入っておらず、貸し切り状態だ。こちらの人間は時計に従って生活する習慣がない。朝日が昇れば起床し、暗くなれば飯を食い、酒を飲んで眠る。そういう生活サイクルだ。すっかり日が落ちた今の時間では眠っている者も多いのだろう。
いつもの芋洗い状態とは違って、のんびり湯に浸かることができる。
「だ…大丈夫だ…。夫婦なんだからな…!これぐらい夫婦の営みとして普通のことだ…」
「ん?」
脱衣所の方から何やら声が聞こえる。女の声のようだが。
「さ…知。邪魔するぞ!」
なにやら裏返り気味の声でそう言いながら風呂場に入って来たのはなんと信長だった。美しい裸の前面、シークレットゾーンだけを手拭いで隠している。長い燃えるような赤毛をアップにしているのが、いつもと違って新鮮な印象を受ける。
「の…信長さま…?どうなさったんです?」
「どうなさったもなにも…ここは風呂場だ。湯を使う以外に何かあるか…?」
「いや、それはそうですが、俺の記憶が正しければここは男湯だったはずですが?」
日本人は総じて風呂が好きだ。平安時代でさえ、白河法王や鳥羽上皇が熊野もうでに行ったときは必ず温泉で心の洗濯をしたとされる。時は流れて戦国時代にあって、誰しも体を動かし汗を流すことが増えたことで、風呂はさらに身近なものとなった。普通の家屋でさえ、所謂五右衛門風呂で汗を流しているほどだ。
だが、織田家の風呂は21世紀の基準からするといささか非効率でもあった。大浴場があるのはいいのだが、男と女で入る日がわけられているのだ。これでは、どれだけ汗をかいていても風呂に入れない日が出て来る。
そこで、田宮の進言で、脱衣所から風呂までを板張りの壁によって分け、男湯と女湯に仕切ることが決められたのだ。これは将兵たちに大変好評だった。なにせ、この世界では軍組織といえども男女の比はほぼ同じ。部隊によっては女の方が多いくらいだ。毎日風呂を使えるというのは嬉しいことだったのだ。
ゆえに、信長が男湯に入って来たというのはイレギュラーな事態だった。
「べ…別に良いではないか?他に誰もおらんし、私とお前は夫婦なのだからな」
そう言いながらも、恥ずかしさで真っ赤になっている信長。なんか無理してない?田宮がそう思う間にも、信長はかけ湯をし、湯船に入って来る。
(改めてみると、やっぱり美しいな…)
田宮はそう思わずにはいられない。すらっとしてバランスがいいのに、胸の膨らみは大変に素晴らしい。それでいてお尻は小さい。どんなグラビアアイドルも裸足で逃げ出すと思えるほどのきれいな裸をしている。それに、肌が絹のようで木目が細かい。
顔立ちは端正で、釣り目気味の大きな目が魅力的。燃えるような赤い髪も、美しさの演出に一役買っている。
「さ、遠慮するでない。夫婦なのだからな…もそっと近う…」
手拭いを湯船に入れるなと教育されて来たのだろう。手拭いを湯船のふちに置いて、美しい裸をさらした信長が田宮を抱き寄せる。
(やばい…美しいのにエロい…!俺だって男だ…理性が…理性が…)
「良いのだ。私はお前の妻ぞ。好きにして…良い…」
信長が田宮を抱き寄せて、耳元でそんなことを言う。
(い…いいんだよな…?新米の三尉の分際では信長様と吊り合わないって思ってたけど。いいんだよな…!?)
田宮の理性は崩壊していく。が…。
「おっじゃましまーっす!!」
突然、ハイテンションな声が大浴場に響く。振り返れば、そこにいたのは藤吉郎だった。
「と…藤吉郎!なんのつもりだ!?なぜ入って来る…?」
「えーと、なんのつもりと言われましても…。知と信長さまの着物が脱衣所にあったからボクも入ってもいいのかなー?なんて思って。だめでした?」
「そ…それは…」
しれっととぼける藤吉郎に信長は言葉に詰まる。考えてみれば、自分が良くて藤吉郎が入ってきて良くない道理がない。自分も、体で田宮を誘惑するために男湯にわざわざ入って来たのだ。
「じゃあ、失礼しまーす。おお、やっぱり知、お肌きれい。男にしておくのがもったいないくらい!」
藤吉郎はあからさまに田宮にすり寄ると、田宮の肌をさわさわと触り始める。
「い…いや…。それほどでも…。藤吉郎に比べれば大したことはないだろう…」
田宮は、生まれたままの姿の藤吉郎がそばにいることでまたしても理性の危機を迎えていた。その田宮の態度に、信長が唇を尖らせる。
「知!私の肌はどうなのだ?」
「あ…もちろん信長さまの肌も素敵です!
なんというか…信長さまが絹なら、藤吉郎は陶器ってところかな?信長さまは繊細で、藤吉郎は質実剛健というところかな」
田宮はてんぱっていて自分でも何を言っているかわからない。が、信長と藤吉郎は田宮の言葉に気を良くしたようだった。甲乙をつけられないのは不満だが、誉められるのは悪い気はしないということか。
「いやいや、さすが知。よくものを見てるね。さすがは信長さまが夫に選んだ方だ」
藤吉郎は感服していた。
これで引いてくれるだろうか?そう思った田宮は甘かった。
「では、ボクは妾ということで!
そうだ、いっそ3人で楽しんじゃいません?」
そう言って、藤吉郎は信長と田宮を抱き寄せる。3人の肌がぎゅっと密着する。
(藤吉郎め!何を言っているのだ…。でも…知と藤吉郎のにおいが…なんだか変な気持ちになりそうだ…)
信長は田宮も藤吉郎も憎からず思っている。このまま3人で愛し合うのもいいのではないか…?藤吉郎の申し出を受け入れかける。が…。
「その…上がらせてもらいまーす!」
肝心の田宮が湯船から上がり、脱兎のごとく走り去っていく。
「あらら…行っちゃった。手ごわい相手ですなあ…」
「お前が話をややこしくするからだ!」
しれっと言う藤吉郎の頭を信長がはたく。藤吉郎は「てへぺろ」と受け流す。
「恥ずかしがり屋の朴念仁め。私は諦めんぞ!」
信長は改めて名実ともに田宮と伴侶となる決意を固めたのだった。
「やれやれ、どうしたもんかなあ」
田宮は風呂から上がって風にあたりながらぼやいていた。信長も藤吉郎も、男女の関係に積極的らしい。それは嬉しいのだが、はっきり言ってハーレムというのには抵抗があるのだ。
別に操を立てている女がいるとか、誠実さゆえとかいうわけではない。単に何人もの女に対して責任を負うのが怖いのだ。ヘタレと言ってかまわない。
”英雄色を好むは、権利でもあり義務でもある”陸自の上司が冗談めかして言っていた言葉が今更身に染みる。単に個人の放蕩や欲のためだけではない。女を籠絡すると言うことは、軍事的に政治的にも重要な意味を持つ。
どういうわけか、女が活躍してるこの世界ではなおのこと。
理屈ではわかる。だが、世界の半分は俺のもの。何人もの女を愛し子供を産ませる。そういう大それた話になると、田宮はどうしてもしり込みしてしまうのである。
「まあ、今日はとりあえず寝よう」
問題を先送りにして、田宮は就寝するべく、城にあてがわれた自室の障子を開ける。
「お待ちしておりました」
田宮は自分の目を疑う。部屋にはいつの間にか布団が敷かれ、布団の脇で白い湯巻姿の勝家が三つ指をついて出迎えたのだから。
(ここ…俺の部屋だよな…?)
「あの…勝家殿、なにをなさっておられる?」
「その…さしつかえなければ田宮殿のお伽をと思ってだな…」
田宮はつい息を呑んでしまう。勝家の大変にけしからん体は、湯巻で隠せるものではない。元々背が高く、肩幅も広くバランスのいい体に加え、立派な胸の膨らみ、きゅっと締まった腰、大きく肉感的なお尻は、大変に魅力的なのだ。
「あの…しかしいいのか?俺よりいい男なんて、その辺にいくらでも落ちてるだろ…?」
「言わないで欲しい!私は変なのだ。今まで男や男女のことにあまり興味はなかった。
なのに、あの日、貴殿におっぱいを揉まれ、”邪気”から解放された時以来、その…気が付けば田宮殿のことばかり考えているのだ…」
勝家の言葉に、田宮は頭を抱える。
これはあれだ。今まで勉学や仕事一筋だった女の子が恋と言う免疫のない毒に当たったようなもの。”ちょろイン”という言葉を田宮は呑み込む。
「厚かましい申し出なのはわかる!だが、この胸のもやもやした気持ちはなんなのか…。確かめさせて欲しいのだ」
”それは困る”の言葉を、田宮はどうしても発することができなかった。勝家の気持ちは純粋なものだ。軽い気持ちで受け入れてはならない。それはわかるのだが、湯巻越しでもわかる勝家の美しく魅力的な体を見ると、どうしても理性的になることができないのだ。
(どうしよう?今まで意識してなかったけど、勝家はエロいし美し過ぎる…。据え膳食わぬはなんとやらともいうけど、俺は一応信長の夫という立場だし…)
「なにをやっとるかーーー!?」
田宮の逡巡は、大きな女の声と、障子が乱暴に明けられる音で断ち切られる。
「信長様?」
「信長様…?」
振り向けば、そこにいるのは湯巻姿の信長だった。これまた、豊かな胸の膨らみが湯巻程度では隠しきれず、大変にけしからんことになっている。
「権六、まさか我が夫を寝取ろうという気ではなかろうな!?」
ゴゴゴゴという黒いオーラをまとった信長の言葉に、勝家は一瞬気圧される。が、決意を新たにしたように、三つ指をつき平伏する。
「信長様!寝取るなどとは滅相もないこと!
ただ、伏してお願いいたします!この権六が田宮殿の側室として侍ることをお許しください!」
これには信長のほうが気圧されてしまう。まじめで武人気質の勝家とは思えない爛れた話だったからだ。
「この権六。
あの日以来、田宮殿のことを思うと胸がいっぱいでどうにかなってしまいそうなのです!
田宮殿は信長さまの夫。それはわかっているのです!でも、自分が抑えきれないのです!」
田宮と信長は思わず顔を見合わせる。恋は盲目とはいうが、今の勝家は正にそれだろう。それだけ純粋かつ強い恋心なら、無下に否定するのも忍びない気がしたのだ。
信長は少し考えて口を開く。
「男の価値は女の数で決まるともいうしな。
あいわかった。権六が側室として知の横に侍るのは認める。
だ…だが忘れるな!知のことを一番愛しているのは私なのだからな!」
「信長様、ありがたき幸せです!
ああ、この権六、幸せ過ぎてどうにかなってしまいそう!」
信長と勝家が、両方からぎゅっと抱き付いてくる。
(嬉しい。柔らかいしふかふかしてるし、いい匂いがする。けど、これでいいのかなあ?)
ヘタレである田宮は、美しく魅力的で素晴らしい胸の膨らみをお持ちの美女2人に抱き付かれても、まだ本能に素直になれないのだった。
「あの、二人とも大変申し訳ないんだけど、俺は今日はもう寝る予定なんです。明日も忙しいし」
信長と勝家が不満そうな顔をする。だが、信長がすぐに”閃いた”という顔をする。
「では、私と権六が添い寝をするというのはどうだ?」
「なんと、それは素晴らしいお考えです!」
「え…ええ…!?」
結局、田宮は信長と勝家にブルドーザーのように押し切られ、3人で添い寝をすることになったのだった。
(添い寝ってけっこう心地よくて安心するかも…。JKビジネスが蔓延するのってこういう理由なのかな?
しかし、二人のいい匂いと胸の膨らみが大変けしからんことになって…。俺眠れるのか…?)
穏やかに寝息を立てる信長と勝家を意識して、しばしの間悶々とする田宮だったが、やがて心地よさと安心感に包まれながら眠りに落ちるのだった。
いつもは寝る前にセットしているスマホの目覚ましをかけるのを忘れたまま。
翌朝、3人の起床が遅いことを怪しんだ腰元が田宮の部屋で目撃した光景は、たちまち城内の噂となり、尾びれ背びれがついて駆け巡ることになる。
「3人でなんて大胆よね」
「まあ、いい男だとは思うけど、信長様と権六さまがあそこまでめろめろになってしまうなんて」
「ああ…3人でどんな逢引きをなさったんでしょ?あ…なんだかじゅんってしてきちゃった…」
「まあ、自衛隊と織田家の友好関係にはプラスなんじゃない?」
「手が早すぎて修羅場にならなきゃいいけどねー」
「ちくしょう!うらやましくなんかないからなあ!」
かくして、田宮は織田家と自衛隊の多くから、生温かい祝福とからかい、そして痛い嫉妬の視線を頂戴することとなったのだった。
「だから違うんだってば――――!」
田宮の絶叫は誰にも届くことはなかったのである。
「でーきた!さ、見てみて!」
「これが、俺…?」
藤吉郎が掲げた鏡をのぞき込んだ田宮は絶句する。
そこには、ものすごい美女が映っていたのだから。
「やだ、すごくきれい!やっぱり、ボクの目に狂いはなかった!」
そう言って藤吉郎が抱き付いてくる。美しく女装した田宮に。
実際、今の田宮は美しかった。薄くおしろいと紅で化粧をし、セミロングの姫カットのかつらをつけている。いかにもいいところのお嬢様という感じだ。女にしては背が高いのも、むしろバランスよくエキゾチックにさえ見える。
藤吉郎が用意した、白と薄紫の着物も清楚ながらどこか艶やかでよく似合っている。
眼鏡をかけているので、いつもと印象が大きく違って見える。
「よし!さっそくお出かけしよー!」
「ええ…?このまま出かけるの…?」
自分の手を引いて自室から歩き出す藤吉郎に、田宮は困惑する。
「だって、こんな美しい女の子、みんなに見せびらかしたいじゃない!?
ま、ちん〇んのついた美女だけどねー!
嬉しいよ!最高のご褒美だよ!」
藤吉郎がいつものハイテンションで手を引く。
藤吉郎が求めた”ご褒美”がこれだった。田宮を女装させること。藤吉郎が所謂ガチレズであることは公然の事実だが、女っぽく美しい容姿の田宮には興味があるようだった。
”女装させたら絶対素敵だとおもうんだよね!”
目に星を浮かべてそういう藤吉郎の願いを、田宮は拒めなかったのだ。
(それにしてもこれは…)
着慣れない女物の着物の着心地に、田宮はためらう。なにより、女装しているのを知り合いにでも見られたらまずいことになる。
「なあ、藤吉郎…。みんなが振り向いて俺を見てないか…?」
藤吉郎と手をつないで町を歩く田宮は、心臓が止まりそうだった。
「心配ないよ!知があまりに美しいからみんな目を奪われてるのさ。気にしないでどうどうとしてなよ」
藤吉郎はそういうが、田宮は緊張が抜けない。時々織田家でも顔見知りの人間や、迷彩服姿の自衛隊員とすれ違うからだ。
ともあれ、行く人行く人こちらを見るものの、不審な視線を向けてくるわけではない。
(でもそれはそれで男としてどうなのか?)
女装が似合い、女と区別がつかないというのは嬉しい話でもあるのだが、男としてはどうにも複雑なのだ。
「お、藤吉郎じゃないか」
「ああ、権六さま」
(げ!勝家!)
田宮は心臓が口から飛び出そうになる。街はずれでよりによって勝家に会ってしまったのだ。
(いくらなんでもごまかせないだろ…!)
田宮の全身に嫌な汗が流れる。が…。
「なんだ、またすごい美人じゃないか?お前、また新しい女か?」
「そですよー!きれいでかわいいでしょ!?」
そう言って藤吉郎は田宮に抱き付く。
「まあ、ほどほどにな」
女趣味はない勝家は苦笑して歩き去る。
「ええ…本当にばれてないの…?」
「だから言ったでしょ?こんなにきれいでかわいいんだもん!誰にもわからないよ!」
勝家にばれなかったという事実と、にししという藤吉郎の満面の笑みに、田宮は肩から力を抜く。
この際だ。今日は女装して藤吉郎にとことん付き合ってやろう。そういう気分になったのだ。
(いや、別に女装とか男の娘とかに目覚めたわけじゃないぞ!決して!)
古来、女装は文化だ。
古典文学では”とりかえばや物語”などもある。平治の乱が起きた時、二条天皇が女装して内裏を抜け出したことも有名なエピソードだ。
そんな言い訳をしながら、なんだかんだで田宮は藤吉郎とのデートを楽しんだのだった。
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