自衛隊戦国繚乱 プリンセスオブジパングトルーパーズ 

ブラックウォーター

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06 鮮血の京都編

大田楽祭とサンバカーニバル 明日へ向けた踊りと歌

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19
 
 京、堀川五条。
 「みなみな!大田楽祭の始まりだっ!」
 「「「「「おおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーっ!!」」」」」
 自衛隊のスピーカーで発せられた信長の号令に、集まった群衆が大歓声で応える。
 京の住人たちが待ちに待った一大イベント、大田楽祭の始まりだった。
 
 そろそろ初夏に入ろうかという京都の町は、賑わいに覆われる。
 そこかしこで笛や太鼓の音が響き渡る。
 田楽は古くは豊穣を祈るための祭りだった。
 だが、鎌倉時代以降は武家文化と結びつき、武運長久や戦勝祈願を祈るものとして。あるいは鋭気を養うための娯楽として発展してきた。
 故に、大まかな形が決まっているだけで、主催する者にもよるが、細かい習慣や様式というものはない。要するに、みんなで踊って騒いで楽しめればいいのである。
 田楽には定番のびんざさらを用いて舞っている者もいる。
 ジャグリングをしている者もいる。
 太鼓を叩いている者もいれば、笛を吹いている者も、鈴を鳴らしている者もいる。
 映像記録係としてカメラを回している田宮は、その賑わいに圧倒されそうだった。
 良く見れば、大名やその重臣たちも、派手な装いをして田楽に混じっているのが散見される。
 “踊る阿呆に見る阿呆。同じ阿呆なら踊らにゃ損損”
 という言葉がある。めでたい日の盛大な賑わいであれば、自分たちも混じって楽しもうというわけだ。
 
「お、氏実様に氏康様ではないですか」
 田宮は、賑わいの中に見知った顔を見つける。
 「あ、お兄ちゃんおひさー!会いたかったよ-!」
 「知、しばらくだな。元気そうで何より」
 田楽師の装いをした美少女2人、今川氏実と北条氏康が笑顔で田宮に応じる。
 信長の征夷大将軍就任を祝うめでたい日であり、盛大なイベントということで、遠いところを京まで来たらしい。
 「私たちもいるぞ!」
 「知、久しぶりじゃーん!」
 声をかけられて振り向くと、2人のギャル風美少女がいた。
 徳川家の家臣、本多忠勝と酒井忠次だった。2人とも田楽師のかっこうをしていて、いつもとは印象が大きく違って見える。
 「忠勝、忠次!久しぶり。
 相変わらず2人とも美人だな!」
 「ふふ…相変わらずお上手」
 「そういうこと言うと、本気で惚れちゃうかもー」
 田宮の切磋の言葉に、忠勝と忠次がきゃぴきゃぴと反応する。
 こういうのもいいな、と田宮は思える。
 「ねえねえ、折角だからなにか食べない?
 美味しそうなにおいがするよー」
 原始的な欲求に素直な氏実の言葉に周りを見回すと、自衛隊員や織田家の者たちが開いている露天が目に入る。
 わたあめ、お好み焼き、たこ焼き、かき氷、フランクフルト。
 確かに食欲をそそられる。
 「ありゃ、木場一佐。なんというか…お好み焼き屋ですか?」
 「ふっふっふ。甘く見るな。
 駐屯地祭では俺のお好み焼きはいつも完売御礼なんだぞ!」
 田宮はお好み焼きの暖簾を掲げた店を覗いて、陸自の雲上人が額に汗してお好み焼きを焼いている光景に目を丸くする。
 「せっかくだから頂こうじゃない」
 「そうだよそうだよ」
 「ごちになりまーす」
 目に星を浮かべる女の子たちに、田宮はブルドーザーのように押し切られる。
 「俺が払うのかよ…」
 愚痴りながらも、人数分注文してしまう田宮なのだった。
 実際、木場の言葉に偽りはなし。これほどうまいお好み焼きは初めてと思える味だったのである。

 「おや、堀越一曹じゃないか」
 「おお、田宮二尉、楽しんでますか-?」
 陸自施設科の堀越小梅一曹が、他の田楽師に混じってジャグリングを披露している。
 が、良く見るとあまりにシュールな光景に田宮は顔を引きつらせる。
 「よっ!ほっ!」
 堀越がジャグリングをしているのは、“ポテトマッシャー”とあだ名される、第二次大戦時のドイツ軍の柄付き手榴弾だったのだ。
 もちろんダミーだろうが、なにやらやばいものを感じずにはいられない。
 堀越は爆弾マニアで、身の回りも手榴弾や迫撃砲などを模した日用品で固めている。趣味趣向は人それぞれだとは思うが、物騒でシュールなことに変わりはない。
 (落としたら爆発したりしないだろうな?)
 田宮はそんなことを思わずにはいられなかった。

 祭りの2日目は、自衛隊を中心とした展示祭が実行された。
 なんと言っても目を引くのは、F-35BJのアクロバット飛行だろう。
 安土城に隣接するヘリポートから垂直離陸した鉄の剣は、2機が1組となり、一糸乱れぬ飛行を披露する。
 ヘリポートにはkotokoの“facetofact”が流され、場の雰囲気を盛り上げる。アップテンポで軽やかなkotokoの楽曲は、アクロバット飛行と凶悪に相性がいい。
 F-35BJがバレルロールや急旋回を行う度に、集まっている群衆から歓声が上がる。
 「美しいものですね」
 群衆に交じってアクロバット飛行を見物している金髪美少女、武田信廉は、F-35BJが飛行している姿を紙にスケッチしていた。
 波が白く弾ける姿は水面そのものとは違うように、F-35BJも、地上に駐機している姿とアクロバティックに飛行している姿は全く違うものに見えたのだ。
 信廉の趣味は絵を描くことであり、しかも下手な絵師顔負けの腕前であることは有名だ。
アクロバット飛行を行うF-35BJを描いた絵は、後に大変な人気を集めることとなるのだった。

 さて、こちらは京の自衛隊駐屯地のヘリポート
 「お疲れ様でした。気をつけて下りて下さい」
 ここでは自衛隊のヘリの体験搭乗が行われている。
 「いやー!楽しかったー!空を飛ぶって気持ちいいもんだねー!」
 「ちょっと動きが激しすぎたかも…。ちょっと怖かったの…」
 「ふ…ふふふふ…」
 上杉家の要人たちがUH-60JAから降りて、思い思いの反応をしている。
 茶髪の遊女のような派手な装いの美女、前田慶次郎は子供のようにはしゃいでいる。
 亜麻色の長い髪が特徴の美少女、上杉景勝は、UH-60JAの機動性と頑丈さを生かした空中機動に多少参り気味だった。
 水色のボブカットの美少女、直江兼続は高いところが苦手だ。光のない目をして乾いた笑いを力なく漏らしている。
 まあ、しょせんは旅客機ではなく軍用機だ。乗り心地や快適さなど二の次なのだ。
 このように反応がまちまちになるのは、いつものことだったのである。

20

 そしてメインイベントである3日目がやってくる。
 『岩戸が開き、この日の本に光が降り注ぐことを願い。
 みなさん、満場の拍手でお迎え下さい。
 これよりサンバカーニバルを開催致します!』
 女性自衛官のアナウンスとともに、サンバカーニバルの幕が上がる。
 大路に整然と並んでいる女性たちは、すけすけのシースルー素材の白いポンチョと前開きの赤いスカートに身を包んでいる。
 かなりエロティックではあるが、巫女に見えないこともない。
 これはうまい演出だった。
 サンバは本場の21世紀のブラジルでさえ、その露出度の高さとエロティックさで苦手とする人もいる。
 いわんや日本をやである。だが、カーニバルを円滑に進めたい信長の意向を受けた田宮の発案で、アメノウズメの伝説とサンバを結びつけて演出することとしたのだ。
 天照大神が岩戸に引きこもって世界が闇に包まれてしまった折、アメノウズメがほとんど裸同然の姿で踊った。それに歓喜した人々の声援と笑い声で、天照大神が岩戸から出てきた。
 神話のそのくだりはよく知られている。
 要するに、アメノウズメが行った行為はストリップだったのだ。
 してみると、サンバがアメノウズメの踊りになぞらえたものだと主張すれば、誰も表だって非難はできなくなる。
 サンバを下品だのハレンチだのと非難することは、アメノウズメを非難することにもなる。
 神話を自分たちの権威や伝統の根拠としている朝廷や公家たちにとって、それはとんでもないブーメランになりかねなかったのだ。
 まあ、日本は元々よほど身分のある者でもないかぎり、露出の多い服装に特別忌避感があるわけでもない。
 なにより、公家衆もなんだかんだでお祭りが好きだ。サンバカーニバルを楽しみにする者も1人ならすいた。
 何はともあれ、表向きは朝廷や公家衆も賛成する形となる。
 サンバカーニバルが盛大に始まるのだった。
 
 サンバの先頭は、長い赤毛の美少女と、ベリーショート茶髪のボーイッシュ美少女、そして長い黒髪の長身美少女だった。
 織田信長、羽柴秀吉、柴田勝家のユニットだ。
 「うお、すごい!」「これは…」
 3人がポンチョとスカートを脱ぎ捨てた姿に、集まった群衆は目を奪われた。
 織田家を象徴する赤を基調とし、派手だが美しい飾りをちりばめたマイクロビキニの水着が目を引く。
 なんと言っても、水着の布地の面積が凶悪に小さい。ほとんど素っ裸にしか見えないほどだ。
 いつもよりきつめできらびやかな化粧も3人ともよく似合っている。
 背中を頭の豪奢な羽根飾りを揺らして、信長たちはホイッスルとパーカッションの演奏に合わせて、アクティブに、そしてセクシーに踊る。
 そして、踊りながらも美しく、力強く歌うことを忘れない。
 それぞれに美しく素晴らしい胸の膨らみが、ダンスに併せて揺れるのが大変にけしからんことになっている。
 「ふふふ、反応は上々だの!」
 「みんながボクらに注目してる。快感かも!」
 「私はやっぱりちょっと恥ずかしいかな…」
 そして、3人が軽やかにターンをした瞬間、特に男衆が息を呑む。怖ろしく面積の狭いTバッグは、3人の美味しそうなプリケツをほとんど隠していない。
 むしろ張りのある美しい尻を強調して、さらに美しくエロティックに見せてさえいる。
 男衆の何人かは前屈みになっているほどだった。

 次にポンチョとスカートを脱ぎ捨て、踊りながら進んでいくのは、金髪のロリ美少女と、長い黒髪の妖艶な妙齢の美女、そして、同じく黒髪の気の強そうな美少女だった。
 今川氏実と、北条早雲、北条氏康である。
 信長たちと対を為すように、青を基調としたマイクロビキニを着用し、青の羽根飾りを身にまとっている。
 そのビキニは豪奢に宝石や飾りがあしらわれているが、やはり凶悪に面積が少ない。
 「氏実も早雲様やお姉ちゃんみたいに胸があればなー」
 「氏実はスタイルがいいし、お肌がきれいだからいいのですよ」
 「むうう…しかし母上の胸…本当に大きい…」
 氏康は胸の膨らみは発展途上だが、スタイルはいいし肌が絹のように美しいのが目を引く。細い腰を振って踊る様はまるで天使だった。
 早雲は体の各所がややたるみ気味だが、それがむしろ肉感的に映る。若干たれ気味だがすさまじいボリュームを誇る胸の膨らみと、凶悪に大きく肉感的な尻が、老若男女の視線を釘付けにする。
 氏康は母ほどではないにしても豊かな胸の膨らみを持つ。しかも、これだけの大きさを持っているにも関わらず張りがあり、見事な釣り鐘型を保っているのが素晴らしい。
 三者三様の美しさと魅力を持つ3人のダンスは、大きな声援と拍手を呼び込むのだった。

 それに続いたのが、長い金髪の双子の美少女だった。
 武田信玄、武田信廉の姉妹である。
 「胸とお尻の大きさで女の魅力が決まるわけではないわ」
 「そうです。私たちは技術と演出で勝負です」
 2人がまとっているマイクロビキニと羽根飾りは、一際豪奢な金色を基調としたものだった。
 同じく金色のタイツとアームカバーを身につけているために露出度は少なめだが、マイクロビキニの布地はやはり凶悪に少なく、シークレットゾーンを辛うじて隠しているに過ぎない。
 2人のちょっとした自慢である美しい小尻が、Tバッグによって慎ましやかながらもセクシーに見せられている。
 信玄と信廉はハイヒールを履いているにも関わらず、アクティブに器用にステップを踏む。まるで鏡を挟んだ実体と虚像のように、スレンダー体型の双子姉妹が踊る姿は幻想的なまでに美しかった。

 4番目は、ピンク髪のサイドテールギャル風美少女と、筋肉ガールの黒ギャル美少女、そして茶髪の肉感的に白ギャル美少女だった。
 徳川家康、本多忠勝、酒井忠次のユニットだ。
 豪奢なマイクロビキニと羽根飾りはピンクを基調としている。
 家康と忠次の白い肌にも、忠勝の褐色の肌にも良く映えている。
 加えて、普段からおしゃれに余念のない3人だ。全身にまとった宝石類が、派手でありながら実に美しく光る。元々美しい3人をさらに美しく見せていた。
 「笑顔、笑顔と。うう…やっぱり恥ずかしい…」
 「家康様、大丈夫です。充分お美しいですから」
 「あたしたちの美しさを存分に見てもらいましょ-!」
 家康は胸の膨らみは実に立派だが、腰が細く尻が小さいわがままボディ。
 忠勝は全身が筋肉で引き締まり、豊かな胸の膨らみも張りと弾力を持つ。
 忠次はややふっくりしているが、柔らかく肉感的な印象を与える。
 それぞれに違った魅力を持つ美しい体を持つ3人の美少女が、ほとんど裸同然の姿で踊る。
 それを見ている群衆は初夏にも関わらず、目の正月と思わずにはいられなかったのである。

 京の町の眼福はまだ終わらない。
 次に踊り、歌い始めたのは、長い黒髪の神々しささえ感じさせる美女と、亜麻色の髪の小柄な美少女、水色のボブカットの生真面目そうな美少女、そして、茶髪ポニーテールの派手な印象の美女だった。
 上杉謙信、上杉景勝、直江兼続、前田慶次郎だ。
 マイクロビキニと羽根飾りは白でまとめられている。4人とも色白であるため、ビキニの布地の少なさと相まって、ほとんど素っ裸にしか見えない。
 謙信はほっそりとしつつも、胸の膨らみは大変に素晴らしく、踊る度にぽんぽんと揺れる。露出度の高いマイクロビキニを着ていても、非常に優雅で神秘的な印象さえ覚える。
 景勝は体は発展途上だが、運動神経に優れるため踊りにキレがある。未発達だが活発な女の子ならではの魅力を振りまいている。
 兼継はバランスのとれた体型で、腰の力が強いため踊り方が非常にセクシーになっている。安産体型の大きな尻とむっちりとした太ももが非常にまぶしい。
 慶次郎はいつもの遊女のような姿に輪をかけて派手な化粧と飾り付けをしている。これだけ飾っても、けばけばしい印象が全くないのがすごい。バンキュッボンの美しい体型もだが、いつも以上のドヤ顔がサンバと相性がいい。
 「たまにはこうやって思いきり踊るのもいいものだな」
 「みんなが見てると、踊りにも気合いが入るの」
 「しかしこのかっこう、やはり少し卑猥ではないか…?」
 「サンバって楽しい-!これを考えた人は天才だねえ!」
 4人が同時に前屈みになって尻を突き出すあざといポーズを取った瞬間、割れんばかりの歓声が響き渡る。
 それぞれ性格の違う魅力と美しさ、そして色っぽさをもつ4人の踊りは、艶やかでありながら、どこか神々しいものさえ感じられた。
 この辺りは上杉ならではと言えるかも知れない。

 ホイッスルとパーカッションに加え、タンバリンやマラカス、ギターや笛の演奏も響き渡り、サンバカーニバルは進行していく。
 美しい女たちの踊りに併せて、大合唱が響き渡る。
 京の町のボルテージは最高潮と言えるまでになり、その場にいる全ての人間が血をたぎらせていた。
 美しい女たちの艶やかで華やいだ踊りと、美しく力強い歌は続く。
 その場に集まる全ての者たちにとって、それは明日へ向けた踊りと歌。
 今日より明日がいい日だと信じ、願いを込めた踊りと歌だった。
 京の町のサンバカーニバルはこうして大成功の内に幕を閉じたのだった。

21

 サンバカーニバルが終了しても、高まったボルテージはなかなか冷めることがなかった。
 打ち上げが始まっても、みな興奮しっぱなしだったのだ。
 (しかし、目のやり場に困るなあ)
 打ち上げで女の子たちに囲まれている田宮は思う。
 お祭り気分と開放的な心地のためだろう。女性たちは着替えることなく、マイクロビキニのままなのだ。
 羽根飾りや装飾を外してしまうと、いよいよ素っ裸に見えてしまう。
 眼福だが、非常に目のやり場に困るものがある。
 「いやあ最高だったな!こうなったら毎年サンバカーニバルをやりたいものだ!」
 テンションが上がったままの信長が、田宮に満面の笑みで言う。
 「確かに楽しかったですね。京の人たちも楽しんでくれたようだし、万々歳です」
 田宮も興奮気味に相手をする。
 「知―どうだった、ボクのサンバ?興奮した?お○んちん大きくしちゃった?」
 「藤吉郎、変なこと聞くんじゃない」
 高まったボルテージが変な方向に行きつつある秀吉を、勝家が制止している。
 「お兄ちゃん、サンバって楽しいね!駿河でもやりたいくらいだよ!」
 「あの、どうでしょう…?おばさんくさくないかしら?」
 「うう…今になって恥ずかしくなってきたよお…」
 すっかりハイテンションの氏実が田宮の腕に抱きついてくる。
 早雲は恥ずかしそうにしている。やはりマイクロビキニは度胸が必要なようだ。が、その仕草には美しさと色っぽさを感じずにはいられない。
 氏康は踊っている時はノリノリだったが、今になって耳まで真っ赤になっている。まあそれでもマイクロビキニ姿の肢体を隠そうとはしないが。
 (うわ…ちょっぴりだけどはみマンしてませんか?やばい…エロい)
 田宮は3人の股間の肉がマイクロビキニからはみ出し気味な光景に、目を奪われる。マイクロビキニ姿であれだけ激しく踊ればこうなるとは思っても、やはり淫靡な感じだ。
 「どうかしら、田宮殿、手術の跡目立ってなかったでしょうか?」
 「姉さん気にしてましたものね。うまく化粧と装飾で隠したけど、どうかしら?」
 心臓手術の跡が気になる信玄と、第三者の視点での意見が聞きたいらしい信廉が田宮に聞いてくる。
 「いや、きれいですとも。手術したのが信じられないくらい」
 田宮は素直な感想を返す。実際、信玄の体は美しかった。知らなければ、大手術をしたことがあるなどとはわからないくらいだ。
 「田宮、なにでれでれしてるんだ。このスケベ!」
 「家康様、ご自分も見て欲しいなら素直にそう言われるべきかと」
 「知、こんないい女が3人もいるんだ。見ない手はないよー」
 相変わらずツンデレな家康と、直球過ぎで恥ずかしい忠勝、お色気担当の忠次。
たしかにこんないい女3人がマイクロビキニ姿なのだ。脳内メモリに保存しない手はない。と田宮は思う。
 「なんというか、ある意味で裸より恥ずかしい気もするな…。知殿、男はみなこういう装いが好きなのか?」
 「そんなこと言って、お母さんノリノリでお肌のお手入れとサンバの練習してたの。そういえば兼継も」
 「うっ…。いや、私はただ、参加する以上は手抜きは許されぬと思っただけで…」
 「あれえ、新しい宝石と化粧品買いたいから見つくろってくれって頼んできたの誰だったっけえ?」
 恥じらいながらも、男にすけべな目で見られるのもまんざらではない様子の謙信。
 目ざとさと小悪魔ぶりがかわいい景勝。
 仕方なくと言いながらもなんだかんだでノリノリな兼継。
 良くも悪くも上杉家のお姉さんという立ち位置の慶次郎。
 あられもないマイクロビキニ姿でも、いろいろな意味でいつもの上杉家と言えた。

 「知、一つ誓うのだ」
 マイクロビキニの美女、美少女がいっぱいの打ち上げもたけなわになったころ。
 信長が改まって田宮に話かける。
 「なんでしょう?」
 信長は咳払いして、元々マイクロビキニ姿でいる恥ずかしさで赤い顔をさらに真っ赤にする。
 そしておもむろに口を開く。
 「この国から戦がなくなり、太平の世が訪れたら…。その…。
 全員にお前の子供を産ませろ」
 田宮は一瞬信長の言った意味がわからなかったが、周囲の様子を伺うと、女たちがそろって恥ずかしそうに、だが色っぽく微笑んでいるのが目に入る。
 つまり…。
 「全員にですか?」
 「そうだ。お前を思う女、お前の子を孕みたいと望む女全員にだ!」
 田宮は即答することができなかった。ある意味で当然だが。
 田宮は周囲を見回す。集まっている美女、美少女全員が自分に注目している。
 誰も積極的には信長の言葉を否定しない。
 信長、秀吉、勝家、氏実、早雲、氏康、信玄、信廉、家康、忠勝、忠次、謙信、景勝、兼継、慶次郎。
 (全員が俺の子供を産みたいと思っていると言うことなのか?)
 田宮は自分の置かれている状況の爛れぶりと重大さ、そして男としての責任の重さを今さら重く受け止めていた。
 だが、この期に及んで彼女たちの気持ちと思いがわからないほど臆病でも朴念仁でもないつもりだった。
 田宮の答えは決まっていたのだ。
 「わかりました」
 田宮は背筋を伸ばし、笑顔で返答する。
 「それで良い。
 私たちに取って、それが一番励みになるからの!」
 信長が色っぽく微笑みながら言い切る。他の女たちも同じようだった。
 領土よりも、極上の酒よりも、金銀よりも、業物の太刀よりも、田宮知という男の存在が、田宮の子を孕み、生むことが幸せだと言っている。
 田宮も彼女たちからそこまで思われて、幸せを感じずにはいられなかった。
 こうなったら、本当に彼女たち全員を孕ませて、元気な子を産んでもらおう。本気でそう思えるのだった。

 田宮が自分を思う女全員を妻として、子供を産ませる決意をしたことは、小さくて大きな前進だった。 
 それは信長はじめ女たちにとって、サンバカーニバルの熱気と興奮以上に自分をたぎらせ、奮起させるもの。そして幸せをもたらすものだった。
 遠からずまた戦いが始まる。
 戦いは過酷で苦しいものとなるだろう。
 だが、愛おしい者が側にいれば。あるいは、帰れば愛おしい者が待っていて愛してくれると思えば、戦いの中であっても幸せを感じ、希望を持ち続けることができるだろう。
 今日より明日をいい日だと信じることができるだろう。
 田宮を思う女たち全員が、心からそう思っていたのだ。

 
 前半部 完
 
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感想 1

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みんなの感想(1件)

AQUA☆STAR
2019.03.12 AQUA☆STAR

今日初めて見させていただきました!時間を掛けてゆっくり読ませていただきます(^^)

2019.03.19 ブラックウォーター

ありがとうございます。
楽しく読んでいただければ幸いです。

解除

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