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第一章 ゲイホストが異世界に飛ばされたので
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男妾でも夜番に就く者たちの朝は遅い。まあ、深夜まで働いているのだから当然。
「おはようございます」
「おはよーす」
もう日が高いのに寝ぼけ眼の男妾たちが、あいさつを交わす。夕べも忙しかった。里実の甘く激しいホモセックスが忘れられない男たちが、リピーターになっている。予約は3日先までいっぱいで、予約を取りに来る客を追い返している有様だ。
「眠いなあ……」
里実もまた顔を洗い、歯を磨き、ひげを剃る。朝の身だしなみならぬ昼の身だしなみだ。ちょうど正午の鐘がなる。いつまでも寝ているわけにはいかない。まかない飯の時間は決まっているし、自由時間は店が営業し始めるまでだ。
「納得いきません!」「アタシらを差し置いてあんな新入りが!」「売り上げだけが問題ですか!?」「他のやつにも示しがつきませんよ!」
昼食を終えて後片付けをしていると、支配人の事務室から怒鳴り声が聞こえる。しかもひとりではない。ドアは開いている。こっそり覗き込んでみる。中では机にかけた支配人と、数人の男妾がいる。
「支配人の私の言うことが聞けないのかね?最近の景気の良さが里実の功績であるのは、お前たちも知っているだろう?お偉い貴族様や豪商のみなさんたちだってやつを抱きたがってる。やんごとなき方々を、狭くてむさ苦しい部屋に通せるか?」
ジェンダーレスな支配人は一歩も引く気がない。腕組みしてポーカーフェイスで男たちを見る。大勢でわいわいやられて簡単に考えを変えるような人物なら、男妾館の管理など務まらない。
(なにを揉めているんだ……?)
珍しいことだった。支配人は人望もあり、男妾たちから信頼もされている。こんなふうにケンカになるなど初めて見る。
「それはわかってるって言ってるでしょう。でも!この間新人割引きが明けたばかりのやつがペントハウスなんてめちゃくちゃだ!」
赤毛ロングの妖艶な男妾が机に手を突いて詰め寄る。ここの男妾たちのリーダー格だ。最上級男妾のひとりでもある。
(ペントハウス? この間新人割引きが明けたやつって僕のことか? マジ?)
里実は困惑する。
ペントハウスとは、店で最上級の男妾の部屋のことだ。
男妾には店ごとに格付けがある。経験や技術、そして美貌が足りていないものは、料金も住み込みの待遇も相応のものになる。もちろん料金の中から払われるギャラも。
通常であれば、狭い部屋住みの新人から始まって、着実に年季を重ね等級が上がっていくものだ。終着点であるペントハウスの男妾は、料金も高くなるし客も選ぶようになる。ふさわしくないと店と男妾自信が判断すれば、買うことはできない。
そして、それはとても狭き門だ。店で働き始めて数ヶ月にしかならない里実がペントハウスとは、相当に異例のことになる。先輩たちを差し置いて一足飛びに駆け上がるなど。
「おい、噂をすればだぜ」
銀髪ポニーテールで体格のいい男妾が、部屋の外の自分に気づく。今回の措置に一番納得できなかったのは彼だ。10代からここで働いてベテランだ。最上級男妾のひとりが、先だってある貴族に身請けされ引退した。本来なら次にペントハウスに収まるはずだった。
「すっかり一人前ですって面になりやがって……」「客受けがいいからって調子に乗ってねえか?」「生意気ね……。ウチらだって努力してるのに……」
(おっかないが……。踏ん張りどころだ)
男たちの鋭い視線が突き刺さる。たじろぎそうになるが、ここで退いてはならない。それは、今までホモの手管を磨き、ゲイホストとして、男妾として努力してきた自分を否定することになる。
男妾として大成するには教養も芸術的な技術も必要だ。読み書きを勉強し、琴と歌を練習している。そして暇さえあれば都の図書館に通って知識を蓄え、風流を身につけている。その成果もあって、客受けも上々だ。
性技だけで客の好評を頂戴しているつもりはない。
「おはようございます」
「おはよーす」
もう日が高いのに寝ぼけ眼の男妾たちが、あいさつを交わす。夕べも忙しかった。里実の甘く激しいホモセックスが忘れられない男たちが、リピーターになっている。予約は3日先までいっぱいで、予約を取りに来る客を追い返している有様だ。
「眠いなあ……」
里実もまた顔を洗い、歯を磨き、ひげを剃る。朝の身だしなみならぬ昼の身だしなみだ。ちょうど正午の鐘がなる。いつまでも寝ているわけにはいかない。まかない飯の時間は決まっているし、自由時間は店が営業し始めるまでだ。
「納得いきません!」「アタシらを差し置いてあんな新入りが!」「売り上げだけが問題ですか!?」「他のやつにも示しがつきませんよ!」
昼食を終えて後片付けをしていると、支配人の事務室から怒鳴り声が聞こえる。しかもひとりではない。ドアは開いている。こっそり覗き込んでみる。中では机にかけた支配人と、数人の男妾がいる。
「支配人の私の言うことが聞けないのかね?最近の景気の良さが里実の功績であるのは、お前たちも知っているだろう?お偉い貴族様や豪商のみなさんたちだってやつを抱きたがってる。やんごとなき方々を、狭くてむさ苦しい部屋に通せるか?」
ジェンダーレスな支配人は一歩も引く気がない。腕組みしてポーカーフェイスで男たちを見る。大勢でわいわいやられて簡単に考えを変えるような人物なら、男妾館の管理など務まらない。
(なにを揉めているんだ……?)
珍しいことだった。支配人は人望もあり、男妾たちから信頼もされている。こんなふうにケンカになるなど初めて見る。
「それはわかってるって言ってるでしょう。でも!この間新人割引きが明けたばかりのやつがペントハウスなんてめちゃくちゃだ!」
赤毛ロングの妖艶な男妾が机に手を突いて詰め寄る。ここの男妾たちのリーダー格だ。最上級男妾のひとりでもある。
(ペントハウス? この間新人割引きが明けたやつって僕のことか? マジ?)
里実は困惑する。
ペントハウスとは、店で最上級の男妾の部屋のことだ。
男妾には店ごとに格付けがある。経験や技術、そして美貌が足りていないものは、料金も住み込みの待遇も相応のものになる。もちろん料金の中から払われるギャラも。
通常であれば、狭い部屋住みの新人から始まって、着実に年季を重ね等級が上がっていくものだ。終着点であるペントハウスの男妾は、料金も高くなるし客も選ぶようになる。ふさわしくないと店と男妾自信が判断すれば、買うことはできない。
そして、それはとても狭き門だ。店で働き始めて数ヶ月にしかならない里実がペントハウスとは、相当に異例のことになる。先輩たちを差し置いて一足飛びに駆け上がるなど。
「おい、噂をすればだぜ」
銀髪ポニーテールで体格のいい男妾が、部屋の外の自分に気づく。今回の措置に一番納得できなかったのは彼だ。10代からここで働いてベテランだ。最上級男妾のひとりが、先だってある貴族に身請けされ引退した。本来なら次にペントハウスに収まるはずだった。
「すっかり一人前ですって面になりやがって……」「客受けがいいからって調子に乗ってねえか?」「生意気ね……。ウチらだって努力してるのに……」
(おっかないが……。踏ん張りどころだ)
男たちの鋭い視線が突き刺さる。たじろぎそうになるが、ここで退いてはならない。それは、今までホモの手管を磨き、ゲイホストとして、男妾として努力してきた自分を否定することになる。
男妾として大成するには教養も芸術的な技術も必要だ。読み書きを勉強し、琴と歌を練習している。そして暇さえあれば都の図書館に通って知識を蓄え、風流を身につけている。その成果もあって、客受けも上々だ。
性技だけで客の好評を頂戴しているつもりはない。
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