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第二章 鮮血のロッジ
05
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寝ようとしていたラバンスキーのロッジの扉が、ノックされる。外には意外な人物が立っていた。聞きたいことがあるのだという。
(…………!?)
煎れられたお茶を飲んで、話すことしばし。急に眠気に襲われる。一服盛られたのだと気づくのも空しく、ラバンスキーは意識を失った。
………………………………………………
「全く、心配ないって言ったじゃないか……」
山瀬はぼやきながら、ラバンスキーのロッジに向かう。
SMSで『すぐに来い。どうやら本当に証拠があるらしい』という連絡が入った。先ほど自分を殴り倒してまで隠し通すことを強いた。その舌の根も乾かぬうちに、また問題発生とは。
例の動画が拡散されて以来、気が休まる暇がない。いつ戦犯として裁かれるかと怯え続けてきた。ラバンスキーの指示に従っていて本当に大丈夫か、そんなことさえ思ってしまう。
「大佐……?」
コテージには灯がついていて、なぜかドアは開いていた。
「大佐、いないんですか……?」
不審に思いながらも、山瀬は中に入る。
「あああ……大佐……!?」
そこにあったのは、銃殺されたとおぼしいラバンスキーの死体だった。ソファーにもたれて血みどろになっている。胸の真ん中と眉間を撃ち抜かれている。ほぼ即死だったろう。
「誰がこんなことを……?」
山瀬は、腰のホルスターの銃に手をかける。上官を殺した犯人は、まだ近くにいるかも知れない。が……。
「う……? なんだ……?」
次の瞬間、突然灯が消えて真っ暗になる。当然、山瀬の眼は追いつかない。ほとんどなにも見えない視界の中で、なにかが動く。
暗い中、わずかに見える。サプレッサー(消音器)の装着された小さな銃口。それが、彼が見た最後のものだった。ガシャッ。金属がこすれる音が小さく響く。閃光と同時に、身体を衝撃が走る。痛みを感じる暇もなく、意識はブラックアウトした。
………………………………………………
時間は少し遡る。
「眠いな……さっさと寝よう……」
誠はそう思ったが……。眠気はロッジに着いた瞬間吹き飛ぶことになる。なぜか、ロッジの扉の前に夜叉がいたからだ。
「七美……もう遅いのになにやってんの……?」
仁王立ちになった幼なじみに、こわごわ尋ねる。
「聞きたいことがあってねえ……。そう、もう遅い。なのに、ラリサちゃんとなにしてたのかねえ……?」
七美は猛烈に怒っていた。普通に美少女と言っていい容貌が、まるで鬼ばばあだ。
「兵法三十六計!」
考える前に、誠の身体は動いていた。きびすを返して、猛烈なスピードで逃走する。雨でぬかるんだ泥道で、自分でもよくこれだけ速く走れるものだと思う。
「待てーーーっ! 逃がさないよっ!」
背後ろから、鬼と化した七美の声が追いかけてくる。恐ろしくて振り向くこともできない。結局二人泥だらけになりながら、体力が尽きるまで鬼ごっこを続けることになるのだった。翌朝寝坊したのは言うまでもない。
(…………!?)
煎れられたお茶を飲んで、話すことしばし。急に眠気に襲われる。一服盛られたのだと気づくのも空しく、ラバンスキーは意識を失った。
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「全く、心配ないって言ったじゃないか……」
山瀬はぼやきながら、ラバンスキーのロッジに向かう。
SMSで『すぐに来い。どうやら本当に証拠があるらしい』という連絡が入った。先ほど自分を殴り倒してまで隠し通すことを強いた。その舌の根も乾かぬうちに、また問題発生とは。
例の動画が拡散されて以来、気が休まる暇がない。いつ戦犯として裁かれるかと怯え続けてきた。ラバンスキーの指示に従っていて本当に大丈夫か、そんなことさえ思ってしまう。
「大佐……?」
コテージには灯がついていて、なぜかドアは開いていた。
「大佐、いないんですか……?」
不審に思いながらも、山瀬は中に入る。
「あああ……大佐……!?」
そこにあったのは、銃殺されたとおぼしいラバンスキーの死体だった。ソファーにもたれて血みどろになっている。胸の真ん中と眉間を撃ち抜かれている。ほぼ即死だったろう。
「誰がこんなことを……?」
山瀬は、腰のホルスターの銃に手をかける。上官を殺した犯人は、まだ近くにいるかも知れない。が……。
「う……? なんだ……?」
次の瞬間、突然灯が消えて真っ暗になる。当然、山瀬の眼は追いつかない。ほとんどなにも見えない視界の中で、なにかが動く。
暗い中、わずかに見える。サプレッサー(消音器)の装着された小さな銃口。それが、彼が見た最後のものだった。ガシャッ。金属がこすれる音が小さく響く。閃光と同時に、身体を衝撃が走る。痛みを感じる暇もなく、意識はブラックアウトした。
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時間は少し遡る。
「眠いな……さっさと寝よう……」
誠はそう思ったが……。眠気はロッジに着いた瞬間吹き飛ぶことになる。なぜか、ロッジの扉の前に夜叉がいたからだ。
「七美……もう遅いのになにやってんの……?」
仁王立ちになった幼なじみに、こわごわ尋ねる。
「聞きたいことがあってねえ……。そう、もう遅い。なのに、ラリサちゃんとなにしてたのかねえ……?」
七美は猛烈に怒っていた。普通に美少女と言っていい容貌が、まるで鬼ばばあだ。
「兵法三十六計!」
考える前に、誠の身体は動いていた。きびすを返して、猛烈なスピードで逃走する。雨でぬかるんだ泥道で、自分でもよくこれだけ速く走れるものだと思う。
「待てーーーっ! 逃がさないよっ!」
背後ろから、鬼と化した七美の声が追いかけてくる。恐ろしくて振り向くこともできない。結局二人泥だらけになりながら、体力が尽きるまで鬼ごっこを続けることになるのだった。翌朝寝坊したのは言うまでもない。
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