ノンケの俺がメス堕ち肉便器になるまで

ブラックウォーター

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第一章 憧れのタワマン

1 新生活は追い風に乗って

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 白木譲、美緒夫婦が新居に越してきたのは、新生活の季節である四月だった。
「まさか、タワマンに住めるなんて思わなかったなあ……」
「そうだねー。あんなに安く買えるなんて……。まだちょっと信じられないかも」
 いざ絶景といえる視界の高層階に荷物を運び込んだものの、まだ実感が沸かない。
 譲二十五歳、職業声優兼俳優。美緒二十三歳、職業保育士。
 共働きでも、年収は低くはないまでも裕福とも言えなかった。
 タワーマンションの一室を購入して住むことなど思いも寄らなかった。
 二ヶ月前までは。

 きっかけは、譲の知り合いで仕事仲間でもある小説家の北条明人からの一通のメールだった。
『我が家の隣室がすごく安く売り出されてるんだけど、興味ないかな?』
 半信半疑で紹介された不動産屋を訪ねてみたところ、驚くほど安い価格を示された。
 なんでも、前の居住者である資産家が事業の失敗と離婚で破産し、競売にかけられたのだという。
 破産による競売は二束三文と相場が決まっている。セレブのシンボルのように噂されるタワーマンションも、破産が決まった時点で投げ売られるだけだった。
 不動産屋は落札したものの、なかなか買い手がつかないらしい。
 ウイルスのパンデミックに起因する昨今の不況に加えて、台風や大雨によるトラブルでタワーマンションそのものの信頼性が揺らいでいたことが大きかったらしい。
 結局利ざやを稼ぐことは諦めて、速やかに売り払う方針にシフトしたのだという。
 ともあれ、譲と美緒は悩んだ。
『簡単じゃないよなあ』
『あたしたちにはね……』
 なにせ駅前一等地の優良物件だ。相場からすればかなり安いとはいえ、ふたりにとってはそれなり以上の買い物になる。
 貯金を全部切り崩してなんとか払える額だ。これから子供を作ることを予定している以上、それはまずかった。
 だが、ふたりにさらに追い風が吹く。
『では半分を現金。残り半分は低利でのローンでいかがでしょうか?』
 不動産屋に支払いの相談をしたところ、びっくりするようないい支払い条件が得られたのだ。
 これなら、税金でも払うつもりでふたりの収入の中から毎月少しずつ払えばすむ。
 それで、おしゃれで景色のいいタワーマンションの住人になれるのだ。
 ふたりの両親も協力してくれることになった。ローンの連帯保証を快く引き受けてくれたのだ。
 かくして、あこがれのタワーマンションでの新生活がスタートしたのである。

 荷物をほどいていると、呼び鈴がなる。
 モニターを確認すると、来客は隣人である北条夫婦だった。
「こんにちは。引っ越してきたって聞いて、早く顔を見たくてね」
 メガネが似合うイケメンが笑顔で言う。夫の明人だ。
「すいません。こちらからご挨拶にうかがうべきなのに」
 譲は恐縮してしまう。早く荷物をほどかないと夜になってしまうと、挨拶を後回しにしていたのだ。
「いいええ。譲さんのことはいつも明人から聞いてましたわ。美緒さんのことも。お隣さんになれると思ったらうれしくて」
 にこやかにそう応じたのは、明人の妻である絵美香だ。シュッとした美貌とアップにした長く美しい黒髪が、いかにもできる女という感じだ。実際、若くして会社の代表取締役を務めている。
(やっぱ……ほんとのセレブって違うなあ……)
 譲は北条夫婦と自分たちを、つい比べてしまう。
 自分は身体を鍛えることを怠らない。その成果あって、引き締まった身体を持つ爽やかなイケメンといえる容姿と自負している。
 妻も、童顔で小柄だが人なつっこい笑顔と猫のようにやわらかいセミロングの髪がかわいい美人だと、ちょっとした自慢だ。
 が、目の前の夫婦のセレブオーラを浴びると、どうしても気後れしてしまう。
 背が高く理知的なイケメン、百万部単位を売り上げる小説家でもある明人。
 ノーブルな美人で、毎週多額の金を動かす実業家、絵美香。
 彼らに比べると、自分たちは庶民なのだと改めて実感する。
 明人とは仕事仲間とは言っても、あちらは大ヒットを飛ばして印税だけで左うちわの小説家の先生。
 こちらは、彼の小説の実写映画化に際して脇役で出演した若造の役者に過ぎない。
 演技指導でそれなりに交流はあったと言っても、ふたりの身の丈には大きな差があった。
「その……タワマンでの生活なんて初めてなので……。ご指導ご鞭撻のほどお願いします」
 そう言って譲はおじぎをする。美緒もそれに習う。
「うふふふ……。私たち別に貴族じゃないわよ。特別なことなんてないし、肩の力抜いて行きましょう。ね?」
 絵美香が気さくに笑う。だがその笑顔もまたノーブルで、譲と美緒には逆効果だった。
「まあ、堅苦しいことは抜きにして。夕飯よければ一緒しないかい? 長野にある妻の実家から美味しいそばが届いてね。引っ越しそばってことで」
「え、いいんですか? じゃあ、お相伴にあずかろうか?」
「はい、あたしもお手伝いします」
 明人のお誘いを、譲と美緒はありがたく受けることにする。
 元々夕飯は引っ越しそばの予定だった。が、まだこの周辺の土地勘がなく、そばを買えるところがわからなかったのだ。
 かくして、希望に溢れた新生活が始まった。そう思っていた。
 その時はまだ。
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