異世界帰還書紀＜１＞

空花　ハルル

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初任務

道中−２

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ーキャンプ自由地ー
「蒼！起きろ」
サンダーは、蒼の体をツンツンと軽くつついた。
「んん～。おはよう～」
蒼は体を起こすと、あくびをしながら、背伸びをした。
「ランツェが、ご飯にするから起きて、だそうだ！」
「わかった」
蒼は、あくびをして、馬車から降りるとウトウトしながら、サンダーの後ろをついて行った。その先では、火のパチパチ音と肉が焼けるようなジュージュー音が聞こえている。
「もうそろそろ完成するから、そこに座ってていいよ」
ランツェは、鍋の中のスープを何かをかき混ぜながら、そう言った。
「これは、何を作っているの？」
「仔牛肉のシチューだよ！味付けに、黒胡椒やパセリ、ローリエを使用しているよ。」
「かなりの高級食材じゃないか！」
サンダーが驚きながらも、目をか輝かせて、スープを覗き込んでいる。蒼もサンダーの後ろで覗き込んでいる。
「二人がいたところでは、そうなの？テネレでは普通に手に入るけど・・」
そんな話をしている内に、シチューがボコボコと音を立て始めた。
「あっ！私はシチューをよそうから、二人はそっちの焼き鳥をこの皿に移しといて！」
ランツェはそう言い、大きめのお皿を手渡した。
「わかった」
蒼とサンダーは、二人で作業を開始した。
とはいえ、作業といっても、蒼が焼き鳥を皿に乗せ、サンダーが火を消すだけだ。二人は簡単に作業を済ませると、ランツェが用意したであろうテーブルに置いた。
「持ってきたぞ！ちょうどいいくらいの焼き加減だったぞ。」
「そう、よかった。じゃあ、食べましょうか」
３人は、テーブルを囲むように椅子に座った。そして、全員で｛いただきます」をいうと、３人は時々会話をしながら、ゆっくり食べている。
会話の内容は、蒼とサンダーがいたところでの食事の話が主だった。
話に夢中になりながらも、ランツェの料理がとても美味しかったのか２０分もしない内に食べ終わってしまった。
「ふう、美味かった。」
「かなり美味しかったな」
二人がそう言うと、ランツェはとても笑顔になった。
「そう言ってもらえてよかった。」
「片付けは手伝うよ。俺は寝てたしね。」
蒼が率先して、動いた。
「ありがとね！」
３人は、皿などを片付けると、馬車に乗り込んだ。
「今度は、私が操縦するよ。眠たかったら、寝ててもいいからね」
「いや・・私は大丈夫だ。蒼は寝てたから大丈夫だろう。」
蒼は、頷いた。そして、ランツェが馬車を動かしだした。
馬車を動かしてから、３０分後・・
「あそこに見えている山の方を通るからね。この先の道は避けるよ。」
そう言うと、ランツェは馬車を右に方向転換させた。
「この先は行ったらだめなのか？」
「少し危険だね。ここから先は、治安面などの理由で入ることが国や冒険者協会から推奨されてない危険地帯となっている。昔、起こった小戦争の残党などが襲ってきたりもすることも十分にあり得るんだよ。」
その後、ランツェはその危険地域についての情報やテネレの歴史を引き続き話した。
蒼とサンダーは、その話を興味深そうに耳を傾けている。
「テネレは・・何年か前まで、内戦が結構起きてたんだ。そして、その内戦を仲介して、治めてくれたのが、オールという名の大国よ。それから、その国とは貿易などの交流を現在も頻繁に行っているんだ」
「そのオールという国は、どこにあるんだ？」
サンダーが質問をする。
「テネレ王都から最低約５日、馬車で移動したら着く場所にある国で、ブロー国の協力を経て、技術発展が二番目に進んでいる大国なんだよ。」
「なるほどな・・。いつかは、必ず訪れる必要がありそうだな」
サンダーは、相槌を打ちながら、そう言った。
「行ってみたいの？行ったとしても、まだ二人が帰るための手がかりは手に入りづらいと思うよ」
「なら、どうすればいいんだ？」
「そのための側近選抜試験でしょ。側近になれば、他国の王宮の出入りの手続きもほとんど無いようなものだし」
ランツェは、ワクワクしながらもそう答えた。
「そうなのか！試験は１ヶ月半後、それまでに色々と準備しとかないとな・・」
「確かにそうだね・・サンダー」
蒼は、少し不安になりながらも、ワクワクしている。
「私達の連携も磨かないとね。これからの任務で磨けると思うけどね」
「そうだな・・。」
それから、何時間か・・。
蒼は、外の景色を眺めている。サンダーはもたれかかりながら、ボーとしながら、うつらうつら、している。
「眠たい？サンダー」
「い、いや。大丈夫だ！私は眠くなんてない」
サンダーは、自分の頬を数回叩いた。
「そ、そう。無理はしないでね」
「無理なんか、していない！」
５分後・・
サンダーは、スースーと寝息をたてながら寝てしまった。
「まあ、予想通りの結果かな。だよね、ランツェ。」
「うん。私もうっすら思ってた。」
「サンダーが昼寝をするのは珍しい・・」
蒼は、サンダーのことをちらりと見て、そう言った。
「そうなの・・かな？確かにしなさそうでは、あるけど・・」
「でしょ！」
蒼とランツェが話をしている内に山道に入り始めた。辺りは木だらけだ。
「ここから先は、人による危険はないけれども、動物が襲ってくるかもしれないから。発見したら、すぐに報告して。」
ランツェは、そう言うと、蒼に双眼鏡を手渡した。

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