異世界帰還書紀<1>

空花 ハルル

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試験に向けて

身体強化

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「うーん。外そうかと思ったが、まだ早いな。」
ルイスは蒼の腕についている制御盤を外すのをやめた。まだ付けてから、6時間しか経っていないからだろう。
「あとどのくらいですか?」
「最低でも、もう6時間だが・・。少し緩めるくらいなら・・」
どんな方法か詳しくは分からないが、強くなれるなら、やるしかないと蒼は思い、その方法の実行を頼み込むことにした。
「そう言うなら、少しだけ緩めてみるか」
ルイスがそう言うと、制御盤をいじりだした。何をしているのかは分からないが・・。
「なるほど・・」
緩める度に、少しづつ力が流れ込んでくる。だが、この制御盤のおかげか、最初の時より、ほとんど力による反動が殆どない。
「無理そうなら、すぐに言え」
「まだ大丈夫そうです」
蒼がそう答えると、ルイスは少し心配そうな顔で見つめてきた。しかし、蒼の顔を見て、安心したのか、また作業に取り掛かりだした。
力が溢れてくるも、ルイスが言うような反動が来る気配すら感じられないほどだった。
「普通ならここで、反動が来るのだが・・。本当に大丈夫か」
「全然大丈夫です。何なら、最初の時より違和感もなくなってきている感じです」
蒼自身では、これが良いことなのか悪いことなのか分からない。だが、一つだけ仮説を立てるとすれば、剣に宿っていたのは、先祖だから、シンクロしたとしても問題ないのであろう。
「今50%緩めたところだ。」
この仮説が正しければ、全開放したところで、何の問題もないだろう。だが、もしものことも考えて少しづつ開放してもらうことにした。
「じゃあ、このままいくぞ」
ルイスがどんどん緩めていっているようだが、問題はない。このまま全開放されるまで待つだけだ。その間、一応念のために10%ごとに、ルイスが確認をとってきてくれている。
その確認の度にルイスの「大丈夫か」に対し、蒼は「大丈夫です!」を繰り返すだけだった。
そして、ついに100%全ての開放が何事もなく終わった。
「終わったが・・、大・丈夫か?」
「すごい力を感じますが、問題ないようです」
本当は、少しだけ右腕が動かしづらいだけが、それ以外何事もないから、そう答えた。ルイスは少し怪しんだようだが、大丈夫だと判断したようだ。
「なら、早速手に入れた力を使ってみるぞ。夜とはいえ、町中でするのも迷惑だ。前に行った山に行くぞ」
蒼は、どんな力を使えるようになったのか少し気になる反面、右手が少し麻痺してるのをどう隠すかも考えてもいた。

前と同じ山に行ったが、隠し場所の中腹とは別らしく、山頂近くまで登った。
「はぁはぁ、疲れる・・」
「ここで試すか。疲れてる場合じゃないぞ」
まだ少し息切れが残っているが、蒼にとって、そんなことはどうでも良くなってきた。新しい力を試すことができるだけで。
「とりあえず、試すには・・戦ったほうが一番分かりやすいな!」
ルイスはそう言うと、剣を構え、来い!とでも言うように手招きをしている。確かに、戦ったほうが差が漠然と現れるかもしれない。
「行きますよ。ルールはどうします?」
「ルールか・・どちらかが降参するまでにするか。もちろん、魔法もありだ。真剣でやり合うから死ぬ可能性が少なからずあるしな!」
蒼はそのルールに異論はない。実践形式のほうがやりやすいからだ。
「では、行きますよ」
「来い!」
お互いに目を合わせ、しばらく睨み合っていたが、先に動きだしたのは、蒼だ。
蒼はいつものように魔力を込め、刀を作り出そうとした。
「えっ!」
少しいつもと違うことが起きた。
同じ魔力量のはずなのに、作り出しいている刀が6本にもなっている。その刀を1本ずつ追いかけるかたちで飛ばしていった。
「なるほど・・それが蒼の。いや、剣に宿っていた固有の魔法か。なら・・」
ルイスは、手に風の魔力の塊みたいなものを作り出し始めている。そして、ルイスは、それを正面に投げだした。その風の塊は、全ての塊を吸い寄せている。
そして、集められた刀は、塊が破裂すると同時に破壊された。
「簡単にはいかない。まぁ、ルイスさんが弱いわけないしね」
「おい!剣を見た時わかったが、蒼の能力は、武器を生み出せる。剣や盾、槍など。具体的に想像できるものは全てだ。その他にも細かいことも身についていると思うが、自分で見つけろ。これ以上は、分からなかった、」
ルイスがそう教えてくれた。確かに刀だけでは、やり方が限られてくる。蒼は、そのヒントをうまく使わせてもらうことにした。
「それじゃあ、早速・・」
蒼は刀ではなく、槍を作り出してみることにした。
すると、目の前に6本の槍が現れた。
(上手くいった!)。そう心の中で蒼は喜んだ。
そして、その槍を、一点に集中させるように飛ばした。
「いいね。すぐに理解するとは・・」
今度は、その槍をルイス自身の剣で軽々と弾き返している。
まだ、刀ほどの速度と威力はなかったようだ。
「もう一回だ!」
蒼は再び槍作り出すイメージをする。今度は、消費する魔力量を多くしてみることにした。
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