異世界帰還書紀＜１＞

試験に向けて

身体強化−２

魔力消費量を多くしたことにより、槍が多く生成された。あとは威力が上がっているかどうかだ。
「やってみるしかないか」
思い切って全ての槍をまたぶつけることにした。
「今度は威力が上がってるといいな。また剣で受けてやる」
ルイスは、全てを剣で弾こうと、振るった。前と同じように全て弾かれてしまうと思ったが。
８本中最後の一本の槍が、ルイスの剣の一部を砕き、貫いた。
「痛いっ！やるな」
槍は、ルイスの腕を少し切っていたようだ。痛そうにしているが、大きな怪我ではないようで、包帯だけ巻くと、また戦闘態勢に戻った。
「次は、ルイスさんから攻撃してきてください」
蒼は、防御技の訓練もしてみることにした。盾を作り出そうと魔力を集中させる。
そして、連続でこれだけの量を作り出しても、１０%も減っていないことに驚きを隠せないでいた。
「じゃあ、いくぞ」

それから、技の練習をしてみたり、本気で何回かやりあってみたりした。そんなことをしている内に２時間が過ぎてきた。４回目の試合が終わった時には、蒼は疲れで地面にへばっていた。ルイスも地面に膝を付き、ハァハァと息切れをしている。
「このくらいやれば、力の扱いにも慣れただろ」
「はい・・」
「じゃあ、下りるぞ。」
山を下り、来た道を戻るが。その間、二人は疲れの余り会話をすることさえできなかった。
そして、二人は町の入口につくと、軽く手を振って別れる。
蒼はそのまま町長が用意した部屋に戻ると、そのままベッドに倒れ込もうとした。
「・・忘れるところだった」
蒼はバッグから、何かを取り出すと、数分ほど作業をしてから、寝ることにした。

そして、翌日・・
蒼は疲れの余りか、昼まで寝てしまっていたようだ。窓の外からは声が聞こえており、人通りがある程度多いように感じる。
「おい、起きろ！」
「んん？」
サンダーが蒼の体を揺さ振っている。どうやら、無事回復して、とっくに退院していたようだ。
「サンダーか・・、いつ帰ってきてた？」
少し眠気が残りつつも、気合でベッドから体を起こす。別に任務は終わったから寝ててもいいのだが・・。
「３０分前くらいだ。ちょうど１２時になったら、起こそうと思っていたところだ」
「そう・・」
「それで・・２日間どうするんだ」
どうするって言われても、この町ではやることがない気がする。強いて言うなら、訓練をすることくらいしか思いつかない。
「何もないんだな。じゃあ、私の訓練に付き合え！試験まであと１ヶ月半だろ」
サンダーがそう言い、蒼の手を引っ張る。
「わかったから。準備するから待てって」
大急ぎで、身支度を済ませると、サンダーと一緒に部屋を出た。向かう先は、ルイスがいたの山の麓のようだ。そして、蒼は訓練のことよりも、中腹辺りまで行かなかったことを安心していた。

この２日間は、サンダーと共に訓練をしたり、暇つぶしをしたりと何事もなく、かなり自由に過ごすことができた。

そして、そんな風に過ごしている内に、ランツェが退院する日が来た。
二人は朝８時位から、病院の中でずっと待っている。
９路を少し過ぎた時、アクセルと一緒にランツェが奥から出てきた。ランツェの体を見る限り、削られた部分も完全に治っているようで、顔色も全く悪くない。
「もう大丈夫なのか、ランツェ」
「十分に回復したよ。心配してくれて、ありがとう」
その後、３人はアクセルの見送りと共に、病院を出て、部屋に戻った。そして、王都に戻る準備を済ませる。

３０分後・・
ランツェが再び馬車を走らせ、街の門をくぐる。見送りは町長がしてくれている。３人は馬車上で一礼だけして、出発を再開した。
「また、３日ぐらいはかかるからね」
帰り道は、行きとほとんど変わったことなく、同じ場所で食事をし、睡眠を取る。唯一違う点をあげるとすれば、変異生物には、一切遭遇しなかったことぐらいだろう。
そして、４８時間が経過し、ようやくテネレ王都が見えてきた。昼は過ぎ、もうそろそろ夕方になろうとしている。時計がないから分からないが、時間は５時くらいだろう。
「ほら、蒼。サンダー。見えてきたよ」
「そうだな」
「ランツェ。着いたら、早速、チーム結成パーティーをしないか。任務が合ってできなかったからな」
「いいわね」
そのまま、馬車は門を通り、街中を進み続けると、冒険者協会が見えてきた。その裏に馬車を戻すと、そのままの足で店に向かうことにした。
歩きだして５分後・・
「この先って、もしかして。おすすめの店って、ロートンさんのバーだったりして？」
当たりを言われた蒼とサンダーは、黙り込んでしまった。
「図星？ごめん、でも私もあの店は好きだよ。月２は行ってるよ」

そして、店の前につくと、窓から見る限り、既に何組かの客は入っているようだ。だが、席にまだ空きはある。
「混む前に来れてよかった。２０分くらいしたら、満席になるからなぁ」
バイト経験のある蒼が語る。その横でサンダーは、コクコクと頷いている。
「じゃあ、入ろうか」
ランツェが先に店に入り、ベルの音が鳴らした。