不手際な愛、してる

木の実

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過ち

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  ゴオオオオオン。また窓の外で雷が落ちた。
「やだ、何これ……」
やっと声が出た。…何かなんて、分かってるくせに。認めたくないモヤモヤとした雨雲が、身体中を駆け巡っている。
 震える手で、紙切れを裏返した。純白な紙の端に、小さくで「京子」とかかれた黒文字が、ぽつんと浮き出ている。
「何してんの?」
ゴオオオオオン。背後から、数馬の声がした。バスタオルを擦る音と一緒に、どんどんこちらへ近づいてくる。やばい。早く、何とかしてこれを。これを……。
  私はとっさに紙切れををポケットにしまう。
「あ、ごめん。数馬のバック、落としちゃって。」
ひっくり返った声が出る。
「え?」
その瞬間、数馬はバスタオルをほっぽって、私さえも押し退ける勢いでバックをまさぐり始めた。
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