3 / 4
魔法のような
しおりを挟む
「あぁー、ねむ~!」
窓の外で、最後まで生き残った桜の花びらがチラホラと散っている。
「なんで春ってこんなに眠いんだろう…
ね、密香!」
「透子、昨日もそれ言ってたよ」
怒涛の四月も後半に差し掛かり、少しずつクラスでの自分が安定してきた。透子と私もお互いを呼び捨てで呼び合うほどにまで、仲が深まってきた。
「あ、密香ちゃーん、次現文だよ!」
「福田先生来るよー!」
透子と窓ぎわで談笑していると、近くにいた沢木こころと芦田麻子も入ってきた。この二人も最近一緒にいる、いわゆる「イツメン」ってやつ。
こころは入学当時からスカート丈がやたら短くてイケイケ系に見えてたから、正直仲良くなれる気はしてなかったけど、ノリが明るくて面白い。反対に麻子は真っ黒なお下げ髪に眼鏡っていう、典型的な静かな子ってイメージだった。だけどこちらも、話してみたら優しい上にノリが合う。
やっぱり先入観を持たずにまずは接してみるって、凄く大事だ。
「え、マジか!現文とか最高じゃん!」
「密香ホントに福田先生の授業好きだもんねぇ…」
透子が半ば呆れたような目で見てくる。
「だって、面白いんだもん。」
ガラッ。そう言ったタイミングで、福田先生がドアを開けて入ってきた。私達もそれに合わせて自分の席に戻ってゆく。
「それそろみんな現代文の授業にも慣れてきたと思うけど、今日から始める小説からグッと難しくなるからなー。」
福田先生はいたずらっ子のような目で笑った。
「うわー、小説とか俺めちゃくちゃ苦手だわ~」
男子達が呟いている。
私はむしろウキウキした。さっきも透子たちに言われたように、現代文の授業は大好きでたまらないのだ。
いや、言い方が違う。“福田先生の現代文の授業”が、大好きでたまらないのだ。
元から国語は得意教科だったけど、福田先生の授業は中学までとは比べものにならないくらい、面白さで溢れた授業なんだから。
「今日から始めるのは、かの有名な芥川龍之介の名作中の名作、「羅生門」でーす」
カッカッカッカッ。教室に、福田先生のチョークの音が静かに響く。
そう、まずはここが凄いところ。私達一年三組は動物園レベルでうるさいと有名なのに、福田先生の授業となると、先生は一言も注意しないうちに静かになる。それは怒られるのが怖いとか、そんな理由じゃない。ただみんな、福田先生の話は自然と聞いてしまうのだ。
「じゃあまずは俺が読んでいくから、みんなはそれを聴きながら大体の内容の理解してくれ」
ピクンと私の背筋が伸びる。
「ある日の暮れ方のことであるーー」
教室を歩きながら、先生が本文を次々と読んでゆく。
あぁ、なんて低くて落ち着いた、いい声なんだろう…。私はいつもながら、うっとりとして聴き入ってしまう。今まで聞いたことのあるCDの声よりも、断然に福田先生の声は素敵だ。
思わず教科書から目を離して、福田先生の後ろ姿を追ってしまう。
綺麗な後ろ姿だなぁ…。
「ちょっと、どこ見てんの密香」
斜め後ろから、透子が小声で読んできて私はハッとした。
「あっ、ほんとだ」
ダメじゃないか、自分!
集中集中!!
心はなんだか浮き足立っていた。
(引用 芥川龍之介 「羅生門)」
窓の外で、最後まで生き残った桜の花びらがチラホラと散っている。
「なんで春ってこんなに眠いんだろう…
ね、密香!」
「透子、昨日もそれ言ってたよ」
怒涛の四月も後半に差し掛かり、少しずつクラスでの自分が安定してきた。透子と私もお互いを呼び捨てで呼び合うほどにまで、仲が深まってきた。
「あ、密香ちゃーん、次現文だよ!」
「福田先生来るよー!」
透子と窓ぎわで談笑していると、近くにいた沢木こころと芦田麻子も入ってきた。この二人も最近一緒にいる、いわゆる「イツメン」ってやつ。
こころは入学当時からスカート丈がやたら短くてイケイケ系に見えてたから、正直仲良くなれる気はしてなかったけど、ノリが明るくて面白い。反対に麻子は真っ黒なお下げ髪に眼鏡っていう、典型的な静かな子ってイメージだった。だけどこちらも、話してみたら優しい上にノリが合う。
やっぱり先入観を持たずにまずは接してみるって、凄く大事だ。
「え、マジか!現文とか最高じゃん!」
「密香ホントに福田先生の授業好きだもんねぇ…」
透子が半ば呆れたような目で見てくる。
「だって、面白いんだもん。」
ガラッ。そう言ったタイミングで、福田先生がドアを開けて入ってきた。私達もそれに合わせて自分の席に戻ってゆく。
「それそろみんな現代文の授業にも慣れてきたと思うけど、今日から始める小説からグッと難しくなるからなー。」
福田先生はいたずらっ子のような目で笑った。
「うわー、小説とか俺めちゃくちゃ苦手だわ~」
男子達が呟いている。
私はむしろウキウキした。さっきも透子たちに言われたように、現代文の授業は大好きでたまらないのだ。
いや、言い方が違う。“福田先生の現代文の授業”が、大好きでたまらないのだ。
元から国語は得意教科だったけど、福田先生の授業は中学までとは比べものにならないくらい、面白さで溢れた授業なんだから。
「今日から始めるのは、かの有名な芥川龍之介の名作中の名作、「羅生門」でーす」
カッカッカッカッ。教室に、福田先生のチョークの音が静かに響く。
そう、まずはここが凄いところ。私達一年三組は動物園レベルでうるさいと有名なのに、福田先生の授業となると、先生は一言も注意しないうちに静かになる。それは怒られるのが怖いとか、そんな理由じゃない。ただみんな、福田先生の話は自然と聞いてしまうのだ。
「じゃあまずは俺が読んでいくから、みんなはそれを聴きながら大体の内容の理解してくれ」
ピクンと私の背筋が伸びる。
「ある日の暮れ方のことであるーー」
教室を歩きながら、先生が本文を次々と読んでゆく。
あぁ、なんて低くて落ち着いた、いい声なんだろう…。私はいつもながら、うっとりとして聴き入ってしまう。今まで聞いたことのあるCDの声よりも、断然に福田先生の声は素敵だ。
思わず教科書から目を離して、福田先生の後ろ姿を追ってしまう。
綺麗な後ろ姿だなぁ…。
「ちょっと、どこ見てんの密香」
斜め後ろから、透子が小声で読んできて私はハッとした。
「あっ、ほんとだ」
ダメじゃないか、自分!
集中集中!!
心はなんだか浮き足立っていた。
(引用 芥川龍之介 「羅生門)」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
会社員の青年と清掃員の老婆の超越した愛
MisakiNonagase
恋愛
二十六歳のレンが働くオフィスビルには、清掃員として七十歳のカズコも従事している。カズコは愛嬌のある笑顔と真面目な仕事ぶりで誰からも好かれていた。ある日の仕事帰りにレンがよく行く立ち飲み屋に入ると、カズコもいた。清掃員の青い作業服姿しか見たことのなかったレンは、ごく普通の装いだったがカズコの姿が輝いて見えた。それから少しづつ話すようになり、二人は年の差を越えて恋を育んでいくストーリーです。不倫は情事かもしれないが、この二人には情状という言葉がふさわしい。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。
その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。
全15話を予定
還暦女性と青年の恋愛
MisakiNonagase
恋愛
ますみは61歳。子育てもとうに終わり、孫もいて、ここ数年ロックバンドの推し活に生きがい感じている。ますみは推し活のオフ会やライブ会場で知り合った世代を超えた「推し活仲間」も多く、その中で二十歳の大学生の悠人とは特に気が合い、二人でライブに行くことが増えていった。
ますみと悠人に対して立場も年齢も大きく違うのだから、男女としての意識など微塵もなかったが、彼のほうは違った。
そんな世代を超えた2人の恋愛模様を書いたストーリーです。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる