2 / 4
先生
しおりを挟む
2
「密香ちゃーん、さっきの数学のノートちょっと見せてくれない?」
休み時間のチャイムが鳴り、騒がしい教室になると、私の後ろから声がする。
「眠過ぎて、寝ちゃった」
申し訳なさそうに笑いながら、この春友達になったばかりの鈴木透子が手を合わせてきた。
「いいよー!あの先生眠くなるよね」
私はノートを取り出して透子ちゃんに渡す。
「ありがと、密香ちゃん!」
そそくさと自分の座席へ戻っていく彼女を見届けると、私は1つため息をついた。
ああ。毎年のように味わう、この新しい環境での圧迫感。特に今年はクラス替えどころではなく、高校入学ということもあって、私は毎日を酷い緊張感の中で過ごしていた。
疲れることは覚悟していたけれど、入学して1週間じゃあまだまだ気を使うものだ。中学が懐かしい。心細い。
所属している1年3組は、他のクラスに比べれば打ち解けが早いようだった。
現に私も透子ちゃんとたまたま地元が近い話題で盛り上がって仲良くなれたし、周りも少しずつ一緒にいる人となりは固定されてきている。
だけど、疲れることは疲れるのだ。最初のうちはそりゃあみんな、気を使うものだ。
それにしても、人の顔と名前を覚えるのが苦手な私にとって、透子ちゃんはありがたい存在だった。黒髪に高い高いポニーテール。女子高生にしては低い声。そして地元の近さ。
私は人見知りだから、向こうから話しかけてくれたことには本当に感謝している。
「なあなあ次の授業なにー?」
「次は現文だよ」
教室の後ろから、じゃれ合う男子達の声が聞こえてきた。こういう時、特に私は男子が羨ましく感じる。無駄に打ち解けるのが早いんだよなぁ。私はまだ透子ちゃん以外の女の子とさえあんまり話せていないってのに…。
ガラッ。その時急に、勢い良く前のドアが開いて、1人のおじさんが入ってきた。そして教卓の上に教科書が山ほど入ったバッグを置き、私たちに向き直る。
「みなさんこんにちはー、現文の担当の福田です、よろしくな」
あっ。
私はその人を見て、勝手に口が開いていた。
あの人だ。一昨日、重たい教科書を持って登校していた私に、手を差し伸べてくれた人。そして、教室まで一緒に運んでくれた人。
おじさんにしては、やけに小綺麗でいい声の人…。
「あれ、君ここのクラスだったのか」
私がずっと見つめていたのに気付いたのか、おじさんが私に話しかけてきた。
「あっ、はい。」
何のことかと、休み時間中にも関わらず教室の人の注目が私に刺さる。
「いや実はね、彼女が一昨日荷物を右往左往しながら運んでたのをみかねて、手伝ってあげたんだよ。」
クラスの人に説明するそのおじさん先生に、私は驚いた。やだ、恥ずかしい…
「そしたら彼女、お礼にってわざわざポケットから飴を出してプレゼントしてくれたからさ、君たちも彼女に何かしたら飴貰えるかもしれないぞ!今のうちにいい事しときなさい!」
「ええっ!?」
私は思わず声を出して驚いた。
クスッ。クラスの人の生ぬるい笑い声が教室に響いく。私は途端に恥ずかしくなった。
「芥川さーん、こいつのど飴ほしいってさっき言ってたー!」
「ばかおまえっ、何勝手に言ってんだよ!」
教室の後ろから、早速クラスのムードメーカー的な存在になっている男子の森田くんと小沢くんがからかってきて、クラスが笑いに包まれた。
ホッ。私も思わず緊張がほどけて笑みが零れる。それと同時に授業開始のチャイムが鳴った。
「じゃあそんなわけで、現文の授業を始めるわけなんだが…その前に」
おじさん先生が、黒板に「福田誠」と大きく書く。
「もう一度軽く自己紹介すると、みんなの現代文を受け持つことになった、国語科の福田誠です。よろしくな。」
福田先生は、ニコッと笑った。
「ちなみに歳は今年で45だけど、まだまだ元気にやっていきまーす」
「えっ、45歳なのにカッコイイっすね」
さっきのノリがウケてノッてきたのか、森田くんが早速福田先生をからかう。
でも私もそれは思った。
とてもその年齢には見えないほど、若々しくて綺麗な顔立ちの先生だから。きっと若い時はすごくモテたんだろうなって思っちゃう雰囲気も持ち合わせている。
「それは日頃から健康な生活を送ってるからだよ~君。君も俺みたいになりたかったら、とにかくレディーに優しくするんだぞ!」
ドッ。福田先生のジョークに教室が温まる。
すごいなこの先生、初回の授業から教室の空気を完全に我がものにしてる。
「じゃあ現代文についての説明をしていきまーす」
私は先生の声に合わせて、真新しいノートを開いた。
「密香ちゃーん、さっきの数学のノートちょっと見せてくれない?」
休み時間のチャイムが鳴り、騒がしい教室になると、私の後ろから声がする。
「眠過ぎて、寝ちゃった」
申し訳なさそうに笑いながら、この春友達になったばかりの鈴木透子が手を合わせてきた。
「いいよー!あの先生眠くなるよね」
私はノートを取り出して透子ちゃんに渡す。
「ありがと、密香ちゃん!」
そそくさと自分の座席へ戻っていく彼女を見届けると、私は1つため息をついた。
ああ。毎年のように味わう、この新しい環境での圧迫感。特に今年はクラス替えどころではなく、高校入学ということもあって、私は毎日を酷い緊張感の中で過ごしていた。
疲れることは覚悟していたけれど、入学して1週間じゃあまだまだ気を使うものだ。中学が懐かしい。心細い。
所属している1年3組は、他のクラスに比べれば打ち解けが早いようだった。
現に私も透子ちゃんとたまたま地元が近い話題で盛り上がって仲良くなれたし、周りも少しずつ一緒にいる人となりは固定されてきている。
だけど、疲れることは疲れるのだ。最初のうちはそりゃあみんな、気を使うものだ。
それにしても、人の顔と名前を覚えるのが苦手な私にとって、透子ちゃんはありがたい存在だった。黒髪に高い高いポニーテール。女子高生にしては低い声。そして地元の近さ。
私は人見知りだから、向こうから話しかけてくれたことには本当に感謝している。
「なあなあ次の授業なにー?」
「次は現文だよ」
教室の後ろから、じゃれ合う男子達の声が聞こえてきた。こういう時、特に私は男子が羨ましく感じる。無駄に打ち解けるのが早いんだよなぁ。私はまだ透子ちゃん以外の女の子とさえあんまり話せていないってのに…。
ガラッ。その時急に、勢い良く前のドアが開いて、1人のおじさんが入ってきた。そして教卓の上に教科書が山ほど入ったバッグを置き、私たちに向き直る。
「みなさんこんにちはー、現文の担当の福田です、よろしくな」
あっ。
私はその人を見て、勝手に口が開いていた。
あの人だ。一昨日、重たい教科書を持って登校していた私に、手を差し伸べてくれた人。そして、教室まで一緒に運んでくれた人。
おじさんにしては、やけに小綺麗でいい声の人…。
「あれ、君ここのクラスだったのか」
私がずっと見つめていたのに気付いたのか、おじさんが私に話しかけてきた。
「あっ、はい。」
何のことかと、休み時間中にも関わらず教室の人の注目が私に刺さる。
「いや実はね、彼女が一昨日荷物を右往左往しながら運んでたのをみかねて、手伝ってあげたんだよ。」
クラスの人に説明するそのおじさん先生に、私は驚いた。やだ、恥ずかしい…
「そしたら彼女、お礼にってわざわざポケットから飴を出してプレゼントしてくれたからさ、君たちも彼女に何かしたら飴貰えるかもしれないぞ!今のうちにいい事しときなさい!」
「ええっ!?」
私は思わず声を出して驚いた。
クスッ。クラスの人の生ぬるい笑い声が教室に響いく。私は途端に恥ずかしくなった。
「芥川さーん、こいつのど飴ほしいってさっき言ってたー!」
「ばかおまえっ、何勝手に言ってんだよ!」
教室の後ろから、早速クラスのムードメーカー的な存在になっている男子の森田くんと小沢くんがからかってきて、クラスが笑いに包まれた。
ホッ。私も思わず緊張がほどけて笑みが零れる。それと同時に授業開始のチャイムが鳴った。
「じゃあそんなわけで、現文の授業を始めるわけなんだが…その前に」
おじさん先生が、黒板に「福田誠」と大きく書く。
「もう一度軽く自己紹介すると、みんなの現代文を受け持つことになった、国語科の福田誠です。よろしくな。」
福田先生は、ニコッと笑った。
「ちなみに歳は今年で45だけど、まだまだ元気にやっていきまーす」
「えっ、45歳なのにカッコイイっすね」
さっきのノリがウケてノッてきたのか、森田くんが早速福田先生をからかう。
でも私もそれは思った。
とてもその年齢には見えないほど、若々しくて綺麗な顔立ちの先生だから。きっと若い時はすごくモテたんだろうなって思っちゃう雰囲気も持ち合わせている。
「それは日頃から健康な生活を送ってるからだよ~君。君も俺みたいになりたかったら、とにかくレディーに優しくするんだぞ!」
ドッ。福田先生のジョークに教室が温まる。
すごいなこの先生、初回の授業から教室の空気を完全に我がものにしてる。
「じゃあ現代文についての説明をしていきまーす」
私は先生の声に合わせて、真新しいノートを開いた。
10
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
会社員の青年と清掃員の老婆の超越した愛
MisakiNonagase
恋愛
二十六歳のレンが働くオフィスビルには、清掃員として七十歳のカズコも従事している。カズコは愛嬌のある笑顔と真面目な仕事ぶりで誰からも好かれていた。ある日の仕事帰りにレンがよく行く立ち飲み屋に入ると、カズコもいた。清掃員の青い作業服姿しか見たことのなかったレンは、ごく普通の装いだったがカズコの姿が輝いて見えた。それから少しづつ話すようになり、二人は年の差を越えて恋を育んでいくストーリーです。不倫は情事かもしれないが、この二人には情状という言葉がふさわしい。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。
その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。
全15話を予定
還暦女性と青年の恋愛
MisakiNonagase
恋愛
ますみは61歳。子育てもとうに終わり、孫もいて、ここ数年ロックバンドの推し活に生きがい感じている。ますみは推し活のオフ会やライブ会場で知り合った世代を超えた「推し活仲間」も多く、その中で二十歳の大学生の悠人とは特に気が合い、二人でライブに行くことが増えていった。
ますみと悠人に対して立場も年齢も大きく違うのだから、男女としての意識など微塵もなかったが、彼のほうは違った。
そんな世代を超えた2人の恋愛模様を書いたストーリーです。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる