がらくとぽんこ 〜あるいは、未知のエネルギーを独占した大英雄もしくは大悪党の物語〜

ブルー・タン

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第二章 魔法陣(試行錯誤)編

011_ガラクと魔法陣作成(その1)

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 当面、ガラクが作成する必要な魔法陣は二面ある。
 一面はスクラに説明したようにガラクが【魔力操作】を自分以外の人に教える場合にその導入として必ず必要なもので、休眠状態の魔力をアクティブな状態にし、それを本人に感知させるための魔法陣。
 使用頻度はそれほど高くはないと思われるが、魔法を教えてもよいと判断できる人物が現れるたびに作成していては手間なので、今回の作成においてできるだけ劣化の少ない材料で作成しておきたい。
 二面の魔法陣は、空間中に存在している魔力を集積して結晶化するための魔法陣だ。
 箱に格納してあったスチール製ケースの内の一つに魔力結晶が格納されており、作成予定の2つの魔法陣に使用しても十分在庫が手元に残る計算だが、魔力結晶とは読んで字の如く魔力を人為的に結晶化させた物であり、自然環境化で勝手に結晶化したり鉱山を採掘して出てくるものではない。
 魔法陣や魔導具の作成には必須の資材である上に、魔力を結晶化させるための魔法陣自体にも魔力結晶が必要になるため、現在保有している魔力結晶を使い切る前に独自に魔力結晶を調達できる状況にしておく必要がある。
 魔力の結晶化にどの程度の時間がかかるかわからないが、魔力結晶の在庫ができても収納魔法に格納しておけば良いため、こちらの魔法陣は作成したら基本的には常時発動しておいく予定のため、【魔力操作】教育用の魔法陣と同様に劣化の少ない材料で作成する必要がある。
 どちらもタブレットの検索で魔法陣の画像データや魔法陣の作成方法は確認済みであり、魔法陣について一からの構築や魔法効果の研究をする必要がないため、作成開始から完成までにはそれほど時間は要さない予定だ。
 しかも作成にあたり箱を収納から出して、発動されている魔法の範囲内で作業すれば丸一日で百日分の作業を進めることができることを考慮に入れれば、明日・明後日には二面とも完成している可能性が高い。
 色々と今後の予定を考えながらスクラと晩御飯を食べた後、今日のところは魔法陣の作成に必要な資材を箱に格納してあったスチール製ケースや収納魔法に格納してある大量の廃棄物の中から選定して収納魔法内でカテゴリー分けをしておき、実際の作業開始は明日の業務終了後、帰宅してからと決めて眠りについた。
 
 翌日、いつもどおりスクラを学校に送り出した後、R/R社に出勤してから今日のシーカーポイントに向かって仕事をしたふりをしながら普段の収穫にちょっと色がつく程度の資源を収納魔法から選出して業務をしたふりをし、その後に帰宅後の作業行程のチェックなどをしてからR/R社に戻って終業、帰宅してからスクラに晩御飯を食べさせていつもの就寝時間に眠るように促して、ようやく自室に戻って箱を取り出して魔法陣の作成作業を開始した。
 が、箱の発動する魔法の範囲外で5分もすると最初の問題が発覚した。
 なんとスクラの部屋とガラクの部屋が隣だったため、スクラのベッドあたりは魔法の効果範囲内に入っており、時間に差異がでる効果範囲内で8時間以上が経過したことによりスクラが目を覚ましてしまったのだ。
 実時間としてはまだ深夜にすらなっていない時間帯だったが、スクラが目を覚ましたことによって別の問題もあることに気がついた。
 ガラクもスクラも一晩眠ったのと同じだけの時間が経過したことにより、腹時計で朝食の時間になっていた。
 これは単純に計算しても効果範囲外の時間で1時間も作業すれば、食料だけでも4日分以上必要になる。
 食費の出費だけを考えても金額が4倍以上となり、それ以外に今想定できていない別の出費もあると想定すれば、今までのガラクの収入ではとても賄いきれない金額になってしまう。
 かと言って、周りに怪しまれないように行動すれば一日の終業時における収入を廃棄物で賄おうとしたら、通常ではあり得ない物量になってしまい本末転倒だ。
 方法としては収納魔法に格納してある高額換金が可能な品を売却すれば当座の活動資金とすることができるが、少なくとも明日の仕事が終わるまでは換金できないので、取り急ぎ今すぐというわけにはいかない。
 致し方ないため、ひとまずは直近の問題である完全に目を覚ましてしまったスクラと朝食(?)を食べ、箱を発動した状態で実時間で10分ほど過ごしてから、再度就寝するしかない。
 魔法発動の範囲内の時間で16時間ほどをどう過ごすか迷ったが、魔法の発動方法の座学の最初の部分を教えて時間を潰すことにした。
 魔法発動についてはこれから準備するつもりだったため、手元にタブレット以外に何もない状態でスクラにもわかる言葉を選びながら噛み砕いて説明、というのはなかなかに大変な作業だったが、途中に何度も休憩を挟みつつも本人のやる気と相まって思ったより進み、その間に昼食(?)と夕食(?)の2度の食事を済ませ、初めての状況にやはり疲れを覚えたのか少し眠たげなスクラを自室に促し、今回は作業は諦めて自分も就寝した。
 
 翌朝、昨日と同じようにスクラを送り出した後に出社し仕事につくが、箱を使用した作業をするためにも纏まった金が必要だ。
 しかし、レッドチップを購入してくれるような富裕層に伝手ができるほどシーカーの仕事を長くしているわけでもなく、高額換金の品を会社に納品すればかなりの金額が歩合給として支給されるものの、歩合は月給と合算して次の給料日に纏めて支給されるので、今すぐ現金が必要な現状にはそぐわない。
 今までの生活で伯母スクルの遺産を多少食い潰しつつとはいえ、せっかく無借金でここまで生活ができているのに金貸しに借りることには二の足を踏んでしまう。
 最終的に、高額換金が可能な品の中から宝石や工芸品のついた装飾品の類が入った小箱を発見したしたことにして、副社長に直接買い取ってもらえないか相談することにした。
 副社長は社長がベタ惚れするだけのことはあり、クロスタやその弟妹など何人も子供を産んでいる女性とは思えないほどスタイルが良く、側から見ても若々しく目を見張る美貌をした虎の獣相の女性だ。
 普段、会社で仕事をしている時はビシッとしたパンツスーツ姿で廃棄物回収場の上役や同業他社の経営者と話している姿を目にするが、休日に家族で出かけるときはちょっと派手目に着飾っている副社長をひたすら褒めまくる社長とそれを若干呆れながらも微笑ましく見ながら付いていくクロスタを含めた子供達、という現場をガラクも何度か目撃しているし、学校に通っていた時の保護者参加の行事でも社長と副社長の関係は似たようなものだ。
 社長の服装も仕訳場や倉庫で作業をしているときは頑丈な作業着だが、会社の代表として人に会う時やプライベートでは経営者として恥ずかしくない装いをしているが、それらが副社長のコーディネートであることは社員も含めて皆知っているし、学校に通っていた時のクロスタもかなり綺麗な服装だが成金の子供という感じではなかった。
 ガラク本人はそういった装飾品の目利きなどできないが、少なくとも副社長はそう言った部分でのセンスがあると思われるので、買う買わないの判断は副社長に任せてどうにか現金化する相談に持ちかけるため、収納魔法に格納してある中からちょうど良さげな綺麗な宝石箱を取り出すと、それに入ってたことにするための宝飾品を5点ほどピックアップして宝石箱に詰めて回収物を入れる袋にそっとしまい込んだ。
 ガラクが事務員の手伝いをしているときに見ていた副社長の普段の行動は、午前中に事務的な処理を終わらせた後に秘書とヴィークルの運転手を帯同して外出、午後のそれほど遅くない時間帯に帰社すると事務員にいくつか指示をすると副社長に戻る、というパターンが多く、どんなに戻りが遅くともシーカーや廃棄物回収グループが帰社する前には会社にいると認識していた。
 高額換金するための品を他のシーカーに見咎められ、他の職員に還元という名目のもと次の給料日に酒場に連行されて飲み代を集られる、という話も良く聞く。
 そういった、若干粗暴な作業員が現場から戻ってくる前に副社長との話を終わらせておきたいので、準備が完了すると普段より早めに帰社した。
 事務室には幸い仲良くしてもらっているモーラさんがいたので、副社長が在席しているか確認すると、今日は早めに帰社しているとのこと。
 一度、3階のロッカールームに上がって周りの職員に見られないようにタオルで宝石箱を包んでから一度ロッカーに隠すと、本日のシーカーとしての収穫を仕訳場の担当に引き渡し、3階に戻って宝石箱を取り出すと副社長室に向かった。
 入り口の外に待機しているウサギの獣相の女性秘書に副社長に相談があるので取次をお願いすると、スケジュールを確認した上で副社長室の入口から中の様子を見た後に秘書が副社長に声をかけると、室内から声がかかった。
「30分よ。さっさと入りなさい」
 扉から入ると、副社長は応接用のかなり高級そうな革張りの長椅子に座っており、 今時珍しい書類のハードコピーに目を向けながら、こちらも珍しい手に持っていたペンで正面の安楽椅子を指して座るように促していた。
 指示に従い副社長の正面に座ってから数分、書類の確認が終わったのかこちらに視線を移した。
「あぁ、貴方クロスタの元同級生ね。で?」
 副社長がこちらを認識しているとは思わなかったのでちょっとビックリしたが、要件を促されたことはわかった。
 なので、事前に考えておいた宝石箱を見つけたが急ぎで纏まった現金が必要なので会社の担当者に提出せずに直接持ってきたので、買い取ってもらえないかと相談を持ちかけた。
「事情はわかったわ。出しなさい」
 本来、廃棄物回収業者の収入源は有機物・無機物に関わらず回収窓口で買い取ってもらうためのそのままでは使用できないが、分子分解機械や加工機械による加工を経ることにより住民の生活に資する資源にすることができるものがメインだ。
 だが、廃棄物の回収過程において発見された各種チップやそのままでも使用可能な品をわざわざ分子分解にかける必要もなく、そのままそういった物品の取り扱いをしている業者にまとめて売り捌くことになる。
 シーカーが発見した物品は基本的には会社に帰属するが、高額換金可能な品等については個人で取り合っても問題ないというのが暗黙の了解となっている。
 とは言え、それらを現金化するための伝手も必要になるなど、シーカーを生業にしている個人ではどうにもならないことも多いため、廃棄物回収業者はそういった品を売り払う際に仲介して手数料を取って請け負ううことも業務内容に含まれることが多く、売り払った利益は歩合として給料と共に支給されることになる場合が多く、R/R社もそういった業態をしていた。
 今回は本来であれば会社の担当者に提出さえすれば、会社に仲介手数料を取られるものの、次の給料日まで待てば歩合給として支給されるのを待つのが本来のあり方であり、たとえば発見したものがレッドチップの収入を持って退職するにしても歩合級が支給されるまで待てばいいのだが、それを逸脱してでも副社長に直接話を持ってきたことで理由はどうあれ急ぎで現金が必要な状態であることを副社長は理解していた。
 ガラクは無言で頷くと、胸元に抱えていたタオルに包んだ宝石箱をテーブルの上に置き、蓋を開いて副社長の方を向けてから見やすい位置まで押し出した。
 副社長は右の眉を少し上げ宝石箱には手を触れずにしばらく眺めた後、徐にスーツから綺麗な柄のスカーフを取り出すと宝石箱に敷き、その上に中身を丁寧に並べ始めた。
 全ての中身を出した終わるとツカツカと執務机の横に設えてある棚に向かい、レンズがいくつも付いたかなり大型の機械と白い手袋を取り出してテーブルに戻理、空いたスペースに慎重に機械を設置すると、白い手袋を手に嵌めてから宝石箱をを手に取り、かなり丁寧な手つきで機械の下部の空きスペースに置いた。
 すると、機械の上にデジタル処理された宝石箱の精密なホログラふが浮かび出たかと思うと、副社長はその画像のいろんな部分を拡大・縮小を繰り返しながらじっくりと観察し始めた。
 そして、作業の途中で副社長室の外に向かって大声で秘書の名前を呼び、扉が開くなり
「私が良いと言うまで社長も通さないで」
 と言い、また作業に戻った。
 この反応を見たガラクは、思ったより高額で買い取ってもらえるんじゃないかと期待の眼差しで副社長の回答を静かに待っていた。
 宝石箱を裏返したり立てたりしながら確認し、宝石箱が終わるとその横に並べたそ宝飾品を一つづつ手に取り同様の作業を繰り返して確認をしていった。
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