がらくとぽんこ 〜あるいは、未知のエネルギーを独占した大英雄もしくは大悪党の物語〜

ブルー・タン

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第二章 魔法陣(試行錯誤)編

013_ガラクと魔法陣作成(その3)

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 帰宅後、スクラには魔法を教えるために必ず必要な魔法陣を作る必要があることと、家の中で作業をしようとすると昨日の夜みたいなことになるから、夜中に作業しても問題ない場所に作業場を移すために外出すること、朝には戻るので安心するようにと良い含めてからスクラを寝つかせ、作業をする場所について考えた。
 が、他者への影響を最小限で済ませようと思うと、結局は夜間は誰もいないことになっている廃棄物が堆積している地域であれば何も考えずに作業ができるし、夜間は閉じているゲートもヴィークルモドキで隔壁の上を通り越えていけば問題ないと結論づけ、家を出て施錠するとヴィークルを収納魔法から取り出して乗り込み移動を開始した。
 居住区から隔壁の外に出るだけならば、大通りの上をまっすぐ隔壁方向に移動すれば良いし、この時間帯であればヴィークルのライトや街灯で大通りは他の地域より明るくなっているからそれほど難しいことではない。
 自宅の前からある程度の高さまで上昇すると、大通りの明かりが確認できたので、それに沿って隔壁方向に向けて移動を開始、ほんの10分も経たずに隔壁の上を通過する事ができた。
 そのまま居住区を背に10分ほど移動したあたりでヴィークルを下ろして収納魔法に格納した。
 光魔法で光源を確保して周りを見渡してある程度平らになっているところを見繕い、収納魔法からカプセル型の大型コンテナを一つ取り出した。
 そのコンテナは崩落事故の際にガラクが逃げ込み、そこから脱出してゲートの前に帰還するまでの間、ガラクが暮らしたコンテナでサイズ的にも中で何かの作業に使うのに丁度よく、何より思い入れがある。
 周囲の廃棄物を積んだりどけたりしてコンテナを平らに置けるように調節して移動魔法でこれから作業場にするコンテナをそっと設置し、光源を伴って中に入った。
 コンテナ内に入っても中にはあの頃寝床にしていたボロ布が隅に塊になって寄せてあるだけで他には何もない。
 ただ、あの頃は色々と切羽詰まっていたせいか特に気にしていなかったものの、コンテナ内が若干臭う。
 どうやら匂いの原因はボロ布にあるようなのでさっさと収納魔法に格納し、しばらく入口を開けっぱなしにして空気の入れ替えをすることにした。
 その間に箱を取り出して壁際の真ん中あたりに設置、光魔法の光源をもう2つほど発動して最初の一つと合わせてコンテナ内全体を照らすように天井付近に位置を指定して固定、後は作業台になりそうな強化樹脂製の箱や修繕の必要なさそうな古びた椅子や細工ようの工具など、実際に魔法陣を作成するのに必要な道具を並べていく。
 それから、箱を設置した反対側の壁にスチール製の棚をいくつか設置して、いちいち収納魔法を発動しなくても良いように魔法陣に必要な材料を収納していく。
 次回からはこのコンテナを収納魔法から取り出せばそのまま作業できるように、効果範囲の内側の体感時間で2日ほどかけて丁寧に準備をしてから魔法陣作成作業に着手した。
 だが、いきなり一発本番とはいかないため、まずは市販の塗料に魔力結晶から魔力を液体の形状で抽出したものを混ぜ、箱の中に格納してあったスチール製ケースに保管してあった資材の中からいくつかの鉱物をサラサラの粉になるまで破砕して混ぜ込んだ簡易魔法陣用のインクを作成した。
 このインクで書いた魔法陣は魔法発動が可能だが、使用するたびに魔力の流れによってインクが劣化してしまうため、それほど長くは使用できないものの、魔法の効果が発動するように記載すれば問題なく魔法が発動するため、練習用としては十分な性能を有している。
 脱出中はこういった実技の研究や練習などを行う余裕もなかったため、ようやくここからと思うと嬉しさが込み上げてきた。

 比較的簡単な今使用している光源の魔法陣で練習を開始したものの、それでも1枚完成させるのに2~3日はかかるほど複雑であり、作成している間、寝食を忘れて作業に徹するというわけにもいかない。
 最初の2枚は初めての作業ということもあり、タブレットを参考にしながら丁寧に描いたものの魔法の発動には至らなかった。
 3枚目にしてようやく発動したものの、描いた線の太さが足りなかったのか、魔法陣の一部から湯気が出たかと思うと魔法が終了してしまった。
 失敗を重ねながら魔法陣を作成する際の注意点を洗い出しながら作業を進め、8枚目でようやくなんの問題もなく光源の魔法が発動した頃には内部時間で20日が経過していた。
 その次は一気に複雑になるものの魔力結晶作成の魔法陣に着手。
 開始から7日で1枚目が完成し、魔法陣を発動するも一部で流れが良くないのか上手く発動せず、このまま2枚目に突入するとすくらの起床時間になってしまうため今回の作業はこれで終了とすることとし、食事をとってから睡眠をとって生活リズムの調整してから帰宅することとした。
 起床して作業用コンテナから出て作業用コンテナごと収納魔法に格納すると、朝焼けの時間はすでに過ぎて陽の光はそこそこ高くなっていたため、昨夜の逆の行程で帰路につき、前回と同じ路地でヴィークルモドキをおろして帰宅した。
 自宅に入ってスクラに声をかけながらニュースを見ていると、
「昨夜、隔壁上空に正体不明の光球が突如として現れ、居住区とは反対方向に飛び去ったて地面付近に落下し、そのまま消えたのを隔壁上にいた多数の住民が目撃しました。高度が高く移動速度も早かったために現在のところ鮮明な画像は撮影されていませんが、民間人によって撮影された画像を見ると・・・」
 等と離しており、ガラクは思わず体を震わせた後、ニュースの画面を二度見してしまった。
 ニュースの続きによると、光球が消えた後、謎の光球が再出現することに期待して隔壁上で夜を明かした人たちが多数いたようだ。
 幸い、朝日が上り切った頃に隔壁の管理を委託されている会社の清掃の開始により隔壁上にいた人たちは全て一時的に退去させられたため帰路を目撃されることはなかったようだが、帰路に着く時間がもう少し前後指定れば、ヴィークルによる飛行を目撃されていたかもしれないと思い至り、次回からの移動方法について検討の必要があると判断した。
 ひとまず今夜ののために廃棄物が堆積している場所に行くときは、一旦できるだけ上空に上がって隔壁外に出てから降下を開始することで対処することにした。
 ニュースは別の話題に移っており、その後は普段どおりの朝を過ごしてから出勤、シーカーポイントに向かいながら隔壁との間にある程度の高さまで廃棄物が堆積して視界を遮るような場所を見繕いながら移動し、ここ最近やっているとおり仕事をしているふりをしつつ収納魔法からある程度の資材を袋に詰めた。
 その後、空いた時間は廃棄物の高さが比較的高く安定してそうな小山に登って辺りを眺めるなどして適当な時間まで過ごしてから帰社した。
 受け取り担当の職員に今日の成果を渡すと、最近調子がいいがコツでも掴んだか?と笑いながら言われ、シーカーの仕事をしていて完全な収穫ゼロはほとんどないが、一定量をスタンダードに持ち帰ることはかなり困難だと気がついた。
 オドオドとしながらたまたまだよと答えたものの、内心ではビクビクしながら受け取り担当のカウンターを後にし、ロッカーでいつも通り着替えてから家路についた。
 最寄りの駅に着いた頃、昨日の粗暴な輩はおそらくこの辺りを活動の拠点にしていることに思い至り、駅前で客待ちをしていた接客許可有りのヴィークルに迷わず乗り込んで行き先を告げ、自宅に戻った。
 スクラにうまくいけば今度の休みの日に練習を開始できるかもしれないから楽しみにしておくように言含めてから自室に促し、自宅を出るとヴィークルモドキで一気に上空に上がってかなり居住区が小さくなった頃、そのまま隔壁外へ向かって移動して目星をつけていた方向に辺りをつけて移動を開始した。
 ある程度距離が進んだあたりで下降したものの、目星をつけていた付近とは大分離れてしまっていたが、居住区側からの視線が切れているという条件は満たしていたのでそのまま降下しながら光源の魔法を出して着陸、周りの廃棄物を整えて平坦にすると作業用コンテナを取り出して設置し、中に入って作業を開始した。

 昨日の作業で失敗した魔力結晶を作成する魔法陣の失敗箇所を洗い出してから、魔法陣用のインクで紙に魔法陣を記載していく作業を開始、何日かかけて出来たものを発動、失敗があれば再度精査を繰り返した。
 今夜の作業として作成できる最後の魔法陣も発動はしたものの、うまく魔力を結晶化するに至らず、そのまま生活リズム調整のための食事と睡眠をとってから帰宅。
 そういった生活を実時間で3日ほど費やしてようやく魔力を結晶化させる魔法陣を紙上で完成させることが出来た。
 紙に作成している魔法陣は実際に作成する予定のサイズで記載しているので、完成品の魔法陣をうまくトレスして魔法陣を構成している線を魔力結晶を含んだ金属で刻印することができれば、ようやく本当の意味で完成ということになる。

 だが、困ったことも発生していた。
 毎日、作業場所としての廃棄物が堆積している地域に移動していたが、光球騒ぎの後、最近では本職の映像撮影者が隔壁上から上空を撮影しており、今朝の帰路で上空を移動していたところ映像内を掠めてしまったらしく、黒い点が画面内を居住区方向に横切る映像が今朝のニュースになってしまったのだ。
 ようやく完成の目処がたった現状で作業を中断するわけにも行かないものの、今日のニュースで映像撮影者が増加するのは確実な中、今後の作業のためにリスクを犯し続けるのも躊躇われた。
 かといって、対外的に就労していないという状況もあまり良いものと思えないし、困っているときにクロスタに紹介してもらった仕事だという経緯もあり、当面はR/R社への所属を継続する必要があるので、箱の魔法無しで夜間のみの作業では魔法陣の完成がいつになるか見当もつかない。
 思い悩みながらスクラを学校に送り出し、いつも通り出勤して今日のシーカーポイントへ向かう社用ヴィークルに乗り込む。
 廃棄物の中にもぐ入り込んでいくための降下ポイントを探しているふりをしつつ、他のシーカーから少し距離を置くために周りの様子を気にしながら移動していいると、他のシーカーが後を付けるように少し離れて同じ方向に移動しているのに気がついた。
 シーカーは廃棄物が堆積した隙間を降下していくという役割柄、基本的には小柄な者ばかりで獣相の影響でガラクより小柄な者も少なくない。
 チラッと見えたのは、おなじヴィークルに同乗していたネズミの獣相の男のようで、物陰に隠れているのだがこういった行動に慣れていないのか、ガラクが振り返るたびに慌てて物陰に隠れるのでバレバレだ。
 実際にはちょっと降下した後に適当なコンテナの中に入って時間をやり過ごしているだけなので、このまま着いてこられるのも都合が悪い。
「何か用?」
 やむを得ず声をかけると、10秒してから諦めたのか物陰から出てきた。
 そこにいたのは思っていたよりかなり小柄で年齢もガラクと同年代と思われる若いネズミと思われる獣相の少年だった。
「すいやせん、兄貴。後ろを着いて歩けばシーカーのコツとかわかるかと思いやして」
「あ、兄貴!?」
 これが、お互いに絶対に裏切らない無二の存在として終生共に行動することになる男、エッペンパリスハルトマンとの最初の出会いだった。
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