19 / 41
♡♀ 第九章 悶々彼女と芽生える彼女 ♀Zzz
18話
しおりを挟む
◆私達はリズさんと共に穢れの澱みを抜けたその先の41層目、“呪詛の宴”と呼ばれる区域に足を踏み入れた。そこは霊体系の魔物、様々な死霊達が飛び回る場所だった。
アンデッドである私とエルテはまだ狙われる様子はなかったけど、メリランダとリズさんは常に死霊の唱える闇魔法から身を守りつつ戦う必要がある。でも恐らく、それがリズさんの狙いなんだと思う。
リズは三人に向かって話し始める。
「見ての通り、ここではほぼ物理攻撃が通らない霊体系と戦う事になるわ。闇魔法への対処はもちろん、精気を奪う近接攻撃にも注意が必要よ。適切な魔法の選択や仲間と敵、周囲の状況にも常に気を配る事。特にメリランダは魔力の消耗を抑えつつ、同時に迅速に敵を倒す事を覚えなさい。それとシホちゃん達は、敵は自分達を狙ってくるものと想定して動いてね。深層部に進めば敵は待ってはくれないわ」
三人は返事をすると戦闘態勢に入る。メリランダは小声で何か詠唱すると、自分に対闇魔法の光のヴェールを纏った。
死霊の群れに向かっていく三人。飛び回る死霊達との闘いをリズは少し離れて、真剣な眼差しで観察する。
メリランダとエルテは敵の弱点である聖魔法を駆使し着実に仕留めていたが、シホは剣技も通用しない相手に、並みの攻撃魔法でしか応戦出来ないもどかしさを感じていた。
その事はリズもすぐに気付いていた。三人は魔物の群れを片付けると、シホは少し肩を落としながらリズに助言を求める。
「これまでは前衛でそれなりに戦えてる気になってたけど、これじゃ二人の背中を守れる気がしない・・・・。聖魔法で弱点を突ける訳でもないし、何て言うか器用貧乏な感じ。どうしたら良いですか?」
「状況が状況なら臨機応変に戦える能力ではあるのだし、器用貧乏なんて事は無いわよ。自分が活躍できる場でないと感じたらサポートに徹する。それも仲間を守る選択の一つよ?まぁ、シホちゃんもエルテちゃんも人間だった時は戦闘経験なんて無かったのだもの、これから学んでいけばいいわ。でも確かに私から見れば、シホちゃんの魔法はまだまだ貧弱なものばかりね」
「ぐぬぬ・・・・」
「この呪詛の宴では優秀な冒険者達でも、油断や慢心で命を落とす者が少なくないの。メリランダから固有アビリティの話は聞いているわ。という訳でシホちゃんは一人で死体探しかしらね」
「でもエルテとメリランダが・・・・」
「二人は私が責任を持って守るし特訓しておくわ。それに運が良ければ霊体を斬れる剣が拾えるかもしれないわね。ここまで来ようと思う剣士が居ればそれは必須だもの」
「本当ですか⁉じゃあここはお願いします」
「頃合いを見て帰ってくるのよ?」
「はい。私、もっと強くなるから!」
シホは二人にそう言って手を振ると足早に奥へと進んでいった。そうこうしているうちに再び魔物が集まりだす。
二人に背中を預ける様にリズは杖を構え向きを変えると、口角を上げる。
「さぁ、もう一戦いくわよ。準備は良い?二人とも」
二人が返事をすると同時に戦闘が始まった。
その頃シホは、手の平の上に魔法で火球を浮かべ、闇を照らしながら探索を開始していた。いくつか冒険者のものと思われる亡骸を見つけるが、その度に納得がいかない様子で首を傾げる。
時間も経ち、浮かない顔で皆と合流するシホは少し申し訳なさそうに喋る。
「今日はあまりいい収穫なかったよ」
そんなシホにいつもの調子のメリランダとエルテが返す。
「お姉様特製の防腐処理もした事ですし、時間ならまだあります。それに特訓も始まったばかりです。焦らずいきましょう」
「メリランダの言う通り。私もまだ戦いに慣れるの時間かかる。もっと友達を守れる力欲しい」
「やはり素直なエルテさんは素敵ですね。ちょっと浮気をしてしまいそうです。シホさん、早めに私を抱いてくれないと困った事になりそうですよ?」
シホのアホ毛がピンと反応する。
「なんでそうなるの⁉メリランダ、エルテに変な事しないでよ?」
「冗談ですよ、まだ」
「まだ⁉」
そんなやりとりを微笑ましく見守るリズは宿へ戻る事を促す。
「まだまだ元気ね、あなた達。明日もあるんだから、特にメリランダはちゃんと身体を休めなさいよ?」
一行は宿に戻った。
特訓を繰り返す事、五日目。シホは焦っていた。
「今日は隅々まで探してみるから帰りは先戻っててもらえるかな?」
それだけ言い残すといつも通り呪詛の宴の奥地へと消えていった。エルテはその後姿を心配しメリランダと話す。
「シホ最近イラ立ってる。ちょっと心配」
「ですね。死者継承の力で能力値は伸びているようですが、お目当てのスキルと武器が手に入らず意地になっているのでしょう」
シホは特に収穫も無く進んでいると、いつの間にか50層目の罪の分銅にたどり着いていた。
「ここがリズさんが通れないって言ってた場所かぁ」
少し人工的な造りで淡く光る石の様な素材で構成されている空間を進むと、壁が動き出し道が開かれる。
「この先って深層部・・・・。って事は居るのも来るのも強いやつしか居ない。ここで力を吸収出来れば・・・・」
シホは息を呑むと慎重に進んで行った。
罪の分銅の先に広がっていたのは地面に空いた巨大な穴、そしてそれを囲むように狭い足場が外周にぐるりと存在しているのが分かった。出来れば戦闘は避けたい。そんな場所だった。
穴の淵でシホは下をのぞき込むが底が見えない。落ちればアンデッドの身体とはいえ即死するだろう。
その時背後に気配を感じ振り返ると、立派な鎧を着たアンデッドが一体接近していた。
「命ヲォォ、ヨコセェェェ・・・・」
「喋った⁉こいつ上位種なんだ!」
アンデッドである私とエルテはまだ狙われる様子はなかったけど、メリランダとリズさんは常に死霊の唱える闇魔法から身を守りつつ戦う必要がある。でも恐らく、それがリズさんの狙いなんだと思う。
リズは三人に向かって話し始める。
「見ての通り、ここではほぼ物理攻撃が通らない霊体系と戦う事になるわ。闇魔法への対処はもちろん、精気を奪う近接攻撃にも注意が必要よ。適切な魔法の選択や仲間と敵、周囲の状況にも常に気を配る事。特にメリランダは魔力の消耗を抑えつつ、同時に迅速に敵を倒す事を覚えなさい。それとシホちゃん達は、敵は自分達を狙ってくるものと想定して動いてね。深層部に進めば敵は待ってはくれないわ」
三人は返事をすると戦闘態勢に入る。メリランダは小声で何か詠唱すると、自分に対闇魔法の光のヴェールを纏った。
死霊の群れに向かっていく三人。飛び回る死霊達との闘いをリズは少し離れて、真剣な眼差しで観察する。
メリランダとエルテは敵の弱点である聖魔法を駆使し着実に仕留めていたが、シホは剣技も通用しない相手に、並みの攻撃魔法でしか応戦出来ないもどかしさを感じていた。
その事はリズもすぐに気付いていた。三人は魔物の群れを片付けると、シホは少し肩を落としながらリズに助言を求める。
「これまでは前衛でそれなりに戦えてる気になってたけど、これじゃ二人の背中を守れる気がしない・・・・。聖魔法で弱点を突ける訳でもないし、何て言うか器用貧乏な感じ。どうしたら良いですか?」
「状況が状況なら臨機応変に戦える能力ではあるのだし、器用貧乏なんて事は無いわよ。自分が活躍できる場でないと感じたらサポートに徹する。それも仲間を守る選択の一つよ?まぁ、シホちゃんもエルテちゃんも人間だった時は戦闘経験なんて無かったのだもの、これから学んでいけばいいわ。でも確かに私から見れば、シホちゃんの魔法はまだまだ貧弱なものばかりね」
「ぐぬぬ・・・・」
「この呪詛の宴では優秀な冒険者達でも、油断や慢心で命を落とす者が少なくないの。メリランダから固有アビリティの話は聞いているわ。という訳でシホちゃんは一人で死体探しかしらね」
「でもエルテとメリランダが・・・・」
「二人は私が責任を持って守るし特訓しておくわ。それに運が良ければ霊体を斬れる剣が拾えるかもしれないわね。ここまで来ようと思う剣士が居ればそれは必須だもの」
「本当ですか⁉じゃあここはお願いします」
「頃合いを見て帰ってくるのよ?」
「はい。私、もっと強くなるから!」
シホは二人にそう言って手を振ると足早に奥へと進んでいった。そうこうしているうちに再び魔物が集まりだす。
二人に背中を預ける様にリズは杖を構え向きを変えると、口角を上げる。
「さぁ、もう一戦いくわよ。準備は良い?二人とも」
二人が返事をすると同時に戦闘が始まった。
その頃シホは、手の平の上に魔法で火球を浮かべ、闇を照らしながら探索を開始していた。いくつか冒険者のものと思われる亡骸を見つけるが、その度に納得がいかない様子で首を傾げる。
時間も経ち、浮かない顔で皆と合流するシホは少し申し訳なさそうに喋る。
「今日はあまりいい収穫なかったよ」
そんなシホにいつもの調子のメリランダとエルテが返す。
「お姉様特製の防腐処理もした事ですし、時間ならまだあります。それに特訓も始まったばかりです。焦らずいきましょう」
「メリランダの言う通り。私もまだ戦いに慣れるの時間かかる。もっと友達を守れる力欲しい」
「やはり素直なエルテさんは素敵ですね。ちょっと浮気をしてしまいそうです。シホさん、早めに私を抱いてくれないと困った事になりそうですよ?」
シホのアホ毛がピンと反応する。
「なんでそうなるの⁉メリランダ、エルテに変な事しないでよ?」
「冗談ですよ、まだ」
「まだ⁉」
そんなやりとりを微笑ましく見守るリズは宿へ戻る事を促す。
「まだまだ元気ね、あなた達。明日もあるんだから、特にメリランダはちゃんと身体を休めなさいよ?」
一行は宿に戻った。
特訓を繰り返す事、五日目。シホは焦っていた。
「今日は隅々まで探してみるから帰りは先戻っててもらえるかな?」
それだけ言い残すといつも通り呪詛の宴の奥地へと消えていった。エルテはその後姿を心配しメリランダと話す。
「シホ最近イラ立ってる。ちょっと心配」
「ですね。死者継承の力で能力値は伸びているようですが、お目当てのスキルと武器が手に入らず意地になっているのでしょう」
シホは特に収穫も無く進んでいると、いつの間にか50層目の罪の分銅にたどり着いていた。
「ここがリズさんが通れないって言ってた場所かぁ」
少し人工的な造りで淡く光る石の様な素材で構成されている空間を進むと、壁が動き出し道が開かれる。
「この先って深層部・・・・。って事は居るのも来るのも強いやつしか居ない。ここで力を吸収出来れば・・・・」
シホは息を呑むと慎重に進んで行った。
罪の分銅の先に広がっていたのは地面に空いた巨大な穴、そしてそれを囲むように狭い足場が外周にぐるりと存在しているのが分かった。出来れば戦闘は避けたい。そんな場所だった。
穴の淵でシホは下をのぞき込むが底が見えない。落ちればアンデッドの身体とはいえ即死するだろう。
その時背後に気配を感じ振り返ると、立派な鎧を着たアンデッドが一体接近していた。
「命ヲォォ、ヨコセェェェ・・・・」
「喋った⁉こいつ上位種なんだ!」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
台風のよる、君ひそやかに、魔女高らかに
にしのくみすた
ファンタジー
【空を飛ぶ魔女たちの、もちもち百合ファンタジー・コメディ!】
台風の夜、魔女はホウキで空を翔け――嵐と戦う!
この街で台風と戦うのは、ホウキで飛ぶ魔女の仕事だ。
空を飛ぶ魔女に憧れながらも、魔法が使えない体質のため夢を諦めたモチコ。
台風の夜、嵐に襲われて絶体絶命のピンチに陥ったモチコを救ったのは、
誰よりも速く夜空を飛ぶ“疾風迅雷の魔女”ミライアだった。
ひょんな事からミライアの相方として飛ぶことになったモチコは、
先輩のミライアとともに何度も台風へ挑み、だんだんと成長していく。
ふたりの距離が少しずつ近づいていくなか、
ミライアがあやしい『実験』をしようと言い出して……?
史上最速で空を飛ぶことにこだわる変な先輩と、全く飛べない地味メガネの後輩。
ふたりは夜空に浮かんだホウキの上で、今夜も秘密の『実験』を続けていく――。
空を飛ぶ魔女たちの、もちもち百合ファンタジー・コメディ!
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる